村田エフェンディ滞土録 の商品レビュー
家守綺譚と繋がってるからってことで読み始めたのだけど、読んだあとのこの気持ちを上手く言い表す事が出来たならと思う。
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「エフェンディ」・・・「その国」では 「学問を修めた人物」に対する敬称のようなものであるという。 時は1899年(明治32年)、母国日本が 列強国間で繰り広げられていた争いの泥沼に 足を踏み入れつつあった頃、歴史文化研究のため 土耳古(トルコ)へ留学した「エフェンディ」村田の滞...
「エフェンディ」・・・「その国」では 「学問を修めた人物」に対する敬称のようなものであるという。 時は1899年(明治32年)、母国日本が 列強国間で繰り広げられていた争いの泥沼に 足を踏み入れつつあった頃、歴史文化研究のため 土耳古(トルコ)へ留学した「エフェンディ」村田の滞在記録。 彼の滞在した屋敷には、英国(イギリス)人の女主人の下、 土耳古(トルコ)人のムハンマドが働いていて、 村田と同じような学者達、 独逸(ドイツ)人のオットー、 希臘(ギリシア)人のディミトリスが滞在していた。 他の住人達の出身国から比べれば、 大きく発展が遅れた、貧しい日本で生まれ育ち、 今は少しでも祖国を豊かにしなくては、と思う村田。 ゲルマンの戦士のような「強面」だが、 本当は気の良い、やんちゃなオットー。 退廃的な滅びゆく自国の空気そのものをまとった 物憂げで思慮深いディミトリス。 「誇り高きムスリム」であり、その半生を 「奴隷」として生きているムハンマド。 生まれ育った環境も、 母国が持つ文化やその歩み(歴史)も違い、 それゆえに「与えられた視点」も大いに違った青年達、 そしてどの国も、当時直面していた問題 「今後、国際社会において自国はどのような方向へ 突き進んでいくのか」、そんな選択の岐路に 立たされていた時代に集まった青年達。 彼らは、一つ屋根の下で暮らし、 彼らの専門分野である歴史研究については勿論のこと、 国の在り方について、宗教について、 彼らの想いはぶつかり合う。 しかし、ぶつかり合いながらも、 彼らの前に築かれた、決して取り除かれる事はないであろう 垣根すらも乗り越えて、 その一方ではかけがえない友情を深め合っていく。 雪が降った日の朝、村田とオットーとディミトリスの 三人が屋敷の中庭で雪合戦をする場面がある。 私はその時の三人の、実に大人気ない、 はしゃいだ様子の描写が好きだ。 その時、己の立場や祖国が置かれている状況を 憂える事もなく、ただ笑いながら 友人達と雪の玉を投げ合っている。 それは彼らにとって、後僅かに残された 「愛しき日々」であったような気がするからだ。 その後に待っている彼らの運命を思うと、 幸福そうにじゃれ合っている三人の姿は切なく、 雪が束の間見せた幻のように儚く映る。 彼らの元で飼われ、色々な言葉を覚えた鸚鵡(おうむ)が 口にする言葉は、哀切極まる最後の場面において、 村田と読者の心に強く響き渡る事だろう。
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ああ、梨木さんだなぁっていう話。 最後の最後は家守奇譚とリンクしている。 ↓梨木さんの本 史実とでたらめ(フィクション)とが入り混じる。 さらにそこに、神様とか、霊的なものが混じる。 でも怖くはない。人間がいとおしくなる。 「私は人間である。およそ人間に関わることで私に無縁な...
ああ、梨木さんだなぁっていう話。 最後の最後は家守奇譚とリンクしている。 ↓梨木さんの本 史実とでたらめ(フィクション)とが入り混じる。 さらにそこに、神様とか、霊的なものが混じる。 でも怖くはない。人間がいとおしくなる。 「私は人間である。およそ人間に関わることで私に無縁なことは一つもない。」 ディミィトリス(セネカ)
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村田の書き留めた記録からは、 土耳古(トルコ)現地の香りがそのまま漂ってくるようだ。 滞土録には、土耳古での日常、不思議なものとの出会い、 友人との出会いが記されている。 私たちにすれば、どこかの誰かが経験した過去の記録にすぎないはず。 しかし、彼の言葉からはいつも本...
