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ガーデン 文春文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 文藝春秋 |
発売年月日 | 2020/08/05 |
JAN | 9784167915407 |
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商品レビュー
3.6
66件のお客様レビュー
「透明な夜の香り」からちょっと気になる作者さん。 「赤い月の香り」が文庫になるまでは既刊をボチボチと読んでいく、の2冊目。 実は1年前にフォローしている方のレビューを読んで、「透明な夜の香り」を読む前からずっと「読みたい」に入れていた。 主人公は、植物を偏愛する30歳を過ぎた独...
「透明な夜の香り」からちょっと気になる作者さん。 「赤い月の香り」が文庫になるまでは既刊をボチボチと読んでいく、の2冊目。 実は1年前にフォローしている方のレビューを読んで、「透明な夜の香り」を読む前からずっと「読みたい」に入れていた。 主人公は、植物を偏愛する30歳を過ぎた独身男性・羽野。 ファッション雑誌の編集をこなし、社内外の付き合いもそれなりにしている彼だが、その心中では『放っておいて欲しい。それが、僕が他人に求める唯一のことだ』と思いながら生きている。 親の仕事の都合で『途上国』の広い庭や畑や小さな果樹園まである家で育ち、その時とその後の経験が彼の人格を形成し、睡眠と植物のためだけにあるという部屋で植物たちを丹精して育てている。 ずっと昔、初めての海外出張で行ったマレーシアで、現地会社へ出向して社長を努めている人の家を訪ねた時のことを思い出した。 正に羽野が住んでいたような環境がそこにはあり、子どもがああいった中で育つと、羽野のような思いに至るのも理解できないこともない。 そうして出来上がった、日常的な人間関係を超越したような羽野の考え方には、結構共鳴するところがあった。 一人でいることは飽きるとか、そういうことではない気がする。一人は基本だ。(P.28) 嫌いとか好きとか、あれが欲しいとか、自分の手の中でする限りは自由じゃない。良い悪いなんてないし、好き嫌いに意味も理由もいらないよ。(P.34) 異性でも同性でも、僕は仕事で同士はいらない。(P.62) 幻滅したくなかったらなにも求めない方がいい。(P.126) 仕方ない、でたいていのことはやり過ごせる。(P.188) 『でも、それじゃ……さみしくないですか』と問われて『さびしくないよ』と言い切るところには、こういう生き方ができるといいよねえと思わすところがある。『僕の感覚は少しずれている』と自覚するように、なんとなく何かが欠落しているようには感じるが…。 そんな彼と関わってくる女性たち。アルバイトのミカミさん、同期のタナハシ、モデルのマリ、バーテンドレスの緋奈、写真家の理沙子。 それぞれに個性的で魅力的な彼女らとの関係性が描かれる中で、羽野の生き方を楽しんで読んでいたが、誰にも手を差し伸べなかった羽野の前から彼女らが消えていった時、羽野が揺らいだのにはやや心外。そういうことをやり過ごして、植物を偏愛する男として通して欲しかったなあ。 “なんとなく何かが欠落している”ところを突かれたわけだが、なんかこういう生き方もいいよねと思ったところもあっただけにちょっと残念。
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『女は花なのかもしれない。愛でられたいという本能だけで咲く花。』 植物を偏愛し、自宅に自分だけの庭を持ち、そこに自己の存在肯定を見出す編集者の羽野は、表面だけ相手が望むようにふるまっているだけで、他人に対する意思や望みがない。よって人に傷つかない。また女性の底の知れなさが怖い...
『女は花なのかもしれない。愛でられたいという本能だけで咲く花。』 植物を偏愛し、自宅に自分だけの庭を持ち、そこに自己の存在肯定を見出す編集者の羽野は、表面だけ相手が望むようにふるまっているだけで、他人に対する意思や望みがない。よって人に傷つかない。また女性の底の知れなさが怖い。一度応じてしまったら、果てのない「感情共有」という欲望に、永遠に応え続けなくてはいけない気がするから。 人が孤独なのも、さびしいのも、当たり前のことで、それは幸福でも不幸でもなく、ただの事実だ。愛情によって、ぴったりと重なるような理解ができたと思えたとしても、それは錯覚に過ぎないのだけれど、その錯覚を求める女性は多い。羽野はきっと、そういう認識で生きている自分のことを尊重してもらいたい。 恋愛感情なしに自分をさらけ出すことの出来ていた相手である緋奈が、温度なく諦めのこもった目を向け、あなたは「不自然だ」と言い放ち、目の前から消える。そこで初めて羽野は自分の臆病さを自認する。こうしてそぎ落とされた己の欲望を直視するところで、物語は終わりを迎える。 『僕は彼女の体温を知らない。彼女の肌も、その奥も。』理性的であることはある種、楽をすることだと思う。完全に正しさに行ききらない曖昧さを手放さない大人は、たしかに危ういけれど、鮮烈な魅力を放つ。どハマりしたくなる何かがある。赤い唇をもつ理沙子に溺れていく、痛々しくも人間らしい羽野の姿を、もっと見ていたいなと思った。
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植物を愛する羽野は、人間と深く関わるのが苦手で人と常に一定の距離を置いている。どこか周りの人たちを達観して見ているような羽野だったが、実は人の気持ちを何もわかっていなかったことに気付かされるお話。 終盤で緋奈が羽野の生き方や部屋を「不自然だ」と指摘していくシーンには圧倒された。...
植物を愛する羽野は、人間と深く関わるのが苦手で人と常に一定の距離を置いている。どこか周りの人たちを達観して見ているような羽野だったが、実は人の気持ちを何もわかっていなかったことに気付かされるお話。 終盤で緋奈が羽野の生き方や部屋を「不自然だ」と指摘していくシーンには圧倒された。緋奈の言葉が適切で、花が崩れるように羽野の価値観がバラバラと崩れていく感じだった。
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