中国行きのスロウ・ボート の商品レビュー
シドニーのグリーン・ストリートはロンドンのベイカーストリートへのオマージュ?土の中の彼女の小さな犬、しみついてとれないかなしみの匂い
Posted by
「中国行きのスロウ・ボート」「午後の最後の芝生」「土の中の彼女の小さな犬」が良かった。 『僕は本のページを閉じて指の腹で目をこすった。それから右手の中指で眼鏡のブリッジを押しあげようとして、眼鏡がないことに気づいた。眼鏡がないというだけで人はずいぶん手持ち無沙汰になってしまう...
「中国行きのスロウ・ボート」「午後の最後の芝生」「土の中の彼女の小さな犬」が良かった。 『僕は本のページを閉じて指の腹で目をこすった。それから右手の中指で眼鏡のブリッジを押しあげようとして、眼鏡がないことに気づいた。眼鏡がないというだけで人はずいぶん手持ち無沙汰になってしまうものなのだ。我々の日常生活はほとんど意味のない些細な動作の集積で成立している。』 ここよかった。それにしても案外、句点が少なかったり漢字をひらいてたりしてるんだなあ。 それに彼女が預金通帳を取り出すために、ウィスキーの箱に入れて庭に埋めた犬を掘り出すところは、ほとんどゾッとするようなものを感じた。 1年前に自分の分身のように愛着を感じていた犬を掘り起こす。友達を助けるためと思い、一緒に埋めた預金通帳を手に入れるために。それには変な匂いがついていた。そして、お気に入りのセーターでくるんだ犬の遺骸は、それからはみでて少し見えた。だけど、彼女は、何も感じなかったという。その感情の喪失、愛情の喪失は、悲しみも懐かしさも覚えない自分はまるで真っ当な人でないんじゃないのか、倫理を踏み外しているのではないか、という気持ちにさせ、その自分の変化に悲しい気持ちになる。よくわかります。
Posted by
収録作 中国行きのスロウ・ボート 貧乏な叔母さんの話 ニューヨーク炭鉱の悲劇 カンガルー通信 午後の最後の芝生 土の中の彼女の小さな犬 シドニーのグリーン・ストリート 「土の中の彼女の小さな犬」、「シドニーのグリーン・ストリート」以外は象の消滅とめくらやなぎと眠る女に収録され...
収録作 中国行きのスロウ・ボート 貧乏な叔母さんの話 ニューヨーク炭鉱の悲劇 カンガルー通信 午後の最後の芝生 土の中の彼女の小さな犬 シドニーのグリーン・ストリート 「土の中の彼女の小さな犬」、「シドニーのグリーン・ストリート」以外は象の消滅とめくらやなぎと眠る女に収録されている。
Posted by
表題作。とてもナイーヴで、心が震える。真面目に生きていることが辛くなるけれど、でも本当にそうしているならば、そういうことは誇りを持つべきなのだな、と思う。 どうして「僕」は、もう彼女と二度と会えなかったのか……どうして……そのことを考えるだけで、心が遠くに行く。 「そもそも、ここ...
表題作。とてもナイーヴで、心が震える。真面目に生きていることが辛くなるけれど、でも本当にそうしているならば、そういうことは誇りを持つべきなのだな、と思う。 どうして「僕」は、もう彼女と二度と会えなかったのか……どうして……そのことを考えるだけで、心が遠くに行く。 「そもそも、ここは私のいるべき場所じゃないのよ」という言葉の持つ遠さは、いったい何だろう。どうして私はここにいるのだろう。 その他の短編も悪くはなかったが(「貧乏な叔母さんの話」もとてもよかった)、表題作の震えがあまりに瑞々しいので、今、そればかり思い出している。
Posted by
著者の短編は初めて読みました。独特の不思議な世界観。一度読んだだけでは消化しきれません。。『シドニーのグリーン・ストリート』がいちばんよかったです。
Posted by
表題作は以前に読んだ覚えがあるんですけれども、内容は全くと言っていいほど覚えてない…まあ、春樹氏の小説ってそんなものですよね。 ←え?? 社畜死ね!! ヽ(・ω・)/ズコー 表題作も良かったし、その他の短編も良かったですねぇ…なんというか、音楽を聴いているような気分で読める...
表題作は以前に読んだ覚えがあるんですけれども、内容は全くと言っていいほど覚えてない…まあ、春樹氏の小説ってそんなものですよね。 ←え?? 社畜死ね!! ヽ(・ω・)/ズコー 表題作も良かったし、その他の短編も良かったですねぇ…なんというか、音楽を聴いているような気分で読めるのが春樹氏の小説だと思うのです。情景だけが頭に浮かんで消えて行くような…意味とかは考えちゃ駄目なのです! 多分…社畜死ね!! ヽ(・ω・)/ズコー まあ、そんなわけでどこがどうとは言えないのですけれども、不思議な印象を残す短編集なのでありました。昨今の春樹氏の長編よりも自分は好きかなぁ…おしまい。 ヽ(・ω・)/ズコー
Posted by
空気感とか、流れとか、すごく独特なことはわかるのですが、 内容がさっぱりわかりません・・・ ちょっと難しすぎるか。 こういう小説の読み方をちゃんと学んでないだけなのか・・・ いつかわかるようになりたいです。
Posted by
ピンク色の傘立てを背負った男とベットに潜り込むことは、彼女たちにとっても素晴らしい思い出になったろう。 女の子って色んなことが裏がえしになっちゃう時があるのだ。
Posted by
初めて読んだ時から 実に22年! 村上春樹の記念すべき初の短編集であり、 いまだに春樹さんの短編集の中では この作品が一番だと思っています(^^) (個人的な意見を言えば村上春樹は 優れた短編小説家だと思う。彼の長編の多くは実験的に書いた様々な短編をつなぎ合わせたものだし) ...
