村田エフェンディ滞土録 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
不思議が日常、という雰囲気がとても好き。 オウムの言うことがいちいち爆弾投下!な感じで何度も爆笑。 雪合戦のシーンは、本当にきらきらとまぶしくて その後が余計に哀しかった。 (10.12.30) 遠いほうの図書館 (10.12.23)
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家守綺譚の綿貫君の友人で、トルコに留学した村田君の物語です。物語後半に差し掛かって何食わぬ顔で綿貫たちが登場したとき、なんだかすごく納得してしまいました。このふたつの小説はすごく自然に地続きになっていたんだな、と。 宗教も国籍も違う人々がトルコの下宿屋でひとつ屋根の下で暮らす物語...
家守綺譚の綿貫君の友人で、トルコに留学した村田君の物語です。物語後半に差し掛かって何食わぬ顔で綿貫たちが登場したとき、なんだかすごく納得してしまいました。このふたつの小説はすごく自然に地続きになっていたんだな、と。 宗教も国籍も違う人々がトルコの下宿屋でひとつ屋根の下で暮らす物語の前半部分は、すごく穏やかで、何気ない日常が淡々と過ぎていく感じなのですが、その分村田が帰国してからの物語の展開には胸を揺さぶられました。雪合戦のくだりなんてすごくほほえましく読んだのですが、読み終わった今思うと、あれが前兆だったのかもしれないなあ。 最後、村田のもとへやってきたオウムが「友よ!」と叫んだ場面は、涙がこぼれました。
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トルコの雑然とした感じと、様々な国の人や神さまが、一つの家に身を寄せ合って暮らしている前半部分に笑みを浮かべれば浮かべるほど、最後が本当に悲しい。色々考えさせられた。
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最後、泣いてしまいました。最後の最後、こんな結末とは。舞台となった時代、そして土地がこの小説の面白さを生み出し、悲しみも生み出してしまいましたね。電車の中、立ちながら読んだのを後悔。もっと落ち着いて読むべきだった。以下ネタバレ含む「私は人間だ。およそ人間に関わることで私に無縁な事...
最後、泣いてしまいました。最後の最後、こんな結末とは。舞台となった時代、そして土地がこの小説の面白さを生み出し、悲しみも生み出してしまいましたね。電車の中、立ちながら読んだのを後悔。もっと落ち着いて読むべきだった。以下ネタバレ含む「私は人間だ。およそ人間に関わることで私に無縁な事は一つもない・・・」本の表紙の裏(袖?なんというのか)に書かれたこの節を読んだとき、作品とどんなつながりがあるのか全く想像できませんでした。作中、初めて出たとき、その言葉の味わい深さに目から鱗が落ちる思いでした。そして最後、ディミィトリスの通夜の際に村田が口にした時、その後の戦争に巻き込まれた友人たちの消息が明らかになった時、やっとこの言葉を理解できたと思います。「It's enough!」。確かに言うとおりだよなぁ。鸚鵡に叱られたって言い返せない。この言葉を覚えて、下宿人たちを鸚鵡がやりこめる件にはくすくすと笑ってしまったけれど。・・・これ書きながらまた泣けてしまう。この小説の、最初の一編を読み終わった時、その時点でもう完全に惹きこまれてしまったのだけれど、梨木香歩さんの作品のどこが一番の魅力なのだろうと考えながら読んで、それはやっぱりユーモアなのだろうなぁ、と思った。それもただのユーモアではなく、とても上品なユーモア。他人や自分を殊更にこき下ろしたり、斜に構えたりしない、知的で温かみのあるユーモアだから、続きを読みたくなる、自分もこの世界の仲間に入れて欲しくなってしまう。ずっと大切にしておきたい作品です。
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当たり前の日常と大切な思い出 前半はエッセイのように淡々と語られる日常。 後半の特に最後どうしようもない。つらくていとおしくてたまらない。
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やっぱり梨木さんの本は、素晴らしい。 世界中の人がこの本を読めば、 少しは他者理解が深まるんじゃないか。 第一次世界大戦前に、トルコに招聘された考古学研究者の村田。 人種のるつぼであるトルコらしく、 彼の住まう下宿も 様々な生活様式、宗教、思想を持った人々が住んでいた。 日々静...
