1,800円以上の注文で送料無料

一千一秒物語 の商品レビュー

3.7

88件のお客様レビュー

  1. 5つ

    19

  2. 4つ

    19

  3. 3つ

    28

  4. 2つ

    3

  5. 1つ

    1

レビューを投稿

2023/10/23

いたんですよね、不思議な文章を書く先輩が。訳が分からないけれど印象的だったその文、ここにルーツがあったのでした。そうかー、あの人、あの頃から読んでいたんだ。 夭折した画家・有元利夫さんに、版画集「一千一秒物語」があります。この世界観が捉えられています。

Posted byブクログ

2022/06/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「一千一秒物語」は素直に感動した。何というか、安部公房的では全然ないんだけど、僕の中で2人はかなり特殊な位置付けにいる、という点では似てるかもしれない。というか僕が詠む短歌の目指すテイストは既に「一千一秒物語」の中で完結しているのかもしれない。 「黄漠奇聞」はボルヘスの『アレフ』に入っていてもまったく違和感のないくらい、非日本文学的というか、国内には他に類を見ない作風。ボルヘスのことは知っていたのだろうか?もしかしたらこの2人も近い場所を目指したのかもしれない。 「チョコレット」が最高。ムーミンっぽさもあるなあ。上の作品たちもそうだけど、「詩の言葉」で小説が紡がれてる。この感覚が気持ちいいという点では村上春樹的なのかなあ。もし僕が同じ設定で「チョコレット」の物語を書くなら、グッドフェロウが変身したチョコレットのようなものを主人公に食べさせていたと思う。 「星を売る店」も魅力的ではある。だけど実はこの辺から文章が難しくなってきて、ちゃんと小説らしい小説の文体になってしまったから少し残念だった。この話に出てくるようなコンペイ糖を口に入れたらたちまち理解できるようになるのか知ら。でもそれじゃ魅力が消えてしまうかも。 「弥勒」は、五十六億年後の未来都市に弥勒菩薩が下生する話かと思ったら、ぜんぜんそうではなかった。登場人物も入り組み始めてくる。 「美のはかなさについて」と「A感覚とV感覚」なんかは、(特に後者は)文は読めても彼の思想が分かることは正直なかった。だけど、彼なりの美学や理念みたいなことが熱を持って語られているのは良かった。そういう強い考えみたいなのがないと、ここまでの文章は綴れないと思う。

Posted byブクログ

2021/09/03

後半の評論的な話で、段々と一千一秒物語が意味づけされていくのが良かった 現実世界に当たり前のように宇宙が存在する世界は、性的衝動だったり郷愁を含めた深層にある欲求が表出したもので、そういう点でシュルレアリスムと並ぶ作家のように思った 話の展開はその当時流行っていただろうスラ...

後半の評論的な話で、段々と一千一秒物語が意味づけされていくのが良かった 現実世界に当たり前のように宇宙が存在する世界は、性的衝動だったり郷愁を含めた深層にある欲求が表出したもので、そういう点でシュルレアリスムと並ぶ作家のように思った 話の展開はその当時流行っていただろうスラップスティックコメディ映画調 シュルレアリスムもスラップスティックコメディもサイレント映画時代の話なので、映画好きだったんかなあと 戦争中に近くにあった桃型の尻で気をそらしながら恐怖経験を耐えたことがきっかけで、PTSD的な発作を直す時に桃型の尻のイメージが浮かぶようになったっていうエピソードが、この超現実的かつちょっと馬鹿馬鹿しい世界観を象徴するもののように思えた 部屋の中に入ってきた月は桃型の尻だったのかもしれない

Posted byブクログ

2021/06/07

短編9つ。「一千一秒物語」ショートショート。月が頻繁に出てくる。アンデルセンの「絵のない絵本」を思い出した。哲学的な内容が多く、文章も読みづらく何度か挫折しかけた。2021.6.7

Posted byブクログ

2020/07/26

ハイデガーを読んでいる時のイライライライラする感じを思い出していたら「ハイデッガー」を引用しだして勘弁してくれとなった 「デジャブ」だの「ニヒリズム」だのを思い起こさせるような文章 狐につままれたか煙に巻かれたるような感じ

Posted byブクログ

2020/02/06

稲垣足穂 「 一千一秒物語 」表題ほか短編集。 読み手の時間感覚を解放するのがうまい。時系列より永劫回帰(同一の状態を永遠に反復) を重視している〜一つのシーンで 一人の人間の現在と幾世紀後の姿を描いたりする。 著者が「六月の夜の都会の空」と表現した 宇宙的郷愁(都会的、世...

