回転木馬のデッド・ヒート の商品レビュー
人か聞いた何気ない話を、自分が実際に見聞きしたかのような描写ととても村上春樹さんらしい表現で短編に纏められる技術がすごいなと感じました。 今は亡き王女のための 雨やどり この2つが特に好きでした。
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https://open.spotify.com/track/3Rx9Grnjc4InZdEyZ1nAhW Lootaというラッパーが曲のタイトルとして引用していて依然から気になっていた。本著は小説ではなく本人曰く小説のウォーミングアップとしてのスケッチ集。大筋は事実だけども多少脚色しているとのこと。タイトル作は冒頭でいきなり書かれていて、人生に対するこのアナロジーがすべてな気がする。 ー引用ー 我々は我々自身をはめこむことのできる我々の人生という運行システムを所有しているが、そのシステムは同時にまた我々自身をも規定している。それはメリーゴーラウンドによく似ている。それは定まった速度で巡回しているだけのことなのだ。どこにも行かないし、降りることも乗りかえることもできない。誰をも抜かないし、誰にも抜かれない。しかしそれでも我々は回転木馬の上で仮想の敵に向けて熾烈なデッドヒートをくりひろげているように見える。 他の話は居酒屋で聞く友人の不思議な話という感じ。80年代に本著がどのような認識で迎えられたか分からないけれど、今読むと日常にふと訪れる歪さを許容できるのかどうか、そういう感覚になった。 僕が好きだったのは「タクシーに乗った男」「今は亡き王女のための」「雨やどり」とくに「今は亡き王女のための」はお得意の生死&性の話でオモシロかった。この人の書くセックスにまつわる独特の乾いた感じって何なんだろうかと毎回思う。「雨やどり」も売春の話なんだけど人間の対価という話に落とし込んでいてセックスの話であることを忘れさせられる。内容はソフトだけど男根主義がそこはかとなく香る。これを「香る」と思うのか、「臭う」と思うのかで評価が分かれるのだろう。
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「ここに収められた文章は正確には小説ではなく、作者が人から聞いた話を文章にした事実である」。悲しい過去は時に赤の他人に吐き出してしまいたくもなるでしょう。でも、そんな黒歴史まで語っていいのでしょうか。
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古本屋でたまたま買った一冊。久しぶりの村上春樹。もちろん文体は著者のものだけど実体験を本に起こしているから私小説的な面白さがあった。プールサイドでの人生の折り返し地点の考え方はいいなと思う。終わりとか区切りを意識すると頑張りやすい。嘔吐1979の相手の自虐に対して「僕は言っていな...
古本屋でたまたま買った一冊。久しぶりの村上春樹。もちろん文体は著者のものだけど実体験を本に起こしているから私小説的な面白さがあった。プールサイドでの人生の折り返し地点の考え方はいいなと思う。終わりとか区切りを意識すると頑張りやすい。嘔吐1979の相手の自虐に対して「僕は言っていない。君が言ってるんだ」や雨宿りの「我々は多かれ少なかれみんな金を払って女を買っているのだ」のあたりは皮肉めいた事実でらしさを感じた。これからも時々著者の本を読みたい。
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生暖かさを感じた小説でした。 お洒落な生き方をすればお洒落な人に出会いこんなしゃれた話、雰囲気に遭遇できるのかなあ。 友達と話してるよりよっぽど小説なのに生暖かく、面白かったー。
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村上春樹さんの小説に対しての捉え方を少し知ることができて嬉しかった。 実体験に基づいたいろいろがかかれている。 内容をうっすらとしか思い出せないのが残念。 もう一度読み直したい。
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お勧めされて一気に読みました。 読み終わって、まず感じたのは、村上春樹という人の魅力を感じてファンになってしまった、ということでした。 全ての文章に無駄がなく、文章がとても綺麗です。 8話(8人が主人公の物語)の短編集で、村上氏自身が彼・彼女らと会話し話を聞く様子を描いています。...
