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破獄 の商品レビュー

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147件のお客様レビュー

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2021/05/13

昭和に4度もの脱獄を行った男の話。 その男の生涯を軸に、戦前、戦後の刑務所の状況が詳細に描かれており、非常に興味深い。 最終的に男は府中刑務所に入れられるが、それまでの厳しい扱いと異なり、刑務所所長が温情を持って接したことにより、それ以上脱獄をすることはなくなる。 脱獄をやめた...

昭和に4度もの脱獄を行った男の話。 その男の生涯を軸に、戦前、戦後の刑務所の状況が詳細に描かれており、非常に興味深い。 最終的に男は府中刑務所に入れられるが、それまでの厳しい扱いと異なり、刑務所所長が温情を持って接したことにより、それ以上脱獄をすることはなくなる。 脱獄をやめたのは繰り返す脱獄と逃走の日々の疲れもあったのだろうが、疑いや警戒心のみを持って人と接すると、それは良い結果を生まないということがよく分かる。

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2021/02/23

実在モデルの存在に驚愕。 「もう疲れましたよ」と言わせ、仮釈放までを思う鈴江所長の人間性は唸りました。 囚人も人間。 あまり知ることのない、戦争時の食糧難での待遇や囚人が囚人を監視する特警隊制度など、勉強になりました。 硬いけど事実が丁寧に伝わる作品でした。

Posted byブクログ

2021/01/18

昭和11〜22年の間に東北・北海道の刑務所から4度の脱獄を果たした無期刑囚の大胆かつ緻密な計画とその超人的手口に肉薄描写した一冊。 著者は昭和54年、元警察関係の要職にあった人から脱獄を繰り返した一人の男の話を聞き、関心を寄せる。取材を重ね膨大な資料を渉猟。それらを元に肉付けし...

昭和11〜22年の間に東北・北海道の刑務所から4度の脱獄を果たした無期刑囚の大胆かつ緻密な計画とその超人的手口に肉薄描写した一冊。 著者は昭和54年、元警察関係の要職にあった人から脱獄を繰り返した一人の男の話を聞き、関心を寄せる。取材を重ね膨大な資料を渉猟。それらを元に肉付けし、ノンフィクション仕立ての物語にした筆力にただただ唸るばかり。 この小説の特徴として『会話』が極めて少なく、主人公の無期刑囚と、いつまた脱獄するのではないか…という看守たちの怯えと不安が交錯する心理描写が淡々と描かれ、極寒の独房での過酷さ、看守の目を盗み、着々と脱獄の企てをしているであろう不気味さと緊迫感を生む相乗効果もある。 主人公は難攻不落と言われた網走刑務所からも脱獄をしており、『アルカトラズからの脱出』よろしくやすやすと監獄の壁を破っていく。看守たちからは『容易ならざる特定不良囚』と呼ばれる。 身体能力もさることながら、知力・判断力・洞察力に加え忍耐力を兼ね備え、ある看守は呟く。『その類稀なる智力と体力を他のことに向ければ何事かを成し遂げた男になったはず…』は、読者も総じて抱く思いのはず。 本書は脱獄歴を縦軸に、戦前戦中戦後の刑務史について筆は及ぶ。戦時中の食糧難時でも一般人より栄養価の高いものを提供され、看守より体格がよかった。ただ都会にある刑務所は例外で、栄養が偏り受刑者の病死が相次ぐ。一方、野菜を自給できる網走刑務所は極寒地であるにもかかわらず死亡率が低かった。網走刑務所が『農園刑務所』と呼ばれる所以である。 もっとも驚かされたのは戦時中の囚人たちの使役。刑務所外活動〈道路・港湾・飛行場建設等〉も頻繁に行われ、占領国に海外にまで派遣もされている。多くの男性は戦争に駆り出され、労働力が払底している最中だけに貴重な労働力であったことを物語る。 戦後は国に代わりGHQが囚人の不当な扱い調査を 執拗に行い、戦前までの旧弊の撤廃と民主化に向けて介入を行うも頓挫をしている。そう、本書は刑務所内も戦争に大きく揺さぶられていく経緯を克明に記している。 著者は現実の事件や歴史上の事象をめぐり、一貫して文学的アプローチで追求をしていく。本書の場合は『脱獄』であるが、その『目的(プロジェクト)』完遂までの狂おしいほどの熱情と知恵を遺漏なく押さえ、壮大な物語へと仕立て上げ、読者は善悪・良否という二元論をどこかに捨て去り、脱獄を果たす度に思わず快哉を叫びそうな衝動にかりたてられるはず。 〈無期刑囚と看守たちの息詰まる攻防記〉オススメ!

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2020/09/26

とってもおもしろい! 脱獄ストーリー大好き・ この本は今は亡き父のお気に入りの一冊でした 3回は読み返してます

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2020/08/23

戦時下、破獄を繰り返した白鳥吉栄をモデルに書かれた作品。 彼の異様な機敏さはしこさや、彼と看守たちとの関係性、そしてそれらを生み出した戦時中の刑務所という世界と実情がとても興味深かった。

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2020/08/21

初めて吉村さんの作品を読みました。最初の10分位は読み慣れない文体に違和感があり、失敗したかなと思いましたが、読んでいくにつれ目が離せなくなり、目の前で繰り広げられる舞台を見ているような、すごい臨場感で、一気に読了しました。 何十年も前の作品なのに、まして描かれてる戦前戦後、受...

