文明の生態史観 の商品レビュー
西洋と東洋の端、日本をパラレルな軸で描いた人類史? 簡単に言ってしまえば両端を担うこの二者は近代化に成功した国々である。 その背景には、ブルジョアの存在、封建制が強く影響している。 逆に中洋については古くからの帝国が亡霊のように歴史を支配しており、 世界大戦を経てもなかなか国のコ...
西洋と東洋の端、日本をパラレルな軸で描いた人類史? 簡単に言ってしまえば両端を担うこの二者は近代化に成功した国々である。 その背景には、ブルジョアの存在、封建制が強く影響している。 逆に中洋については古くからの帝国が亡霊のように歴史を支配しており、 世界大戦を経てもなかなか国のコントロールがしづらい環境にあった。 中洋と対比させることで西洋と日本の文明進化の過程を描いていくのが、興味深かった。 ただ筆者があとがきにも書いているが、 デッサンのような荒削りな部分が多く、抽象的な印象を受ける。 それでも、言われていることに説得力がないわけではない。 1955年当時、誰もが知りたがっていたであろう 高度経済成長の日本の、立ち位置、行く末を面白い視点で描いている。
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マクロの概念の真実をとらえうる希有な存在であると思うが、あまりにも記述に根拠を先送りしすぎている。これを補完する書籍を読んでいないとすると私の過失であるが、もしこれで第一世界、第二世界を述べきっているならば、現在の状況に合わせて再考する必要が現在の研究者には必要な作業であると思う...
マクロの概念の真実をとらえうる希有な存在であると思うが、あまりにも記述に根拠を先送りしすぎている。これを補完する書籍を読んでいないとすると私の過失であるが、もしこれで第一世界、第二世界を述べきっているならば、現在の状況に合わせて再考する必要が現在の研究者には必要な作業であると思う。 疫学史と宗教との関係性に着眼した点が、非常に興味深い。これからはモード2は当たり前であり、新たにモード3の構築などもあり得るのかもしれない。もしくは既にあるのかもしれない。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
半世紀以上も前に書かれた本にも関わらず、今の自分にも迫ってくる内容であった。 海外と日本の話をするときに、西洋と東洋(日本)として論じてしまう傾向は今尚続いているのではないか。大泉啓一郎『消費するアジア』といった本が登場しているように、東南アジアの存在感がますます大きくなりつつある状況においても、実際のアジアについて知っている人はどの程度いるのだろうか。西洋、東洋の間に広がる「中洋」について、知っていく必要を強く感じた。 文明と社会的構造、地理的状況の関係性が中心に論じられているわけだが「比較宗教論への方法論的おぼえがき」で述べられているように、人は知というものを独立に考え過ぎる嫌いがあるかもしれない。社会や土地や歴史の影響を知も受けているはずである。和辻哲郎の『風土』にもつながるが、知の在り方と他の要因の関係についても注目する必要があると思った。
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この本をテーマとするスレ 梅棹忠夫「文明の生態史観序説」を語るスレ http://awabi.2ch.net/test/read.cgi/whis/1295154025/l50
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歴史とは人間と土地の相互作用の進行のあとであり、主体環境系の自己運動のあとであるという生態学の観点では、西洋・東洋ではなく、乾燥地域の有無による第一地域・第二地域(辺境・中洋)というカテゴリーに分かれるというのは斬新で思い切った考えである。これが50年以上も前に書かれているという...
歴史とは人間と土地の相互作用の進行のあとであり、主体環境系の自己運動のあとであるという生態学の観点では、西洋・東洋ではなく、乾燥地域の有無による第一地域・第二地域(辺境・中洋)というカテゴリーに分かれるというのは斬新で思い切った考えである。これが50年以上も前に書かれているというのも驚き。 「日本辺境論」は本書をベースに書かれ大変話題になったが、やはり元ネタの方が面白い。こちらも是非読むべきだ。が、少々荒削りというか、論文・講演の寄せ集めになっているので、書籍としてのまとまりはないのが難点。 中洋ではインテリ=為政者だが、辺境では近代化による両者の分離が進み、知識人が量産された事により、結果為政者になれないインテリが溢れ、特に日本の知識人は理論的関心より実践的関心が強く(「べき」を問題にする)、統治できない欲求不満を政治談議で表明している指摘は、ネット社会において更に露呈し、益々加速しているように思える。
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ずっと名前だけは知っていたが初めて著作を読んで、おおお、と思った。こういうことを言っている人に出会ったのは初めてだった。むずかしい言葉を使っているわけではないがそこに書かれていることは大胆で斬新で、わくわくした。 「情報の文明学」ではその先見性に驚いたし、みんぱくのウメサオタダ...
