アメリカの鱒釣り の商品レビュー
ある歌い手がいる。とてもくせのある歌い方をする。 その歌い手は歌を歌うことが特別好きなわけではない。けれど、なぜかはわからないが自分の歌を聴いて周りが喜んでくれる。だから歌を歌う。自分には自分の歌の良し悪しはわからないけれど、みんなが喜ぶ顔を見るのが好きだから歌う。みんなが喜ぶ...
ある歌い手がいる。とてもくせのある歌い方をする。 その歌い手は歌を歌うことが特別好きなわけではない。けれど、なぜかはわからないが自分の歌を聴いて周りが喜んでくれる。だから歌を歌う。自分には自分の歌の良し悪しはわからないけれど、みんなが喜ぶ顔を見るのが好きだから歌う。みんなが喜ぶ顔を見るのは楽しい。 「あいつ面白いなあ」ある種の人にはその好んで歌っている楽しそうな感じが伝わってくる。しかし、ある人にはその「楽しそう」の裏側にある切実さに胸が締め付けられるように感じられるかもしれない。「まるであいつは歌を歌わされているようじゃないか」と。 『アメリカの鱒釣り』は言葉のもつある種の機能について、痛いほどによくわかっている人が書いたもの、という気がする。とても自由に見えて明るい、のだけれど、どこか切実さが感じられる瞬間がある。なぜかよくわからないが、ほとんど泣きそうになるような時がある。 カフカの言葉を出だしに引いている。「アメリカ人は健康的で楽観的だ」。ブローティガンは自分の母語や環境に備わっている「楽観的」な要素から目をそらすことができなかった人なのかもしれない。何か一つ言って「まあ、いっか」と次の言葉を繰り出す。でもこの「まあ、いっか」には無責任な感じがまとわりついていない。おちゃらけたふりをしながら言葉がちゃんとこちらへ投げつけられてくる。切実だ、と思う。訳者の力もきっとあるのだろう。 この本は結果的にアメリカのある部分を正確に切り取った記録になっていないだろうか。
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まだらに鮮やかな部分がある。 もちろん、書いた人が「まだら」に書いているのではない。 読んでいる私の理解が「まだら」なのだ。 書き手の問題ではなくて、読み手の問題。 たぶん、私には鮮明でない部分を理解できる人には、 この作品は傑作なんだろう。 いや、曖昧模糊としているのが実態な...
まだらに鮮やかな部分がある。 もちろん、書いた人が「まだら」に書いているのではない。 読んでいる私の理解が「まだら」なのだ。 書き手の問題ではなくて、読み手の問題。 たぶん、私には鮮明でない部分を理解できる人には、 この作品は傑作なんだろう。 いや、曖昧模糊としているのが実態なのかもしれない。 それこそ、最初の一行から最後の一行まで、放り出したくなる書物だが、読んだあと、顔を上げて現実の世界を眺めると、この本にあるように現実が見えてくるのだから、やっぱり「これ」は偉大な何物かなのだ。 (2012年4月22日)
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一度目でわかろうなんて思ってない、けどいつか何かがわかるようになればいいな。・・・まるで永遠の59秒目だった・・・なんて文章いったい誰が思いつく?
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古きよさを失われたアメリカ。しかしところどころに求めれば「鱒釣り」の姿がある・・・> リチャード・ブローティガン ケルアックやギンズバーグと同じ世代ながらビートニクから一線をがし、 文学のポップさ、軽やかさを前面に押し出されている。 非常に軽妙でポップな文体と比喩や...
古きよさを失われたアメリカ。しかしところどころに求めれば「鱒釣り」の姿がある・・・> リチャード・ブローティガン ケルアックやギンズバーグと同じ世代ながらビートニクから一線をがし、 文学のポップさ、軽やかさを前面に押し出されている。 非常に軽妙でポップな文体と比喩や暗喩の数々。 でも・・・ うん、さっぱりわからない 笑 読者をくった物語の数々。 それを楽しむものなかのかもしれません。 そのうちもう一度読むかも。
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乾いたその表現は素敵ですが、普通の物語と思って読むと意味が良く分かりません。これは「詩」だと考えて一応納得しました^^;
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いろんなとこで評価が高いので借りてみましたが・・・。 私には理解できず、挫折っ。 ユーモアがあるのはなんとはなしにわかるのですが、 これはアメリカ文化に浸りきっていれば理解できるものなのか?! 次の本に移りまーす。無念。
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この小説には空洞がある。 空気砲で今まで歩んだ道程を射抜かれ、ポンと音を立てて抜け落ちたかのような空洞。 失うことは別れにも繋がり、世の多くはそれを悲観的にあらわすのだが、ユーモラスで詩的な語りから、前途明るい喪失を感じさせる。 空洞を覗けば、無ではない。世界が存在する。 僕には...
この小説には空洞がある。 空気砲で今まで歩んだ道程を射抜かれ、ポンと音を立てて抜け落ちたかのような空洞。 失うことは別れにも繋がり、世の多くはそれを悲観的にあらわすのだが、ユーモラスで詩的な語りから、前途明るい喪失を感じさせる。 空洞を覗けば、無ではない。世界が存在する。 僕には沢山の言葉の星が瞬いている美しい夜空が見えた。 その実この小説でのブローティガンの思いなんて全く分からないし、結構どうでもいいのだけど、わたしはこの小説の空気が好きだし、使われる言葉も好き。 大切な一冊になると思う。
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わかったかわからないかと聞かれたらわかったとは答えられないけどとてもおもしろかった。独特な文体、バカバカしさ。あとがきのテンションの高さに若干引いたけど、ブローティガンのほかの作品もぜひ読みたい。
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なんでこういう本を書こうと思ったのか、何が書いてあるのか、ぼくはなんでこの本を読んでいるのか、いずれもわからない。まあ、人生とはそういうもんかもしれない。「さようなら、ギャングたち」を読みたくなった。
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なんかいかにも土臭いアメリカの大地が思い起こされた。 村上春樹はかなりこの作品の影響受けたんだろう。文体とか、世界観とか。
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