回転木馬のデッド・ヒート の商品レビュー
村上春樹のフィルターを通すとどこまでが事実でどこからが物語なのかわからなくなる。 事実は時として小説よりも奇なりとはこんな物語のことをいうのかもしれない。
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村上春樹さんの中では異色の”小説” とりたてて騒ぐほどの大事件じゃないけれども、自分史の中では何故か忘れられない出来事。 人から聞いたそんな出来事を、著者が小説調に仕立て上げたもの。 アイデアの源泉が村上さんではないので、ついバーで隣になった人と、小洒落たたとえ話をしているうちに...
村上春樹さんの中では異色の”小説” とりたてて騒ぐほどの大事件じゃないけれども、自分史の中では何故か忘れられない出来事。 人から聞いたそんな出来事を、著者が小説調に仕立て上げたもの。 アイデアの源泉が村上さんではないので、ついバーで隣になった人と、小洒落たたとえ話をしているうちに寝ちゃうみたいなウルトラCな村上節は息を潜めている。だが、そこがいい。 誰かの経験という”事実”に基づいているので、不思議な出来事も妙に説得力を持つ。 特に理由はない。 だけど、なんか無性にそういうことしたくなること、ない? そんな9つの人生の一瞬。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
作者が人から聞いた話を再構築した短編集。 断片的で抽象的(に感じる)ので、今のところ好きとも嫌いとも、面白いとも面白くないとも思わずに流し読みしています。 ただ、『今は亡き女王のため』という、ほんの20数ページの文章があまりに春樹的だったので、メモ。 「彼女は僕のペニスのことを考えていた。彼女の考える僕のペニスはまるで僕のペニスではなく、誰か他のペニスのように感じられた。・・・中略・・・僕は彼女のスカートの中の小さな下着と、その中に包まれたあたたかなヴァギナのことを考えた。」 「我々は喫茶店を出て夕暮れの街をしばらく歩き、地下鉄の駅の近くにある小さなバーに入った。いつもの行きつけの店らしく、彼はカウンターの端に座ると手馴れた口調で大型のグラスに入れたスコッチ・ウイスキーのダブル・オン・ザ・ロックとペリエの瓶を注文した。」 ペニスと、ヴァギナと、バーと、ウイスキー。 ああ、村上春樹ですね、という気持ちになりました。とりあえずのメモです。
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9つの短編集。作者自身の体験(つもったおり)が文章として表現されている。相手から伝えられた言葉を再構成し、現代の奇妙な空間を描く。
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入り込むのにちょっと時間がかかるが入ってしまうとするする~って一気読み。実態のないような、あるような不思議な内容でおもしろかった。
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短編集。ノンフィクションに限りなく近いフィクション。「プールサイド」の、人生の折り返し地点の自覚は、あと10年くらいしたら自分にも訪れるだろう。老いと残り時間の自覚。「嘔吐1979」は、タイトルも内容も不可解で、その不可解さに猛烈に引き込まれた。どの物語も、村上氏が実際に人から聴...
短編集。ノンフィクションに限りなく近いフィクション。「プールサイド」の、人生の折り返し地点の自覚は、あと10年くらいしたら自分にも訪れるだろう。老いと残り時間の自覚。「嘔吐1979」は、タイトルも内容も不可解で、その不可解さに猛烈に引き込まれた。どの物語も、村上氏が実際に人から聴いた話を元にしているとのこと。誰かと会って、話を聴きたくなる一冊。
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村上氏のまわりで起こった さまざまできごと。 それをスケッチしています。 大学の合宿で 雑魚寝をしていて思わず とても魅力的な女性と・・・・というのは、 なんかありえそう。
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この作品は他の作品と違い、村上春樹自身が出会った人から聞いた話をそのまま書いた話の内容だった。 確かに話の内容は普通といえば普通なのだが、やはり小説と同じく村上春樹らしい言い回しなので、すごく雰囲気も出ているし、春樹ワールドという感じがした。 この人は、実話を書こうが空想の話を書...