ずっと名前だけは知っていたが初めて著作を読んで、おおお、と思った。こういうことを言っている人に出会ったのは初めてだった。むずかしい言葉を使っているわけではないがそこに書かれていることは大胆で斬新で、わくわくした。 「情報の文明学」ではその先見性に驚いたし、みんぱくのウメサオタダオ展にも行って、とにかくオンリーワンな人だ、すごい!と思う。天才なのは確かだが、ただ頭が良くて個性的なだけではなくて、なんともいえない魅力がある。
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生態史学的な観点を用いて文化を考察することを提案した名著。あとがきにもある通り、この本では具体的考察はやや乏しいが、著者の所属がまだいわゆる理系だったころの論文らを集めているので、仕方ない部分もある。それでも示唆に富んでいるし、色あせることはない。
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ここ数年の内外の環境変化が多い中、色々と模索する内に出会った書籍。 現代史を適当にごまかして教育された世代として【視点造り】として、こういった視点を探していました。 戦後10年を経た時代に書かれていてどれだけ当時の日本人としての誇りを取り戻したことでしょう。 今、読んでみてもかな...
ここ数年の内外の環境変化が多い中、色々と模索する内に出会った書籍。 現代史を適当にごまかして教育された世代として【視点造り】として、こういった視点を探していました。 戦後10年を経た時代に書かれていてどれだけ当時の日本人としての誇りを取り戻したことでしょう。 今、読んでみてもかなり多くを示唆してくれる内容となっている。 簡潔明快にしてわかりやすく人に伝えるというのが大切と再認識させてくれる良書です。
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文明の発達に関する理論的枠組みの提案である。 ここで彼がユニークなのは群としてとらえる発想なのだけれど 帰納的なこのアプローチが日の目を見るためには あまりにも地球というフィールドが狭すぎた。 宇宙に飛び出して別の星系での文明の発達過程が観察出来れば その時、本書は再び蘇るだろ...
文明の発達に関する理論的枠組みの提案である。 ここで彼がユニークなのは群としてとらえる発想なのだけれど 帰納的なこのアプローチが日の目を見るためには あまりにも地球というフィールドが狭すぎた。 宇宙に飛び出して別の星系での文明の発達過程が観察出来れば その時、本書は再び蘇るだろう。 (いや、宇宙人のほうが先にこの理論を作ったとか言い出すかもね) この発想の面白さもさることながら 著者の国内学者に向ける視線に味があって これもまた一興である。
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『銃・病原菌・鉄』の議論を1955年の時点で先取りしながら、そこで語られなかった日本という立ち位置を明確にしたという点で、今でこそ見直される一冊。いやほんと、何で今までこの本の存在を知らなかったのか後悔させられる。 著者の主張はこうだ。アジア?ヨーロッパについて議論をするとき...
『銃・病原菌・鉄』の議論を1955年の時点で先取りしながら、そこで語られなかった日本という立ち位置を明確にしたという点で、今でこそ見直される一冊。いやほんと、何で今までこの本の存在を知らなかったのか後悔させられる。 著者の主張はこうだ。アジア?ヨーロッパについて議論をするとき、一般的には「東洋/西洋」という二項対立を念頭に置いているようだが、それではインドやイスラム諸国といった「中洋」の世界をないがしろにしている。そうではなく、ユーラシア大陸を楕円としてとらえ、その両端が現代において高度の近代文明を有する第一地域とし、それ以外の広大な大陸部分を第二地域として考えたほうが良いのではないか。第二地域ではかつて帝国が栄えたが没落し、今では乾燥部分が地域の多くを占めている。反対に、第一地域は温暖な気候で環境が安定しており、それゆえ文明の発信地にはなりにくいものの、第二地域の混乱からまぬがれて、結果とて封建制からの発展として資本主義先進国として成り立つ事が出来たのだ。 文化の成立には、環境というものが大きな要因として存在している?この考え方は先に挙げた『銃・病原菌・鉄』の著者であるジャレ・ダイアモンド氏と同様だ。しかし、梅棹忠夫氏は更に一歩進んで、宗教までもその射程に捉えようとする。宗教の伝播を疫学アナロジーとして見ることでその伝播のされ方を分析し、地政学的な対比から仏教とキリスト教を対比させようとするその視点は、とにかく刺激的。文章はあくまでも平坦に、読みやすく書かれているのに関わらず、読み手はひたすら頭脳を刺激されるという、理想的な読書体験がここにはある。
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