始祖鳥記 の商品レビュー
庶民の視線で見た歴史を書き続ける飯嶋さんが、本当に書きたかった一冊じゃないかと(勝手に)思う。 江戸時代に、空を飛んだ男の話。 その男の噂が、封建社会を突き崩そうとする新しい時代の人間たちの心に火をつけ、貧困と不正と権力に戦いを動かしていく。 物語のスケール、魅力的な登場人物群像...
庶民の視線で見た歴史を書き続ける飯嶋さんが、本当に書きたかった一冊じゃないかと(勝手に)思う。 江戸時代に、空を飛んだ男の話。 その男の噂が、封建社会を突き崩そうとする新しい時代の人間たちの心に火をつけ、貧困と不正と権力に戦いを動かしていく。 物語のスケール、魅力的な登場人物群像、一級品の小説だった。 とくに、気にいっているのは、台風に沈没寸前になる船のなかのシーン。 水をかきだす必死の作業をしながら、 「この風があれば、もっと飛べた」という空飛ぶ表具師の言葉に、大笑いしながら答える船主。 ふたりの向こう見ずな青年の姿は爽快な青春小説だ。
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これはオモシロイ! 江戸時代に、空を飛んだ人の話です。 が! 海洋小説のおもしろさもあり、歴史小説のおもしろさもあり。 物語として秀逸な作品です。 この作者は、細部を詰めていって歴史を語る、というスタイルなのですが、その良さがバッチリ出てる! 群像劇のスタイルに見...
これはオモシロイ! 江戸時代に、空を飛んだ人の話です。 が! 海洋小説のおもしろさもあり、歴史小説のおもしろさもあり。 物語として秀逸な作品です。 この作者は、細部を詰めていって歴史を語る、というスタイルなのですが、その良さがバッチリ出てる! 群像劇のスタイルに見られがちな、物語の散漫さは全くないです。 ただ、細かい話が嫌いな人にはオススメできないですかね。 単純で平凡な幸せを幸せと思えない人間が、いかに自分を表現するのか。 その回答としての飛行であり、航海なんだなぁ。 文句なしにカッコイイ主人公なんかより、カッコイイただの人の方が好きだ!と言い切れるなら、ぜひ読むべき一冊。
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江戸時代後期、空を飛ぶことを追い求めた1人の表具屋の歴史小説。 面白かったが、文章全体のうち、最後に見事に飛ぶことに至る背景を語る部分のボリュームがあまりにも多すぎて閉口した。 なぜここまで長編化する必要があったのかがわからない。 徐々に読者のボルテージを上げようとしたのか、...
江戸時代後期、空を飛ぶことを追い求めた1人の表具屋の歴史小説。 面白かったが、文章全体のうち、最後に見事に飛ぶことに至る背景を語る部分のボリュームがあまりにも多すぎて閉口した。 なぜここまで長編化する必要があったのかがわからない。 徐々に読者のボルテージを上げようとしたのか、それとも著者がボルテージがあがってしまったのか。 ただ、それにしても、最後の飛んでいる様の描写は読んでいて、興奮した。 そして、これが史実だということも。
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江戸時代に、ただ大空を飛ぶことに憑かれた男がいた。その“鳥人”幸吉の生きざまと彼を取り巻く男たちを描く歴史小説の金字塔! 登場人物がすべて魅力的で、当時の市井の人々を生き生きと浮かび上がらせる飯嶋和一の筆力は見事としか言いようがない。 クサイようですが、“男のロマン”やな...
江戸時代に、ただ大空を飛ぶことに憑かれた男がいた。その“鳥人”幸吉の生きざまと彼を取り巻く男たちを描く歴史小説の金字塔! 登場人物がすべて魅力的で、当時の市井の人々を生き生きと浮かび上がらせる飯嶋和一の筆力は見事としか言いようがない。 クサイようですが、“男のロマン”やなぁ。
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ほんますべらんな~ 飯嶋和一にはずれなし!by帯 読んだこと無いならだまされたと思って読んでみんしゃい!
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読むと熱くなります。名作です。 胸が熱くなる名作です。なんというか現代人が忘れているものをこの作品の主人公の幸吉の生き方に観てしまいます。出版された当時(4年くらい前)かなり話題になっていたと思います。最近は文庫版も出ました。10回くらい読み直したくなる名作です。
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江戸時代。岡山の腕のいい建具屋さんが、ある日翼を作って空を飛ぶことを思い立つ。せっせと何度も試行錯誤するうちに、彼の正体はわからないまま、その影が「今の世の中を変えるいきもの」というウワサを産んでしまう。 そして、その影に勝手に勇気付けられて、諦めかけていた生き方を考え直す人が出...
江戸時代。岡山の腕のいい建具屋さんが、ある日翼を作って空を飛ぶことを思い立つ。せっせと何度も試行錯誤するうちに、彼の正体はわからないまま、その影が「今の世の中を変えるいきもの」というウワサを産んでしまう。 そして、その影に勝手に勇気付けられて、諦めかけていた生き方を考え直す人が出てくる。 主人公はただただ自分の夢を追っているだけなのだけど、その姿が、いつの間にか誰かほかの人の人生を牽引する。主人公が知らないうちに、主人公は他人の夢を乗せて飛んでいる。 私にはこの「勝手に人生が作用しあう」ってのが非常に感動的でした。最後はちょっと泣いた。最後、主人公はほかの登場人物たちの知らないところで、彼の夢をひとつ完結させる。彼に(勝手に)勇気付けられていた人々はその事実を知らない、見届けていないんですけど、でもそれでいいんですよ。この結末こそが「希望」だと私は感じました。
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鳥肌が立つ喜びを味わえる。 大の大人がただ飛ぶことのみに全身全霊を捧げる。 そこには何もない。ただただ飛ぶことのみ。 文章は荒削りで単調なきらいもあるが長編スペクタクルで この小説の読後には爽快な充実感を存分に味わえる。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
うおー!すごい!「全日本人必読!」と書くだけはある! ものすごい急展開もない。すさまじいオチもない。派手な名ゼリフがあるわけではないし、現実離れした濃いキャラクターが出てくるわけでもない。それなのに、とても胸が熱くなるのだ。第一部では天才表具師でありながら、空を飛ばずはにいられない幸吉の心中に共感し、第二部では「××が来た!」と伊兵衛と一緒になって叫んでしまった(笑)そして第三部では……と、それは読んでのお楽しみ。 それじゃあ、この小説はどんな小説だったんだ、と振り返ってみる。ものすごくざっくりした言い方だが、ただ出会うべき人物が出会い、為すべきことを為し、淡々と、しかし着実に、物語が展開していき、辿り着くべき結果へ辿り着く。 そこで、ああそうか、とはたと気づく。それが歴史というものなのだ。それは人間の営為の積み重ねなのだ。同作者の「出星前夜」に井上ひさし氏が寄せた賛辞と重なってしまうが、そこにはたしかに歴史があった。
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とにかく好き。「風羅坊」という言葉に心を動かされる人なら、好きにならないわけがない。 主要な登場人物がみんなこの風羅坊を理解する、それぞれが好漢で、こんな巡り会わせはいかにも小説、なんだが。でもいいや、好きなんだもん。
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