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海馬を求めて潜水を 作家と神経心理学者姉妹の記憶をめぐる冒険
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | みすず書房 |
発売年月日 | 2021/06/23 |
JAN | 9784622090151 |
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人間に宿るタツノオトシゴ…脳にある海馬を、つまり記憶のしくみについて書かれた本。 タイトルと表紙の雰囲気に惹かれて手に取った。 神経科学や認知心理学など、科学の本でありながら歴史、文学、心理学、建築学、神話学、生物学、環境問題などいろいろな分野の話題を組み合わせながら、情緒的でユ...
人間に宿るタツノオトシゴ…脳にある海馬を、つまり記憶のしくみについて書かれた本。 タイトルと表紙の雰囲気に惹かれて手に取った。 神経科学や認知心理学など、科学の本でありながら歴史、文学、心理学、建築学、神話学、生物学、環境問題などいろいろな分野の話題を組み合わせながら、情緒的でユーモラスでもある。 そんな本書はノルウェー人の作家&神経心理学者の姉妹によって書かれている。姉妹同士であることの屈託のなさから、時には喧嘩をしつつも、好奇心旺盛な彼女らはとことん記憶について突き詰め書いたとのこと。とても愛着の湧く本だ。 姉妹は様々な記憶に、海馬に関する過去の事例や先行研究を紹介しながら、自身らでも実験の再現をしたり、それらを鑑みた上で、どんなことでも記憶しておこうという試みはやめるべき。と記憶の衰えに日々憂える私たちに寄り添うように語りかけてくれる。 第1章 海の魔物――海馬の発見 第2章 二月にタツノオトシゴ(海馬)を求めて潜水を――記憶は脳のどこに定着するか 第3章 スカイダイバーが最後に考えること ――個人的な記憶とは 第4章 カッコウのひな ――虚偽記憶はいつ(正常な)記憶の中に忍びこむか 第5章 大掛かりなタクシー実験とかなり奇妙なチェス対決――記憶力をよくする方法 第6章 忘却は思い出の真珠を作る――なぜ人は忘れるのか 第7章 脳内のタイムマシン ――過去を思い出すことも未来を想像することも どの章も面白かった。 記憶の捏造は誰でも簡単にしてしまいがちであることがとてもよくわかった。 とりわけ目から鱗が落ちたのは第7章だった。 記憶は過去にも未来にも双方に働くというのは、薄々生活の中で分かっていたはずなのに、このようにわかりやすく科学的に説明されるとハッとしてしまったのだ。 過去の記憶があるからこそ未来を想像できる。 未来が想像できるからこそ、文学が生まれたのだ。 また、うつ病などを患うと未来の想像があやふやになり難しくなる。孤立を深めても未来の想像があやふやになる。生き詰まりそうになる。 そんな時は「物語」に触れるのが良いのだそうだ。 物語に、他者の人生に多く触れることで、生き詰まっていたところに、「今」以外の未来を見ることができる。 そうか…だから私はこんなにも物語を欲しているのか。とものすごく腑に落ちた。物語に触れるのは私にとって、とても大事なことだ。 具体的に未来をシミュレーションすることで、さまざまなシナリオの細部が明確になりどれを選ぶか判断しやすくなるという未来思考を「エピソード先見(⇔エピソード記憶)」と、トーマス・ズデンドルフ氏は呼んでいるらしく、とても興味深かったので書き留めた。 またノルウェーでの事例・研究やノルウェーで活躍する人物などもたくさん知ることができるのでそこもいい。 本書ではたくさん先行研究を調べていて、それでもまだ未知数な部分の多い記憶。人間の脳のしくみ。 もっともっと知りたいと思った。 そして何度でも本書を読み込みたいと思った。 もちろん、多くの人に読まれてほしいとも。
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海馬から始めて記憶への考察実験が始まる。お決まりのラットに電流を流すものからMRIや不幸なきっかけで海馬を除去したヘンリーの記録、ダイバーによる記憶やイルヴァ自身による100日間の実験など実に多方面から記憶を見つめる。そして未来との関係、鬱との関連など興味は尽きない。 忘れること...
海馬から始めて記憶への考察実験が始まる。お決まりのラットに電流を流すものからMRIや不幸なきっかけで海馬を除去したヘンリーの記録、ダイバーによる記憶やイルヴァ自身による100日間の実験など実に多方面から記憶を見つめる。そして未来との関係、鬱との関連など興味は尽きない。 忘れることにも意味があり、忘れてもいいんだよということにほっとした。
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人の脳に棲むタツノオトシゴ——海馬。作家のヒルダと心理学者のイルヴァ姉妹は、地理と記憶の関係性や、他人の記憶を捏造することは可能かどうかなどを過去の研究に基づいて自らも実験し、記憶を司る器官の謎を探っていく。また、警察官、タクシー運転手、チェスプレイヤー、俳優、テロ被害者でもある...
人の脳に棲むタツノオトシゴ——海馬。作家のヒルダと心理学者のイルヴァ姉妹は、地理と記憶の関係性や、他人の記憶を捏造することは可能かどうかなどを過去の研究に基づいて自らも実験し、記憶を司る器官の謎を探っていく。また、警察官、タクシー運転手、チェスプレイヤー、俳優、テロ被害者でもあるテロ研究者など、幅広い人びとへのインタビューを通じて「人の生にとって記憶とは何か」という問いに軽やかな答えを提案してくれる、記憶と忘却にまつわるノンフィクション。 面白かった!オリヴァー・サックスに近い読みごこちだが、サックスが脳神経科医として患者の脳に接しているのに対して、こちらは作家と心理学者のコンビなので固い定義に拠らない、柔らかい意味での〈精神〉や〈心〉に触れるような書き方。この距離感がとても読みやすかった。「私たち」という一人称複数も心地よい。 面白かったエピソードは、まず脳の機能不全でエピソード記憶がない人が一定数いるということ。意味記憶はあるので日常生活を送るには支障ないが、他人が幼少期の記憶をありありと語るのを聞いて「作り話だ」と思っていたという。なにせ他人の頭のなかの話なのでわからないが、こういう人はそれなりにいるんだろうな。個人的にはエピソード記憶がないとどんな夢を見るのか気になる。見ないのかな。 PTSDのような心的後遺症を残さないためには、激しいショックを受けた直後にテトリスをすると記憶が定着するのを防げる、という実験の話も面白かった。実践向きじゃないと言われてたけど、たぶんみんな好きな芸能人のスキャンダルにショックを受けたあと、自然とスマホゲームして記憶定着を防いでたりするよねきっと。ノルウェーのウトヤ島で起きたテロ事件の被害者へのインタビューによって浮き彫りになる目撃証言のみを頼ることの危うさや、かつて脅迫めいた取り調べを行なっていた警察官へのインタビューも印象深かった。 人はなぜ過去を記憶するのだろう。本書の著者、オストビー姉妹によれば、それは未来を想像するためだ。〈未来思考〉と〈過去の記憶〉は分かち難く結ばれている。
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