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海馬を求めて潜水を 作家と神経心理学者姉妹の記憶をめぐる冒険
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海馬を求めて潜水を 作家と神経心理学者姉妹の記憶をめぐる冒険

ヒルデ・オストビー(著者), イルヴァ・オストビー(著者), 中村冬美(訳者), 羽根由(訳者)

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海馬を求めて潜水を 作家と神経心理学者姉妹の記憶をめぐる冒険

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 みすず書房
発売年月日 2021/06/23
JAN 9784622090151

海馬を求めて潜水を

¥3,740

商品レビュー

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2025/01/17

「記憶」に関して医学的、脳科学的に考察した本。特に注目したのが本の表紙にもなっている〝海馬”(表紙はタツノオトシゴだが)だ。体験したことは、人、物事、感覚、行動として個別に記憶に保管される。それらが海馬の働きによって、記憶ネットワークで互いに結びつけられているという。それによって...

「記憶」に関して医学的、脳科学的に考察した本。特に注目したのが本の表紙にもなっている〝海馬”(表紙はタツノオトシゴだが)だ。体験したことは、人、物事、感覚、行動として個別に記憶に保管される。それらが海馬の働きによって、記憶ネットワークで互いに結びつけられているという。それによって記憶容量に余裕ができ、私たちは自由にものを考えることができる。 単に記憶と言っても、それを有効利用するような場合と、それに思い出せずに苦しんだり、不要な状況で強引に出てきて振り回される場合がある。本書ではこうしたあらゆる状況について解説していて、どれも面白い。特に、テロに遭遇した人のPTSDやロンドンのタクシードライバーにおける脳の変化、外傷による脳機能の欠損した人についての話は興味深かった。 ー トラウマは、脳を萎縮させるほど有害なのだろうか、と。大変に恐ろしい思いをしている時、ストレス反応のせいでコルチゾンというホルモンが最大限に分泌される。確かにこのコルチゾンを大量に浴びると脳や、特に語源が同じタツノオトシゴと同様に傷つきやすい海馬は、害を受ける可能性がある。しかし学者のマーク・ギルバートソンと同僚がおこなった双子研究は、また別の可能性を示した。被験者となったのは、ふたりのうち片方のみが何か事件に遭遇しトラウマを負った双子だ。一卵性双生児は海馬もお互いにそっくりのはずだ。そこでギルバートソンは、トラウマのないひとりと不運にもトラウマを負ってしまったもうひとりの海馬を比較した。驚いたことに、彼らの観察によれば双子の海馬はトラウマがある方とない方を比べても、お互いにそっくりだった。「つまりこれはトラウマを負う前の海馬のサイズ自体が問題であり、リスク要因となる可能性があるということです」。 ー 脳の変化が明らかなのは、ザ・ナレッジ合格者に限られているのだ。合格するか否かは、明らかにトレーニング量にかかっていた。これもまた、トレーニングが脳にとって効果があることの証明だろう。一方、ザ・ナレッジを突破できない理由は多々考えられる。志願者は経済的に不安定な中、自由時間は原付に乗って地理を覚えるなど何年も猛勉強をしなければならず、気力が途中で萎えてしまっても不思議ではない。また、家族の世話に時間を取られ、十分に勉強できなかった人もいるかもしれない。別の可能性が考えられるのは、ザ・ナレッジに合格する人たちの脳は、そうでない人たちよりも、変化する可能性が高いのではないかということだ。しかし、これは測定が難しい。遺伝子、脳内の特殊な成長因子、栄養など、何が決定的な要因なのかは今日ではまだわかっていない。「現在わかっていることは、記憶力は必要に応じて変化するということです。たとえ歳を取っても」。 ー だが、脳の一部だけを特別に訓練することには、ちょっとした問題がある。脳は頭蓋骨にがっちりと囲まれているので、記憶力をトレーニングしても脳全体を大きくすることはできない。だから、ある分野の記憶力のトレーニングをすると、どうしても他の分野に負担が行くようだ。ロンドンのタクシー運転手たちを観察する限り、そう言える。「海馬後部は大きくなりましたが、海馬前部は少々縮んでしまいました」とマグワイアは説明する。タクシー運転手になるための訓練は、別の記憶力を劣化させてしまった。つまり、人物を覚えることが苦手になってしまったのだ。この点に関しては、簡単な記憶力テストをしただけで、一般人とタクシー運転手の違いが明らかになるという。「タクシー運転手の脳は地理記憶を優先するので、その他の視覚情報は二の次になるようです」 後半の上記のような内容を読みながら、記憶力のキャパシティに上限があるのか否か、という点に興味を持った。忘却は大切な機能だという事は分かったし、タクシー運転手は、海馬の一部が大きくなった代償を受けていた事も分かったが、結局、無限大か否かは分からなかったのが残念。忘れたくない、という本能が文字を書き起こすのかもしれないし、忘却という機能の存在自体が、限界の証拠になるのかもしれない。あるいは、本当に忘れたくない事は、忘れていない。忘れたことは、不要だった開き直っても良いのかもしれない。

