一千一秒物語 の商品レビュー
☑一千一秒物語 ☑黄漠奇語 ☑チョコレット ☑天体嗜好症 ☑星を売る店 ☑弥勒 ☑彼等 美のはかなさ ☑A感覚とV感覚 解説 松村実
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類い稀なる作家 表題作『一千一秒物語』は星と月と宇宙の物語。 句読点はなく、一文字明けることで詩のような体裁になっている。 お月様を食べてしまったり、流星と格闘してみたり、不思議な世界が広がっていく。 一個の星のようなショートショートが集まって、遠くから見るとそれが銀河となってい...
類い稀なる作家 表題作『一千一秒物語』は星と月と宇宙の物語。 句読点はなく、一文字明けることで詩のような体裁になっている。 お月様を食べてしまったり、流星と格闘してみたり、不思議な世界が広がっていく。 一個の星のようなショートショートが集まって、遠くから見るとそれが銀河となっているように、広く、果てなく、物語という宇宙ができている。 叙情的ながら一種のニヒリズムをも内包する、不思議な世界観だ。 クラフト・エヴィング商會が実際にここからとって名づけたという『星を賣る店』。 本書にはその元の『星を売る店』が載っている。 個人的なイメージとしては、表題作の方がよりクラフト・エヴィング商會の世界観に近い気がする。 黄漠奇聞は、砂の王国にまつわる昔語り。 今は昔、星を疎かにする王がいた。 そんなものと一笑に付した王と、その王国は......。 優秀な人物をなくし、国を滅ぼし、辿り着いた先はどこだったか。 絶望的な結末ではあるが、おとぎ話の持つ美しさが蜃気楼のように物語を覆い尽くし、悲惨さは無い。 心動かされる物語だ。 『A感覚とV感覚』 一体これがどんな感覚なのか。 考察を進めていくうちに全ての物事がこの二つに集約し、そして一元的になっていく様は思考に寄る壮大な実験、ゲームである。 エロスを語れば語るほど、異なるもの同士が実は大変に近しいと知る。 それにしても、この幻想的な世界観と現実の肉体感覚がうまくまじっている。 この混合が巧みな稲垣は全くもって希有な作家である。
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先日林海象氏の「彌勒 MIROKU」を観て、原作も読みたくなったので図書館にて拝借。うわぁ難解!でも映画のおかげでイメージのみで読み進めました。
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童話的な作風の中に男性っぽいぶっきらぼうさがある。塀から身を乗り出して星を盗んでいたら肩を叩かれて、振り向いたら月が睨んでいた、とかそういうの。星と花とリボンもいいけれど、酒場で月と取っ組み合って喧嘩するのもロマンのひとつ。
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稲垣足穂、著。ショートショートのような詩的断片「一千一秒物語」の他、「黄漠奇聞」「チョコレット」「天体嗜好症」「星を売る店」「弥勒」「彼等」などの短編、「美のはかなさ」「A感覚とV感覚」の二つのエッセーを収録。 非常に衝撃を受けた。まず、星や月に対するほとんど性欲のような嗜好...
稲垣足穂、著。ショートショートのような詩的断片「一千一秒物語」の他、「黄漠奇聞」「チョコレット」「天体嗜好症」「星を売る店」「弥勒」「彼等」などの短編、「美のはかなさ」「A感覚とV感覚」の二つのエッセーを収録。 非常に衝撃を受けた。まず、星や月に対するほとんど性欲のような嗜好を感じる。加えて何となく江戸川乱歩のような、大正時代あたりのロマンチックでモダンな空気が充満している。そして何より言語感覚が尋常ではない。特に表題作に顕著だが、目の焦点が合っていないような異様な文体だ。これは書こうと思って書けるものではないだろう。正直、著者の頭がおかしかったとしか思えない。 その頭のおかしさの中身らしきものが後半のエッセーでは解説されているようだが、難解すぎて歯が立たなかった。この二作品を完璧に理解できる人は果たしているのだろうか。私がこれらを読んで感じたことはただ一つ、やはり本というものにはまだまだ理解不能・分析不可能な領域が存在している、ということだ。
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読了せず。 よく聞くものと、読みやすい文体の物を、かいつまんで読んだ程度。 「タルホ的」な物を読んだことはあっても本家は読んでいたかった故。
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一ヶ月くらいかかって読み終わりました…長かった。 何が長かったって、「コイツを読む!」って意気を充填するのにやたらと時間がかかり、さらにインターバルも挟みつつだったので、読了するまでの時間がとにかく長くかかりました。 又吉がむさぼり読む新潮文庫〜といった企画があったので、 その...
