西洋音楽史 の商品レビュー
めも) ・オリジナリティ神話の否定――新古典主義時代のストラヴィンスキー <…1920年代のアンチ・ロマン派潮流のカリスマに祭り上げられたのが、1920年代のいわゆる新古典主義時代のストラヴィンスキーである。それは「バロック時代への回帰」といった単なる回顧趣味ではない。…> (「...
めも) ・オリジナリティ神話の否定――新古典主義時代のストラヴィンスキー <…1920年代のアンチ・ロマン派潮流のカリスマに祭り上げられたのが、1920年代のいわゆる新古典主義時代のストラヴィンスキーである。それは「バロック時代への回帰」といった単なる回顧趣味ではない。…> (「兵士の物語」「プルチネルラ」、さまざまな音楽様式のコラージュ的引用) <…これらは基地の材料の引用とアレンジだけで曲を書く試みであり、用いられる素材自体はどれも見慣れたものである。にもかかわらず、微妙な文脈のずらし方によって、独特の異化作用が生じるのである。この点でストラヴィンスキーの新古典主義は、彼の親友だったピカソのコラージュときわめて似た技法に基づいていた(同時代のロシア・フォルマリズム詩学における「異化」の概念にも近い)。> <ストラヴィンスキーは、この「歴史の進歩」と「オリジナリティ崇拝」を根底から否定する。新古典主義時代の彼の作曲原理は、…平たくいえば「パクリ」と「継ぎ接ぎ(パッチワーク)」であって、これこそロマン派においては最も蔑視されてきたものだった。> ・荒野に叫ぶ預言者――シェーンベルクの十二音技法211 1910sの理論の支えなしの霊感の発露 → 無調音楽の理論化 = 一二音技法 (基本形、逆行型、鏡像型、鏡像型の逆行型) <アメリカに亡命してからのことだが、次のようなエピソードが残っている。ある無邪気な知り合いから「どうしてかつてはロマンチックで美しい調声音楽を書いていたのに、なぜ不協和音だらけの曲しか書かなくなったのか?」と尋ねられたシェーンベルクは、憤然として「自分だってできるなら調声で音楽が書きたい。しかし三和音を書くことを、歴史が私に禁じているのだ」と答えたというのである。シニカルに西洋音楽史の限界を眺めていたストラヴィンスキーとは対照的に、シェーンベルクは究極のロマンチストであったともいえるだろう。彼はまだ、「これまで誰も耳にしたことのない未曾有の響き」というユートピアが、どこかに残っていると考えていたのであろう。> ・「型」の再建という難題 <またシェーンベルクのこの時期の創作も、ほとんど自動筆記のような性格をもっていたらしい。…特に自由な無調の時代の彼は、霊感に導かれるまま、信じられないくらい短期間で一気に作品を仕上げることで有名だった。…しかしながら戦争が終わり、この創作の例外的な興奮状態も過ぎ去った後、彼らは再び何らかの「型」を作り出す必要があることに、はたと気づいたのではあるまいか。> <…彼(シェーンベルク)自身は、聴き手が一二音技法の音列を聴き分けられずとも、作品理解にとって一向に差し支えないと考えていた。一二音技法はむしろ、聴衆ではなく、作曲する人間のために考案された型だといえるだろう。…やや皮肉な言い方をすれば、シェーンベルクは「並の人間」でも調性に頼らずに作曲が可能なマニュアル=型を作り出したともいえるだろう。> cf.トリスタン・ツァラの詩法
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時代を大きく捉えて、音楽がたどった流れを解説していく。しかし、こうした捕らえ方でバッハが得意な存在であること、また音楽後進国であったドイツが純粋な芸術としてクラシック音楽を発展させていくのに対して、フランスやイタリアではあくまでも娯楽としてクラシック音楽が発達していく。この大きな...
時代を大きく捉えて、音楽がたどった流れを解説していく。しかし、こうした捕らえ方でバッハが得意な存在であること、また音楽後進国であったドイツが純粋な芸術としてクラシック音楽を発展させていくのに対して、フランスやイタリアではあくまでも娯楽としてクラシック音楽が発達していく。この大きな捕らえ方には納得した。
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音楽の始まりから、近代までの流れがコンパクトに収まっている一冊。もちろん古楽の章もあり、筆者の方は近代の専門家なので、それがまた逆に面白いなと思います。筆者の語り口が軽妙で、ひきこまれてしまいます。
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「古典派」「ロマン派」など名前は聞いたことがあるけど内容については良く分かってなかった音楽史が、時代背景を含め順序だてて説明されていてとても読みやすかった。 紹介されていた曲を聴きながらもう一度読みたいです。
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この本で定義するところの「クラシック以前」の西洋芸術音楽から現代音楽までを一望する「通史」。私は友人に「クラシック好き」と言って憚らないけれど実はロマン派の後期から現代音楽のとば口までの100年程の間の「特に有名な」曲を聴いているだけ。作曲家の年代順位は頭に入っているものの、文化...
