砂糖の世界史 の商品レビュー
三角貿易の主要商品であった「砂糖」に焦点を当て、近代世界史を描く。大航海時代、植民地、プランテーション、奴隷制度、三角貿易、産業革命など、世界史の教科書に出てくる用語が相互に繋がる。
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2019年12月読了。 かつて「世界製品」(staple)だった砂糖という視点から、16世紀以降の世界ではどんなふうに、どこの国がそれを握ってきたか、またその生産のために作られた植民地や黒人奴隷という制度が、どんな変遷を辿ったかを概観する。 岩波ジュニア新書に入っているけど、こう...
2019年12月読了。 かつて「世界製品」(staple)だった砂糖という視点から、16世紀以降の世界ではどんなふうに、どこの国がそれを握ってきたか、またその生産のために作られた植民地や黒人奴隷という制度が、どんな変遷を辿ったかを概観する。 岩波ジュニア新書に入っているけど、こういう良書は大切にしたい。 9ページ 砂糖の神秘性の最大の理由は、やはり、純白というその色にあったと思われます。 →白という色が持つ特殊な意味、何故かと問われて答えられないが、純なる何かに魅かれるということか。 50ページ 工場労働の発生によって時間に正確であることが求められるようになっただけであって、本質的には時間という概念は(あるいはそれに対して正確であるということは)後天的に得ざるを得なかっただけのことではないか。 104ページ 17世紀中頃のイギリスで興ったコーヒー・ハウスは、当初は様々な人が出入りする空間だったが、クロムウェルの革命を経て社会が落ち着いてくると、次第に同じような属性の人が集まる空間になっていった。もし人間の本質が変化を好まないものだとすると、このコーヒー・ハウスの質の変化は納得できるものだと思う。 123ページ 「ボイコット」とは、小作人に厳しすぎてボイコットされたアイルランドのイギリス人地主である「ボイコット大佐」から生まれたもの。 146ページ 「砂糖のあるところに、奴隷あり」、労働集約産業のある所はやはり厳しい現実がある。 156ページ 主食と副食という概念がないヨーロッパ。翻って日本の「ごはんとおかず」という概念の特殊な感じ。
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「世界商品」である砂糖を巡り、世界がいかに変容していったかを辿る本著。著者がエピローグで、「ここにくるまでにはどのような歴史的変遷があって、いまこうなっているのか。そういうことを研究するのが歴史学なのです」と述べるように、砂糖を切り口に、イスラム教の興り、大航海時代、植民地支配、...
「世界商品」である砂糖を巡り、世界がいかに変容していったかを辿る本著。著者がエピローグで、「ここにくるまでにはどのような歴史的変遷があって、いまこうなっているのか。そういうことを研究するのが歴史学なのです」と述べるように、砂糖を切り口に、イスラム教の興り、大航海時代、植民地支配、帝国主義、資本主義社会と、現代社会を俯瞰するために触れておきたい、羅針盤のような世界史的な知識を改めて整理してくれる良書だった。
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3/10は砂糖の日 砂糖を中心に語られる歴史の数々。 大航海時代、プランテーション、奴隷制、産業革命…オススメです!
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深いことを易しく伝えてくれる良本。働いてても2~3日で読み終わる。岩波ジュニア、ほんと素晴らしい。 エピローグとあとがきという僅か数ページに筆者主張のエッセンスが詰まっている。そこでも記載があったけれど、読んで思ったとおり、世界システム論の手法を用いつつ、ミンツの歴史人類学(「歴...
深いことを易しく伝えてくれる良本。働いてても2~3日で読み終わる。岩波ジュニア、ほんと素晴らしい。 エピローグとあとがきという僅か数ページに筆者主張のエッセンスが詰まっている。そこでも記載があったけれど、読んで思ったとおり、世界システム論の手法を用いつつ、ミンツの歴史人類学(「歴史上の人々の暮らしの実態をモノや慣習などを通じて詳しく観察しようとする学問」)の観点からアプローチしているようだ。 大きめの文字と短いページ数のなかで、近代大英帝国史とその競合国・植民地などの歴史が見事なスケールをもって論じられていた(各大陸の歴史にも触れられてはいたが、「世界史」というにはやや範囲が狭い感じはある)。
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やはり歴史は人の生活から見ていくのが、私にとっては面白い。砂糖という一つのものが、人の生活をこうも一変させたのかと思うと、今はどうだろうとビクビクしながら考える。人間の今の時計の針に命令されるような生活が始まったのが、奴隷制度の工場からかと思うと、今の時代はみんなが奴隷生活をして...
やはり歴史は人の生活から見ていくのが、私にとっては面白い。砂糖という一つのものが、人の生活をこうも一変させたのかと思うと、今はどうだろうとビクビクしながら考える。人間の今の時計の針に命令されるような生活が始まったのが、奴隷制度の工場からかと思うと、今の時代はみんなが奴隷生活をしているように感じる。なるほど、息苦しいのはそのせいか。 そして、さらに加速度的に変化が早くなるこの世の中はどうなってしまうのだろうと、今後が心配である。
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読書猿さんのおすすめで読み始めたが、コネクティングドットの世界で、素晴らしいのひとこと。こういう世界史を若い頃に学べたらよかったなと思う。 世界は一つの生き物のように繋がっているという「世界システム論」、歴史上の人々の暮らしの実態をモノや慣習などを通じてくわしく観察しようとする「...
