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文明の生態史観 の商品レビュー

3.9

59件のお客様レビュー

  1. 5つ

    19

  2. 4つ

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  3. 3つ

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2023/11/16

題名のみ見ると小難しそうだったが、内容は西洋と日本の発展の仕方、4大帝国の興りとなど地政学と絡めて書かれていて、著者の視点も含め面白かった。 かなり古い本ではあるが、今でも読んで楽しめる。 鎖国期間がなければ日本も西洋諸国のように植民地化のために外に出ていただろうという一連のお...

題名のみ見ると小難しそうだったが、内容は西洋と日本の発展の仕方、4大帝国の興りとなど地政学と絡めて書かれていて、著者の視点も含め面白かった。 かなり古い本ではあるが、今でも読んで楽しめる。 鎖国期間がなければ日本も西洋諸国のように植民地化のために外に出ていただろうという一連のお話が個人的には一番印象に残っている。 国の発展が、地理的要因によってある意味必然的といったような書き方がすごく新鮮だった。 追記)そうだ、思い出した。イスラエルとハマスの衝突から、パレスチナ情勢が不安定なこのタイミングでこちらの本を読んで、中東や宗教に関する章を読み、筆者は結構"西"寄りだなぁとびっくりした。

Posted byブクログ

2023/09/03

これは名著だ。 歴史とはなんと幾何学的、物理学的なんだろうか。太局的に歴史を見る面白さ。 もし5000年前から歴史をリセットしても、ある程度同じ流れになるのかもと思わされる 1950年代の論考とは信じられない。むちゃくちゃ面白かった、、、、、

Posted byブクログ

2023/06/23

小松左京曰く 「文明の生態史観」は、 戦後提出された最も重要な 「世界史モデル」の一つと見る。 それは、これまで東と西、 アジア対ヨーロッパという、 慣習的な座標軸の中に捉えられてきた 世界史に革命的といっていいほどの 新しい視野をもたらした。   この視野によって複雑に対立...

小松左京曰く 「文明の生態史観」は、 戦後提出された最も重要な 「世界史モデル」の一つと見る。 それは、これまで東と西、 アジア対ヨーロッパという、 慣習的な座標軸の中に捉えられてきた 世界史に革命的といっていいほどの 新しい視野をもたらした。   この視野によって複雑に対立し、 からみ合う世界の各地域の文明が、 はじめてその「生きた現実」の 多様性を保ったまま、 統一的に整理される手がかりが 与えられたといっていい。 歴史家トインビーも、また、 梅棹忠夫に注目していた。 … ここで素材の系譜論にかえろう。 日本が高度の近代文明を 建設しえたということは、 だれでもしっている。 なにを事あたらしく、 という感じもあろう。 しかし、それを日本の近代化の 結果であり、西欧化の結果であると かんがえるならば、問題がある。 日本は文明国になったというけれど、 みんな西欧のまねじゃないか、 というのが、近代化の過程をとおって くるあいだじゅう、日本のインテリの 自尊心をなやませつづけた呪文だった。 この呪文は、いまでも効力がある。 しかし、こういう素朴な血統論は、 あまり深刻にかんがえる必要はないようだ。 全体の生活様式は、ちゃんと 日本むきのパターンにつくられていて、 かならずしも西欧化しているとはいえない。 わたしは、明治維新以来の日本の 近代文明と、西欧近代文明との  関係を、一種の平行進化とみている。 はじめのうちは、日本は たちおくれたのだから仕かたがない。 そうとう大量の西欧的要素を  日本にもってきて、 だいたいのデザインをくみたてた。 あとは運転がはじまる。 ただ西欧から、ものを かってくればよい、というの  ではなかったはずだ。 あたらしい要素の出現のたびに、 全体のシステムは修正され、 成長をつづけてきた。 あたらしい要素は、 西欧からもちこまれる場合もあり、 内部でくふうされた場合もあった。 西欧だっておなじことだ。 はじめから自動車があり、 テレビがあったわけではない。 そういうあたらしい要素が 出現するたびに、西欧流に、 やはりふるいシステムを修正しながら 成長をつづけてきた。 あたらしい要素は、西ヨーロッパの どこかの国に出現する場合もあり、 新大陸からもちこまれる場合もあり、 また、テレビのアンテナの例のように、  はるかにとおい極東の第一地域、 日本からあらわれる場合もあった。  とにかく、日本はかならずしも 西欧化を目ざしていたのではない。   いまでもそうではない。 日本には日本の課題があった。  ただ、西ヨーロッパ諸国と日本とは、  いろいろな点でたいへん条件が  にていたために、平行的な道をあゆんで しまったとみるのである。 その途中で、どちらに由来する  要素がよりおおいかという系譜論は、 じつはあまりたいした  問題ではないようにおもう。 … 梅棹忠夫は、ともかく 視野のスケールが大きな人物だった。 彼は歴史観を提示しただけではない。 他にも、自分が生きた時代に その鋭い洞察で世界を唸らせていた。 この続きは、どこかで話そうと思う。

