あなたの人生の物語 の商品レビュー
本は、作者や編集者の意図がありなんと、短編集でも順番通りに読むが、今回は気になるものから読んだ。 面白かったけど、難解な内容で疲れてしまい、全作品は読み切れなかった。 読んだ順番どおりに書く。 ■あなたの人生の物語 映画も気になったが、まず原作から。 これは面白い!映画も後で...
本は、作者や編集者の意図がありなんと、短編集でも順番通りに読むが、今回は気になるものから読んだ。 面白かったけど、難解な内容で疲れてしまい、全作品は読み切れなかった。 読んだ順番どおりに書く。 ■あなたの人生の物語 映画も気になったが、まず原作から。 これは面白い!映画も後で見たけど、私は原作の方が好み。 人生の物語を全て知った上で、そして喜びや苦悩の極致を知った上で、それでもその道が歩めるか、、 ヘプタポッドの描く文字の描写を見ると、まず漢字が思いついた。漢字そのもののつくりには時制の概念は無いけど、見て一瞬でその概念が頭に飛び込んでくる漢字というものは、優れた発明だとつくづく思った。作者テッド・チャンの名前を見て納得。漢字を知らないと書けなかったのでは? しかし、映画の宇宙船はどう見ても柿の種にしか見えなかった、、 ■バビロンの塔 これも面白かったなぁ。空の天井まで行き着いてその底を触った時には常識が覆ってどうなることかと思った。 円筒印章、これが物語の最初から伏線になっている。平原に横倒しにしたら、、と。秀逸な作品だと思う。 ■理解 私には正直難しすぎた。ただ、最後の最後でタイトルの言葉が非情なる重みで主人公に響く。人間を緻密な機械のように捉える概念が怖い。ゲシュタルト崩壊、という言葉を初めて知った。 ■ゼロで割る 私は、かつては恋人だった二人の愛情が完全に冷えて壊れる様を見る(読む)のが非常に辛い。どうか、それ以上言わないでくれ、言うな、という男性の心の声に泣けた。「停電の夜に」を思い出す。もうこれは、心臓をえぐられる辛さ。最後の、感情移入こそが二人を引き裂く、というくだりも染みる。一番しんどいことは愛情が冷めること自体ではなく、それに気付いてしまった瞬間なのだろう。 数学に関係ないところで刺さってしまったが、タイトルのゼロで割る=不定の意味は余り捉えられず、これから考えたい。でもゼロで割る、って会社の仕事の表計算でよくエラーになるものだな、、身近な問題。 ■顔の美醜について 登場人物の発言で物語が進んでいくが、途中で正直誰が誰やらわからなくなった。核となる女性(ルックス良し)がひたすらに元恋人のことを想っているのが切ない。〝カリー”はお試しなら面白いが、脳損傷受けるとなると微妙。。 作品の中で語られてるように、人は見た目だけでなく、声や話し方、臭い、香りもその人の判断基準にしてると思うう。ほとんど生存本能で、自分にとって危険は無いか、好ましいかを咄嗟に判断してるのかと。作品中の保守派の意見にあたるのだろうけど、感度を鈍らせること自体にとても抵抗を感じる。 一旦これで図書館に返そう。あとはまた読みたくなったら借りたい。「七十二文字」が気になる。でも一旦箸休め。
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科学や物理用語が多数放り込まれるとワケわからなくなるますが、新しい世界はワクワクするのと、テッドチャンがスマートであることはわかった。
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SF以外では有りえぬ?短編少数で高く評価される稀有な作家。処女作はPKD『宇宙の眼』のような長編になりうるアイデアを緻密なデティールを構築してユーモラスに表現/表題作は、「英語を教えず相手の言語を解明せよ」とのミッションによって女流言語学者の人生観が変化するストーリー。俺も読んで...
