中国行きのスロウ・ボート の商品レビュー
著者の最初の短編集です。物語にある特に大きな出来事の変化の無い日常、そこに生じる少しの変化から主人公に起こる小さな変化を楽しむことができます。初期のの村上春樹さんの雰囲気を懐かしいように感じることができました。特になんてことのない日常のように描写されているのですが、よく考えると普...
著者の最初の短編集です。物語にある特に大きな出来事の変化の無い日常、そこに生じる少しの変化から主人公に起こる小さな変化を楽しむことができます。初期のの村上春樹さんの雰囲気を懐かしいように感じることができました。特になんてことのない日常のように描写されているのですが、よく考えると普通はありえないようなものであり(家の庭の芝刈りをするアルバイトってあるんですかね)、それでもそれが違和感なく受け入れられ、物語に入っていける、その世界観が素晴らしいと思います。それは私達が理想に描いたことのある生活に近いものが描かれていることで、読み手はその世界に自身を投影し易くなっているのかと。現実とは違う世界に入ることから、現実世界ではあまり考えなかったことについて(自分のことや周りの事)考えることの意味について気付かされるのではないかと思います。本書以外もですが、これしかないと当然視していた生き方に揺さぶりを掛けられるように感じながら読ませて頂きました。
Posted by
なんとも独特な世界観の短編集。 前半4編は哲学的で、例えも突飛で正直とっつきにくかったです。一方後半3編は慣れてきたせいか、現に表現がストレートになったのか、読みやすさを感じました。 「午後の最後の芝生」と「土の中の彼女の小さな犬」は物語に色彩があり、気持ちよく読めました。 「カ...
なんとも独特な世界観の短編集。 前半4編は哲学的で、例えも突飛で正直とっつきにくかったです。一方後半3編は慣れてきたせいか、現に表現がストレートになったのか、読みやすさを感じました。 「午後の最後の芝生」と「土の中の彼女の小さな犬」は物語に色彩があり、気持ちよく読めました。 「カンガルー通信」は拒絶反応が出そうでした。。。百貨店社員がクレームに対する返事をカセットテープに録音して送るとはなかなかすんなり受け入れられません。村上春樹の世界と割り切って、怖いもの見たさに読み切った感じでした。 総じてどのストーリーも非現実的で、淡々と語られていて、時には「僕」がツッコミを入れたりとクセになる短編集でした。
Posted by
25年ぶりに再読。7つの短編の中で「午後の最後の芝生」のみ印象に残っていて、今も変わらず。全く派手なストーリーではないが読後に確かな余韻が残る。何かにひたむきに取り組むこと、何かには必ず終わりがあること、そういったテーマが心を掴むのだと思う。
Posted by
幾つかの希望を焼き捨て、幾つかのの苦しみを分厚いセーターにくるんで土に埋めた。全てはこのつかみどころのない巨大な都市の中で行われた。
Posted by
何年振りかに再読。 短編集で7編が収録されている。収録されている中では「午後の最後の芝生」が一番好きだ。「ああ、こうだった」と思いながら読む。描写からありありと情景が浮かぶのはやはり作者の力量だと思う。 「シドニーのグリーン・ストリート」には羊男も出てきて楽しい。コミカルな短編。...
何年振りかに再読。 短編集で7編が収録されている。収録されている中では「午後の最後の芝生」が一番好きだ。「ああ、こうだった」と思いながら読む。描写からありありと情景が浮かぶのはやはり作者の力量だと思う。 「シドニーのグリーン・ストリート」には羊男も出てきて楽しい。コミカルな短編。 私が持っている文庫本は1997年4月の改版のもの。 最近の短編集に比べて作者の脂が乗り切ってる感じがする。「女のいない男たち」と読み比べた。 また何年かしたら再読したい。
Posted by
読み忘れていたのを発見してうれしい。 文章と、からっとしていてちょっとさみしくてかっこいいところがすごくよい。 昔に読んだものも、今読んだらわかることがたくさんありそう。
Posted by
我が家のちっぽけな庭の芝を刈るとき、毎度「午後の最後の芝生」を思い出してしまう。 短い文章の中でゆったりと時間が流れる様や、随所に現れる夏の情景が気に入っている。偶然出会った大人から(若者である自分に)何かを託される経験というのは、今思い返してみると自分にも幾度か当てはまるよう...
