村上春樹、河合隼雄に会いにいく の商品レビュー
「(心理療法において)すべて分析して言語化しないと治らないというのはおかしい。また、言語で分析する方法は、下手をすると、傷を深くするときだってあるんです」(河合隼雄) 「日本語でものを書くということは、結局、思考システムとしては日本語なんでねす。日本語自体は日本で生み出されたも...
「(心理療法において)すべて分析して言語化しないと治らないというのはおかしい。また、言語で分析する方法は、下手をすると、傷を深くするときだってあるんです」(河合隼雄) 「日本語でものを書くということは、結局、思考システムとしては日本語なんでねす。日本語自体は日本で生み出されたものだから、にほんというものと分離不可能なんですね。そしてどう転んでも、やはりぼくは英語で小説は書けない、」(村上春樹) 「コミットメントというのは何かというと、人と人との関わり合いだと思うのだけれど、これまでにあるような、『あなたの言っていることはわかるわかる、じゃ、手をつなごう』というのではなくて、『井戸』を掘って掘って掘っていくと、そこでまったくつながるはずのない壁を超えてつながる、というコミットメントのありように、ぼくは非常に惹かれたのだと思うのです」(村上春樹)
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深いところへアプローチする2人の姿勢が共鳴しあい、精神的に深いところですごく噛み合って進行していく. 両人とも物語に深く関わる職業だからだろう. とても噛み合っているので、対談なのにの1人の人間が書いたものを読んだような読後感である. 大成功の対談だと思う.
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一気によむ。やめられなかった。僕に「関係」する本。ねじまき鳥クロニクルの背景について、多く村上春樹は語っている。河合隼雄のコメントがすごい。光が見える。 「日本人は(韓国などの)ファミリー・エゴともまた違って、フィールド・アイデンティティで、その場その場をアイデンティティの基礎...
一気によむ。やめられなかった。僕に「関係」する本。ねじまき鳥クロニクルの背景について、多く村上春樹は語っている。河合隼雄のコメントがすごい。光が見える。 「日本人は(韓国などの)ファミリー・エゴともまた違って、フィールド・アイデンティティで、その場その場をアイデンティティの基礎にしてしまうという、非常におもしろい性質をもっているから、会社をフィールドにしたり、家庭をフィールドにしたりで、その都度うまくやっているのですね。」ーP66, 「ずるさの加減はどうなのかとか、ずるくなることの弊害はないかとかもっと探求して、ずるさを洗練しなければいかんのですね。それを日本人は、自分たちはずるいやり方でやっているんだと言わずにずるいことをしているから、非難されても防戦一方になりますね。ぼくがずるさと言っているのは、もう少し違う言い方をすると、人間の思想とか、政治的立場とか、そういうものを論理的整合性だけで守ろうとするのはもう終わりだ、というのが僕の考え方なのです。人間はすごく矛盾しているんだから、いかなる矛盾を自分が抱えているかということを基礎に据えてものを言っていく、それは外見的に見るとやっぱりずるいわけですね」ーP74、「(オームが提示したイメージに)ものすごい稚拙ですよ。それはなぜかというと、イメージに関わる訓練がなさすぎたということです。つまりオウムに入った人たちが習ってきたのはお勉強でしょう。お勉強ではイメージは離れるものなのです。イメージを豊富に持っている人は、お勉強ができないんですよ」ーP87, 「村上:夫婦というのは一種の相互治療的な意味はあるのですか。河合:ものすごくあると思います。だから、苦しみも大変に深いんじゃないでしょうか。夫婦が相手を理解しようと思ったら、理性だけで話し合うのではなく、井戸を掘らないとだめなのです」ーP96, 「河合:若いあいだは性的な関係はすごく大事だし、治癒作用を持っているけど、それだけではもういけないですね。村上:その時点で井戸掘りに移行できない人は、別の性的治癒に走るのですか。河合:そうそう、どこかで探して、別の性的関係を結ぶとか、日本だったら家庭内離婚というやつになるのですね、心の中では離婚しているけど、いちおう同じ家に住んでいるという。もう一つあるのは、日本人の場合は、異性を通じて自分の世界を広めるということを、もうすっかりやめてしまうというのもあるんですね。細かいことを調べて学者になっているとか。エロスが違う方向に向いているのです。」ーP107、 「ぼくは何をしているかというと、偶然待ちの商売をしているのです。みんな偶然を待つ力がないから、何か必然的な方法で直そうとして、全部失敗するのです。」ーP148、 「村上:僕が日本の社会を見て思うのは、痛みというか、苦痛のない正しさは意味のない正しさだと言うことです。たとえば、フランスの核実験にみんな反対する。たしかに言っていることは正しいのですが、だれも痛みを引き受けていないですね。」ーP207
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まぁもう少し読み砕いてから、 レビューを記載しようかなと思う。 最近村上春樹を読むようになり、 何でこの人はこんなにもてはやされているのか、が分からずなんだかもやもやしたまま彼の作品に触れていた。 で、ふと気づいた。 わたしは、「村上春樹目線」で、本を読んでいるん...
