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日の名残り の商品レビュー

4.3

628件のお客様レビュー

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    258

  2. 4つ

    200

  3. 3つ

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「品格ある執事」の道…

「品格ある執事」の道を長年追求してきた名執事が、老年になり、過ぎ去りし過去を回想します。滅私奉公に人生を費やした男の、誇りと悔恨が苦いすばらしい小説です。特に最後の夕陽のシーン。哀しくもユーモアのある、何ともイギリスらしいシーンです。

文庫OFF

滑稽なほど丁寧に、職…

滑稽なほど丁寧に、職務にまっとうに、世間に対して真摯に、そしてすべてにおいて責任を背負っていきてきた執事の人生。それはある意味滑稽なほどに生真面目で、時代にほんろうされる様子があわれだ。ラストシーンが深い味わいを残す作品。傑作です。

文庫OFF

国最高の文学賞、ブッ…

国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作した作品。映画にもなってるそうですが、映画は見てないのでなんともいえません。

文庫OFF

2024/08/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

主人公視点だが常に客観的な見方をするから、主人公の感情は見えない。けれど、周りの人達の反応からするに、主人公は品格を保とうと冷静にしているはずが実は冷静でいられてないのではと思った。仕事、品格を一番にしており、それによって大事なものを失っていることに気づいていないような描写だが、実はそれに気づいていながら無視しているだけなのでは。 仕事以外の大事なことを捨てるのは簡単だが、捨てる判断が正しいと思い込むのは難しいのかもしれない。 それでも、世界を動かす影響を持つご主人に忠誠心を持って品格をそなえて仕える姿はとてもかっこいい。特に戦争の時代だったから。仕事とプライベートで、プライベートを取る人に読んでみてほしいかも。どんな感想を持つか気になる。スティーブンスは仕事をとったから違う視点。 主人公の執事の感情を直接描写せずに、周りの人の発言(ミスケントンが、スティーブンスのことを慌ただしいと言ったり、、)で描写しているところが面白かった。 「何か真に価値があるもののために微力を尽くそうと願い、それを試みるだけで十分であるような気がいたします」結果的にその行動が正しいかは分からなくても、全力を尽くす事自体に意味がある。満足感と誇りを持てる。

Posted byブクログ

2024/08/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

物語は英国の伝統的な執事の一人語り調で進んでいく。 読み進めるにしたがって、なんか語りに違和感を覚える。嘘を言ってるわけじゃないんだけど、なんというか、昔あったバーティミアスというファンタジーの主人公のように、やたら自分を大きく見せたがっている人の語りのように感じてしまう。 最後まで読んでその謎がわかる。この執事は繰り返し一流の執事の条件を語るんだけど、それは社会の中心を担う偉大な主人をサポートすることだと語る。そしてどんな時にも職務を全うすることが品格だとも。 自分が尊敬してやまないダーリントン卿が、その人の良さによってドイツのナチスと通じていたという疑いをかけられ、不本意な死を遂げる。そのせいで、執事は自分が誰に仕えていたか聞かれても、自信を持って答えられないでいる。執事は心から卿を尊敬していたけど、もしかすると卿はもともと偉大とはかけ離れた人物かもしれない。 また、どんな時でも仕事を全うするという、執事が理想とする品格が邪魔になり、おそらく両思いになっていただろう女性と全くのすれ違いになってしまう。 この、自分が信じていた偉大な主人と品格が脆くも崩れ去ったという後悔と、自分の人生は立派だったと思いたい葛藤がむちゃくちゃリアルに描かれた作品。 ある程度歳を行けば、あの時こうしてたら人生違ったものになっていたのかなと振り返ることは多々あると思うんだけど、その辺の心情がすごく丁寧に描かれていた。

Posted byブクログ

2024/07/21

ふと昔、読んだことを思い出した。信頼できない語り手技法があるとしり代表的なものをと手に取った。諧謔に満ちた執事の切ない恋路の話だったと記憶している。

Posted byブクログ

2024/07/07

『おっしゃるとおり、私はお屋敷と込みでございます』 信頼できない語り手、とまでは言わないが、情報も内面も秘匿している執事の一人称小説。執事自身の、イギリスの、ある名家の斜陽が平易な表現の上に浮かび上がっていく。 執事という職業小説として読むと、人格=仕事=執事となっており、それ...