我が家のちっぽけな庭の芝を刈るとき、毎度「午後の最後の芝生」を思い出してしまう。 短い文章の中でゆったりと時間が流れる様や、随所に現れる夏の情景が気に入っている。偶然出会った大人から(若者である自分に)何かを託される経験というのは、今思い返してみると自分にも幾度か当てはまるようなことがあった気がするが、主人公のように上手く応えられたかは分からない。 そして、この話を読むとウォッカ・トニックが飲みたくなる。
Posted by
よく分からない話もあったけど、「中国行きのスロウボード」ではちょっとしたことで運命が変わる時代を感じた。「土の中の彼女の小さな犬」が1番好みだった。
Posted by
村上春樹氏初めての短編集。 ちょっとキザでハードボイルドな、 一昔前の粗めの画質のフィルム映画みたいだ。 現実と非現実が境目なく混じりあっている感じが、 この独特の雰囲気を生み出している気がした。 帰宅ラッシュの雑踏に紛れて名前をなくしてしまう 都市生活者の薄暗闇に 苦しいく...
村上春樹氏初めての短編集。 ちょっとキザでハードボイルドな、 一昔前の粗めの画質のフィルム映画みたいだ。 現実と非現実が境目なく混じりあっている感じが、 この独特の雰囲気を生み出している気がした。 帰宅ラッシュの雑踏に紛れて名前をなくしてしまう 都市生活者の薄暗闇に 苦しいくらい共感させられたと思ったら、 背中に貧乏な叔母さんが貼り付いてテレビに出る 急展開に置いてけぼりにされてしまう。 そしてそのどちらもが同じくらいの力の入れ具合で さりげなくまぜこぜにされているから、 「うんうん…うん?はぇ……あー、はいはい。え?」 みたいな気分になる(語彙力の喪失)。 おそろしく丁寧な状況描写も特徴的かもしれない。 夏の光と濃い影、 立っているだけで汗が吹き出す空気の温度まで 感じられるようだ。 あと、性的な話ね。 そこでその話、要るかい?と思うくらい 執拗に登場するのに、 主人公は徹底的に淡白な様子なのが、 なんかおもしろい。 ようするに、村上春樹作品“っぽさ”が たっぷり詰まった短編集なんじゃないかな。 何を伝えたいのか、一言でテーマを言えないような 作品ばかりなんだけど、 個人的にはむしろそれが気に入った。 日常に潜む憂鬱、些細な失敗、誤解、別れ、 永遠に失われた選ばれなかった選択肢の行先。 スポットライトをあてるほどてもない、 ありふれたそれらは、リアルで残酷だ。 彼女を逆回りの山手線に乗せてしまい、 電話番号をひかえた紙マッチを捨ててしまうという 些細で意味の無いグロテスクな間違いは、 こんなに些細で悪意のない間違いなのに、 彼女を失意のどん底に突き落として 自己認識に根を張ってしまうかもしれないし、 少なくともふたりの関係をぶった切って ひとつの選択肢を 未来永劫消し去ってしまったわけだ。 こういうのって日常の至る所に 地雷みたいに埋まっていて、 ちょっとした手違いでも爆発してしまうんだ。 ぞっとする。 そんな感じで、 『中国行きのスロウ・ボート』に心をえぐられ、 『午後の最後の芝生』の映像喚起力に はっとさせられたわけだけど、 『シドニーのグリーン・ストリート』は ひたすら愉快で楽しかったので、 『羊をめぐる冒険』は 近いうちにぜひ読んでみようと思った。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
2022.01.09 読了。 村上春樹初の短編集。 どれも村上春樹的な6篇だった。 オチの無い感じ。 だけど不思議と引き込まれるのが謎。 特別、面白かった!すっきりした!という感じは皆無。 なのになんだが楽しめる。 不思議な世界観よね。 『カンガルー通信』 江戸川乱歩『人間椅子』的な気持ち悪さを感じた。 春樹的人間椅子。 ホラーではない。 『午後の最後の芝生』 味がある。 なんてことない話なんだけど、独特な雰囲気。 『土の中の彼女の小さな犬』 この短編集の中ではベスト。 村上春樹に求めることが詰まっている感じ。 『シドニーのグリーン・ストリート』 羊男出ました! それだけでなんだか嬉しい。 得した感じがする。 全体的に楽しめた。
Posted by