ヴェネツィアの宿 の商品レビュー
一話毎の余韻が深くて大事に読んだ。行きの電車で一話、帰りで一話。外に出て知らないところに行って知らない人生と知らない世界に出会いたい。葛藤も苦労も経験の肥やし。
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須賀さんの文章に初めて触れた時 ?と、疑問符が湧いた。 初めての味覚に戸惑う子どもに なった様で、それは新鮮さを持って 何度も何度も口の中で須賀さんの言葉を転がすのだが、不思議とぴったりの 形容が浮かばない。 彼女の人生に触れれば、糸口が見つかるだろうか? そんなわけで、私の須賀...
須賀さんの文章に初めて触れた時 ?と、疑問符が湧いた。 初めての味覚に戸惑う子どもに なった様で、それは新鮮さを持って 何度も何度も口の中で須賀さんの言葉を転がすのだが、不思議とぴったりの 形容が浮かばない。 彼女の人生に触れれば、糸口が見つかるだろうか? そんなわけで、私の須賀敦子探しの旅がこの本から始まった。
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ずっと読んでいた本。借用本で一区切り。 ヴェネツィアの宿 夏の終わり 寄宿学校 カラが咲く庭 夜半のうた声 大聖堂まで レーニ街の家 白い方丈 カディアが歩いた道 旅のむこう アスファデロの野をわたって ...
ずっと読んでいた本。借用本で一区切り。 ヴェネツィアの宿 夏の終わり 寄宿学校 カラが咲く庭 夜半のうた声 大聖堂まで レーニ街の家 白い方丈 カディアが歩いた道 旅のむこう アスファデロの野をわたって オリエント・エクスプレス イタリアに住んでいた頃のことと日本にいた時の話が交互に綴られている。何故か音が聴こえない風景ばかり思い浮かべて読んでしまう。ゆえに、何も考えず、静寂の中に浸りたいと思うとき、著者の本を手にとってしまう。著者は恵まれた環境の中で好きな勉強に没頭できる身分。なるほど、戦中戦後と外国へ女一人旅立てるのだから。エッセイストとして右に並ぶ人がいないと思うくらい。
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硬質な文章から情緒が立ち昇る。 「意志」を文体にすると こうなるだろうという 硬質さで綴られるエッセイだ。 ヨーロッパのホテルの一室から 父の思い出へと回想は広がり、 感情を抑制した文章から、 ときおり立ち昇る思いは 読む者の気持ちを瞬時にかきたたせる。 そして奔放に ヨーロ...
硬質な文章から情緒が立ち昇る。 「意志」を文体にすると こうなるだろうという 硬質さで綴られるエッセイだ。 ヨーロッパのホテルの一室から 父の思い出へと回想は広がり、 感情を抑制した文章から、 ときおり立ち昇る思いは 読む者の気持ちを瞬時にかきたたせる。 そして奔放に ヨーロッパと日本を、 時を行き交うエッセイに見えた物語は、 解説で関川氏が書くように最後の一章で、 融和と和解の物語へと昇華する。 父との葛藤と融和。 それは大きな余韻を 読み手の中に響かせて消えていく。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「遠い朝の本達」と同様、著者の少女時代や父に対する反抗と愛情、母への想いなど日本や日本人に関する随筆が半分を占める。特にこの本は父の生き様や、著者が奔走の末になんとか修復にこぎつけた父母の関係がはっきりと描かれており、驚くことも多かった。いままでの彼女の文章からは、そのような家族のもめ事は感じ取れなかったからである。若き日の彼女は、密かに心痛めていた両親の関係にも、自身の内側の問題同様、真摯に向き合い行動してきたのだなぁ。著者の常に精神的に学問的に(?)向上し続けようとするストイックな姿勢と、それ故に日本でもヨーロッパでもがき苦しむ内面の遍歴をたどることができる。それがとてもうれしい。このような文章を残してくれた著者に感謝せずにいられない。特に日本の女性たちは彼女の文章を読んで勇気づけられることが多々あるのではないかと考えるのだが。
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一つ一つの話が本当に心にしみる.単なる随想を越えて,一つ一つが珠玉の小品というにふさわしい品格と完成度を持っている.今は失われてしまったものへの哀惜が常にその文章の底辺にあるのだが,それが生のかたちではなくて,浄化されて,澄んだ感情を通して絶妙のバランスで語られる. 名文としかよ...
一つ一つの話が本当に心にしみる.単なる随想を越えて,一つ一つが珠玉の小品というにふさわしい品格と完成度を持っている.今は失われてしまったものへの哀惜が常にその文章の底辺にあるのだが,それが生のかたちではなくて,浄化されて,澄んだ感情を通して絶妙のバランスで語られる. 名文としかよびようがない文章.
