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ヴェネツィアの宿 の商品レビュー

4.1

57件のお客様レビュー

  1. 5つ

    20

  2. 4つ

    18

  3. 3つ

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2011/09/29

9/29 読了。 エッセイも表現力を突き詰めると最高の短編になる、いやこの世で最も優れた小説とはエッセイであるべきなのかもしれない。そう思わせる須賀さんの文章。ひとつひとつは断片的なエピソードなのに、読み進むたびに熱がだんだんと上がっていく構成も素晴らしい。「透明な蜜を流したよう...

9/29 読了。 エッセイも表現力を突き詰めると最高の短編になる、いやこの世で最も優れた小説とはエッセイであるべきなのかもしれない。そう思わせる須賀さんの文章。ひとつひとつは断片的なエピソードなのに、読み進むたびに熱がだんだんと上がっていく構成も素晴らしい。「透明な蜜を流したような四月の夕方だった」なんて、こんな文章を実体験の語りにそっと挟み込んで不自然じゃないなんて…真似したくなるけど絶対若造には真似できっこない表現。

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2011/09/18

初須賀敦子。なぜかわたしは塩野七生とか白州正子とかと須賀敦子がごっちゃになってしまうのだけれど、須賀敦子は意外と最近の人なのだなーと。凛としているけど、寂しい、という印象。なんだか距離を感じる。正直、この一冊でものすごく強く惹かれるようなものはなかったんだけれど、また他の作品も読...

初須賀敦子。なぜかわたしは塩野七生とか白州正子とかと須賀敦子がごっちゃになってしまうのだけれど、須賀敦子は意外と最近の人なのだなーと。凛としているけど、寂しい、という印象。なんだか距離を感じる。正直、この一冊でものすごく強く惹かれるようなものはなかったんだけれど、また他の作品も読んでみたい。なんとなく水村美苗にも似ている気が。

Posted byブクログ

2011/03/01

 東京駅の大丸で15分並んだ。「ねんりん家」のバームクーヘンを買うためだ。今評判のそれが食べたかったから、ではない。やっぱり手土産がいるよな、と思い立ったからである。その日、仕事で訪ねる予定の相手は会社のOBで、今は事業を構えている大先輩だ。  ただ、親しい先輩とはいえ厳密に言...

 東京駅の大丸で15分並んだ。「ねんりん家」のバームクーヘンを買うためだ。今評判のそれが食べたかったから、ではない。やっぱり手土産がいるよな、と思い立ったからである。その日、仕事で訪ねる予定の相手は会社のOBで、今は事業を構えている大先輩だ。  ただ、親しい先輩とはいえ厳密に言えば今は身内ではなくて部外の方だ。頼みごとがあって訪問するというのに手ぶらという訳にはいかない。そして持参するのはそれなりに定評のある菓子でなければならない。  こういう昔ながらの大事なセオリーが廃れている。気がついてみると、10年ぐらい前からだろうか、明確な区切りもケジメもなく、ただいつのまにかそうしなくなってしまっている。少なくとも私はそうだ。  来客にお茶を出す会社も少なくなった。だいたいこの「お茶出し」を専門の秘書とか以外に指示することが御法度な会社も少なくないし、事務目的で採用している派遣社員にそれを命じることは派遣業法で禁じられてもいる。応接する男性の社員もノーネクタイであったりする。  須賀敦子さんの『ヴェネツィアの宿』を読んでいて、「はっ」とさせられた。須賀さんの父君が彼女に手土産を忘れぬようにたしなめる場面がある。父君は関西の実業家であり、彼女が訪ねようとしていたのは由緒ある伏見の造り酒屋のご内儀(この言い方、古風ですがこの文脈ではコレでしょうやはり)である。  父君は、「(相手は)京都だ、ゆめゆめ手ぶらで行くんじゃないぞ」といって船場の鶴屋八幡本店の菓子箱を持たせてくれる。  私はこのくだりを読んで、さすがは上方の商家というものは折り目正しいなあ、と感心した。と同時に、ほんの10年ばかり前までは東京のビジネス界でも、然るべき場面では手土産は必須アイテムであったのに、近頃めっきり少なくなったなあ、と思い至った。    近頃私は須賀さんの著作を読み耽っている。といっても何十冊も片っ端からというわけではなく、今は故人の須賀さん自身が、生前に、「この四冊だけは書けてよかった」といっていたという、『ミラノ霧の風景』、『コルニア書店の仲間たち』、『ヴェネツィアの宿』、『トリエステの坂道』を順繰りに何度も繰り返して読んでいる。  読書を趣味にしているつもりなのに、これ程の人と作品をつい最近まで知らずにいた。だから、私にとっては「発見」といえる出逢いであった。  須賀さんという人は、50を過ぎるまで無名であり続け、彗星のごとく登場し数年のうちに数々の珠玉の作品を遺し世を去った。  前世紀のイタリア、ミラノを描き、キリスト教とヨーロッパ文化を静かに語り、それでいて上方の「ええとこ」の風情も、戦中戦後の日本とイタリアのインテリジェンスをも活写してくれる。  まだまだ言い尽くせず、読み尽くすことも到底できていないこの人の人と作品について、 私はいつかキチンと書いてみたいと思っている。だから、今日のところは簡略に。   ミラノをはじめとするイタリア、ひいてはヨーロッパ、あるいはキリスト教といった文脈ではなく、『ヴェネツィアの宿』で語られるのは、意外にも日本であり関西であり、自分の縁者であり親族のことだ。  彼女の著作をぐるんぐるん読み回しているせいかもしれないが、ミラノを中心にヨーロッパ全土をぐるぐる回っていた渦が、夙川(芦屋とならぶ関西屈指の上品な住宅地)の須賀家を中心に回る渦に連なり、最終的には須賀敦子自身が生きた途に至る。半世紀のあいだ無名の一女性として彼女が見続けてきた世界が、これまた半世紀の間彼女の中で熟成に熟成を重ねて結晶化されたエッセイとして語られる。  出世作『ミラノ霧の風景』の最初の一文である「遠い霧の匂い」からはじまって、一文一文が書きだしから最後の最後の一行まで完全に調和したシンフォニーであり、エッセイという形を借りた完全な物語であると思う。  ともかく、須賀敦子の渦に巻き込まれ、しばらくは乾燥機の中のパンツ状態の今の私です。彼女の渦の中心が、私の中の軸と重ね合わせることができるほど一緒に廻りおおせたなら、そのとき改めてキチンと書いてみたいと思います。  ちなみに、鶴屋八幡の菓子も、ねんりん家のバームクーヘンも、私はまだ食べたことがありません。

