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ガーデン の商品レビュー

3.5

73件のお客様レビュー

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2024/11/13

241113*読了 自然あふれる奈良に住むようになって、植物に惹かれるようになった。 道端に咲く名前も知らない花、誰かの手によって植えられた花も、奔放に咲く野の花も、どれもがただありのままに生きている。 美しさとは整えられた美だけではないと、花たちを見て思う日々。 そんな自分...

241113*読了 自然あふれる奈良に住むようになって、植物に惹かれるようになった。 道端に咲く名前も知らない花、誰かの手によって植えられた花も、奔放に咲く野の花も、どれもがただありのままに生きている。 美しさとは整えられた美だけではないと、花たちを見て思う日々。 そんな自分に起きた変化と、この小説のタイトルである「ガーデン」がリンクして、読んでみたくなった。 ガーデンという単語から連想するのは、花々の咲き誇る穏やかな庭だけれど、この本の表紙は黒が際立つ。黒をバックに咲く一輪の花は、儚げではなくて、力強い。そう気の強い女性のよう。 読み終わった後の印象も、「ガーデン」から想像するおだやかな美しさとは異なるのだけれど、わたしはこの本に出てこないタイプの花々が咲く静かな庭を持ちたいと思った。 前々から庭づくりへの興味は湧いていたけれど、植物を愛でる羽野に影響され、より一層その思いが高まり、庭についての本を数冊買った。 主人公である羽野の視点から語られる女性たちは、きっとわたし見る彼女たちと違っていそうだし、羽野がもしわたしの同僚だったら、どう思われるのだろうと想像をする。 出自が開発途上国の帰国子女であることが、羽野の人格形成に影響を及ぼしてきたのはわかる。でも、30歳を超えてもそれをここまで引きずって閉じこもるのはどうなのだ? わたしが羽野の身近にいたら、羽野に惹かれるかな、それとも嫌なやつと思うかな。うーん。 羽野の暮らす一室で咲く植物たち。植物を育てることで心の安定をはかる羽野。 その様は自分に重なって見えた。 彼の植物が、わたしにとっては本。 本に救いも逃げ場も悦びも求めている。 本を読むことで自分を保っている。 そうやって何かに縋りたい気持ちには共感をした。 いろんな女性と関わりながら、愛想を尽かされながら(これは女の薄情さ、よくわかる)、結局、羽野は変われるのだろうか、代わりたいのだろうか。 個人的にはやっぱり変わらないんじゃないかなぁと思ってしまう。 羽野より少しだけ年上の先輩として、離れたところから様子を見たい。

Posted byブクログ

2024/10/26

自分の好きなものに囲まれて生きている、というのは良くも悪くも執着の塊なのだと思った。 人と自分の間に境界線を引いて、「自分の庭」に閉じこもっている主人公が可哀想に思えたし、とても切なく感じました。

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2024/10/06

植物を愛しすぎてる、感情を表に出さない系男子の話。何に対しても淡白。淡々とし過ぎていて、読み進めるのに時間がかかった。

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2024/10/05

よく出来た都会のオフィス。そこにはノスタルジーをエネルギーにして、頑張っている青年、羽野氏他同僚がいる。このどこか希薄な空気のなか、人工的であることの危うさを、マンションの植物から感じる。時として燃料切れを起こす同僚に、羽野氏は直面する。そういった危うさを感じるわけである。

Posted byブクログ

2024/09/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

羽野のことをとても淋しい人間だと思う けど、それはわたしが違うタイプだからで、同じ人生を送っていないから 幼少期の体験は良くも悪くも影響を与えすぎる 彼のように人との関わりを避けて傷つけ傷つけられることから避けていたらきっと楽なのだと思う 過不足のない状態 でもそれは本当に充実していると言えるのだろうか 心は、その底では?ずっとジュースを差し出す誰かを求めているように思えた 「でも、あの子は結婚に向いていると思うわ。自分を殺すことを愛や喜びと思えるタイプだから」 うすうすそうだと分かっていながらも認めたくなかったところを刺された気がする