読書猿さんのおすすめで読み始めたが、コネクティングドットの世界で、素晴らしいのひとこと。こういう世界史を若い頃に学べたらよかったなと思う。 世界は一つの生き物のように繋がっているという「世界システム論」、歴史上の人々の暮らしの実態をモノや慣習などを通じてくわしく観察しようとする「歴史人類学」によって編まれた傑作。
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題名に惹かれ、「砂糖の世界史ってなんだ!?砂糖を通じて世界史が見えるって面白そう!」という軽い気持ちで読んでみた。読んで良かったなぁと感じる一冊だった。 世界史をあまり真剣に学んでこなかったのと、世界史Aの一部しか履修しなかったこともあり、世界の動きや現代の状態などにもかなり疎い...
題名に惹かれ、「砂糖の世界史ってなんだ!?砂糖を通じて世界史が見えるって面白そう!」という軽い気持ちで読んでみた。読んで良かったなぁと感じる一冊だった。 世界史をあまり真剣に学んでこなかったのと、世界史Aの一部しか履修しなかったこともあり、世界の動きや現代の状態などにもかなり疎い部分がある。しかし今回この本を読むことで、「この時代にこんな気持ちでこう人やモノが動いたんだなぁ」「モノひとつの回りでこんなに色々なことが動いて、文化や経済まで変わっていったんだなぁ」と非常に感動した。加えて、あとがきにもあったが「すべての歴史は現代史である」という言葉を実感するような、今の時代に繋がる知見も多く得られ、「そういう背景があってこの現状があるんだなぁ」と目から鱗だった。 世界史は丸暗記で、どこか古い話・・・なんていうのはきっと思い込みなんだろうなと思い直した。どんな時代も人や国は、隣り合う状況や自分の欲求に合わせて、どうしたらよいだろうと考え、その時の常識や手段に則って行動するだけなのだろう。そのなんとなく生きる今の日常の延長線上に歴史というものが紡がれるのだと気づけただけでもかなりプラスだったなと思う。端的に言ってとても楽しかった。 本分自体は前に行ったり後ろに戻ったり、内容が重複していたりとちょっと読みにくい部分もあるが、後でまとめてすっきりした。
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子供向けの本ではあるが、よくまとめられており分かりやすい。思ったよりも内容が濃く、勉強になった。砂糖のことは、大筋理解できたものと考える。 「砂糖は健康や美容の敵のようにいわれていますが、このような見方は、飢餓で苦しんでいるアフリカなどでは考えられないことですし、日本でも、そん...
子供向けの本ではあるが、よくまとめられており分かりやすい。思ったよりも内容が濃く、勉強になった。砂糖のことは、大筋理解できたものと考える。 「砂糖は健康や美容の敵のようにいわれていますが、このような見方は、飢餓で苦しんでいるアフリカなどでは考えられないことですし、日本でも、そんなことはごく最近のことなのです」p3 「それまで、甘味といえば蜂蜜しか知らなかったヨーロッパ人にとっては、砂糖の強烈な甘さと純白さは、何か神秘的に見えたことでしょう」p18 「砂糖は誰もが好きで、ほとんど無限に市場がありましたから、この高級食材がプランテーションで大量に栽培できるものであることがわかってくると、ポルトガルを先頭にヨーロッパ諸国は、競ってその生産を組織しようとしたのです」p22 「スペインは、アメリカ各地に広大な植民地をもちましたが、アフリカに拠点がなく、奴隷はポルトガルやイギリス、フランスなどから買うしかなかったのです」p27 「16世紀を通じて世界の砂糖生産の中心は、ブラジルでした。労働力としての奴隷をアフリカで獲得できたポルトガルは、砂糖のプランテーションを作ることが容易だったからです」p29 「大西洋を越えて、カリブ海やブラジル、アメリカ合衆国の南部などに運ばれた黒人奴隷は、最低でも1000万人以上と推計されています。中でも、ポルトガル、イギリス、フランスがこの非人道的な商業を熱心に展開したのです」p55 「われわれイギリス人は、世界の商業・金融上、極めて有利な地位にいるために、地球の東の端から持ち込まれた茶に、西の端のカリブ海からもたらされる砂糖を入れて飲むとしても、なお、国産ビールより安上がりになっているのだ」p90 「イギリスでコーヒーが普及しなかった最大の理由は、イギリス領の植民地ではコーヒーが採れなかったために、十分な供給がなかったからだろうと思われます」p114 「ボイコットという言葉は、小作人に厳しすぎたために、小作人からボイコットされた、アイルランド地主ボイコット大佐の名前から生まれた」p122 「主食とおかずの区別のある国は、世界中で少ない」p157 「(砂糖入り紅茶の重要性)18世紀末の段階でも、イギリス人はすでに平均してフランス人の8~9倍の砂糖を消費していました。1970年代の統計によると、平均の砂糖消費量では、イギリス人は、アイルランドやオランダとならんで、世界のトップランクにあり、一人当たり年間およそ47kg強とされています。イギリス人にとって砂糖は、どうでもよい嗜好品などではなく、必需品となったのです」p175
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※このレビューにはネタバレを含みます
「興亡の世界史 大英帝国の経験」「茶の世界史」「興亡の世界史 東インド会社とアジアの海」〜の流れで、ここに至る。 読む順番間違えてる気はするけど、OK 世界のどこでも需要がある「世界商品」としての初の存在。それが「砂糖」 モノの流れの歴史、世界のつながりの歴史、需要が新たな供給を生み、大量の供給が新たな需要を生む。 そして、東洋からもたらされた「茶」と西インド諸島で大量に生産された「砂糖」が英国の労働者階級の常食となるまでの複雑な流れ。 産業革命時の労働者の貴重な栄養源だったのか。 上流階級と労働者階級がそれぞれのスタイルで「紅茶+砂糖」を必要するという独自の文化。 ただね。子供相手にまで洗脳まがいの事してるのかよ!岩波は!って思わざるを得ない表現型た出てくくるので星一つ減。 歴史上の出来事を、現在の価値観で一方的に断ずることは如何かと思うのね。好みでは無い。
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