初めて吉村さんの作品を読みました。最初の10分位は読み慣れない文体に違和感があり、失敗したかなと思いましたが、読んでいくにつれ目が離せなくなり、目の前で繰り広げられる舞台を見ているような、すごい臨場感で、一気に読了しました。 何十年も前の作品なのに、まして描かれてる戦前戦後、受刑者、刑務所、というできれば目を背けたくなるようなテーマなのに、その世界をもっと深く知りたいと思いました。フィクションであっても、日本の刑務所は多くの犠牲を払いながら、必死に治安を守ってきてくれたんだろうなと、感謝の気持ちになりました。 主人公に家族を殺害された人、主人公の家族に関する話題はほとんどないのに、主人公の勝手さ、孤独がすごく伝わってきました。 刑務所の人々が囚人を守ろうとどれだけ努力しても、爆弾一つで勝手にすべてを壊される、戦争ってほんとに失うものが多すぎると、改めて思いました。

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2020/05/10

1935年準強盗致死罪で無期懲役となった佐久間は、なんと4回も脱獄した。実在した脱獄王をモデルにした小説。 物凄く面白かった。脱獄そのものだけじゃなく、戦前から戦後までの世相や、食糧事情、米軍指導下で進む行政などの「歴史」がとても興味深い。

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2020/04/24

この人ってアレだよね、ゴールデンカムイの白石のモデルになってる実在の人だよね。作中の坊主頭にはんてんみたいな描写、白石と同じだし。 毎回脱獄する手段がすごく面白かった。肉体的にも壁を登ったり獄内のものだけでノコギリを作ってしまったりとすごいんだけど、何より交渉術が卓越してる。脱獄...

この人ってアレだよね、ゴールデンカムイの白石のモデルになってる実在の人だよね。作中の坊主頭にはんてんみたいな描写、白石と同じだし。 毎回脱獄する手段がすごく面白かった。肉体的にも壁を登ったり獄内のものだけでノコギリを作ってしまったりとすごいんだけど、何より交渉術が卓越してる。脱獄の可能性をテコにして看守を脅し、自分に有利な艦首との間の人間関係を作り看守を精神的に制圧し、脱獄の準備のための環境を作り上げてしまう。現代の経営者とか政治家になったらすごくでかい仕事をしたのではないか。 4回目の脱獄が終わって、その後もページ数が結構あったので、なにを書くことがあるんだろ?と思ったけど、最後の府中の所長との交流で凍りついた佐久間の心が徐々に溶けていくのかよー泣けたよー。

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2020/03/22

2020年3月20日読了。 実在した昭和の脱獄王、白鳥由栄をモデルにした脱獄小説。 著者の本は初めて読んだが、会話文が極端に少なく、淡々と戦時中戦後の日本の情勢・刑務所内の状態等が語られていく。 序盤は読み始めのテンションで黙々と読み進めたが、中盤は会話の少なさと硬い文章に気が滅...

2020年3月20日読了。 実在した昭和の脱獄王、白鳥由栄をモデルにした脱獄小説。 著者の本は初めて読んだが、会話文が極端に少なく、淡々と戦時中戦後の日本の情勢・刑務所内の状態等が語られていく。 序盤は読み始めのテンションで黙々と読み進めたが、中盤は会話の少なさと硬い文章に気が滅入ってしまった。 綿密な取材と日付や人物名など細かな描写のおかげでフィクションの分類に括られてはいるが、ほぼほぼノンフィクション。もはや歴史的教科書のようであった。 しかし終盤は、今まで脱獄する事しか考えず憎悪の気持ちに支配されていた無期懲役囚佐久間が看守や刑務所長との人間味のあるやり取りに心を開き改心していく様子を読み、人を厳しく抑圧するだけではなく温情をかけて接する事の大切さを学んだ。 著者の作品には気になる題材のものが他にもあるので、機会があれば読んでみたいと思う。

Posted byブクログ

2020/05/28

破獄する佐久間が主人公かと思ったらそんなことはなく、佐久間の気持ちや思いなど一切語られない。語られるのは、佐久間の周りの人たちの気持ちや思いと当時の日本の情勢。佐久間が周到に準備して、なんてことは一切でてこないので、佐久間はあっさり脱獄していく。 でも期待外れではなく、読み応えあ...

破獄する佐久間が主人公かと思ったらそんなことはなく、佐久間の気持ちや思いなど一切語られない。語られるのは、佐久間の周りの人たちの気持ちや思いと当時の日本の情勢。佐久間が周到に準備して、なんてことは一切でてこないので、佐久間はあっさり脱獄していく。 でも期待外れではなく、読み応えあり。よいと思う。 佐久間が人の心を操るところは示唆に富む。上ばかり見て上に注意を向けて、実は下に脱獄の策があったところとか。

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