この作品は他の作品と違い、村上春樹自身が出会った人から聞いた話をそのまま書いた話の内容だった。 確かに話の内容は普通といえば普通なのだが、やはり小説と同じく村上春樹らしい言い回しなので、すごく雰囲気も出ているし、春樹ワールドという感じがした。 この人は、実話を書こうが空想の話を書こうが、読み物としての変わらなさがあるので、実際どういった内容を書こうが、村上春樹が好きな人は好きなんじゃないかと思った。 ほんとすっかり、村上春樹にハマっている自分がいて、時々どうしたおれとか思ってしまうw
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私は、なぜだか闇雲に、 この人の言うことはとりあえず肯定的に受け止めてみる、というスタンスの元、この人の本を読んでいる。 まぁさ、小説なんて、作家が生み出したものをどう受け取るかなんてこと自体が、読み手にゆだねられているのだから、 肯定的に受け止めてみるも何もあったも...
私は、なぜだか闇雲に、 この人の言うことはとりあえず肯定的に受け止めてみる、というスタンスの元、この人の本を読んでいる。 まぁさ、小説なんて、作家が生み出したものをどう受け取るかなんてこと自体が、読み手にゆだねられているのだから、 肯定的に受け止めてみるも何もあったものではないのかもしれないけれど、 たとえばなんだかよく分かる。 半ズボンのせいで離婚した母親の心境だとか、 タクシーに乗った男にまつわる話だとか。 何気ない日常の一コマを、いつも通りインプットしたはずなのに、 出てきたアウトプットがとんでもないものであることがあるという現実、みたいなものに、 わたしはとても、親しみを覚える。 いや、覚えちゃいけないのかもしれないけどさw 「え?なんでそうなるの?」という回答に行き着いてしまうことが、わたしにはままあることで、 「いや、よくわからないんだけど、私の身体が否定してるんだよ。」とか、 「自分の中ではつじつまがあってるんだけど、それを周りに説明するだけの自分の思考回路のパターンについての言葉が欠落している感覚。」 そこで覚えたいのは、「わたしだけじゃないんだ。」という安心感などではない。 この不自由な感覚を、一体自分はどのように処理していったらいいのかわからなくて途方にくれる感覚を、 呼び覚まされる気がして、 胸が苦しくなる。 その昔、「村上春樹、好きだよ!「回転木馬のデッドヒート」が一番好きかな。」といった男がいた。 彼はなぜ、この本を選んだのだろう。 あらかた本を読まぬ人間は「読んだことのある本」を「たくさん読んだ中でのベスト」とする傾向があるのはさておき、 もしそれが本当に、「たくさん読んだ村上春樹作品分のベスト」であるのなら、 私は今、彼にその真意を確かめたい気でいっぱいなのです。
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すごいなあ、なにかいてもおもしろいんだもん、すごいなあ、ほんとに。作品群のなかではかなり異色だとおもうけど、容れ物は小説のときと変わらなくて、でも中身が全然違う。違うんだけれども、技術の面で似ているから、なんかもう境目も曖昧で、不思議なかんじ。無駄がなくて過不足がなくて、穏やかで...
すごいなあ、なにかいてもおもしろいんだもん、すごいなあ、ほんとに。作品群のなかではかなり異色だとおもうけど、容れ物は小説のときと変わらなくて、でも中身が全然違う。違うんだけれども、技術の面で似ているから、なんかもう境目も曖昧で、不思議なかんじ。無駄がなくて過不足がなくて、穏やかで確実な文章という完璧な容れ物に入った、個人個人のフィクション。なんだかほんとうの話とは思いきれない部分もあったけれども、小説よりももしかしたら面白いかもしれない、というくらい、興味深い内容のもの。人間が突如として泣いたり、何かに苛まれたり、孤独を感じたり、そういうものって誰にでもあることで、その多様だけれども避けられない、生きることそのものの意味とまではいかないけれども、生きる上で出会わざるを得ない感情というか、そういうものを個人的にかいてはいるんだけれども極度に引き伸ばして普遍化しているのかなあ。
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