SF以外では有りえぬ?短編少数で高く評価される稀有な作家。処女作はPKD『宇宙の眼』のような長編になりうるアイデアを緻密なデティールを構築してユーモラスに表現/表題作は、「英語を教えず相手の言語を解明せよ」とのミッションによって女流言語学者の人生観が変化するストーリー。俺も読んで「人生観が揺さぶられる」ような感覚を覚えた。映画化した監督も、短編に多くの意味を読み取ってそれを表現したかったのだろう/『地獄とは…』ヒューゴー賞になるのは宗教トラウマ故か。神は「真実の信仰ではない」という権利を持つ←「真の謝罪ではない」日本の心の中まで支配しようとする朝鮮人は神(になったつもり)か、というように様々な連想がはたらくのが名作たる所以。
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※このレビューにはネタバレを含みます
『ゼロで割る』、面白かった。 『理解』もアクション的なわくわく、面白さ。 そして『あなたの人生の物語』である。 さいっこうに面白かった。 著者は頭良すぎ。 そしてこれをどうやって映画化したのか…ちょっと気になってきた。 言葉というものは自分の思考体系を体現している、言葉を使ってのみ思考ができるのだ、そんなことを考えていたが、じゃあその上の世界はどういったものなのだろうか?という発想。 SFというものをまともに読むのは記憶の限り初めてのようなものだったが、とても楽しかった。 緻密すぎる構成、展開、実際にあるかのような言語体系、その世界観、人生観を十分に楽しめた、とてもinterstingな経験ができた。 読了した。 ほんとうに面白かった、全体として思考実験的であった。 例えば最後の「顔の美醜について」も示唆に富んだ内容だ、今までルッキズムについて考えたことがないから自分の中でまだ発展させられないのが悔しい。
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《目次》 ・「バビロンの塔」 ・「理解」 ・「ゼロで割る」 ・「あなたの人生の物語」 ・「七十二文字」 ・「人類科学[ヒューマンサイエンス]の進化」 ・「地獄とは神の不在なり」 ・「顔の美醜について――ドキュメンタリー」 ・作品覚え書き
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短編集とは知らなんだ。 読了。 話がまったく頭に入ってこなかった。映画の紹介を見て興味をもったが、この原作からよく映画にできたなと感心するのみ。 ストーリーが二本立てになってるのがまた読みにくい原因。 よくある手法だが、文章がわかりにくくて相性があわなかった。頭の中でビジュアル化...
短編集とは知らなんだ。 読了。 話がまったく頭に入ってこなかった。映画の紹介を見て興味をもったが、この原作からよく映画にできたなと感心するのみ。 ストーリーが二本立てになってるのがまた読みにくい原因。 よくある手法だが、文章がわかりにくくて相性があわなかった。頭の中でビジュアル化できなかったせいかも。 ほかの短編は読む気が失せて読んでません。 久しぶりにスカ引いた感じ。
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まず思ったのは、作品を読むのに頭を使うことを要求する作家であるということ。 好きな作品はバビロンの塔、七十二文字。バビロンの塔は大人の童話みたいな話。七十二文字は、言葉は言霊を思わせる作品だった。 作者の頭の良さについていかなければならず、読んでいて思わず肩に力が入るんだよね。そ...
まず思ったのは、作品を読むのに頭を使うことを要求する作家であるということ。 好きな作品はバビロンの塔、七十二文字。バビロンの塔は大人の童話みたいな話。七十二文字は、言葉は言霊を思わせる作品だった。 作者の頭の良さについていかなければならず、読んでいて思わず肩に力が入るんだよね。その点が個人的な好みから言って☆ひとつ減。
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テッド・チャンが凄いとか、「あなたの人生の物語」が名作だとか、そういうSFファンのなんと多いことか。でもチコちゃんは知っています。……あ、違った。 そういう世評は知ってはいたけれど、なかなか読む気にならなかったのは、テッド・チャンを読むならまずこの長編をというその長編がそもそ...
テッド・チャンが凄いとか、「あなたの人生の物語」が名作だとか、そういうSFファンのなんと多いことか。でもチコちゃんは知っています。……あ、違った。 そういう世評は知ってはいたけれど、なかなか読む気にならなかったのは、テッド・チャンを読むならまずこの長編をというその長編がそもそもないからである。長編を、しかも分厚いやつを書かないと一流SF作家とみなされない英米SF界において、短編だけでこれだけ鳴らしているのは凄いことなのではあるのだが。 で、結局、読む気になったのはドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の映画『メッセージ』がよかったことと、そのせいで本屋に並ぶ短編集『あなたの人生の物語』が『メッセージ』のばかうけ型宇宙船の映画写真のカバーにことごとく変わってしまったからである。オリジナル・カバーの本書を見つけて、つい買ってしまったのだ。 ついに空の丸天井にたどり着いたバベルの塔で、さらにその丸天井を掘り進む「バビロンの塔」はオチが読めてしまったが、ブリューゲルの『バベルの塔』を見てきた記憶がまだ色褪せぬなか、小説の場面は頭のなかでブリューゲルのタッチに変換されていた。 アルジャーノンの異版のようにはじまり、最後は超能力者対決みたいになる「理解」。これは映画化したら面白そうだ。