あなたの人生の物語 の商品レビュー
◆バビロンの塔 ネビュラ賞を受賞したデビュー作だそうです。聖書でおなじみのバベルの塔が題材。大気圏を突き抜けて月や太陽よりも高い(長い?)塔の建設の話。とても牧歌的な雰囲気のお話です。メビウスの輪…ですね…。 ◆理解 「アルジャーノンに花束を」みたいなお話。話が終わりに近づく頃...
◆バビロンの塔 ネビュラ賞を受賞したデビュー作だそうです。聖書でおなじみのバベルの塔が題材。大気圏を突き抜けて月や太陽よりも高い(長い?)塔の建設の話。とても牧歌的な雰囲気のお話です。メビウスの輪…ですね…。 ◆理解 「アルジャーノンに花束を」みたいなお話。話が終わりに近づく頃には主人公がものすごく頭がよくて、おまけにもう1人主人公よりも頭の良い人物が出てきて…ついていけません。 ◆ゼロで割る 1=2を証明してしまった数学の教授を妻にもつ夫の話。探究心もほどほどにという事でしょうか。 ◆あなたの人生の物語 女性の一人称で語っているというのもあるのだろうけど…著者って男性よねと思わず名前をしげしげと見てしまった。ネビュラ賞受賞の表題作。 「見るため」「観察するため」に地球にやってきたエイリアンの言語を解読するうちに人生先取りととでもいうのかな、不思議な(?)体験をする女性の話。 ◆七十二文字 「鋼の錬金術師」か「スチーム・ボーイ」の世界でしたね。私の頭の中は。 人類科学の進化 スギモト遺伝子療法で超人類を可能にしたテクノロジーの話。短編じゃなくショート。 ◆地獄とは神の不在なり 天使が降臨し、様々な災厄や祝福をもたらす話。 これを読んでいる最中に「あなたは神を信じますか?」な方達の訪問を受けた。悔い改めよということか。なぜ私が複雑な顔で応対していたかは彼女達にとって永遠の謎だろう。えー、ウチは敬けんな浄土真宗の信者なので…と言ってお引取り願った。 ◆顔の美醜について-ドキュメンタリー ある大学で、カリー(美醜失認処置)を必要条件にしようとし、投票までのさまざまな論争を記録した話。恩田陸さんの「Q&A」を思い出した。 カリーを受けることによってものすごい美形もそうじゃない顔も全て平均化して見えてしまう。みんな一緒な顔に見えてしまうなんてつまんな~いよね。 2006年4月12日
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映画化されたことを知らずにチョイス、このあなたの人生の物語は読み終わった後にキーポイントに気づいた。映画見てみたい。他の作品もよかった。
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あまりにも有名なタイトルなのでようやく。とはいえ「バビロンの塔」がいまいちだったのでそれと表題作だけです。 先に映画「メッセージ」も観ていたので読みやすかった、というかあの映画がかなり行間を補完していて優秀だったのだな、とわかったので、小説を先に読むか順番はともかく、両方触れておいて損はない。 光の振る舞いも規定している量子宇宙論の世界では時間は未来から過去に流れているという説もあるらしい。現代脳科学では人間に自由意志があるのかどうか、かなり危ぶまれているらしい。未来が決定されているのなら、我々の「選択」にはどんな意味があるのか。我々の尊厳についてどう考えればいいのか。 それについての1つの回答だと思いました。
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SF短編集。 映画「メッセージ」のなかなか深い世界観がよかったので、原作も読んでみようと思って。 著者はアメリカ人だが、中国系移民の子息だという。 著者のデビュー作でもあるらしい冒頭の「バビロンの塔」は、映画「メッセージ」とも近い、時空を極めて行くと元いたところに繋がってい...
