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言霊の幸う国で
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 筑摩書房 |
発売年月日 | 2024/07/01 |
JAN | 9784480805188 |
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言霊の幸う国で
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商品レビュー
4
9件のお客様レビュー
圧倒される分厚さとその内容。 頭をガツンと殴られたような気持ちになった。 今年は自分の無知と向き合う作品に出会えているなあと思っているけど、この作品もそのひとつ。
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やられた。 相変わらず入手するきかっけは忘れてしまっていて、 タイトルから、詩集かなにかと思って読み始めた。 まあそれにしちゃ分厚い本だなあと。 そしたらいきなり芥川賞受賞。台湾人初の! ん?ドキュメンタリーか?Lこと柳千慧(りゅうちさと)。 豊崎由美も出てくるし、、 いきな...
やられた。 相変わらず入手するきかっけは忘れてしまっていて、 タイトルから、詩集かなにかと思って読み始めた。 まあそれにしちゃ分厚い本だなあと。 そしたらいきなり芥川賞受賞。台湾人初の! ん?ドキュメンタリーか?Lこと柳千慧(りゅうちさと)。 豊崎由美も出てくるし、、 いきなりSNSの反日バッシング。安倍首相を批判したと。 女性差別、外国人差別。ストーカーもいた! 今度はレズビアンバッシング。そう、彼女は30代前半のレズビアン、、、 同性愛差別。 と思いきや、 台湾から「彼女はトランスジェンダーだ」のSNS。 トランス差別。 一気に泥沼と化すSNS。 すさまじい。 これに抗うL。 後半はトランスジェンダーに対する著者の見解が滔々と述べられる。 大井に賛同する。 そもそもトランスジェンダーについては私も不勉強だった。 なぜ生まれた体にメスを入れてまで性転換をするのか、と。 それはそれを強いる法律があったから。 そうしないと彼ら彼女らは生きづらいから。 要するに弱者いじめ。マイノリティいじめだ。世の中のわずか0.5%に対して。 気づかずに差別してしまうことについては学習するしかない。 声に耳を傾けるしかない。 しかし、意識的に差別する人、自分の価値観以外は認めない人、集団についてはどうしたものか。 その権化に自民党があるとは、なんとも情けない話だ。一部の議員が裏にある組織に動かされ、、、 それに煽られ教養のない人が乗っかり、数の力になる。そうした議員を当選させる。 そういうときは比例区なんてなくせばいい、と思うが、 個人を選ぶのも党議拘束で無意味とも思う。 やはり党自体を選ぶしかない。選ばない、しかない、だ。マイナス投票権が欲しい。 話が逸れた。 自分だけは安全な場所にいると勘違いしているからこそ、マイノリティを差別できる。 東大卒の勘違い、世襲議員の勘違い。ほかにもいろいろあるだろう勘違い。 反知性主義、そのものだ。 過去はマイノリティの犠牲の上に繁栄があったのかもしれない。 成長なき現在、それが悪質化する。少ないパイをマジョリティが奪おうとする。 そこには何の根拠もない。 マイノリティを応援したい。 プロローグ 第1章 栄光 第2章 暗影 第3章 虚像 第4章 狭間 第5章 傲骨(ごうこつ) 第6章 兆候 第7章 俯瞰 第8章 因果 第9章 喪失 第10章 邂逅 第11章 時代 エピローグ 五十年後のあなたへ
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