監督はクローネンバーグ。 1が他のすべての数と等しいと証明してしまった数学者と、他のすべての人に感情移入できるその夫という夫婦の破綻を描く「ゼロで割る」。理系と文系のわかりあえなさ? 「あなたの人生の物語」は必然的に映画『メッセージ』と対照しながら読むことになる。映画の原題は「到来 Arrival」であり、7本足の異星人ヘプタポッドは地球に到来はするがメッセージを送るわけではないので、ありがちなことだが、映画の邦題というのは業界のセンスの悪さを示している。話の大筋は踏襲してはいるが、映画はやはり映画的なスペクタクルを追及していることがわかる。原作では異星人との接触は双方向通信装置を介してだが、映画では実際の宇宙船に乗り込んでガラス越しにヘプタポッドと対峙する、などなど。しかし最大の違いは映画が異星人とのファースト・コンタクトに重きがおかれているのに、原作のほうはあくまで「あなたの人生の物語」なのである。語り手ルイーズの娘である「あなた」、25歳で事故死してしまう「あなた」の物語。異星人とのファースト・コンタクトは「あなたの人生の物語」にかかわる挿話でしかない。 そしてヘプタポッドがやってきた理由を映画では説明してしまうが原作ではわからないままである。それでいいのだ、挿話に過ぎないのだから。 「七十二文字」は無生物に名辞を書き込むことで動かすゴーレム的世界観と、生物の胚にホムンクルスがいるという前成説の世界観の融合。生命の謎に挑んでいく名辞師の物語。遺伝情報も一種の言語であると考えれば、現実世界のアナロジーのようでもある。 「人類科学の進化」は「ネイチャー」に掲載されたという、科学論文のパスティーシュ。 「地獄とは神の不在なり」では、神が物理的に実在する。というか、天使がときどき降臨する。天使が降臨するとその物理的ショックで死ぬ人が現れるとともに、奇跡によって、病気が治る人が現れる、という世界が描かれる。ときどき地面を透かして地獄が見えてきて、人々は地獄に堕ちた人の様子を観察することができるが、そこでは現世とあまりかわらない生活をしている。ただそこには神がいないだけである。これは徹底したリアリズムで信仰の馬鹿馬鹿しさを描いた物語かと思ったが、あとがきをみると理不尽さという信仰の本質を真面目にえぐろうという意図のようだ。 「顔の美醜について──ドキュメンタリー」は、顔の美醜を認知する脳領域を可逆的に機能不全にする技術が生み出された世界で、この処置を全学生が受けるべきという運動が起きた大学の話を、人々の証言で綴る。「人間は顔じゃない、中身だ」という題目を、ポリティカル・コレクトネスとして実現すべきか、それは行きすぎとみるのか。多様な意見が投げ出される。途中、宗教学者が内面こそ大事というヘブライズムと肉体の美を称揚するヘレニズムと指摘するあたりが面白かった。 でも、テッドちゃんは知っています。短編こそがSFの精華だと。
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※このレビューにはネタバレを含みます
同じ神でも解釈が人それぞれで、みんな自分勝手に信じている。これが面白いところであり厄介なところでもある。欲望に勝てない人間という存在はやっぱり愚かだなぁと思った。 天使降臨の話は、抗えない天変地異への不安に似たものを感じ恐ろしくなった。公正でもなく慈悲深くなく優しくもない神への愛、そこに興味はあるものの難しい。
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2018/07/11 あなたの人生の物語、うーん、なんだかいまいち入り込めない?冒頭のバベルの塔のあと、メッセージの原作となった短編へ。残50ページで疲れちゃって中断。 2018/07/13 図書館でさらに「あなたの人生の物語」 映画原作の短編読了。これをよくあんな映画にしよう...
2018/07/11 あなたの人生の物語、うーん、なんだかいまいち入り込めない?冒頭のバベルの塔のあと、メッセージの原作となった短編へ。残50ページで疲れちゃって中断。 2018/07/13 図書館でさらに「あなたの人生の物語」 映画原作の短編読了。これをよくあんな映画にしようと思ったなー(笑)。少しメモ書いたが、再読してキーボードでさらにメモ書くかな。 2018/07/24 あなたの人生の物語。うーん、どうにも合わない……。メッセージ原作は映画観てたこともありわりと楽しめたけど、それ以外はむずかしいというか盛り上がらないというか。アマゾンレビューではけっこう評価高いが、ハードSFでも苦手な方面なんだなー。七十二文字まで読んで、これはDNAのことを言ってるのかとわかったけど、ここまでかなー。 2018/08/10 『あなたの人生の物語』読了。全体的にちょっとツボが違うと言うか、ノリきれなかった。映画原作と「地獄は天使の不在」はよかったけど、地獄は〜も最後は理解しきれなかった。天使が降臨することにより、身体的に恢復するものがいる一方、身体を損なうもの、もしくは死んでしまうものがいると言う設定はとてもおもしろいと思ったのだが。 エヴァ、渋谷駅の岡本太郎の壁画、天使または使徒がこの世に顕現するときの圧倒的な異化作用のイメージ、ここにぐっと惹かれる。作中でも光の束とか炎とか天国の光とか、それに類する描写があった。 最終的には無心なる絶対的な信仰がテーマ? これが自分のツボにハマるラストであったら、それだけで評価がぐっっっと上がったんだけれどな。 でも、なんだかんだ言いながら最後まで読んだし、映画原作については再読しながらメモを取りたいと思うわけで、理解できなかったけれども、何かしら惹きつけられるものは会ったということなのかも。
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