SF短編集。 映画「メッセージ」のなかなか深い世界観がよかったので、原作も読んでみようと思って。 著者はアメリカ人だが、中国系移民の子息だという。 著者のデビュー作でもあるらしい冒頭の「バビロンの塔」は、映画「メッセージ」とも近い、時空を極めて行くと元いたところに繋がっているというテーマか。太極(大いなる極みはつまり無窮に通じる)や陰陽(陽は陰を生み、陰はまた陽を生む)といった中国的思想を反映しているのかも。 表題作で、映画の原作となった「あなたの人生の物語」は、映画と違って(映画はやっぱりアクション要素も必要だろうしね)、過去・現在・未来がただそこにあるものとして描かれている。独特の寂寥感が意外と心地よかった。 一方、「名辞」で泥人形を操る(「七十二文字」)、天使(神)の実在(「地獄とは神の不在なり」)、美醜失認処置(「顔の美醜について」)など、著者独特の世界設定による作品は終止違和感があった、というか気持ち悪かった。こちらは一神教的価値観に楔を打ち込んでいる・・・と思うのはカンタンすぎる解釈だろうか。 著者はまた、物理学やコンピュータ科学の学位を持っているという。SFも「空想科学小説」の枠を超えて、こうした専門知識なくしては描けなくなっているジャンルなんだろうな。
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長いこと積読していたが、映画公開前にと思い読む。寡作で知られる著者なので、これまで短篇を一度読んだきり。(たしか「息吹」だったかな?)表題作がやはり良かった。ヘプタポッドたちとのコンタクト部分と、娘への語りかけ部分。一見関係のない話が交互に展開していく上に時系列が前後しながら収束...
長いこと積読していたが、映画公開前にと思い読む。寡作で知られる著者なので、これまで短篇を一度読んだきり。(たしか「息吹」だったかな?)表題作がやはり良かった。ヘプタポッドたちとのコンタクト部分と、娘への語りかけ部分。一見関係のない話が交互に展開していく上に時系列が前後しながら収束していく。混乱しがちだけど、これは主人公のルイーズがヘプタポッドの言語を習得したからなのかな?と感じた。あくまで異星人とのコンタクトは調味料で、この物語を引き立たせている。映画がとても楽しみ。そのほかは「七十二文字」が好み。
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イーガンと並ぶほどハード。科学に特化されているぶんまだ分かりやすい。女性的センチメンタリズムがとてもうまい。認識が現実に浸透してくるという共通作風は確かにそうだ。ある種のスチームパンクである「72文字」などはサスペンスやアクションすら内包しているのだから、十分に長編化できるのに、...
イーガンと並ぶほどハード。科学に特化されているぶんまだ分かりやすい。女性的センチメンタリズムがとてもうまい。認識が現実に浸透してくるという共通作風は確かにそうだ。ある種のスチームパンクである「72文字」などはサスペンスやアクションすら内包しているのだから、十分に長編化できるのに、なぜあえての短編なのだろう。登場人物も訳ありで魅力的なのに。いくらでも長くできそうだし。商売っけが希薄なのだろうな。 とにかく自分のこの十年で最大の重要作品集になったのは間違いない。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
表題作はヴィルヌーヴの「メッセージ」の原作.原題は「Story of your life」だが,映画では敢えてタイトルを変えたうえで(映画の英語タイトルもArrivalで小説のタイトルとは異なる)時系列もさらに分かりにくくしているようだ.小説では宇宙船がなぜ地球に現れたのかは全く書かれておらず,彼らは謂わば狂言回しの役割のまま.逆に映画の方では省かれている小説内の設定は,時間に関する(あるいはそれ以外についても)微分的感覚と積分的感覚と彼我の差である. 非常に寡作の作者らしく,20年で書かれた中短編の大部分をかき集めて編纂されて出版された本書だが,どの話も佳作揃いである.中でも一番驚いたのは「七十二文字」.呪文の書かれた紙を埋め込むことで物体を動かすという技術が発達している,おそらくビクトリア朝のイギリスが舞台で,設定だけを書くとスチームパンクっぽいのだが,ああいう落とし方をするとは.
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SF短編集。各方面で絶賛されていて、SFが苦手な自分でもさすがに楽しめるだろう、ってことで入手。結論。つくづく自分にはSFが合わないんだな、ってこと。一番好きだったのは、最後の美醜判定にまつわる物語。でも裏を返せば、これが一番SFぽくないから、っていう見方も成り立つ。収録作の中で...
