商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 岩波書店 |
発売年月日 | 2022/10/07 |
JAN | 9784000615594 |
- 書籍
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力と交換様式
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力と交換様式
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商品レビュー
3.8
8件のお客様レビュー
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「トランスクリティーク」、「世界史の構造」に続き、「力と交換様式」を読了。 20年間にわたる思索と実践から産まれた柄谷の交換様式による体系的な資本主義理解は、最近注目されている脱成長や環境問題に注目したマルクス読解と比較して、資本主義に対する基礎的な分析枠組みを深めるものとして非常に重要だと感じる。 本書では、「世界史の構造」において展開された4つの交換様式に基づく歴史解釈をさらに深め、肝心の「交換様式Dとは何か」という問題に踏み込むために「力」という概念を導入していく。 ここでの「力」は人が意識して影響を与えることができず、ただ不可避的にそこに現れてしまうものといった意味合いが持たせられており、これまでの意識的・計画的な革命や社会主義化に対して、意識されずとも到来する社会主義を提起しているのだと私には捉えられた。 一方で、そのような社会主義の到来に際しては交換様式B,Cに由来する破綻を何度も経過する必要があるという結論を含意しているとも読めるため、そのような破綻をそもそも人類社会が乗り越えられないのでは?という懸念に対して強い反論ができないような結論にとどまっていると思われ、柄谷はある種現状肯定的な思想に転向したのだろうか?というふうにも感じた。
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2023年バーグルエン哲学文化賞を受賞した作品である。唯物史観では社会の発展要因を「生産様式」とするが、それに対して作者は「交換様式」の概念で人類の発展を理解するというもので、作者が数十年にわたって温めてきた思考を集大成する異色の人類発展史観である。 人間の共同性を贈与と返礼の互...
2023年バーグルエン哲学文化賞を受賞した作品である。唯物史観では社会の発展要因を「生産様式」とするが、それに対して作者は「交換様式」の概念で人類の発展を理解するというもので、作者が数十年にわたって温めてきた思考を集大成する異色の人類発展史観である。 人間の共同性を贈与と返礼の互酬概念から考え始めるものであるが、哲学的で抽象度が高い文章が続き、理解しながら読み進めるのに相当の努力が必要である。 最初に、四つの交換様式の定義から始める。A 共同体における「互酬(贈与と返礼)」、B 国家権力にみられる垂直的な「服従と保護(略取と再分配)」、C 市場における「水平的な商品交換(貨幣と商品)」、D 「Aの高次元での回復」である。これら四つの交換様式を歴史的段階で考え、それぞれの段階が通底したり重なったりして社会は進化する。氏族社会(A)-封建社会(B)-資本主義社会(C)へと進み、「人間の意思を超えて到来する」D段階に至る、そこは「資本主義-国家-ネーションを揚棄する」究極の社会である。この交換様式からみた発展段階説はマルクス主義の経済的下部構造の段階説とは異なり、政治的・精神的なものも含み霊的な力の作用も重視する。Aにはマルセル・モースのいう「ハウ」、Bにホッブスが名付けた「リバイアサン(海の怪獣)」、Cにはマルクスが指摘した「資本の物神(フェティッシュ)性」という霊的観念諸力である。 Dの「A段階の高次元での回復」については、究極の理想である共産主義社会をイメージし「原初への回復・ユートピアの到来」として、それは「向こうから自然にやってくる」という、・・・この辺りまでくると殆どついていけない。何とか喰らい付いてきたのに最後の一番盛り上がった肝心なところで振り落とされる、「もう一回よく読み直してこい」と、そして又読む。 世界宗教は既にDの要素があるということや、アソシエーションなどの概念もD「高次元での回復」のヒントになる気がして頷ける部分も多々ある。箇所によっては論理・論証の凄さに共感し感覚が昂ぶることもある。作者はこの作品で哲学思考の可能性を存分に味合わせてくれる。人類の将来展望も示す。マルクス・エンゲルスをはじめヘーゲル、カント、ギリシャ哲学者や歴史的な思想家の成果をベースに組み立てた密度の濃い論考である。 生煮えながら少しわかりかけてきた気もする。読む毎に刺激的な思考の世界に入りつつあるという実感が満足感を増幅させる。
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恐るべき名著。近年では東浩紀「観光客の哲学」に匹敵するかそれを上回るスケールの哲学書といえるのではないか。 交換様式と「力」について、個々の踏み込みとしては弱いような、もう少し説明がほしいような、また、繰り返しが多いような気はしたものの、世界史を総掴みする壮大な試みには驚いた。...
恐るべき名著。近年では東浩紀「観光客の哲学」に匹敵するかそれを上回るスケールの哲学書といえるのではないか。 交換様式と「力」について、個々の踏み込みとしては弱いような、もう少し説明がほしいような、また、繰り返しが多いような気はしたものの、世界史を総掴みする壮大な試みには驚いた。 そしてラスト。「向こうから」「Dが必ず到来する」と。その言葉に勇気づけられる。
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