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村田エフェンディ滞土録 の商品レビュー

4.3

134件のお客様レビュー

  1. 5つ

    64

  2. 4つ

    44

  3. 3つ

    17

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2009/10/07

淡々と進んでいく話ですが、最後に涙です。 現在の世界情勢とシンクロして、人は如何に未知の人を受け入れていけるのか問いているような気がします。

Posted byブクログ

2009/10/04

家守綺譚に名前だけ出てくる村田君のトルコ留学記です。楽しそうな毎日が綴られています。時間と心の余裕のあるときに、部屋でゆっくり読む本です。読んだ人ならわかるはず。(私だけ?)

Posted byブクログ

2009/10/04

複雑な歴史を持たない国というのは、きっとないのでしょう。小さくて、国境を持たないように思われる日本ですらそうなのだから、大陸と大陸の境目にあり、国としてだけでなく、民族、宗教などなど、何重もの歴史をひとえにして持つアジアの果ての国、ヨーロッパの端の国。 そんな国の持つごたまぜの...

複雑な歴史を持たない国というのは、きっとないのでしょう。小さくて、国境を持たないように思われる日本ですらそうなのだから、大陸と大陸の境目にあり、国としてだけでなく、民族、宗教などなど、何重もの歴史をひとえにして持つアジアの果ての国、ヨーロッパの端の国。 そんな国の持つごたまぜの世界。 梨木さんのトルコ。

Posted byブクログ

2009/10/07

梨木香歩には、ちょっと優等生的な匂いがするところがある。なになにはこうであらねばならない、というメッセージが透けて見えてくるような作品があるのだ。その優等生的視点を前面に押し出してくる作品は、ちょっと苦手だ。一方、梨木香歩には人の世に人でないものを持ち込むのが好きらしい。その異質...

梨木香歩には、ちょっと優等生的な匂いがするところがある。なになにはこうであらねばならない、というメッセージが透けて見えてくるような作品があるのだ。その優等生的視点を前面に押し出してくる作品は、ちょっと苦手だ。一方、梨木香歩には人の世に人でないものを持ち込むのが好きらしい。その異質なものと、見慣れたような風景の境が上手くぼやけてくるような作品になると、途端に梨木香歩の良さが出てくる。「家守奇譚」がそのいい例だ。この作品がとても気に入ってそれ以来梨木香歩の他の作品を読み続けているのだが、どうもその世界に上手く入り込める作品に出会えないでいた。そんなもやもやを抱えていたところに順番が周って来たのが、この「村田エフェンディタ滞土録」である。 そうそう、こういうのが読みたかったんですよ、梨木さん。 この「村田エフェンディ滞土録」は、まさに「家守奇譚」の世界と同じ匂いのする物語だ。匂いだけではない。実は、「家守奇譚」の主人公綿貫の友人である考古学者がこの物語の主人公、村田、である。トルコ皇室に招聘され考古学の研究をするために土耳古(とるこ)に滞在している村田の経験する様々な物語、というのがこの本の一般的な要約になるだろう。嬉しいことに、村田の帰国後、綿貫の預かっている家に転がり込むエピソードまで出て来て、二冊の本を読んだ読者は思わずにんまりする、という仕掛けもある。 「家守奇譚」と同じような匂いがする、と書いたのだが、実は、この「村田エフェンディ滞土録」には、優等生的梨木香歩の面もちらちらと見え隠れする。村田が研究をしている土耳古は今まさに最後の皇室が凋落の危機に瀕している。そこに、シュリーマン以降、大量の考古学者がヨーロッパ列強から押し寄せ、国内は只ならぬ雰囲気になっている。もちろん、ヨーロッパ列強が狙っているのは考古学的価値のあるものばかりではない。一朝、皇室が崩壊し国内に混乱が生じれば、その気に乗じて国をのっとろうというのである。そんな雰囲気の縮図というべき国際色豊かな人の集まりが、村田の下宿に展開する。下宿を営むのはイギリス女性、そこに、モスリムの下男、トルコ生まれのギリシャ人の考古学者と、ドイツ人考古学者。下宿の外には各国、各人種の思惑が渦巻いているのだが、下宿の中は少しの文化的偏見を除けば、いたって平和、という雰囲気で描かれる。しかし、この展開に梨木香歩の優等生的希望が込められている、と見た方がよいだろう。 おそらく、この本を通して、梨木香歩は次のメッセージを残したかったのだ。「私は人間だ。およそ人間に関わることで、私に無縁なことは一つもない」。この言葉はテレンティウスという古代ローマの劇作家の言葉であるらしいが、自分の利害に関係しないことには目を向けない、というブルジョア的視点に対する批判の声がこの中にはあるように聞こえる。もちろん、それが前面に出ている訳ではないのだが、どうもこの作品の梨木香歩は、極端に言えば明治維新頃の国粋主義的なニュアンスが端々に匂わせる。もともと、彼女には、西洋的還元主義に対する不信感のようなものがあると感じていたし、この物語に限らず、科学が説明できないような世界を敢えて日常に持ち込んでくるという傾向もある。しかし、これまでは、自分の佇まいをしっかり保つための決意、といったものに過ぎなかったように思うのに対して、この作品ではもう少し能動的に、他への働きかけのようなものがあると思う。そこが、少し優等生的体臭を発することに繋がっている。 そこにさえ目をつぶれば、この作品全体の雰囲気はとても心地よい。特に、前半の何かを敢えて断定しない主人公の在りようも好感が持てるし、一つひとつの章に結論めいた(あるいは説教めいた)メッセージがなく、「不思議なことがあるものだ」式のまとまり方になっており、個人的には趣味である。後半、ややトルコに慣れて来た村田の言動に、倫理的な響きが強くなってくるのが、残念なのだけれど。

Posted byブクログ