Posted by ブクログ

2022/06/23

人間に宿るタツノオトシゴ…脳にある海馬を、つまり記憶のしくみについて書かれた本。 タイトルと表紙の雰囲気に惹かれて手に取った。 神経科学や認知心理学など、科学の本でありながら歴史、文学、心理学、建築学、神話学、生物学、環境問題などいろいろな分野の話題を組み合わせながら、情緒的でユ...

人間に宿るタツノオトシゴ…脳にある海馬を、つまり記憶のしくみについて書かれた本。 タイトルと表紙の雰囲気に惹かれて手に取った。 神経科学や認知心理学など、科学の本でありながら歴史、文学、心理学、建築学、神話学、生物学、環境問題などいろいろな分野の話題を組み合わせながら、情緒的でユーモラスでもある。 そんな本書はノルウェー人の作家&神経心理学者の姉妹によって書かれている。姉妹同士であることの屈託のなさから、時には喧嘩をしつつも、好奇心旺盛な彼女らはとことん記憶について突き詰め書いたとのこと。とても愛着の湧く本だ。 姉妹は様々な記憶に、海馬に関する過去の事例や先行研究を紹介しながら、自身らでも実験の再現をしたり、それらを鑑みた上で、どんなことでも記憶しておこうという試みはやめるべき。と記憶の衰えに日々憂える私たちに寄り添うように語りかけてくれる。 第1章 海の魔物――海馬の発見 第2章 二月にタツノオトシゴ(海馬)を求めて潜水を――記憶は脳のどこに定着するか 第3章 スカイダイバーが最後に考えること ――個人的な記憶とは 第4章 カッコウのひな ――虚偽記憶はいつ(正常な)記憶の中に忍びこむか 第5章 大掛かりなタクシー実験とかなり奇妙なチェス対決――記憶力をよくする方法 第6章 忘却は思い出の真珠を作る――なぜ人は忘れるのか 第7章 脳内のタイムマシン ――過去を思い出すことも未来を想像することも どの章も面白かった。 記憶の捏造は誰でも簡単にしてしまいがちであることがとてもよくわかった。 とりわけ目から鱗が落ちたのは第7章だった。 記憶は過去にも未来にも双方に働くというのは、薄々生活の中で分かっていたはずなのに、このようにわかりやすく科学的に説明されるとハッとしてしまったのだ。 過去の記憶があるからこそ未来を想像できる。 未来が想像できるからこそ、文学が生まれたのだ。 また、うつ病などを患うと未来の想像があやふやになり難しくなる。孤立を深めても未来の想像があやふやになる。生き詰まりそうになる。 そんな時は「物語」に触れるのが良いのだそうだ。 物語に、他者の人生に多く触れることで、生き詰まっていたところに、「今」以外の未来を見ることができる。 そうか…だから私はこんなにも物語を欲しているのか。とものすごく腑に落ちた。物語に触れるのは私にとって、とても大事なことだ。 具体的に未来をシミュレーションすることで、さまざまなシナリオの細部が明確になりどれを選ぶか判断しやすくなるという未来思考を「エピソード先見(⇔エピソード記憶)」と、トーマス・ズデンドルフ氏は呼んでいるらしく、とても興味深かったので書き留めた。 またノルウェーでの事例・研究やノルウェーで活躍する人物などもたくさん知ることができるのでそこもいい。 本書ではたくさん先行研究を調べていて、それでもまだ未知数な部分の多い記憶。人間の脳のしくみ。 もっともっと知りたいと思った。 そして何度でも本書を読み込みたいと思った。 もちろん、多くの人に読まれてほしいとも。 

Posted by ブクログ

2021/10/07

海馬から始めて記憶への考察実験が始まる。お決まりのラットに電流を流すものからMRIや不幸なきっかけで海馬を除去したヘンリーの記録、ダイバーによる記憶やイルヴァ自身による100日間の実験など実に多方面から記憶を見つめる。そして未来との関係、鬱との関連など興味は尽きない。 忘れること...

海馬から始めて記憶への考察実験が始まる。お決まりのラットに電流を流すものからMRIや不幸なきっかけで海馬を除去したヘンリーの記録、ダイバーによる記憶やイルヴァ自身による100日間の実験など実に多方面から記憶を見つめる。そして未来との関係、鬱との関連など興味は尽きない。 忘れることにも意味があり、忘れてもいいんだよということにほっとした。

Posted by ブクログ

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