やっぱり梨木さんの本は、素晴らしい。 世界中の人がこの本を読めば、 少しは他者理解が深まるんじゃないか。 第一次世界大戦前に、トルコに招聘された考古学研究者の村田。 人種のるつぼであるトルコらしく、 彼の住まう下宿も 様々な生活様式、宗教、思想を持った人々が住んでいた。 日々静かに交わされる異文化との交流。 国境を越える素敵な友情だ。 それぞれが出身国そのものやその文化に 愛着とそれなりの誇りと欠点を感じている。 そこがとても人間らしく、ほほえましい。 『家守綺譚』の綿貫・高堂が出てくる。 『からくりからくさ』ほどではないものの、 最後の収束にものすごくドラマがある。 ああ、この読了後の気持ちをどうやって言葉にしたらいいんだろう。 私の語彙力では無理だ。 今回も、心動かされる言葉がたくさんあったなぁ…。 「私は人間だ。およそ人間に関わることで、私に無縁なことは一つもない」 「西の豊かで懶惰な退廃の種を君たちが持ち帰らないようにすることだ」 「日本の民衆には権利という概念からしてない」 「この世には、私達の目には明らかでない、 あまりに多くのものが蠢いていて、 良くも悪くも、私達はそういうものと共に生きているということでしょう」 「歴史に残ることもなく、誰も知る者のない、忘れ去られた悲喜こもごもを」
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帯にあった「友よ、楽しむことを学べ」時々口の中で呟きたくなります。あと「慈悲」とか。「家守綺譚」の世界とつながっていて、同じ作者の別作品で同一キャラにまみえるのが私はとても好きなので楽しい。最後が当然のこと、歴史の知識として当然知っていたこだけれど、あまりにも同居人さん達に思い入...
帯にあった「友よ、楽しむことを学べ」時々口の中で呟きたくなります。あと「慈悲」とか。「家守綺譚」の世界とつながっていて、同じ作者の別作品で同一キャラにまみえるのが私はとても好きなので楽しい。最後が当然のこと、歴史の知識として当然知っていたこだけれど、あまりにも同居人さん達に思い入れをしていたので衝撃でした。
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(2005.09.02読了)(2005.08.27購入) 村田エフェンディというのは、勝手に女性の名前だろうと思い込んで小説を読み進めて行ったのですが、途中で男の人であることがわかりました。作家が女性であることと、エフェンディという響きがそう思わせたようです。 題名の意味は、村田...
(2005.09.02読了)(2005.08.27購入) 村田エフェンディというのは、勝手に女性の名前だろうと思い込んで小説を読み進めて行ったのですが、途中で男の人であることがわかりました。作家が女性であることと、エフェンディという響きがそう思わせたようです。 題名の意味は、村田先生がトルコに滞在していた時の記録、ということです。時代は1899年です。場所は、スタンブール。(日本では、イスタンブールです。) 「エフェンディ」というのは主に学問を修めた人物に対する一種の敬称ということなので、日本で言う先生に該当します。滞土の土は、土耳古(トルコ)ということです。 「土耳古皇帝から日本国天皇への親書を託した使者を乗せたフリゲート艦、エルトゥール号が帰国途中、和歌山沖で台風に遭い、乗員650名中587名が溺死した。その時地元の警察隊を始め、漁民まで実に献身的な救助及び看護にあたり、土耳古帝国皇帝が痛く感激、両国の友好のますます深まらんことを願って、日本の学者を一名、土耳古文化研究のため彼の地に招聘することにしたのである。」 土耳古からの招聘に対する公募に応募し、選ばれたのが村田先生です。「公募書類の中で、実は私の名前MURATAが土耳古でごく一般的な名前MURATにほとんど同じであるところから、発音しやすいという理由で選ばれたのらしい。」 村田先生の下宿は、英国人のディクソン夫人が家主で、ムハンマドというトルコ人が召使がいる。料理作りや下働きをする。他の下宿人は、ドイツ人のオットー、ギリシア人のディミトリスの二人がいる。他に、ムハンマドが道で拾ってきた鸚鵡がいます。 