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文明の生態史観 の商品レビュー

3.9

60件のお客様レビュー

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2018/11/04

・インドの歴史は、東よりも西との交渉の歴史である。チムールも、ムガル王朝をひらいたバーブル帝も、モンゴル人の子孫だと称してやってきたが、要するに西からの侵入者であって、東アジアにおけるモンゴル族とは関係ない ・日本人の大多数の知識人には、政権担当の機会などおとずれてこないが、その...

・インドの歴史は、東よりも西との交渉の歴史である。チムールも、ムガル王朝をひらいたバーブル帝も、モンゴル人の子孫だと称してやってきたが、要するに西からの侵入者であって、東アジアにおけるモンゴル族とは関係ない ・日本人の大多数の知識人には、政権担当の機会などおとずれてこないが、その意識は、一種の為政者意識というべきものになっている ・旧世界の生態学的構造をみると、西ヨーロッパ・日本という暴力の源泉から遠い第一地域、侵入者による暴力と破壊を繰り返した第二地域、その第二地域のなかに、四つの大共同体-中国世界、インド世界、ロシア世界、地中海・イスラーム世界-がある ・宗教についていえば、いったいどういうわけで、こんなものが発生したのか。宗教というものは、人類にとってたしかに必要なものなのか。宗教のない社会というものは考えることができないのか ・たいていの宗教は、その発生の端緒において、すでに病気と関係していることが多いのである。それは、仏教やキリスト教のような、世界的大宗教といえども例外ではない

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2018/09/02

従来とは違う切り口を用いて考える、という点で面白かった 戦後日本がどのように進むかを考えざるを得ないタイミングだからこそ出てきた考え方なのかしら 人間の成長モデルを考える際にも参考になるかも

Posted byブクログ

2018/01/05

日本を語るときに、私たちの念頭にあるものとして「比較対象としての西洋」という考え方は、ちょっと貧弱なのではないでしょうか。本書では、著者がオリエント世界からインドを回って感じたことからきっかけに、西洋と東洋以外に、中洋という概念を提案されています。そしてそこからの各文明の比較を生...

日本を語るときに、私たちの念頭にあるものとして「比較対象としての西洋」という考え方は、ちょっと貧弱なのではないでしょうか。本書では、著者がオリエント世界からインドを回って感じたことからきっかけに、西洋と東洋以外に、中洋という概念を提案されています。そしてそこからの各文明の比較を生態史という形で語られています。論として固まった考え方ではなく、これからこういった研究を行なって行きたいというきっかけ、気づきが書かれています。そのきっかけをどのように得たのかという下りは、各地を実際に旅した著者の感覚に沿って書かれているので非常に面白かったです。読んだら、きっと旅をしたくなると思います。それもただの観光旅行ではなく、少しの学術的な感覚をもって。 文明(後半で宗教を一例に書かれていました)の性質というものについての思考のきっかけが溢れる内容で、これほど自由に物事を考えられることがすごいと思うとともに、楽しいと感じながら読ませていただきました。

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2017/11/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

上司に紹介というか、上司の蔵書にあった一冊をお借りしたもの。世界史が苦手な自分でも、分かりやすく読めました。 世界を大きく三つに切り分けて、それぞれの地域における文明史を実地での研究を踏まえて書かれています。 この方、他に「知的生産性の向上」という本も出されているそうなので、いつか読みたいと思います。

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2017/05/28

以前から読もうと思い、やっと手に取った。 読みはじめ、それほどインパクトを感じなかったのは、すでに浸透した考えだからか。 読み進めると、発想の大胆さ、核心の捉え方、概念にまとめ提示する力を感じた。 ただし、著者の時代で切り取った世界の類型であったかもしれない。 今なお通じるとこ...

以前から読もうと思い、やっと手に取った。 読みはじめ、それほどインパクトを感じなかったのは、すでに浸透した考えだからか。 読み進めると、発想の大胆さ、核心の捉え方、概念にまとめ提示する力を感じた。 ただし、著者の時代で切り取った世界の類型であったかもしれない。 今なお通じるところ、通じないところは。

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2017/01/25

改めてスゴイ本。シンプルに大胆にユーラシア大陸をケーキにナイフを入れるように切り分けます。一歩間違えばトンデモ本みたいになるのに、それを感じさせないのは著者が実際に歩く人だからこその学術性によるのか?あるいは短い文章の繰り返しが生み出す文学性によるのか?とにかく梅棹忠夫が見せてく...