稲垣足穂 「 一千一秒物語 」表題ほか短編集。 読み手の時間感覚を解放するのがうまい。時系列より永劫回帰(同一の状態を永遠に反復) を重視している〜一つのシーンで 一人の人間の現在と幾世紀後の姿を描いたりする。 著者が「六月の夜の都会の空」と表現した 宇宙的郷愁(都会的、世紀末的、未来的な情緒)が 時間感覚の解放に役立っている。 理解できたか不明だが、短編小説「弥勒」 エッセイ「美のはかなさ」は 面白い。有名な「一千一秒物語」は 擬人化した月や星をどう捉えるのか わからなかった。 弥勒は 著者の自伝的要素(貧乏地獄経験と終末思想)が面白い。貧乏地獄に耐えるための名言も多い。美のはかなさは 美の壊れやすさをテーマとしたエッセイ。 名言「美は一切か無かの性格を持つ〜完成されたものは さらに手を加えると 元も子もなくなる際どさを持ち〜積み上げでなく不可解な創造的飛躍によって出来ている」 貧乏地獄に耐える名言 *手段が尽き果てた時こそ 人間は最もよく生きている *物質、精神とも 常に最少限度にとどめる習慣をつけること。とどめるべく絶えず念じる 美の はかなさ 美的なもの=はかなさ+虚無性 *美的なものの壊れやすさ *美的なるものは 極端に傷つきやすい瞬間的な体験の中にある *美しきものは 全く現象である 一千一秒物語の世界 *「月から出た人」から 始まる創世記のような童話 *物語が 目的や時間感覚を持たない カオスな構造 *人間の理想としての 擬人化した月や星 *宇宙の原理に支配された人間 六月の夜の都会の空とは *宇宙的郷愁、永遠癖、奇異な郷愁的翳り *都会的、世紀末的、未来的な情緒 *ここにいることは実は昔では? *一瞬に幾世紀を飛び越えて 未来にいるのでは? *ここは地球でなく 他の星では? ★六月の夜の都会の空 *飛行士を目指して上京した最後に見た夜景。どこでもない所へ遠ざかりつつある大都の夜の雰囲気 *全ての事物と自分が 無関心の中に沈みこんで 何もかもが 何処でもない所へ遠去かりつつある雰囲気 *構築物も群衆も自動車の列もすでに無限へと拡大し、吾人の観たる夜の都会は透明にして、只エーテルが立体的存在の虚空に投影せる七色のファンタジーのみ

Posted byブクログ

2022/09/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

月光のワルツと、シガレットの香り。 あの世界史レベルで有名な幻想譚『千一夜物語』、アラビアンナイトと関係があるのかないのか分からないけれど、『一千一秒物語』はとにかくヘンテコな物語だ。月と星をテーマにした幻想掌編小説集…と言ってみても、全然説明した気がしない。 おとぎ話の絵本みたいに幻想的だが、メルヘンというには少しヤンチャが過ぎるような気もする。ピストルをぶっ放してお月様を撃ち落としたり、流れ星と取っ組み合いの喧嘩をしたり、月の光で密造酒を作ったり…。サイレント時代のキネマみたいなドタバタ劇が繰り広げられたかと思えば、こんな詩が混ざっていたりもする。  お月様でいっぱいで  お月様の光でいっぱいで  それはそれはいっぱいで……   (A CHILDREN'S SONG) 月光を受けて煌めくビール瓶の破片、理科室に置き去りにされた年代物の天球儀…。そんな風に、この作品に触発された断片的なイメージでしか、内容を語ることができないのがもどかしい。タルホ・ワールドを語るには、私はまだまだ夢を見足りないようだ。 案外、子どもの方がタルホおじさんとすぐ仲良くなれるのかもしれない。「お月様とけんかした話」を小学生の息子に読んでやったら大笑いしていた。ルビのふられた児童版の出版が待たれるところである。 ☆彡

Posted byブクログ

2018/12/31

黄漠奇聞はすき。最後の「私」は犬だと思ってる。軍用犬。風のささやきは人間には判らぬ言葉って冒頭にあるから。はじめは馬かと思ったけど、自動車隊に馬はいないだろうし。表題作は星も月もけんかっぱやくてちょっとわらった。再読するとしたら自分の場合、黄漠奇聞だけになってしまいそうな予感。

Posted byブクログ

2018/08/20

稲垣足穂は若いときに飛行家志望であったそうだが、足穂のショートショートは広い空の世界でいっぱいだ。 月や流星をちゃかし、派手に格闘したり襲われたりと、まるでドタバタコントのようで笑ってしまう。 空に相当な憧れを抱いていたのだろうか。 遠い空に存在するモノと喧嘩してても、仲の良い...

稲垣足穂は若いときに飛行家志望であったそうだが、足穂のショートショートは広い空の世界でいっぱいだ。 月や流星をちゃかし、派手に格闘したり襲われたりと、まるでドタバタコントのようで笑ってしまう。 空に相当な憧れを抱いていたのだろうか。 遠い空に存在するモノと喧嘩してても、仲の良い悪友であるかのように身近な遊び相手になってしまっている。 地上に住んでいても足穂は、お月様と“ため口”で言葉を交わせるのだから羨ましい。

Posted byブクログ

2018/05/01

この小説は9つの話が書かれてます。中には難解なのもあってなかなか読み進められなかった。 特に楽しく読めたのは黄漠奇聞、チョコレット、星を売る店。美のはかなさは難解だったが、芸術に対して、なるほどと思う箇所有り。 A感覚とV感覚に関しては読む前から何となく卑猥な感じが有り、まさに予...

この小説は9つの話が書かれてます。中には難解なのもあってなかなか読み進められなかった。 特に楽しく読めたのは黄漠奇聞、チョコレット、星を売る店。美のはかなさは難解だったが、芸術に対して、なるほどと思う箇所有り。 A感覚とV感覚に関しては読む前から何となく卑猥な感じが有り、まさに予想的中(笑) 他の作品は印象に残らなかった。 全体的には面白いと思うので、更なる理解を深めるために、また再読したい小説ではあります。 この小説自体が文字も含めて芸術のような感じがした。小説という概念は捨てた方が良いです。(笑) 難解だった面もあって☆3つにしました。

Posted byブクログ