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文明の生態史観 の商品レビュー

3.9

60件のお客様レビュー

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2011/12/18

 『銃・病原菌・鉄』の議論を1955年の時点で先取りしながら、そこで語られなかった日本という立ち位置を明確にしたという点で、今でこそ見直される一冊。いやほんと、何で今までこの本の存在を知らなかったのか後悔させられる。  著者の主張はこうだ。アジア?ヨーロッパについて議論をするとき...

 『銃・病原菌・鉄』の議論を1955年の時点で先取りしながら、そこで語られなかった日本という立ち位置を明確にしたという点で、今でこそ見直される一冊。いやほんと、何で今までこの本の存在を知らなかったのか後悔させられる。  著者の主張はこうだ。アジア?ヨーロッパについて議論をするとき、一般的には「東洋/西洋」という二項対立を念頭に置いているようだが、それではインドやイスラム諸国といった「中洋」の世界をないがしろにしている。そうではなく、ユーラシア大陸を楕円としてとらえ、その両端が現代において高度の近代文明を有する第一地域とし、それ以外の広大な大陸部分を第二地域として考えたほうが良いのではないか。第二地域ではかつて帝国が栄えたが没落し、今では乾燥部分が地域の多くを占めている。反対に、第一地域は温暖な気候で環境が安定しており、それゆえ文明の発信地にはなりにくいものの、第二地域の混乱からまぬがれて、結果とて封建制からの発展として資本主義先進国として成り立つ事が出来たのだ。  文化の成立には、環境というものが大きな要因として存在している?この考え方は先に挙げた『銃・病原菌・鉄』の著者であるジャレ・ダイアモンド氏と同様だ。しかし、梅棹忠夫氏は更に一歩進んで、宗教までもその射程に捉えようとする。宗教の伝播を疫学アナロジーとして見ることでその伝播のされ方を分析し、地政学的な対比から仏教とキリスト教を対比させようとするその視点は、とにかく刺激的。文章はあくまでも平坦に、読みやすく書かれているのに関わらず、読み手はひたすら頭脳を刺激されるという、理想的な読書体験がここにはある。

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2011/11/26

「梅棹忠夫著作集は22巻あるが彼の論文は『文明の生態史論』一編に止めを刺す」、成程なぁ。何十年経っても色褪せない名著だと思う。

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2011/04/08

近代文明である西洋と日本を第一地域、それ以外の場所を第二地域と規定する有名な史観は、現在から考えると乱暴に思える。もう少し説得力のがほしいが当時の資料不足を考えると仕方のないことかもしれない。ただ、東西洋の比較が絶対的だった時代にこれを唱え、さらに東南アジアに目を向けた作者の発想...

近代文明である西洋と日本を第一地域、それ以外の場所を第二地域と規定する有名な史観は、現在から考えると乱暴に思える。もう少し説得力のがほしいが当時の資料不足を考えると仕方のないことかもしれない。ただ、東西洋の比較が絶対的だった時代にこれを唱え、さらに東南アジアに目を向けた作者の発想力に驚きを覚える。

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2011/03/13

著者はユーラシア大陸をその両極に位置する第一地域(欧州と日本)と中央に位置する第二地域に区分する。 第一地域は高度の近代文明を発達させてきた地域で、封建制度から革命を経て高度資本主義に至った。封建制度は個人の自覚を高め、政治意識を持つが直接政治には携わらない知識人を作り出し、内...

著者はユーラシア大陸をその両極に位置する第一地域(欧州と日本)と中央に位置する第二地域に区分する。 第一地域は高度の近代文明を発達させてきた地域で、封建制度から革命を経て高度資本主義に至った。封建制度は個人の自覚を高め、政治意識を持つが直接政治には携わらない知識人を作り出し、内部からの力で国を発展させる役割を果たした。また、気候に恵まれいたこと、端にあることから、暴力に曝されにくく、ぬくぬくと温室育ちできたことも発展できた理由であるという。 第二地域では、対照的に資本主義は未成熟だ。専制君主による統治や植民地体制が革命を経て、独裁制に至った。これらの地域は外部からの力で変化を促されてきた。また、破壊と征服の歴史を繰り返しており、暴力で栄える半面、常に暴力に曝される危険性も持ち合わせ、エネルギーが無駄に使われることが多かった。加えて家族は巨大な血縁集団として存在するため、法律が馴染まないという面もある。 この本は厳密な論理を構築したものではなく、著者が現地で直接見てきたものを基に、簡潔に述べているにすぎないのだが、現実に符合していると思われることが多く、それゆえに一種の古典的立場を獲得したのだろう。