村田の書き留めた記録からは、 土耳古(トルコ)現地の香りがそのまま漂ってくるようだ。 滞土録には、土耳古での日常、不思議なものとの出会い、 友人との出会いが記されている。 私たちにすれば、どこかの誰かが経験した過去の記録にすぎないはず。 しかし、彼の言葉からはいつも本物を感じさせられた。 目の前に異国情緒漂う市がひろがり、 不思議な神像を手にしたり、鸚鵡(オウム)とやりあったり、 異民族の友と語り合ったり。 オットーが、ディミトリスが、ムハンマドが、 今ここで生きているかのように感じられた。 物語の後半。 戦争で終わりを告げる友情に、鸚鵡でなくても 「It's enough!」(もう、たくさんだ!)と叫びたくなった。 「私は人間だ。およそ人間に関わることで私に無縁な事は一つもない。」 と語った友人ディミィトリスの言葉が忘れられない。 彼の経験がすっぽり私の中に収まってゆき、 村田の感じた土耳古の空気を ちっぽけな我が家のいつもの布団の中で感じられるのが至福。 最後には胸が熱くなって、思わず涙がこみあげてきた。 ぜひ『家守綺譚』を読んでからお読みください^^
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家守綺譚とつながりのある作品ですが、こちらは物悲しさがあります。 でも、そこがたまらない作品です。
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私が大好きな本「家守綺譚」にちょいちょい出てきた友人の土耳古滞在の記録。昔の上にトルコに行ったことないから、情景がよく思い浮かばず、最初はもう読むのやめようかと思ったけど、途中からどんどん引き込まれる。異国情緒!そして、なんていうか、全体的に砂ぼこりが舞ってきそうな感じ。村田の異...
私が大好きな本「家守綺譚」にちょいちょい出てきた友人の土耳古滞在の記録。昔の上にトルコに行ったことないから、情景がよく思い浮かばず、最初はもう読むのやめようかと思ったけど、途中からどんどん引き込まれる。異国情緒!そして、なんていうか、全体的に砂ぼこりが舞ってきそうな感じ。村田の異国文化・思想にたいする戸惑いとかもおもしろいと思うけど、遺跡発掘とか埃及のアヌビス神・稲荷の狐・牡牛らの勢力争いとか心惹かれてしまうのだよ私。ギリシア世界について地中海を眺め「薄青の透き通った空の彼方から神々のサンダルの響きが聞こえてくるようだ」とか表現も素敵。
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明治時代、トルコに国費留学した村田。遺物を使って建てたらしい下宿の壁から何か出てきたり、日本人からもらったキツネの根付やエジプト帰りの人から預かった盗掘品が夜中にポルターガイスト現象?を起こす場面も。村田の、神ともあろうものが何故争うという主旨の台詞や、別の日本人の「いろんな神さ...
明治時代、トルコに国費留学した村田。遺物を使って建てたらしい下宿の壁から何か出てきたり、日本人からもらったキツネの根付やエジプト帰りの人から預かった盗掘品が夜中にポルターガイスト現象?を起こす場面も。村田の、神ともあろうものが何故争うという主旨の台詞や、別の日本人の「いろんな神さんがいるのがいいなあ。こう、複雑怪奇に絡み合っているのが」という台詞に同感。男っぽい文章。 2008/10/31 読了。
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読書感想文コンクールの課題図書でした。 静かに始まって、いつの間にか心にしみわたります。 文庫版が出ました。
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せつない せつないお話でした。私は好きでどっぷりはまって読み耽りました。 途中で「あぁ・・こうなるんだ」と最後が想像できるのですが、そこへの誘導のされかたが好きで最後はうるうるしてしまった。 マンガの「摩利と新吾」を思い出しました。これも最後泣けたんだよなぁ〜
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図書室の先生に進められて読んだ本。 この前作の「家守帰譚」も好きだったけれどこの本は本当に深く考えさせられた。しばらく腹の中にぐつぐつしたものがある感じだった。 ときどき振り返って読みたくなる本。
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