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わたしにとって、特別な本です。 静かな、けれども着実にふみしめて歩いて行くような文体。 須賀さんは、本当に美しい言葉を話す人だったと 彼女と親しかった先生からうかがいました。 須賀さんのエッセイは いまでも多くの人の心のなかに、たしかな音をたて、やわらかな足跡を残していく そ...
わたしにとって、特別な本です。 静かな、けれども着実にふみしめて歩いて行くような文体。 須賀さんは、本当に美しい言葉を話す人だったと 彼女と親しかった先生からうかがいました。 須賀さんのエッセイは いまでも多くの人の心のなかに、たしかな音をたて、やわらかな足跡を残していく そんな作品のような気がします。
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イタリアと日本、両方の記憶が時代を超えてるつぼのように混ざり合い、往還するつくりの一冊。ほかの著作にくらべ少し湿っぽい雰囲気があるのは、家族の思い出にふれる筆のせいだろうか。まさにヴェネツィアにいるように、水の上にたゆたうイメージがある。 特に、確執を抱えながらも、父の一番の理解...
イタリアと日本、両方の記憶が時代を超えてるつぼのように混ざり合い、往還するつくりの一冊。ほかの著作にくらべ少し湿っぽい雰囲気があるのは、家族の思い出にふれる筆のせいだろうか。まさにヴェネツィアにいるように、水の上にたゆたうイメージがある。 特に、確執を抱えながらも、父の一番の理解者だったとやはり思っていたであろう敦子さんが、オリエント・エクスプレスのコーヒーカップを手に父の死の床へと急ぐ終章と、その前に置かれた、さりげないくらい急いで筆を走らせたような夫との別れの予感をつづった章が、胸を打つ。
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イタリアを題材にした女性作家といえばすぐ思い浮かぶのは塩野七生だが、イタリアに暮らす日本人女性の機微を肌で感じさせてくれるのが須賀敦子。声高に語られるイタリア文化論が苦手な人は、ぜひ彼女の小品を呼んでみるといい。表題作は作者がヴェニスに滞在したときのヒトコマ。シンポジウムで疲れ...
イタリアを題材にした女性作家といえばすぐ思い浮かぶのは塩野七生だが、イタリアに暮らす日本人女性の機微を肌で感じさせてくれるのが須賀敦子。声高に語られるイタリア文化論が苦手な人は、ぜひ彼女の小品を呼んでみるといい。表題作は作者がヴェニスに滞在したときのヒトコマ。シンポジウムで疲れた帰り道、オペラの殿堂フィニーチェ劇場を通りがかると劇場創立200周年記念のガラコンサートが行われている。滞在していた劇場隣のホテル(Hotel La Fenice et Des Artistes、もしくはHotel dell'Operaと思われる)に聞こえてくる歌声や観客の拍手を遠く聴きながら、若いころ欧州を大旅行した作者の父親を思う。 ご実家は芦屋の名家。士族の家柄だけに父のヨーロッパ体験はそれこそ夢の様な日々だったに違いない。その父の思い出を中心に、家族やイタリア人の夫のこと。パリ出の留学生活など12編の小品には、ヨーロッパがいちばんヨーロッパらしかった時代の光景が、繊細な言葉で綴られている。 作者はイタリア滞在中、縁あってミラノのコルシア書店(コルシア・デイ・セルヴィ書店)で過ごした時期がある。この書店はファシズムと戦ったパルチザンの残党が協会の物置で始めたといういわくつきの書店。パトロンは貴族やブルジョア婦人。活動家から貴族まで付き合いのあった作者。その体験の断片を分けてもらうだけでも、読む価値がある。
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著者は昭和4年生まれ、昭和28年よりフランス、イタリアに留学し、昭和46年帰国。その間イタリアで結婚するも、夫に早く死に別れる。半生を振り返るかのようなエッセイ集。 印象的だった箇所「女が女らしさや人格を犠牲にしないで学問をつづけていくには、あるいは結婚だけを目標にしないで社...
著者は昭和4年生まれ、昭和28年よりフランス、イタリアに留学し、昭和46年帰国。その間イタリアで結婚するも、夫に早く死に別れる。半生を振り返るかのようなエッセイ集。 印象的だった箇所「女が女らしさや人格を犠牲にしないで学問をつづけていくには、あるいは結婚だけを目標にしないで社会で生きていくには、いったいどうすればいいのか」今でも、程度の差こそあれ、同じような思いを持つ女性は多いのでは。60余年もたっているのに。
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