史上初の台湾人芥川賞受賞作家による、半自伝的小説。 母国語でない者が外国語で小説を書くだけでも目が飛び出るくらいすごすぎるのに、それで日本文壇の最高峰とされる芥川賞を受賞するなんて、あり得ないじゃん、と素直に驚愕している。しかし、その境遇は決して楽観視していられるものではない。その過酷な現実を如実にさらけ出してくれるのが本作。ある意味、現代という時代の嫌な側面をこれでもか、これでもか、と見せつけてくれる、衝撃的な問題作だ。 Lこと柳千慧(りゅうちさと)は『彼岸花が香る島』で芥川賞を受賞。鳴かず飛ばずの外国人作家として日本で焦燥感に駆られていた新人作家にとっては、これから栄光の日々が始まるはずだった。が、受賞スピーチの際に、時の元首相安倍晋三氏への苦言を呈したことからネトウヨに絡まれ、一気にヘイトスピーチの標的とされてしまう。 彼女は外国人であるだけでなく、レズビアンでもあった。受賞をきっかけに名が知られたことから、台湾にいた頃の元恋人に目を付けられ、執拗なストーカーに合う羽目に。それが一段落すると、今度は、トランスジェンダーだったことが台湾からバレていくという急展開に。 彼女にとって、トランスであることは最後まで隠し通したい秘密だった。しかしバラされたことで、徹底してこれに向き合わざるをえなくなっていく。 トランスの置かれた状況が、ことのほかひどい現実が、ありありと、詳細に描かれていく。特に、男性の肉体を持って生まれてしまったけれども内心の実存は女性でしかありえないトランスは、世の人々から徹底的に嫌悪され、差別される。いわく、女子トイレや女風呂に男が入ってくるぞ! そんな世の中ありえるか? などといった誤解が平然とまき散らされる。しかも差別は世のマジョリティばかりではない。あろうことか、本来ならともに戦うべき側の人々、すなわち、マイノリティであり長らく被差別側として辛酸を嘗めさせられてきたレズビアンやジェンダー活動家からも敵対視されてしまうという悪夢。つまり、男の体を持っていること自体が、彼女らにとっては我慢がならないという理屈だ。 しかし、Lたちトランスは、心の実存として、女でしかありえない。自分自身で生きていきたいだけなのに、たまたま生まれ持った肉体がそれを邪魔しているという現実。 さらに複雑さを増しているのは、肉体は男性のトランスで、かつレズビアンだという現実。それって、結局、おかまのふりをした男が単に女好きだったってだけじゃん、と容易に曲解にされてしまうのだ。 このように、本作は、前半は外国人差別から一般的LGBT差別の現実を背景としているが、後半は一気にその差別の中の差別ともいうべき、あるいは現代版差別の最先端を行く差別へと展開していく。 私自身は、性別でなぜこうも人は人を差別したがるのか、なぜそこまで性別にこだわるのか、不思議に思う。好きになった相手がたまたま同性だった。ただそれだけのことだ。なぜ同性だとそこまで嫌悪され、憎まれ、社会から排除されるのか。周囲の理解と社会の承認を得るために、なぜそこまでエネルギーを費やさなければならないのか。理解に苦しむ。 人を好きになるのに、ルールも何もあったものではない。人は異性を好きになるべきである、といった社会的通念は、単に社会が後天的に作り出したものでしかない。 人が人を好きになる。ごく自然なことだ。自然のはたらきかけに人は抗えない。たまたま相手が同性だった、その自然のはたらきに目くじら立てて憎悪の炎をたぎらすなんて、どうかしている。エネルギーの無駄遣いだ。 しかし、多くの人はそのエネルギーの無駄遣いを延々と繰り返してきている。その傾向は、とりわけ近代以降、熾烈さを増す一方だ。古代は違った。もともと、人々は同性愛に寛容だった。日本でも江戸時代は性に対してあまりにもあけっぴろげでおおらかだった。その事実は、ヨーロッパの宣教師等による報告文書でも明らかだ。そんなヨーロッパでも、古代ギリシャでは、同性愛はむしろ社会的ステータスの表れだった。 そう、とにかく、性に関するタブーや認識は、社会や時代によっていとも簡単に変えられていく代物でしかない。そんなやわな代物を、人をわざわざ傷つけるためだけの道具として採用している。それが現代版暴力の噴出という表現をとって、いま私たちの目の前に繰り広げられているのだ。 そんな社会の圧倒的暴力を前に、安易な泣き寝入りに逃げ込むことなく立ち向かう姿勢を貫いた本書。その雄姿にただただ敬服するばかりである。
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