Posted byブクログ

2024/09/10

自分のために生きることに疲れたら、物言わぬ何かに愛情を注ぐ__植物との空間は閉ざされた世界だった。植物は強い生命力に溢れているが、登場人物からは生きづらさと心の渇きを感じた。自分の世界という安全圏で生きたい気持ちはとても共感した。

Posted byブクログ

2024/07/02

発展途上国で過ごした少年時代から植物を偏愛し、他人と深く関わらない編集者の羽野、ある日知り合った理沙子に帰国子女であることを隠す理由を問われたことから関わりを持つようになる。彼女と出会い様々な人の変化を知り羽野の人生観がゆらぎはじめる 小説は植物の描写とともに描かれた様々な登場...

発展途上国で過ごした少年時代から植物を偏愛し、他人と深く関わらない編集者の羽野、ある日知り合った理沙子に帰国子女であることを隠す理由を問われたことから関わりを持つようになる。彼女と出会い様々な人の変化を知り羽野の人生観がゆらぎはじめる 小説は植物の描写とともに描かれた様々な登場人物たちも魅力的、羽野のまわりには羽野を好いているのではと思われる女性が何人か登場し、最初と最後で印象が大きく変わる人が多くてとても強く惹かれました とくに印象的なのはバイトのミカミさん、マスコットみたいなキャラという印象から登場回数を重ねて行くごとに抜け目のないしっかり者であることがわかる。ミカミさんの好きなものに対してのことやお寺でのお願い事のことなど何気ない言葉だったとしても強く印象に残った 他にも様々な女性が登場するが、羽野は変わらないことが幸せなのだと信じて疑わない規則正しく同じリズムで生活し、植物のように悪くなったら葉を切り捨てるような生き方に感動するような人物である。それを冷めてると感じる人もいるだろうが自分はその生き方に賛同してしまう。 子供の頃思ったこと感じたこと、それは自分にとって確かなものだから読んでいて自分を固定してくれるような気持ちになった。だから自分的に最後はそんな同士がいなくなるようで少し寂しく感じてしまいました 全体を通して、描写は読みやすく美しくしい、ページ数もそこまでないのでサクッと読めると思います。ですが人によって羽野に対してイライラされる人もいるかも?それでも登場人物たちが魅力的なのでぜひ読んでほしい小説です

Posted byブクログ

2024/06/27

千早さんの本読んでみたいなぁと思いながら機会がなかなかなく。大好きな古本屋さんで見つけて、やっとご縁がきた!と思って読了。 読み終わった気分としては、後ろからぶすぶす刺されまくったような気分だ。私の場合は。 読みながら、これまでの全く長くもないけれどもな人生の中であった色々なこ...

千早さんの本読んでみたいなぁと思いながら機会がなかなかなく。大好きな古本屋さんで見つけて、やっとご縁がきた!と思って読了。 読み終わった気分としては、後ろからぶすぶす刺されまくったような気分だ。私の場合は。 読みながら、これまでの全く長くもないけれどもな人生の中であった色々なことが次々と思い出されて、何回も本を閉じかけた。 主人公の羽野が静かに揺さぶられていくのと一緒に揺さぶられた気分だ。羽野さんと私は全く似ていないのに不思議なものだ。

Posted byブクログ

2024/07/20

「透明な夜の香り」からちょっと気になる作者さん。 「赤い月の香り」が文庫になるまでは既刊をボチボチと読んでいく、の2冊目。 実は1年前にフォローしている方のレビューを読んで、「透明な夜の香り」を読む前からずっと「読みたい」に入れていた。 主人公は、植物を偏愛する30歳を過ぎた独...