SF短編集。各方面で絶賛されていて、SFが苦手な自分でもさすがに楽しめるだろう、ってことで入手。結論。つくづく自分にはSFが合わないんだな、ってこと。一番好きだったのは、最後の美醜判定にまつわる物語。でも裏を返せば、これが一番SFぽくないから、っていう見方も成り立つ。収録作の中では一番長いし、タイトルにもなっているくらいだから、目玉は表題作なんだろうけど、二人称と一人称のパートを順繰りに進行させる、っていう趣向は気に入ったけど、ラストもそこまでのめり込めなかった。慣れればもう少し親和性も出てくるんだろうと思って、なるべく意識的にSFに触れるようにしているんだけど、さすがにそろそろ限界かも。
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難解でした。ミステリを読んでるといわゆる落ちというか結末を期待してしまう身体になっていて、これってどういう面白さなんだろうと考えてしまう。素直に世界観を楽しめばいいんですけどね。と思い直した最後の2篇は面白かった。
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本は、作者や編集者の意図がありなんと、短編集でも順番通りに読むが、今回は気になるものから読んだ。 面白かったけど、難解な内容で疲れてしまい、全作品は読み切れなかった。 読んだ順番どおりに書く。 ■あなたの人生の物語 映画も気になったが、まず原作から。 これは面白い!映画も後で...
本は、作者や編集者の意図がありなんと、短編集でも順番通りに読むが、今回は気になるものから読んだ。 面白かったけど、難解な内容で疲れてしまい、全作品は読み切れなかった。 読んだ順番どおりに書く。 ■あなたの人生の物語 映画も気になったが、まず原作から。 これは面白い!映画も後で見たけど、私は原作の方が好み。 人生の物語を全て知った上で、そして喜びや苦悩の極致を知った上で、それでもその道が歩めるか、、 ヘプタポッドの描く文字の描写を見ると、まず漢字が思いついた。漢字そのもののつくりには時制の概念は無いけど、見て一瞬でその概念が頭に飛び込んでくる漢字というものは、優れた発明だとつくづく思った。作者テッド・チャンの名前を見て納得。漢字を知らないと書けなかったのでは? しかし、映画の宇宙船はどう見ても柿の種にしか見えなかった、、 ■バビロンの塔 これも面白かったなぁ。空の天井まで行き着いてその底を触った時には常識が覆ってどうなることかと思った。 円筒印章、これが物語の最初から伏線になっている。平原に横倒しにしたら、、と。秀逸な作品だと思う。 ■理解 私には正直難しすぎた。ただ、最後の最後でタイトルの言葉が非情なる重みで主人公に響く。人間を緻密な機械のように捉える概念が怖い。ゲシュタルト崩壊、という言葉を初めて知った。 ■ゼロで割る 私は、かつては恋人だった二人の愛情が完全に冷えて壊れる様を見る(読む)のが非常に辛い。どうか、それ以上言わないでくれ、言うな、という男性の心の声に泣けた。「停電の夜に」を思い出す。もうこれは、心臓をえぐられる辛さ。最後の、感情移入こそが二人を引き裂く、というくだりも染みる。一番しんどいことは愛情が冷めること自体ではなく、それに気付いてしまった瞬間なのだろう。 数学に関係ないところで刺さってしまったが、タイトルのゼロで割る=不定の意味は余り捉えられず、これから考えたい。でもゼロで割る、って会社の仕事の表計算でよくエラーになるものだな、、身近な問題。 ■顔の美醜について 登場人物の発言で物語が進んでいくが、途中で正直誰が誰やらわからなくなった。核となる女性(ルックス良し)がひたすらに元恋人のことを想っているのが切ない。〝カリー”はお試しなら面白いが、脳損傷受けるとなると微妙。。 作品の中で語られてるように、人は見た目だけでなく、声や話し方、臭い、香りもその人の判断基準にしてると思うう。ほとんど生存本能で、自分にとって危険は無いか、好ましいかを咄嗟に判断してるのかと。作品中の保守派の意見にあたるのだろうけど、感度を鈍らせること自体にとても抵抗を感じる。 一旦これで図書館に返そう。あとはまた読みたくなったら借りたい。「七十二文字」が気になる。でも一旦箸休め。
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