まぁもう少し読み砕いてから、 レビューを記載しようかなと思う。 最近村上春樹を読むようになり、 何でこの人はこんなにもてはやされているのか、が分からずなんだかもやもやしたまま彼の作品に触れていた。 で、ふと気づいた。 わたしは、「村上春樹目線」で、本を読んでいるんじゃねーかと。 まぁまだあんまり読んでないんだけどさ、 普通作品読んでも、「主人公は◯◯です。」という内容があったら、私はその設定を受け入れて、本を読んでいくのだけど、 村上春樹さんの作品は、何を読んでも(今のところ)お話を通した「村上春樹」という存在を気にかけてしまっているというかね。 「僕」と発する主人公は「『僕』と発している村上春樹」なんだ、と思いながら読んでいる自分がいます。 それがなんだか、他の作家さんと違うところな気がして…そんなこと語り尽くされていることなのかもしれないけどさ…わたしは「なんかよく入り込めない、そしてそれが良いのかどうかわからない、作品」なのだと思った。 有名にして、王道ではない特異な作家、という今のところの彼の位置づけについて、また今度考えてみようと思う。覚えてたら。
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・「わたしは先生といっしょに寝たら治るんです」という女性の患者さんに対し、先生は、それを拒否するでも否定するでもなく、 「あなたの言ってることは正しい、そのとおりだろうけれども、人間は正しいことばかりして生きておられない。ぼくは残念ながら、その正しいことができない」「人間としてできるよい方法を考え出してゆこう」 とおっしゃったそう。さらに、「相手の方も、必死になって言っておられる」「それはもっと大切なことを表現するためのひとつの方法」と続けている。このくだりを読んで、この先生はすごいと思った。どこまでも患者さんの心に寄り添うその姿勢に救われる思いがした。 ・本文と解説文のようなものが上下にふたつ並んでいて、どう読み進めたらよいのかわからず、ちょっと読みづらかった。
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人間にとって物語とは何か.現代を生きることと物語の可能性をめぐって,最も深い場所から人間をみつめる2人が,徹底的に語り合う.現代文学から恋愛,家族,さらに阪神大震災やオウム事件といった問題まで,話題は縦横に展開.『世界』掲載時に話題となった連載に加筆,新たに詳細な補注を書下し,個の新たな生き方を問う 村上春樹が語るアメリカ体験や’60年代学生紛争、オウム事件と阪神大震災の衝撃を、河合隼雄は深く受けとめ、箱庭療法の奥深さや、一人一人が独自の「物語」を生きることの重要さを訴える。「個人は日本歴史といかに結びつくか」から「結婚生活の勘どころ」まで、現場の最先端からの思索はやがて、疲弊した日本社会こそ、いまポジティブな転換点にあることを浮き彫りにする。 河合「しかし、治るばかりが能じゃないんですよ。そうでしょう。生きることが大事なんだから。そこがひとつ大事なところです」 「あなたの言っていることは正しい、そのとおりだろうけども、人間は正しいことばかりして生きておられない。ぼくは残念ながら、その正しいことができない」 河合先生のいつも正論とか正義とかをいちばんにしてないところとか、人情っていうか人間の必ずしも割り切れない感情だったり人間味を大切にしてくれるとこが、信頼できるいいところだなーと感じるんだけど、そのよさが詰まってて安心できる本だった。 村上「苦痛のない正しさは、意味のない正しさというふうに僕には感じられる。どうすればその正しさを自分自身のものとして身につけられるかを考えてコミットしている。とにかく動かないことには意味がないんだというふうにはどうしても思えない」 さいきんの尖閣諸島に関する中国との関係や脱原発を叫んデモを行っている人々を見るにつけて、感じていたもやもやをうまく言葉にして表しているというか、感情を言語化するのは難しいと対談でも語ってたのにやはりプロだなーと思うと同時に同じように感じている人がいて、それが村上春樹でうれしいとおもった。 触らぬ神に祟りなしというわけじゃないけれど、やはり争いや災害の渦中にいるというよりは一歩引いて物事を見るタイプの人間なんだろうなと思った。
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この本は、臨床心理学者の河合隼雄さんと、作家の村上春樹さんの対談を記したものである。大変意外だが、このお二人はそれぞれ人見知り、口下手であるそうだ。しかし、話は驚くほどかみ合い、さらにお二人の専門分野の知識や経験が合わさってとても深い内容の対談になっている。
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河合隼雄との対談集。ねじまき鳥クロニクルと並行して読むこと、お奨めです。 もう、14年くらい前の本ですが、この本で書かれた問題はむしろ深刻化していると思われます。 現代に生きる、特に若い人は一読することを勧めます。
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ねじまき鳥の経緯、背景が書かれているし、自己とどのように向き合っていくかという命題に対する示唆に富んでいる。
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話し合いのテーマは非常に興味深く(夫婦の問題からノモンハンまで)、そうなのかとうなずきながら読めたのですが、対談を文字にした文章だとスッと頭に入ってくる感じがなくて消化不良を起こしました。自分の読解力・想像力が不足しているだけかもしれませんが。
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