商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 柏書房 |
発売年月日 | 2021/05/03 |
JAN | 9784760153497 |
- 書籍
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まとまらない言葉を生きる
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まとまらない言葉を生きる
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商品レビュー
4.3
58件のお客様レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
以前から印象的な表紙を何度も見かけて気になっていた中、友人がおすすめしてくれたので読んだ。タイトルどおり、言葉をめぐるエッセイで、著者がコミットしてきた障害者運動を軸に現在の日本語を考察している一冊で興味深かった。 日々暮らす中で気になった言葉を巡るムードに関する考察がなされ、そこに障害者運動から見えた景色が付加される構成となっている。著者の言葉に対する着眼点は鋭く、普段使っている言葉の中に感じる違和感を余すことなく言語化しようと試みていた。著者の特徴として言語の両義性に注目している点が挙げられる。一点ポジティブに見えるような言葉でも、ひっくり返すとネガティブに捉えられる。それは自分の都合だけを考えるのではなく、他者の眼差しを考える、とりわけ社会のマイノリティである障害者の活動に従事してきたからこそ養われた言語に対する感性なのだろう。 介護施設で提供されるおでんが刻まれていた話が一番興味深かった。施設サイドとしては、事故を防ぐこと、また個別対応による労力を避けるため、効率を目的として、おでんを刻んで提供したが、著者の知り合いは「刻まれたおでんは、おでんじゃないよな」といって不満を述べる。日本の社会は「仕方ない」と諦め、和を乱さないことが美徳になる場面が多いが、このように小さいと思われることもあきらめてしまえば、その諦めてしまう心は際限なくどこまでも追いかけてくる。自分の考えを主張する必要性と妥協点のバランスについて「おでんを刻む」という想像もしないシーンから引き出されるだなんて斜め上の発想すぎる。 また、繰り返し登場する「降り積もる」という動詞は、今の言論空間のアナロジーとしてこれほど納得感があるものはない。それはSNSのUIの影響が大きいと考えられる。次から次へと上から言葉が降ってきて、下へと流れていく。フォローしている人の言葉に絞ることもできるが、今や「おすすめ」というランダムな言葉の集積がデフォルトになり、それはまるで雨や雪のように質と量をコントロールできない。そうして降り積もった言葉は時代の価値観の形成に寄与する大きな存在として眼前に立ちはだかるのであった。 言葉を軽く見る現状は、社会を軽く見ることと同義だという主張は本著の核心部分である。生産性、生きる意味、権利といった言葉を絡めて、我々の人生が軽視される可能性について思いを巡らせており、ここ数年は同じようなことを感じていた。他人の権利が侵害される様を指くわえて見ていると、いつのまにか自分の大切なものも奪われてしまうかもしれない。そんな想像力を強く喚起する一冊だった。
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病気や障害を持つ人たちとのエピソード・言葉が読んでいるとなんだかグサグサと刺さってくる、言葉と社会を哲学している感覚。 「生きる意味」や「生きた心地を削る言葉」、「誰かや国のために役に立つこと」、「理不尽に抗う方法」、「自己責任」などなど印象の残る言葉がとても多かった。 当たり前...
病気や障害を持つ人たちとのエピソード・言葉が読んでいるとなんだかグサグサと刺さってくる、言葉と社会を哲学している感覚。 「生きる意味」や「生きた心地を削る言葉」、「誰かや国のために役に立つこと」、「理不尽に抗う方法」、「自己責任」などなど印象の残る言葉がとても多かった。 当たり前の日常が当たり前じゃなくなったときに、自分が社会を見る目がどう変わるのか、考えるきっかけにもなる。
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文学者である荒井裕樹さんの著書ということで、言葉そのものについて書かれた本だと思っていたけど、もっと広い意味で社会の中での言葉について書かれていた。 無意識下で聞いたり使ったりしている言葉。今まで気にしていなかったけど、その中でちょっと気になっていた言い回しがいくつか取り上げられ...
文学者である荒井裕樹さんの著書ということで、言葉そのものについて書かれた本だと思っていたけど、もっと広い意味で社会の中での言葉について書かれていた。 無意識下で聞いたり使ったりしている言葉。今まで気にしていなかったけど、その中でちょっと気になっていた言い回しがいくつか取り上げられていた。 なんとなく引っかかっていたことを、代わりにきちんと説明してもらえたようでスッキリ。 例えば「自己責任」とか「生きる意味」とか。 第10章「一線を守る言葉」も妙に納得して、印象深いテーマだった。 文章がきれいで読みやすかったけど、たくさんのお題を投げかけられたような気分で、まだしっかりとは消化できていない。 時間をおいて、また読みたいと思う。
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