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2023/04/27

梅棹忠夫氏の本を初めて手に取りました。これまでお名前はよく聞いていたのですが、なかなか作品を読む機会がなく、このたび本屋で偶然目につき購入しました。結論から言うととても満足しています。本書では「文明の生態史観」という論文を始め11本の小論文(というよりエッセイといったほうが良いか...

梅棹忠夫氏の本を初めて手に取りました。これまでお名前はよく聞いていたのですが、なかなか作品を読む機会がなく、このたび本屋で偶然目につき購入しました。結論から言うととても満足しています。本書では「文明の生態史観」という論文を始め11本の小論文(というよりエッセイといったほうが良いかもしれない)が含まれていますが、やはり題名にもなっている「文明の生態史観」が一番基底にあると思います。ご本人もあとがきで、本書は「デッサンのようなものばかり」と記述されていますが、デッサンの割にはとても深いところ、本質を見抜いているのではないかと感銘を受けました。文明の生態史ということですが、地政学的な内容も含んでいるかと思います。本書を読んでマッキンダーの地政学の本を思い出しました。蒙古の西進をはばんでいたのは現ドイツにある奥深い森であり、東進をはばんだのはご存知2度の台風だったわけですが、辺境にあるがゆえに破壊と再生のループから遠ざかっていたということで日本と西欧のアナロジーを分析されているわけです。そして最終章では比較宗教論ということで、仏教とキリスト教が当初はインドとエルサレムで始まったのに対して、両方ともどちらかというと辺境に追いやられ最後の安住の地を得た(仏教にとっての日本とキリスト教にとっての西欧)という共通項も示していてとても興味深く読みました。  最後に個人的に本書内で一番面白かった記述は、「生態史観から見た日本」の中で書かれている日本の知識人評です。梅棹氏にかかると日本の知識人も「現代の高度産業社会の展開によってもたらされた一種の不適応グループ」とのことで、思わず吹き出してしまいました(電車の中でこの記述を読んでいたのですが、本当に吹き出してしまいました)。

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2023/03/12

伝統的な東洋・西洋の見方に一石を投じた理論。著者自身が語っているが、細部を見れば確かに反証できる実例は出てくる。だがしかし、世界を、大枠で、それもイデオロギーではなく生態学という理科的学問をベースに第一世界・第二世界と整理したところに価値がある。 歴史は繰り返すというが、第二世...

伝統的な東洋・西洋の見方に一石を投じた理論。著者自身が語っているが、細部を見れば確かに反証できる実例は出てくる。だがしかし、世界を、大枠で、それもイデオロギーではなく生態学という理科的学問をベースに第一世界・第二世界と整理したところに価値がある。 歴史は繰り返すというが、第二世界、特に乾燥地帯から始まる暴力の連鎖は、再び日本を襲うことがあるのか。第一世界という立地を活かした日本の振る舞いはどうあるべきか。「自由で開かれたインド太平洋」等の日本の今後の道筋、生き残り戦略を考えるにあたって、一つの枠組みを示唆してくれる。 ところで本書の本筋ではないが、ところどころに、梅貞氏流の日本社会への皮肉?が織り込まれていて面白い。特に、なぜ日本の知識人は「べき論」に走るのかについて、現代の知識人層のメンタリティを江戸の武士階級の官僚化に遡りつつ考察し、「しょせん政治家にはなれない人たち」「それにもかかわらず、その意識は一種の為政者意識」「一種の欲求不満の表明であるといえないこともない」と分析しており手厳しい。