この本で定義するところの「クラシック以前」の西洋芸術音楽から現代音楽までを一望する「通史」。私は友人に「クラシック好き」と言って憚らないけれど実はロマン派の後期から現代音楽のとば口までの100年程の間の「特に有名な」曲を聴いているだけ。作曲家の年代順位は頭に入っているものの、文化史として「流れ」の中で解説されるととても判りやすい。私程度のクラシック好きに丁度よい入門書。
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ギタリスト原善伸さんのブログで紹介されているのを見てすぐに買ったのだけれど…あれから10カ月、やっと読めました。作曲家の名前や名曲をたくさん知っているわけではない私にとっては難しいところもあったけれど、西洋音楽の歴史をひとつの流れとしてとらえることができるようになったかな。バロッ...
ギタリスト原善伸さんのブログで紹介されているのを見てすぐに買ったのだけれど…あれから10カ月、やっと読めました。作曲家の名前や名曲をたくさん知っているわけではない私にとっては難しいところもあったけれど、西洋音楽の歴史をひとつの流れとしてとらえることができるようになったかな。バロックってすんごい昔のものだとなんとなく思っていたけれど、日本の江戸時代頃のものなんですね。なんだか無性に年表を作りたくなったなあ。 再読。 以前読んだときよりもよくクラシックを聴くようになったせいか、理解できる部分が広がった気がする。 それにしても、聞くべき曲はまだまだたくさんあるなあ。
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『西洋音楽史――「クラシック」の黄昏』(岡田暁生、2005年、中公新書) 本書は、西洋音楽史を西洋中世音楽から、ルネサンス、バロック、ウィーン古典派、ロマン主義、現代の音楽までを各時代ごとに記述した本です。本書はただ音楽史を追ったものではなく、各時代の時代背景や人物像を考慮した...
『西洋音楽史――「クラシック」の黄昏』(岡田暁生、2005年、中公新書) 本書は、西洋音楽史を西洋中世音楽から、ルネサンス、バロック、ウィーン古典派、ロマン主義、現代の音楽までを各時代ごとに記述した本です。本書はただ音楽史を追ったものではなく、各時代の時代背景や人物像を考慮した上で記述されているので、時代の移り変わりの背景や理由がよくわかります。また、音楽史が歴史の流れとともに動いているということがよくわかります。たとえば、フランス絶対王政期のルイ14世の時代には豪勢な(贅沢な)貴族文化が生まれ(たとえばヴェルサイユ宮殿)、それとともに宮廷音楽が発展した、などがその例としてあげられます。 日本人が「クラシック」と聞くと、ベートーヴェンやモーツァルトなどのウィーン古典派を思い浮かべがちですが、本書を読むとクラシックの奥深さが感じられます。というのは、自分がクラシックについて良く知らないという理由からなのですが…。その意味で、「この曲を聴いてみたい」と思える曲が見つかるかもしれません。ただ、本書は各時代の代表的な音楽家や代表曲を解説するというスタンスではないので、いわゆるクラシックの解説書的なものではありません。 (2009年2月26日) (2009年7月29日) (2011年2月6日)
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[関連リンク] 西洋音楽史 - 情報考学 Passion For The Future: http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/04/post-970.html
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音楽史の大きな流れがコンパクトにまとめられている。「音楽」と「音楽の聴き方」はセットで発展してきたものであり、謎めいた中世音楽(グレゴリオ聖歌)から第二次世界大戦後まで順にそれを解いてくれている。また「「事実」に「意味」を与えるのは、結局のところ「私」の主観以外ではありえない」...
音楽史の大きな流れがコンパクトにまとめられている。「音楽」と「音楽の聴き方」はセットで発展してきたものであり、謎めいた中世音楽(グレゴリオ聖歌)から第二次世界大戦後まで順にそれを解いてくれている。また「「事実」に「意味」を与えるのは、結局のところ「私」の主観以外ではありえない」という歴史へのスタンスも正しい。
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「クラシック」と呼ばれる音楽がどのように近代社会ともに成立していったかを、音楽そのものの構造の簡にして要を得た解説と併せて物語的な歴史展開で記述した好著。今までバラバラだった作曲家や作品を大きなパースペクティヴの中に位置づけて見るのに格好の書。
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