改めてスゴイ本。シンプルに大胆にユーラシア大陸をケーキにナイフを入れるように切り分けます。一歩間違えばトンデモ本みたいになるのに、それを感じさせないのは著者が実際に歩く人だからこその学術性によるのか?あるいは短い文章の繰り返しが生み出す文学性によるのか?とにかく梅棹忠夫が見せてくれる明るくロマンチックな客観性は、なんとなくモヤモヤしている今という時代にも晴れ晴れとした気持ちを与えてくれます。たぶん終戦からそれほど経っていない出版当時の日本人にとってもこの本は坂の上の雲的な清々しさが新鮮で大ベストセラーになったのだと思います。どうなるか誰も言えない2017年新年に古いけど新しい地図を手に入れました。

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2016/08/31

著者のアジアの国々へフィールドワークした成果を学者でない私にも読みやすい旅行記風にした学者の考察。 インドからアフガニスタンをアジアではなく、東洋と西洋の中洋という表現は、本当に納得しました。 一見、古くなってしまった作品であるが、博識で鋭い分析力をもった著者の考察は、古さを感じ...

著者のアジアの国々へフィールドワークした成果を学者でない私にも読みやすい旅行記風にした学者の考察。 インドからアフガニスタンをアジアではなく、東洋と西洋の中洋という表現は、本当に納得しました。 一見、古くなってしまった作品であるが、博識で鋭い分析力をもった著者の考察は、古さを感じない。著者が観た時に、発展途上国であったアジアの国々へ海外旅行・赴任する人にとっても、より深い国民性を知り得る教科書の1つだと思う。

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2016/01/13

本書には、1957年に『中央公論』に発表された「文明の生態史観」ほか、文明論に関する10篇の論考が収められ、1967年発刊、1974年に文庫化された。 「文明の生態史観」は、世界史理論に関して、戦後に提出された最も重要なモデルの一つと言われるが、その主たる主張は以下である。 ◆日...

本書には、1957年に『中央公論』に発表された「文明の生態史観」ほか、文明論に関する10篇の論考が収められ、1967年発刊、1974年に文庫化された。 「文明の生態史観」は、世界史理論に関して、戦後に提出された最も重要なモデルの一つと言われるが、その主たる主張は以下である。 ◆日本は、地理的な座標で考えればアジアに属するが、日本の文明は特異に高度化しており、東洋という枠組みには到底おさまらない。世界を西洋と東洋とに類別することはナンセンスである。 ◆文明の発達の度合いを主軸に世界を第一地域、第二地域に分けると、西ヨーロッパと日本が第一地域、それ以外のユーラシア大陸全土が第二地域となる。第二地域では、あちこちに巨大な帝国が成立するが、それが建設と破壊を繰り返すに留まる一方、第一地域では、気候に恵まれ、辺境に位置するが故に第二地域からの攻撃を受けにくく、第二地域よりは発展が遅いものの、安定的で高度な社会を形成できる。 ◆社会の発展には法則があるが、その発展を一本道と考える(=進化史観、唯物史観)のはナンセンスであり、生態学と同様に、地域により違った発展がありうると考える(=生態史観)べきである。 当時、この理論は大きな反響を呼び、その後、川勝平太『文明の海洋史観』、安田喜憲『文明の環境史観』など、様々な観点から本論を発展・応用した論考が発表されたという。 一方で、反論も少なくなく、第一地域の自生的発展への疑問や、米州が無視されていたり、東南アジアが第二地域に分類されることへの違和感などの地域についての異論もあったという。 少々ラフな考察という印象は拭えないが、西洋的世界観に風穴を開けた理論として、読み継がれるべきものと思う。 (2009年12月了)

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2016/01/01

体験記と梅棹忠夫の論文の解説。 日本とヨーロッパを第一文明とし、世界を大局的に捉えて進歩を解くのが面白い ダーウィンの進化論と異なり場所における歴史観を言っている

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2014/02/22

著者の主張する「文明の生態史観」とは、マルクス主義に基づく単線的進歩史観を批判し、人類の歴史を人間と土地との相互作用による遷移として捉える見方です。 著者は、ユーラシア大陸の文明を二つに区分して、東西の端に位置する西ヨーロッパと日本を「第一地域」と呼び、その間に位置する広大な文...

著者の主張する「文明の生態史観」とは、マルクス主義に基づく単線的進歩史観を批判し、人類の歴史を人間と土地との相互作用による遷移として捉える見方です。 著者は、ユーラシア大陸の文明を二つに区分して、東西の端に位置する西ヨーロッパと日本を「第一地域」と呼び、その間に位置する広大な文明圏を「第二地域」と呼んでいます。第二地域は、大陸の中央にある砂漠地帯からやって来る遊牧民による侵略をくり返し受けてきました。これに対して、砂漠地帯から離れた第一地域には、封建制など近代化の礎となる制度や文化が共通して見られることに著者は注目しています。こうした二つの地域の性格の違いから、文明の成立と発展を捉えなおそうとしています。 本書は日本論の古典として位置づけられることも多いようですが、著者によれば、本書に収められた「文明の生態史観叙説」は、日本論ではなく、世界の文明史を生態学的な視点から考察するという、より広い見地から展開された論考であるとのことです。とはいえ、著者がこのような文明史のモデルを編み出すに至った背景には、なぜアジアの諸地域の中で日本だけが近代化に成功したのか、という問いがあり、その意味で本書を日本論として捉えることも、当時の状況の中では一定の必然性があったように思います。

Posted byブクログ