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2023/01/31

マクロ的に世界の歴史や今の社会情勢を俯瞰できるヒントをもらえた。 これが60年ほど前に出版されたというのだから驚きである。

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2022/12/23

図書館で借りた。 1960年代に書かれた名著と呼ばれる本。当時では画期的なアフガニスタン~パキスタン~インドを探検して、そこから感じた東洋・西洋の分類や歴史観を論じたもの。著者は生物学を専門とする。 画期的な論文と呼ばれているのを読むことができ、感慨深い。幅広い世界史観を養うに...

図書館で借りた。 1960年代に書かれた名著と呼ばれる本。当時では画期的なアフガニスタン~パキスタン~インドを探検して、そこから感じた東洋・西洋の分類や歴史観を論じたもの。著者は生物学を専門とする。 画期的な論文と呼ばれているのを読むことができ、感慨深い。幅広い世界史観を養うには必読の1冊。 ただ、さすがに50年以上経つと、"感覚の古さ"を感じざるを得ない。結果として世界を2つに分けるのは良いとしても、第2地域などに対してどうも侮辱的と言うか、上から目線と言うか、小馬鹿にしていると感じた。男女平等に近いもので、当時なら許された(と言うより皆が当たり前と思ってた)のだろうが…。文体のせいかもしれない。 マラヤ連邦とか、パキスタンの首都がカラチとか、時代を感じたのは楽しかった。

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2022/10/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

名著の誉れも高い本書であるが、題名からは内容があまり想像できなたかったので今まで敬して遠ざけてきた。 実際に読んでみると、お気楽な紀行文的要素も満載で割合親しく読み進める事ができた。 この史観は、当時の世界の中で、日本がアジア唯一とも言っていい文明の発達を何故に成し得たかを、西洋先進国のありようと比べて分かりやすく説明したものである思うが、その後雨後の筍の様にたくさん出てきた「日本論」の先駆けでもあると思う。 今の時点で考えると特別な事を言っている様には思えないが、最近よく目にする「地政学」の要素も踏まえているし、最後には宗教論を疫病の流行とも関連づけて論考を展開している。てんこ盛りで色々考えさせる本であった。

Posted byブクログ

2022/09/18

評判が良かったので読んでみたのだが、ちょっと期待外れ。特に凄いことを言っているようには全然思えないのだが、70年前はそうではなかったのか? 唯一新しいと感じたのは、封建制を経験しているかどうかでその後の国の在り方が変わってくるということ。確かにこれには皇帝が君臨していた旧世界(準...

評判が良かったので読んでみたのだが、ちょっと期待外れ。特に凄いことを言っているようには全然思えないのだが、70年前はそうではなかったのか? 唯一新しいと感じたのは、封建制を経験しているかどうかでその後の国の在り方が変わってくるということ。確かにこれには皇帝が君臨していた旧世界(準乾燥地域)からの距離も大いに関係してくるだろう。ただ日本が封建制を確立できたのは、土地や水利との結びつきが強い水稲栽培を主産業にしていたことも影響していると思われる。かくの如く全体として論理の組み立て方が粗雑だ。いろんなアナロジーは素人の理解を促す効果はあるものの、姿形や様子が似ていることと根本原理を共有していることは全く別の話である。

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2022/06/28

このように世界史モデルを提示できる日本人がいるとは思っていなかった。 この本には初刷以来、小松左京氏による推薦文が掲げられている。その文章は、「発表後数年を経てなお色あせぬのみか、将来、一層みのりの多い成果が、この視野からもたらされると期待される。」とむすばれているが、この本が刊...

このように世界史モデルを提示できる日本人がいるとは思っていなかった。 この本には初刷以来、小松左京氏による推薦文が掲げられている。その文章は、「発表後数年を経てなお色あせぬのみか、将来、一層みのりの多い成果が、この視野からもたらされると期待される。」とむすばれているが、この本が刊行されたのはなんと1967年であり、数年どころか50年以上を経て今もなおまったく色あせていない。

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