「透明な夜の香り」からちょっと気になる作者さん。 「赤い月の香り」が文庫になるまでは既刊をボチボチと読んでいく、の2冊目。 実は1年前にフォローしている方のレビューを読んで、「透明な夜の香り」を読む前からずっと「読みたい」に入れていた。 主人公は、植物を偏愛する30歳を過ぎた独身男性・羽野。 ファッション雑誌の編集をこなし、社内外の付き合いもそれなりにしている彼だが、その心中では『放っておいて欲しい。それが、僕が他人に求める唯一のことだ』と思いながら生きている。 親の仕事の都合で『途上国』の広い庭や畑や小さな果樹園まである家で育ち、その時とその後の経験が彼の人格を形成し、睡眠と植物のためだけにあるという部屋で植物たちを丹精して育てている。 ずっと昔、初めての海外出張で行ったマレーシアで、現地会社へ出向して社長を務めている人の家を訪ねた時のことを思い出した。 正に羽野が住んでいたような環境がそこにはあり、子どもがああいった中で育つと、羽野のような思いに至るのも理解できないこともない。 そうして出来上がった、日常的な人間関係を超越したような羽野の考え方には、結構共鳴するところがあった。 一人でいることは飽きるとか、そういうことではない気がする。一人は基本だ。(P.28) 嫌いとか好きとか、あれが欲しいとか、自分の手の中でする限りは自由じゃない。良い悪いなんてないし、好き嫌いに意味も理由もいらないよ。(P.34) 異性でも同性でも、僕は仕事で同士はいらない。(P.62) 幻滅したくなかったらなにも求めない方がいい。(P.126) 仕方ない、でたいていのことはやり過ごせる。(P.188) 『でも、それじゃ……さみしくないですか』と問われて『さびしくないよ』と言い切るところには、こういう生き方ができるといいよねえと思わすところがある。『僕の感覚は少しずれている』と自覚するように、なんとなく何かが欠落しているようには感じるが…。 そんな彼と関わってくる女性たち。アルバイトのミカミさん、同期のタナハシ、モデルのマリ、バーテンドレスの緋奈、写真家の理沙子。 それぞれに個性的で魅力的な彼女らとの関係性が描かれる中で、羽野の生き方を楽しんで読んでいたが、誰にも手を差し伸べなかった羽野の前から彼女らが消えていった時、羽野が揺らいだのにはやや心外。そういうことをやり過ごして、植物を偏愛する男として通して欲しかったなあ。 “なんとなく何かが欠落している”ところを突かれたわけだが、なんかこういう生き方もいいよねと思ったところもあっただけにちょっと残念。

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2024/05/31

 『女は花なのかもしれない。愛でられたいという本能だけで咲く花。』  植物を偏愛し、自宅に自分だけの庭を持ち、そこに自己の存在肯定を見出す編集者の羽野は、表面だけ相手が望むようにふるまっているだけで、他人に対する意思や望みがない。よって人に傷つかない。また女性の底の知れなさが怖い...

 『女は花なのかもしれない。愛でられたいという本能だけで咲く花。』  植物を偏愛し、自宅に自分だけの庭を持ち、そこに自己の存在肯定を見出す編集者の羽野は、表面だけ相手が望むようにふるまっているだけで、他人に対する意思や望みがない。よって人に傷つかない。また女性の底の知れなさが怖い。一度応じてしまったら、果てのない「感情共有」という欲望に、永遠に応え続けなくてはいけない気がするから。  人が孤独なのも、さびしいのも、当たり前のことで、それは幸福でも不幸でもなく、ただの事実だ。愛情によって、ぴったりと重なるような理解ができたと思えたとしても、それは錯覚に過ぎないのだけれど、その錯覚を求める女性は多い。羽野はきっと、そういう認識で生きている自分のことを尊重してもらいたい。  恋愛感情なしに自分をさらけ出すことの出来ていた相手である緋奈が、温度なく諦めのこもった目を向け、あなたは「不自然だ」と言い放ち、目の前から消える。そこで初めて羽野は自分の臆病さを自認する。こうしてそぎ落とされた己の欲望を直視するところで、物語は終わりを迎える。  『僕は彼女の体温を知らない。彼女の肌も、その奥も。』理性的であることはある種、楽をすることだと思う。完全に正しさに行ききらない曖昧さを手放さない大人は、たしかに危ういけれど、鮮烈な魅力を放つ。どハマりしたくなる何かがある。赤い唇をもつ理沙子に溺れていく、痛々しくも人間らしい羽野の姿を、もっと見ていたいなと思った。

Posted byブクログ