プーさんの鼻

俵万智(著者)

• 販売会社／発売会社: 河出書房新社
• 発売年月日: 2018/02/01
• JAN: 9784309026510

商品レビュー

2025/09/02

子育ての詠がかわいすぎて、悶絶しながら読んだ。
あとがきにも書いてあったとおり、子育ては感動の連続だけど、すぐに慣れて過ぎ去ってしまうもの。その感動を、短い言葉で心に刻めるのが短歌のいいところ。
短いのに、こんなにも的確に表現していて、読んでいる側に情景を浮かべさせるのがすごい。
「生きる力」に引用されていた詠も幾つかあって、楽しく読めた。

2025/07/27

歌人、俵万智の第４歌集の新装版。４０歳を越えての妊娠、出産、子育て(２歳くらいまで)についての短歌が主である。

この歌集の表紙の絵(ボールを触ろうとしている赤ちゃん)も好きだが、裏側のタンポポをバックに歩いている赤ちゃんの絵もとてもいい。

俺は子供はいないが、子育ての短歌はなぜか好きだ。まもなく3歳を迎える甥のことも思い出しながら読んだ。特に心に残った１０首を紹介したい。カッコのなかは俺の感想。

紅葉の見ごろ予想を眺めおりそのころおまえはこの世の人か
(「紅葉の」「この世の」で、韻を踏んでいる)

バンザイの姿勢で眠りいる吾子よ　そうだバンザイ生まれてバンザイ
(この歌集で俺が一番好きな歌)

とりかえしのつかないことの第一歩　名付ければその名になるおまえ

年末の銀座を行けばもとはみな赤ちゃんだった人たちの群れ
(一瞬、街中が赤ちゃんだらけになる光景を想像してしまう)

子を真似て私も本を噛んでみる確かに本の味がするなり

ろうそくの炎初めて見せやれば「ほう」と原始の声をあげたり

たんぽぽの綿毛を吹いて見せてやるいつかおまえも飛んでゆくから

誰が教えているのだろうか右足の一歩の次は左を一歩

「これもいい思い出になる」という男それは未来の私が決める

もう我が何をしようと驚かぬ母が驚く孫の「コニチハ」

2024/12/28

ほんとに、なんだってこんなに瑞々しく日常を31音にできるんだろう。俵万智さんの目にはこんなにも豊かな情景が見えているんだなあ。 バンザイの姿勢で眠りいる吾子よそうだバンザイ生まれてバンザイ / 記憶には残らぬ今日を生きている子に含ませる一匙の粥 / まっすぐに怒るあなたを背中から毛布をかけるように愛した / 芽キャベツのような夢だね未完熟の言葉に宿る芯のまぶしさ / この夏は猛暑の予感ぐらゆらとつかまり立ちを始めるおまえ