一ヶ月くらいかかって読み終わりました…長かった。 何が長かったって、「コイツを読む!」って意気を充填するのにやたらと時間がかかり、さらにインターバルも挟みつつだったので、読了するまでの時間がとにかく長くかかりました。 又吉がむさぼり読む新潮文庫〜といった企画があったので、 その機会に手に取った一冊なんですが、いかんせん難しい…。 序盤の幾つかは本当に雰囲気が好きで、文字を手がかりに情景を必死にイメージしながら読んでたんですが、中盤〜終盤にかけてはとてもその作業が追い付かない状態でした。 なので星は付けられません、さすがに今回は。 しかし、幻想的な空気と古めの文体が絶妙にマッチしていて、 これはいつか読み直したいなぁ、と思えました。 いずれ再挑戦します!
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キネオラマ的世界観が好きな人には一千一秒物語はどストライクの作品かもしれない。 キネオラマとは? 〔和 kinema+panorama〕明治時代の興行物の一。パノラマの背景・点景などを色光線の照明によって種々に変化させて見せる装置。 こういう仕掛けを伴ったミニチュアの中では、...
キネオラマ的世界観が好きな人には一千一秒物語はどストライクの作品かもしれない。 キネオラマとは? 〔和 kinema+panorama〕明治時代の興行物の一。パノラマの背景・点景などを色光線の照明によって種々に変化させて見せる装置。 こういう仕掛けを伴ったミニチュアの中では、想像力は自由に羽ばたくことが出来ない。圧縮されて押し込められた想像力が、キネオラマの暗い影の中でシューっと花火のように美しく爆発する様はそれこそ滑稽で素晴らしいと思う。
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『草子ブックガイド』でこの本が出ていて、古書店で入手。 昭和四十五年の三刷。 今手に入る新潮文庫とは、表紙も違う。 何よりも、活字が小さい! それはさておき、初めてのタルホ・ワールド。 「一千一秒物語」「黄漠奇聞」から「星を売る店」あたりまでは、ファンタジーとして楽しく読んだ。...
『草子ブックガイド』でこの本が出ていて、古書店で入手。 昭和四十五年の三刷。 今手に入る新潮文庫とは、表紙も違う。 何よりも、活字が小さい! それはさておき、初めてのタルホ・ワールド。 「一千一秒物語」「黄漠奇聞」から「星を売る店」あたりまでは、ファンタジーとして楽しく読んだ。 昭和初期のエキゾチックなモダン文学の雰囲気を堪能した。 しかし、「弥勒」の途中あたりから、ページ数でいうと200ページあたりから、ちっとも前に進まなくなった。 同じところばかりを気づかずに読んでいたり・・・ 正直言うと、しんどかった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
幻想的でありながらどこかに存在しそうな「星を売る店」の舞台の雰囲気が良かった 「彼等」での美少女、美少年の描写の仕方も好き 「弥勒」の第二部の主人公の精神論や生き方については正直、ものは言いようだなと思わないこともないけれど、あのような体験があったからこそこういった不思議だけど興味をひかれる作品が書けたのだろうかと考えたり…… 「美のはかなさ」の哲学的思考や表現等後半の作品には特に難しい部分も多かったけれど、著者独特の感性に触れられる面白い本だった
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