『おっしゃるとおり、私はお屋敷と込みでございます』 信頼できない語り手、とまでは言わないが、情報も内面も秘匿している執事の一人称小説。執事自身の、イギリスの、ある名家の斜陽が平易な表現の上に浮かび上がっていく。 執事という職業小説として読むと、人格=仕事=執事となっており、それ以外の主人公の内面や母の描写は消えてしまう。人生の夕刻以降は、新しい雇い主ではなくて、そちらにフォーカスし…ないのでしょうね。

Posted byブクログ

2024/06/29
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

品格とは? 古いイギリスのお屋敷で政治が行われていた(日本で言うところの料亭みたいな)という事に今まで気付いていなかった。そのやりとりの一部となることに誇りを持って仕事をしている執事についても。 自身の感情はなきものとして業務を最優先にすること。それが執事としての矜持であり、自分の能力に満足もしていたが。。。 支えていた主人がその仕事を誹謗されたまま亡くなり、屋敷は静まりかえっている。 時が過ぎて自分の能力の衰えを知る。 尊敬する父も女中頭も古き良きイギリスも全て失われてしまった。 旅をしながら過去を振り返り、無意識な差別感情や蓋をしていた恋愛感情を思い出すけれどもう歳をとりすぎている。ミス.ケントンを助け出すはずだったのに昔も今もこの二人は噛み合っていない。というよりミスター.スティーブンスが仕事人間で真面目で堅苦しいガチガチ男すぎるのだよね。 「私は夫を愛せるほどに成長したのだと思います」ミス.ケントンはいつも正直で素敵だな。 「夕方が一日でいちばんいい時間」 この言葉で前向きになるものの、これを小さな屋敷で執事をしていた男に言われるという皮肉。 私の人生も夕方だ。 美しいものを美しいと思える余裕と歓びに浸らなければ。 もっと熱意を持ってジョークの練習しようと思いつくラストも読後感良し。

Posted byブクログ

2024/06/18

イギリスの執事として、自身の持つ美学に忠実に職務を遂行してきた。時代の変化によって価値観が変わり、過去の選択を悔やんだり、自分が信じていたものが誤りだったのではないかと悔恨する。 それでも最後には新しい価値観のもと前向きに生きていこうとする。 印象に残った場面 ◯邸宅で民主主義...

イギリスの執事として、自身の持つ美学に忠実に職務を遂行してきた。時代の変化によって価値観が変わり、過去の選択を悔やんだり、自分が信じていたものが誤りだったのではないかと悔恨する。 それでも最後には新しい価値観のもと前向きに生きていこうとする。 印象に残った場面 ◯邸宅で民主主義に関する議論が交わされている場面 国際問題のような複雑で重大な問題について、知識も十分でない国民が決定を下そうとする、それが民主主義なんだ。それが正しいことでそれが国民の品格というべきものなのか。国民は静かな日々の暮らしを望んでいる。目の前の生活で精一杯なのに、世の中の問題を全て理解し意見を持たねばならないのか?それがほとんど不可能であるからには、国民ひとりひとりは自身の職務を全うして、それが間接的に世の中全般を良い方向に進めるので充分ではないか。 ◯わたしは夫を愛せるほどに成長したんだと思う。 ミス・ケントンが、若い時にはスティーブンスへの想いを断ち切れず、不幸な結婚生活を過ごしていたと話す。しかし、時間が経ち、子供が生まれ状況が変わるにつれ、夫を愛するようになったという。それを成長という言葉で表現しているのが良いと思った。 長い人生不幸と感じる時期もあるが、自分も状況も刻一刻と変わっていき、幸せに転じることもある。逆も然り。諸行無常、盛者必衰の理。これは希望でもあると思う。

Posted byブクログ

2024/06/18

『わたしを離さないで』と同様にずっと心に残る本だった。 これから更に歳を取って子供達が自立した後に、旅先でゆっくり再読したい。 執事が旅に出て人生を振り返る。 仕事に忠実過ぎる、仕事以外には不器用過ぎる主人公。『コンビニ人間』を思い出す。 特別大きな事件が起きることもないし、...

『わたしを離さないで』と同様にずっと心に残る本だった。 これから更に歳を取って子供達が自立した後に、旅先でゆっくり再読したい。 執事が旅に出て人生を振り返る。 仕事に忠実過ぎる、仕事以外には不器用過ぎる主人公。『コンビニ人間』を思い出す。 特別大きな事件が起きることもないし、ミステリーもSF要素もゼロ。 それなのに不思議と話に惹き込まれる。翻訳も素晴らしくてとても読みやすい。 ページをめくるとイギリスのノスタルジックな世界に没入できる。 歳を取った今だから共感する部分が多かった。何の悩みもない若い時に読んでもこの本の良さはわからなかったと思う。 本を閉じた後にじわじわくる読後感の良さにしばらく浸った。 押し付けがましい感動本は苦手だけど、この本は全くそうではなかった。 この本で読者が感じることは様々だと思う。 主人公の人生の振り返りを通して、私も人生を振り返っていた。 ★10 ↓以下は少しネタバレになります。 ◯刺さった言葉 『夕方が1日でいちばんいい時間』 ちょうど日曜の夕暮れ時に読んでいてジーンときてしまった。 人生も歳を取ってからが1番良いのかもしれない。残りの人生を最大限に楽しもう。 ◯この本で共感したこと ・尊敬していた父の老い ・親の介護と自分の仕事の両立 ・仕事を全力で頑張っていた若い頃 ・若い頃と同じようにできない自分の老い ・華やかな職種が時代と共に変化していく寂しさ ・この先の不安 ・あの時の自分は正しかったのか? ・あの時に違う選択をしていたらどうなっていたか? ・これからの自分の生き方 ちょうど1000人目の感想だった^_^

Posted byブクログ