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2011/03/10

発想は面白いし、文明の発展についての一般モデルを提示しようとする意気は素敵。でもこんなに実証が足りなかったら、理論としては受け容れるとか以前の問題と思う。一般向けの本がないだけで、専門誌の論文は出てたのかしら。実証研究さえあれば、発想としては世界規模に検討されうる内容と感じたので...

発想は面白いし、文明の発展についての一般モデルを提示しようとする意気は素敵。でもこんなに実証が足りなかったら、理論としては受け容れるとか以前の問題と思う。一般向けの本がないだけで、専門誌の論文は出てたのかしら。実証研究さえあれば、発想としては世界規模に検討されうる内容と感じたので、そこだけ気になった。

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2011/03/03

 わたしたちは往々にして、西洋と東洋に2分して考えるという単純化をしてしまいがちである。しかし、実はそうした簡略化はわかりやすいだけであって、それ以上のものではないのである。別の視点を著者は提唱する。それは、第一地域 (主に西ヨーロッパ・日本を中心とするグループ)と第二地域(ロシ...

 わたしたちは往々にして、西洋と東洋に2分して考えるという単純化をしてしまいがちである。しかし、実はそうした簡略化はわかりやすいだけであって、それ以上のものではないのである。別の視点を著者は提唱する。それは、第一地域 (主に西ヨーロッパ・日本を中心とするグループ)と第二地域(ロシアトルコ・インド・中国・イスラム圏その周辺の小国)という見方である。前者は歴史的に封建制を経験しているためブルジョア階級の存在が資本主義の発展を牽引した結果の近代的文明国であるのに対し、後者は独裁色のつよい政体のもとで、革命と再生それに伴う伝統の残留の歴史を繰り返している国である。また前者は地域的に豊富な気候条件、環境条件を有していたため、似たような発展を遂げたのである。つまり、日本は西洋化によって、文明国になったのではなく、西洋と似たような条件と事情をもっていたために、西洋と平行的に発展したのであるという説である。対して、第二地域は、気候的にも乾燥、悪条件、人口なども問題が質的に異なるため第一地域と同様の発展を遂げることは極めて困難なのである。 東洋・西洋・中洋(イスラム世界・インドなど)という分け方は非常に納得腹に落ちる認識の方法であるように思った。

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2011/01/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

世界は日本や西欧の第一地域とそれ以外の第二地域に分かれ、第二地域は建設と破壊を繰り返したのに対し、第一地域は平穏な地域であり、封建制から高度資本主義へと発展した。第二地域が同様の成長軌道に乗らなかったのは乾燥地帯から現れる破壊的遊牧民とその流れを汲む暴力的集団のせいである。暴力に備えるために大きな生産力の浪費が行われた。そして、この暴力を克服すると、今度は第一地域からの侵略に見舞われた。 軸は違うがマルコムグラッドウェルの天才!ににた感じがした。人や文明がその時々のたまたま置かれた環境に大きく左右されるという意味で。

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2011/01/02

極西の欧州と極東の日本を地理学的に並列して、その成り立ちについて考察する文明比較論。都市が形成されるずっと前から、立地的要因が、その地域の文化形成そのものを決定づけていると歌った本。こんな個性を持った学者あまりいない。

Posted byブクログ

2010/11/24

インド、パキスタンなどを訪れ、日本の文化、生活慣習との違いの大きさに驚き、西洋と東洋という一般的な分類に疑問を感じた著者が、別の視点から考察したもの。

Posted byブクログ

2023/11/02

10.9.23 トナメール ある出来事に対する反応は似ていて同じような行動パタンをとります。 経路依存性や国柄や民族のDNAの影響を受けいてて社会的動物として同類なのです。梅棹忠夫『文明の生態史観』のいう乾燥地帯へのガバナンスの難しさから来ているのでしょう。

Posted byブクログ