オットーは、シュリーマン氏がトロイの遺跡を発掘した、その第4次発掘隊に参加したのだそうです。(そういえばトロイの遺跡は、土耳古にあったんですね。) ディミトリスはギリシア考古学会会員で、シュリーマン氏のティリンス発掘の時の政府視察団の一人だったのです。 時代が100年も前の、場所が古い歴史を持つイスタンブールということで、あちこちで、不可思議な現象や、霊のようなものが出てくる。これは、村田さんの伝記なのか、単なるファンタジーなのか定かではない。 下宿人は3人とも考古学の研究者なので、土耳古内外の遺跡の話が出てくるので愉しく読めた。当時は文化的な意味などは深く考えられていなかったので、まだ金銀財宝のでてくるギリシア・ローマの遺跡は、喜ばれるけれど、紀元前8千年ぐらいの中央アナトリアの遺跡の発掘は土耳古政府からは好ましく思われず許可されなかったという話は、納得させられました。 ●土耳古を訪れた日本人たちの会話 「波斯の何某が、日本へ行って、物乞いのいないこと、街路の清潔なこと、役人の無闇にものをねだらないことに感銘を受けて帰ってきたとか聞いた。」 「日本には、私利私欲というものを馬鹿にし軽んずる風があるのだ。武士は食わねど高楊枝、というような。」(ニュー・オーリンズでの台風の被災者たちの無法状態を見るにつけ、文化の違いを感じる。) 「しかしそれがために日本人は国際社会で押しが弱く、ひいてはそもそもあの不平等条約が結ばれたのも、治外法権ということを認めたのも、身内が余所で犯した犯罪なら、相手国よりいっそう犯罪人を厳格に処すであろうという、日本人の常識が根底にあったのだ。まさか外人が日本人を殺めても大した刑罰も下されないような仕儀になろうとは。」 「きゃつらは有色人種はまず人間と思っていない。」 「平等という概念は、彼らの身内で必要に迫られて作り上げられたもので、それは異教徒や有色人種までには適用されないものなのだ。」 ☆梨木香歩さんの本(既読) 「西の魔女が死んだ」梨木香歩著、楡出版、1994.04.19 著者 梨木 香歩 1959年 鹿児島生れ。 英国に留学、児童文学者のベティ・モーガン・ボーエンに師事。 1994年 『西の魔女が死んだ』で日本児童文学者協会新人賞、新美南吉児童文学賞、小学館文学賞受賞 1996年 『裏庭』で児童文学ファンタジー大賞受賞 (「BOOK」データベースより)amazon 町中に響くエザン(祈り)。軽羅をまとう美しい婦人の群れ。異国の若者たちが囲む食卓での語らい。虚をつく鸚鵡の叫び。古代への夢と憧れ。羅馬硝子を掘り当てた高ぶり。守り神同士の勢力争い―スタンブールでの村田の日々は、懐かしくも甘美な青春の光であった。共に過ごした友の、国と国とが戦いを始める、その時までは…。百年前の日本人留学生村田君の土耳古滞在記。
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淡々と進む物語の最後に、あんな衝撃が待っているとは。はるばると日本にやってきた鸚鵡が放つ一言には涙が止まりませんでした。それでも読後に残るのは不思議な温かさ。希臘人の友が言った一言が重く思い返されます。私は人間だ。およそ人間に関わることで私に無縁な事は一つもない。それにしても、「...
淡々と進む物語の最後に、あんな衝撃が待っているとは。はるばると日本にやってきた鸚鵡が放つ一言には涙が止まりませんでした。それでも読後に残るのは不思議な温かさ。希臘人の友が言った一言が重く思い返されます。私は人間だ。およそ人間に関わることで私に無縁な事は一つもない。それにしても、「家守綺譚」とリンクしていることを知らずに読んだので、途中でびっくり。梨木さんの作品の登場人物は、不思議な出来事に遭遇してもそれを自然に受け止めてしまう。そこが大好きです。
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タイトルにひかれて買った。 この本を読んだことでオスマン帝国の海軍の本やら「トルコ狂乱」につながったのだから、よい出会いであった。
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