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日の名残り の商品レビュー

4.3

628件のお客様レビュー

  1. 5つ

    258

  2. 4つ

    200

  3. 3つ

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2023/05/18

カズオ・イシグロ初邂逅。 名家に仕える執事、スティーブンスが、久々に与えられた余暇に英国をドライブ。 既に辞めてしまった女中頭のミス・ケントンに会うことを目的の一つに。 その道すがらに起こる出来事をきっかけに、お仕えしている家で発生した様々な出来事を思い出しながら滔々と語り、そ...

カズオ・イシグロ初邂逅。 名家に仕える執事、スティーブンスが、久々に与えられた余暇に英国をドライブ。 既に辞めてしまった女中頭のミス・ケントンに会うことを目的の一つに。 その道すがらに起こる出来事をきっかけに、お仕えしている家で発生した様々な出来事を思い出しながら滔々と語り、そこから執事としての品格や、あるいはかつて一緒に働いていた女中頭の行動の理由などを深く考察していく。 とりたてて大きな事件が起こるわけではない。 モノローグの中には、かつて自らも巻き込まれた、主人が起こした政治的な動きなども語られるが、執事の口調はあくまでおだやかで紳士的。最初はどこか退屈な感じもした。 ただ、読んでいくうちに美しい英国の景色だったり、スティーブンスの仕事に対する熱い想いなどが手に取るように伝わるようになり、そして終盤、ミス・ケントンに会うくだりではすっかりスティーブンスに感情移入してしまっていた。 解説では丸谷才一が、この物語の背後に潜むイギリスという国の政治的なありかた的なことを語っていたが、そういう小難しいところは抜きにして、私は仕事に対して丁寧であること、一生懸命であることの重要さとか、その勇気みたいなものをもらった。 とてもいい小説だった。読んで良かった。

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2023/05/09

特に大きな事件もなく、淡々と進む文章なので好き嫌いが分かれそう。 読み終えたあと、なんだか朝日を見たあとのような不思議な爽快感と暖かさがある。

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2023/07/25

大学の合格祝いとして担当の歯科医師の方に頂いた本なのですが、まるで1本の映画を観ているような時がゆっくりと流れる気品溢れる物語でした。

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2023/04/28

ポスト資本主義のような考えが、イギリス紳士の中に少しあるような気がした。 自分として、見習いたい部分だと思った。

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2023/07/05

ずいぶん前に映画を見て気になっていた作品。 やっと読めた。 主人公のスティーブンスがいかにもな英国執事という設定。古き良き時代を、長年仕えてきたダーリントン卿や執事として大先輩の父、仕事の同士である女中頭ミス・ケントンとの思い出を振り返りながらドライブ旅行は進む。 執事として...

ずいぶん前に映画を見て気になっていた作品。 やっと読めた。 主人公のスティーブンスがいかにもな英国執事という設定。古き良き時代を、長年仕えてきたダーリントン卿や執事として大先輩の父、仕事の同士である女中頭ミス・ケントンとの思い出を振り返りながらドライブ旅行は進む。 執事としてダーリントン卿を心から敬愛し信じたスティーブンス。執事としての仕事に心から誇りを持ち真面目に打ち込んだスティーブンス。結果、父の最期の瞬間に立ち会うことは出来ず、自身のミス・ケントンへの想いにも気付かず、主は敬愛したダーリントン卿からアメリカ人のファラディに変わり、美しく維持されたダーリントン・ホールも大勢いた雇人も極限まで減る。 ドライブの最大の目的はミス・ケントンとの再会だが、その再会が出来るのかどうか、また出来たとしてスティーブンスの思惑通りに進むのかが、回想を読み進むほど心配になってくる。 時に健気で時に滑稽、時に痛々しいほど真摯に理想である「品格ある」執事の仕事に突き進んだ彼が、旅の最後にたどり着いた答えは。 心配したような結末でなくて良かった。 ファラディの元で、スティーブンスがどのような執事振りを見せてくれるのか、渾身のジョークはどんなものなのか、想像すると楽しい。

Posted byブクログ

2023/04/15

コロナ前、都会の喧騒に疲れながら、社会人の辛さを感じつつ毎日を過ごしていた。 ある日、会社の同期や先輩と行った海水浴に遅刻し、一人でバスを乗り継いで向かった。 遅刻したことを後悔しながら、行きたくねえなあと思いつつ乗り継ぎながら日の名残りを読み進めた。 ちょうど、最後の乗り継ぎバ...

コロナ前、都会の喧騒に疲れながら、社会人の辛さを感じつつ毎日を過ごしていた。 ある日、会社の同期や先輩と行った海水浴に遅刻し、一人でバスを乗り継いで向かった。 遅刻したことを後悔しながら、行きたくねえなあと思いつつ乗り継ぎながら日の名残りを読み進めた。 ちょうど、最後の乗り継ぎバスを待っているベンチで、最後のシーンを読み終えた。 スティーブンスの人生の振り返り、小旅行が、何となく自分の今と重なった気がした。 正直、5年前のことで内容はおぼろげだ。 ただ、今でもその時の千葉の雰囲気や、ベンチでの座ってた記憶を思い出せる。 読み返そうという気はまだ起きていないが、また読みたいと思えるような素晴らしい作品だった。