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2010/07/27

大好きな須賀敦子の作品の中でも一番のお気に入りはこの~ヴェネツィアの宿~何度読んでもページをめくるのがもったいない・・。夢をみているみたいな作品。フェニーチェ劇場のコンサートについて描かれるくだりは、光や風や匂いまでもが音楽とともに見えてくるよう・・こんな風に幻のような時間を、こ...

大好きな須賀敦子の作品の中でも一番のお気に入りはこの~ヴェネツィアの宿~何度読んでもページをめくるのがもったいない・・。夢をみているみたいな作品。フェニーチェ劇場のコンサートについて描かれるくだりは、光や風や匂いまでもが音楽とともに見えてくるよう・・こんな風に幻のような時間を、ここまで美しい言葉で表現できるということ・・珠玉のエッセイの数々を残した彼女について、興味はつきない。

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2010/07/17

この人の文章が本当に好き。すっとしてて、気高い。 ヨーロッパと日本の間で深く学んだ人にしか書けないことが、虚飾のない言葉で綴られていて胸を打つ。読んだあとに、背筋をしゃきっと伸ばしたくなるような感じがします。

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2010/03/22

よくいわれてる水のような流れる文章とってのは、例えじゃなく、実際とても読みやすく、綺麗な文字と共に流れた印象。中でも印象的だった文章を残す(引用もあるけど)。 「自分がカテドラルを建てる人間にならなければ、意味がない。できあがったカテドラルのなかに、ぬくぬくと自分の席を得ようとす...

よくいわれてる水のような流れる文章とってのは、例えじゃなく、実際とても読みやすく、綺麗な文字と共に流れた印象。中でも印象的だった文章を残す(引用もあるけど)。 「自分がカテドラルを建てる人間にならなければ、意味がない。できあがったカテドラルのなかに、ぬくぬくと自分の席を得ようとする人間になってはだめだ」、「たえず自分というものを、周囲にむかってはっきりと定義し、それを表現しつづければならない大陸と違って〜」、ぐっときた。

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2009/10/04

少女時代の思い出を中心に、両親、父の青年時代の世界旅行の思い出へと広がっていく。 短編小説のような12編のエッセイ。 「人間のだれもが、究極においては生きなければならない孤独と隣り合わせで、人それぞれ自分自身の孤独を確立しない限り、人生は始まらない。」

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2009/10/25

10年目にして、また泣いた。 彼女の文章に支えられてきた10年間。 これからの10年も、折に触れ私は彼女の言葉に勇気を与えて貰うことになるだろう。 少し頑固で意地っ張りの努力家。 何もかもを放り出したようにみえても放っておけない長女気質。 身近に置くには厄介なおばさ...

10年目にして、また泣いた。 彼女の文章に支えられてきた10年間。 これからの10年も、折に触れ私は彼女の言葉に勇気を与えて貰うことになるだろう。 少し頑固で意地っ張りの努力家。 何もかもを放り出したようにみえても放っておけない長女気質。 身近に置くには厄介なおばさんかもしれないけれど、 彼女の言葉は道に迷って日も暮れて、どちらに行こうか思いあぐねているうちに冷え込んでしまった体をふんわりひざ掛け一枚分の温かさで包んでくれる。 そんな暖かさがある。

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2009/10/04

死を軸にかかれていると思ったエッセイです。 これを最初に読んだのは、彼女が女流文学賞を受賞し 注目が集まった作品だったから 1度は処分してしまったこの本ですが 再度読んでみると 風景や、人々をこんなに切なく美しく描けるんだって思いました

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2009/10/04

イタリアに住む叔母の影響でイタリアが好きな私。 青春時代を激動のイタリアで過ごした彼女のドキュメンタリーは感動で心に沁みます。

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