お勧めされて一気に読みました。 読み終わって、まず感じたのは、村上春樹という人の魅力を感じてファンになってしまった、ということでした。 全ての文章に無駄がなく、文章がとても綺麗です。 8話(8人が主人公の物語)の短編集で、村上氏自身が彼・彼女らと会話し話を聞く様子を描いています。 主人公達と村上氏との会話形式で、たまに村上氏が感じたことなどが描かれていますが、それが聡明で真っ直ぐだと感じました。 別に容疑者でも何でもなくて最後何か罪を自白するわけでは全くないのですが…、昔あった古畑任三郎のテレビドラマを見ているようでした。 登場する8人は、それぞれがそれぞれの世界で生きており、別に村上氏へ強要したり自慢したりするわけではなく、ただ自分のことを語るのですが、人間臭いというか、人生って。。みたいな深みを感じます。そして村上氏の寄り添い方が良いです。 もし10代の頃にこの作品を読んでいたら、さらっと読み終わっただけだったかもしれませんが、大人になってある程度の年を重ねたあとに読むと色々なものを感じる作品だと思います。
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回転木馬なのにデッドヒート。タイトルのセンスが素敵。 冒頭で村上氏はBased on factsを強調しており、奇妙な話だったり人生が変わる体験には示唆や理屈など存在しないほうがリアルなのかもしれない。小説とは違って。 作品自体はいずれも好みだったが『レーダーホーゼン』が個人...
回転木馬なのにデッドヒート。タイトルのセンスが素敵。 冒頭で村上氏はBased on factsを強調しており、奇妙な話だったり人生が変わる体験には示唆や理屈など存在しないほうがリアルなのかもしれない。小説とは違って。 作品自体はいずれも好みだったが『レーダーホーゼン』が個人的好み。一人で生きていく決意はほんの些細な気付きなのかもしれない。
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村上春樹さんの決めつけない物の言い方すごく好きだな 責任を持って発言してるというか、すごく考えてるというか 単に頭が良いのかな ノルウェイの森のキズキとか他作品の主人公と村上春樹さん自身をどうしても重ねてしまう でもここに載ってる話は全然普通の人の普通の話じゃないと思う
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我々はそんな回転木馬の上で仮想の敵に向けて熾烈なデッドヒートをくりひろげているように見える。これは村上春樹さんにしか書き得ない文章表現でありキャッチコピーだと思いますよね。さまざまな人々の語る人生の物語には安易な答はないのでしょう。だから最後まで読んでも意味がわからなくても決して...
我々はそんな回転木馬の上で仮想の敵に向けて熾烈なデッドヒートをくりひろげているように見える。これは村上春樹さんにしか書き得ない文章表現でありキャッチコピーだと思いますよね。さまざまな人々の語る人生の物語には安易な答はないのでしょう。だから最後まで読んでも意味がわからなくても決してガッカリせずに唯々ラストの一文に漂う余韻を噛み締めて味わうべきなのでしょう。本書には所々に男女のセックスが描かれますが嫌らしくもエロティックでもなく淡々とした筆致です。これらの物語は読み手の年齢によって感想に違いがありそうですね。 『レーダーホーゼン』ドイツ旅行の妻に半ズボンを土産に頼んだ事が夫の一生の不覚。人生は誠に不可解ですね。『タクシーに乗った男』女の離婚の原因はやはり絵に描かれた見知らぬ男に魅せられた為でしょうね。『プールサイド』人生の折り返し点を過ぎた男の憂鬱。ビリー・ジョエル「アレンタウン」&「グッドナイト・サイゴン」『今は亡き王女のための』運命のすれ違い。『嘔吐1979』嘔吐と謎の電話。『雨やどり』さだの歌とは無関係な金で男と寝る女の話。『野球場』覗き男の罪悪感。『ハンティング・ナイフ』男の夢判断の結果を知るのが怖い。
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