日の名残り の商品レビュー
書評にもあったが時間経過の表現が巧みで、すぐ本の世界に浸れた。そしてこんなに自然で読みやすい翻訳は初めてでは、と感激した。 旅を続け、栄光と衰退の過去と向き合うスティーブンスはどこか寂しそうにみえた。自分の半分を失ったことで、どこに心を置いていいのか分からなくなったんだろうな、...
書評にもあったが時間経過の表現が巧みで、すぐ本の世界に浸れた。そしてこんなに自然で読みやすい翻訳は初めてでは、と感激した。 旅を続け、栄光と衰退の過去と向き合うスティーブンスはどこか寂しそうにみえた。自分の半分を失ったことで、どこに心を置いていいのか分からなくなったんだろうな、と。 だからこそ海辺のシーンが輝いてみえて、少しホッとした。自分の役割を達成することが仕事だと改めて気づいたスティーブンスには明かりが灯ったようで、それが未来を照らしているように感じた。 気品溢れるステキな本だった。
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友人から勧められた作品。土屋政雄氏の見事な訳も手伝って、素晴らしい読書体験を味わうことができた。 常に「品格」を追い求めた執事・スティーブンスは、現在の雇主・ファラディに進められて休暇をもらい、英国南西部への旅に出る。 息を吞む田園風景や暖かい人々との交流、そして過去共に同じ雇...
友人から勧められた作品。土屋政雄氏の見事な訳も手伝って、素晴らしい読書体験を味わうことができた。 常に「品格」を追い求めた執事・スティーブンスは、現在の雇主・ファラディに進められて休暇をもらい、英国南西部への旅に出る。 息を吞む田園風景や暖かい人々との交流、そして過去共に同じ雇主に仕えたミス・ケントンへ会いに行く旅の中で、スティーブンスはかつての雇主・ダーリントン卿への敬慕や、同じ館で十年以上の時を共にした女中頭であるケントンへの淡い恋心といった、過ぎ去りし思い出を振り返る。 スティーブンスは執事として自他ともに認める有能ぶりで、ダーリントン卿が保有していた館での仕事はまさに完璧といっていいほど。彼の気品あふれる語りと、時折見せるユーモラスさのコントラストが非常に愛おしく、それを見ているだけでじんわりと幸せになれた。 そんなスティーブンスが旅のなかで思い出すのは過ぎ去りし日々。 亡き父の死に目、自身へ向けられたミス・ケントンの想い、盲信的に尽くしたダーリントン卿の末路。 自身の求めるものや時代のうねりのなかで失ってしまったものの数々を思い出すスティーブンス、だが時計の針は巻き戻せない。 古人から現代人に至るまで、人間として生きるのであれば逃れることのできない苦しみ。それを改めて考えさせられる。 ノスタルジックな雰囲気に浸れる作品ではあるものの、終わり方はどこか未来を感じさせ、じんわりと心に染みわたる作品だった。
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貴族の屋敷での執事としての人生を振り返る主人公の語りは、飽くまでも丁寧な口調と柔らかな物腰で、読んでいると、とても癒される。悲しみを描いても陰鬱さはなく、静謐という言葉が浮かぶ。何度でも繰り返し読みたくなる名作だと思う。
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ここまで「品格」について考えさせられたことは、ありませんでした。イギリスならではの文化というか、国民性というのか、真面目で忠誠心の 強い執事のスティーブンスのお話で、過去現在と 自分が執事であることに対しての誇りというものが、沸々と伝わってきました。ダーリントン卿への忠誠心には、...
ここまで「品格」について考えさせられたことは、ありませんでした。イギリスならではの文化というか、国民性というのか、真面目で忠誠心の 強い執事のスティーブンスのお話で、過去現在と 自分が執事であることに対しての誇りというものが、沸々と伝わってきました。ダーリントン卿への忠誠心には、人一倍強いものを感じました。
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過去の出来事を回顧しながら物語が進んでいくが、最後の最後になって、自分の過ちを見つめることになり、取り返すことのできない時間が静かに押し寄せてくる。どれだけ悔やんでも、取り戻すことのできない時間が。 誇りに思っていた執事としての"品格"。 しかし、信じていた...