Posted byブクログ

2023/04/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

まず読み終わって感じたことは、読みやすかったと言うこと。外国の翻訳された本が苦手な私でも楽に読めた。日本の本でも同じなのだが、その国の人ならある程度分かる事でも、他国の人には分かり難い事がある。その国の歴史、文化、地理的な事とか。例え注釈があっても、その注釈を見ながら読むと話の流れが途切れ途切れになり話に入り込めない。この点、この小説は分からない事は分からないなりに読んでいっても話に入り込めた。これは作者、翻訳者の力量もさることながら、この小説が「昔ながらの品格ある執事」の1人称の語りという形をとっているからだろうと思う。この語りで、話の内容も雰囲気も分かりやすくなっていると思う。「昔からの由緒ある、高貴で、品位も教養も騎士道精神も持ち合わせている貴族」が行う政治、外交なども、なんとなくこんな感じなんだろうなと思わせる。現在の我々からみたら、時代遅れで、傲慢に思える考え方も、この当時の英国の貴族達にしてみれば当然の事なのかもしれない。結局この考え方が通じなくなり、最後には多くの人々によって厳しく糾弾されるのだが、主人公の「執事」スティーブンスが仕えていたダーリントン卿も、最後には自分が間違えていたことを認め悔いている。「品格ある誠実な執事」であるスティーブンスは仕事に忠実であるため、ただただ「お仕えしている」ダーリントン卿を敬慕し、信頼し、その思想その行動に批判を挟めなかった。その機会があったにもかかわらず。また、仕事に忠実であることで、ひょっとしたら心を通じ会え、一生を共に歩んでいける女性とも結局心を閉じ心ならずも離れてしまう事になった。 歳を取り仕事に些細な失敗が重なり、人材不足解消にと、かつて共に働いていた女性と話をするために、新しい雇主から頂いた休暇を利用して出た旅。その旅で、過去を振り返る主人公。結局、自分は何をしてきたのかと問い、ただ信じただけ、選ぶ事すらしなかった。過ちを犯したとすら言えないと嘆く主人公。最後の最後に知ってしまった自分の愚かさ。でも、 最後に出会った行きずりの男の言葉。 「そりゃ、あんたもわしも必ずしも若いとは言えんが、それでも前を向きつづけなくちゃならん」そして、「人生楽しまなくちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ·····」                    その言葉がいい! なんとなく、ほっとした気持ちになった。

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2023/04/07

あり得たかもしれない別の人生。取り返しのつかない過去。 道を選ぶということ。信じるということ。 夢を追い求める旅の道中は美しく、掴みかけたときその輝きは儚く消える。 今いる場所を飛び出して、はじめてそこが自分の居場所であったことを知る。 すべては思い出の中に。 翻訳文が美し...

あり得たかもしれない別の人生。取り返しのつかない過去。 道を選ぶということ。信じるということ。 夢を追い求める旅の道中は美しく、掴みかけたときその輝きは儚く消える。 今いる場所を飛び出して、はじめてそこが自分の居場所であったことを知る。 すべては思い出の中に。 翻訳文が美しい。

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2023/03/31

イギリスの由緒あるお屋敷の名執事スティーブンス。父に続き二代渡って執事という仕事についている。日本でも昔は主人と家臣の間には並々ならぬ主従関係があり家臣の忠誠心たるもの半端なかったのと似ている。 プライベートも自分の気持ちも二の次で主人に仕えてきた彼が、旅に出て初めて自分の人生を...

イギリスの由緒あるお屋敷の名執事スティーブンス。父に続き二代渡って執事という仕事についている。日本でも昔は主人と家臣の間には並々ならぬ主従関係があり家臣の忠誠心たるもの半端なかったのと似ている。 プライベートも自分の気持ちも二の次で主人に仕えてきた彼が、旅に出て初めて自分の人生を振り返る。

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2023/04/21

再読。 ほんとよく考えられている話だと感心する。 いろんなことが思い浮かんで感想を書こうとするんだけど、自分には何をどう表現したらいいやら。 カズオ・イシグロ研究のサイトや論文、書籍で批評を読めば読むほど、何か自分が書いて意味があるのだろうかと。 8冊ある長編の内、読んでいな...

再読。 ほんとよく考えられている話だと感心する。 いろんなことが思い浮かんで感想を書こうとするんだけど、自分には何をどう表現したらいいやら。 カズオ・イシグロ研究のサイトや論文、書籍で批評を読めば読むほど、何か自分が書いて意味があるのだろうかと。 8冊ある長編の内、読んでいないのは「わたしたちが孤児だったころ」のみとなったが、相変わらず読みやすさは海外のものとは思えない。 母親とは日本語で会話をしていたことは大きいと思うけど前に記事にこんなことが載っていた。 ・カズオイシグロ本人が訳者と密に連絡を取り合っていること。 ・イギリスでしか通じにくい表現を避けたり、訳される国々で同じようなニュアンスになるよう世界的に通じるよう努力していること。 ■ 養老孟司の話を思い出した。 養老孟司は大昔に論文をだしたところ、ネイティブに書かせていると疑われ、はじかれそうになるくらい英語力に定評があるみたいだけど、彼いわく、原著と翻訳の違いはファンタジーは特に顕著で、ハリーポッターなどは面白さどころか同じ物語なのかと思うほど次元が違う別物に思えるらしい。 ■ 日の名残りを何年か前に読んでイギリスの文化に興味をもち、そうこうしている内に妻が紅茶にはまって、自分も影響を受けた。 やっぱり長く続く文化は変数が多いなと。 これも立派なアウトプットか。 ■ 最後の未読の長編「わたしたちが孤児~」と 三村尚央「カズオ・イシグロを読む」を購入した。

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