初めて読んだ時から 実に22年! 村上春樹の記念すべき初の短編集であり、 いまだに春樹さんの短編集の中では この作品が一番だと思っています(^^) (個人的な意見を言えば村上春樹は 優れた短編小説家だと思う。彼の長編の多くは実験的に書いた様々な短編をつなぎ合わせたものだし) 若き日の村上春樹だからこその ニヒリズムとキザ一歩手前のセリフ。 熱くなり過ぎず、 けれども揺らぎない芯を感じさせる クールで抑制された文体。 どんな話の中にも キラリと光るセンス・オブ・ユーモア。 ひょうひょうとして見えても みな喪失を抱え、 自らの信念やルールに従って生きる ハードボイルドな登場人物たち。 ああ~やっぱ好きなんよなぁ~、 この頃の村上春樹♪ 今改めて読んでも 初めてこの本に触れた時の喜びが蘇ってきたし、 その当時の空気感や匂いまでも 瞬時に思い出させてくれる。 かつて出会った中国人たちに思いを馳せる 『中国行きのスロウ・ボート』、 背中に張り付いた叔母さんのエーテルは 見る人によって姿を変え… 『貧乏な叔母さんの話』、 レコードを間違って買ってしまった客にカセットテープに声で返事を吹き込む デパートの商品管理係の男のイタい独り言(笑)を描いた 『カンガルー通信』、 炎天下での芝刈りバイトの思い出を瑞々しい感性で描いた 個人的に大好きな一編 『午後の最後の芝生』、 シーズンオフのリゾートホテルを舞台に 死んだ犬の匂いに悩まされる女と、 彼女に去られた男の雨の2日間を 詩情に溢れ映像喚起力の高い筆致で描いた傑作 『土の中の彼女の小さな犬』、 砂金王である父親の莫大な遺産を受け継いだ大金持ちの私立探偵と、 ピザ屋を切り盛りする女の子「ちゃーりー」、 そしてあの羊男が繰り広げるユーモラスな冒険活劇に 誰もがニヤリとすること必至の 『シドニーのグリーン・ストリート』、 などなど粒揃いの短編がズラリ。 彼の小説を読むと 必ず主人公が食べていたスパゲティやドーナツが食べたくなるし、 ビールをグビグビしたくなるし、料理を作りたくなったり、 動物園に行きたくなってしまう。 (初期作品の登場人物の殆どに名前がないこともそうだし、読者が物語の中に自然と入り込んでしまう同化現象を、春樹さんの作品は自然と呼び起こすんです) そして書かれた当時の時代背景もあるけど、 タバコが効果的な小道具として描かれてるのも 共感できる点かな(笑) (今でこそ、不当な悪者扱いを受けてるタバコだけど、昔からタバコとジャズとロックと酒は自由のシンボルで、多くの表現者の創作意欲を増してきたし、一つの文化として成り立ってきたハズ) 自分がこの本を初めて読んだのは まだ恋も知らない16歳だった。 詩人は21で死に、 革命家とロックスターは24で死ぬ。 ならば自分は 一体いつまで生きるんだろう。 ロックに目覚め、 今も続けているバンドを組んだばかりの自分は 電車の中で夕刊フジを読むような イージーな大人になるくらいなら ディフィカルトな子供のままでいたいと思っていた。 ストーンズの音楽と手に入れたばかりのギターと 少しのお酒と村上春樹の小説があれば、 くそったれの人生も いくらかはマシになるって。 ラジオから流れるFEN、ドアーズとCCR、夏の光にチラチラ揺れるウィスキーとショートホープ、昭和の牧歌的な時代、入れ替え制のない古き良き映画館、雨の日の動物園、誤解されて別れた恋人、傷つけた人たち、親友が亡くなったことを知らずにいたバカな自分。 あれから22年経って 結局イージーな大人にはなれなかったし、 過ぎ去ったもの、失くしたものは もう戻らないけど、 自分はまだ生きているし 悲しいかな、あの頃と何も変わっちゃいない。 ストーンズとギターと少しのお酒、 そしてこの小説とあの子がいれば、 まだ当分の間は生きていけそうだ(^^;)
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
長編小説『羊をめぐる冒険』の前後に書かれ、いくつかの文芸誌に発表された短篇を7つを集めた作品集。最期の「シドニーのグリーンストリート」は羊男もので、これらの中では異色だが、それ以外はこの時期の作家の日常を私小説風(あくまで風だ)に綴ったもの。長編に比べると、肩の力を抜いて書いたような印象だ。いずれも、現実あるいは他者との間に、どこというのではないが微細な(しかし、それでいて本質的な)違和が「僕」との間にはあり、そのことが村上らしさとして立ち現れてくるようだ。
Posted by