過去の出来事を回顧しながら物語が進んでいくが、最後の最後になって、自分の過ちを見つめることになり、取り返すことのできない時間が静かに押し寄せてくる。どれだけ悔やんでも、取り戻すことのできない時間が。 誇りに思っていた執事としての"品格"。 しかし、信じていた主人は歴史から見ると誤った判断をしていて、さらに自分が拘る品格を保つためにミスケントンとの関係を蔑ろにしていた。 人生って…と考えてしまう。 読後はものすごい寂寥感が。
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ブッカー賞がどれだけ凄いのか、カズオイシグロがどれだけ凄いのか、まあ答えは簡単でノーベル文学賞を受賞した出来るごくごく限られた人間って事。イギリス文学は推理小説ならあるけど、純文学、明治大正の古風な時代を感じるわ、それとスティーブンスの執事とは、この突き詰めた物語だった。旅先の風...
ブッカー賞がどれだけ凄いのか、カズオイシグロがどれだけ凄いのか、まあ答えは簡単でノーベル文学賞を受賞した出来るごくごく限られた人間って事。イギリス文学は推理小説ならあるけど、純文学、明治大正の古風な時代を感じるわ、それとスティーブンスの執事とは、この突き詰めた物語だった。旅先の風景が全く出ないしほとんど回想記と旅する惚れた同僚に会う旅と思った自分にさようなら。難しい構成なのにもっと読みたい欲求で、引退した執事と会話して自分の愚かさに涙して認めずに、執事の仕事に帰る。地団駄だよ、泣いた部屋のドアを開けてくれって事。初めて手に取って 凄いのと2冊目も行けそうだと思います。海外の棚にあるカズオイシグロ、さすがだよ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
自分の仕事に誇りを持ち、どこまでも極めていく人間はかっこいい。 スティーブンスが最後に「主人が変わって、私には何も残っていない」と珍しく弱音を吐いていたけれど、ドライブにより過去を振り返ることでーーその話を読者代表であるベンチの男に語ることでーー最後は自分が苦手としていたジョークについてトライしてみようと考え、今後も自分の人生を歩んでいこうと前に一歩踏み出せた彼は偉大な執事以外の何者でもないと思いました。 【心に残った台詞】 351 私どものような人間は、何か真に価値あるもののために微力を尽くそうと思い、それを試みるだけで十分であるような気がいたします。そのような試みに人生の多くを犠牲にする覚悟があり、その覚悟を実践したとすれば、結果はどうあれ、そのこと自体がみずからに誇りと満足を覚えて良い十分な理由となりましょう。 (余談) ⚠️以下、『レベッカ』のネタバレを含みます。 スティーブンスが主人を慕った想いの強さを考えると、ダンヴァーズ夫人があれほどまでにレベッカを慕っていた気持ちが理解できるような気がした。
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母の友人(終活中)から回ってきた一冊。 ノーベル賞授賞後、いつかは読みたいと思っていたので、これを機会として初カズオ・イシグロに挑戦。 ダウントン・アビーを見ていたので、イギリスの執事の話という点ではイメージはしやすかったですが、私には読みにくい文体で、読むのに時間がかかりました...
母の友人(終活中)から回ってきた一冊。 ノーベル賞授賞後、いつかは読みたいと思っていたので、これを機会として初カズオ・イシグロに挑戦。 ダウントン・アビーを見ていたので、イギリスの執事の話という点ではイメージはしやすかったですが、私には読みにくい文体で、読むのに時間がかかりました。 前の主人(貴族)とその友人が、執事に政治談義を吹っ掛けて、庶民には政治なんてわからない、とバカにする場面が印象に残った。
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世界的な名著 だが、何がそこまで凄いのかさっぱり分からなかった。 イギリスの執事の話で、日本人にしては全く馴染みのない文化を丁寧に、そして哀愁を持って理解させてくれる。 面白く読めるのだけど、死ぬまでに読め!みたいな風潮の凄みは分からなかった
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誰もがぼんやりと過去の何気ない思い出にふけったり、あの時ああしていればみたいな後悔や自己嫌悪に陥ったりする瞬間を、とても上手く切り取って描写がされていると素直に感心した。 この普遍性とノーベル文学賞受賞にはやはりどこかに接点があるのかなとも勝手に解釈した。 2023.08.05読...
誰もがぼんやりと過去の何気ない思い出にふけったり、あの時ああしていればみたいな後悔や自己嫌悪に陥ったりする瞬間を、とても上手く切り取って描写がされていると素直に感心した。 この普遍性とノーベル文学賞受賞にはやはりどこかに接点があるのかなとも勝手に解釈した。 2023.08.05読了
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