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ナガサキ 消えたもう一つの「原爆ドーム」
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 平凡社 |
発売年月日 | 2009/07/01 |
JAN | 9784582824537 |
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ナガサキ 消えたもう一つの「原爆ドーム」
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商品レビュー
4.3
10件のお客様レビュー
広島には、原爆遺構としての“原爆ドーム”がある。しかし、長崎には、原爆遺構がない。あるのは平和祈念像である。 原爆の傷を語る貴重な遺産となるはずだった長崎の浦上天主堂。なぜ浦上天主堂は取り壊されたのかに迫るノンフィクション。 消えたもう一つの「原爆ドーム」、それは、浦上天主堂...
広島には、原爆遺構としての“原爆ドーム”がある。しかし、長崎には、原爆遺構がない。あるのは平和祈念像である。 原爆の傷を語る貴重な遺産となるはずだった長崎の浦上天主堂。なぜ浦上天主堂は取り壊されたのかに迫るノンフィクション。 消えたもう一つの「原爆ドーム」、それは、浦上天主堂の廃墟を指している。 無残に破壊された浦上天主堂は、当初は、原爆の悲惨さを後世に伝えるはずの遺構として存続の方向で動いていた。しかし、一転、取り壊されることになる。 日本(あるいは長崎市)の思惑、アメリカ政府の思惑。 複雑に絡み合った事情と、“浦上”という“場所”が撤去につながった。 当初の目的地でなかった「浦上」。いろいろな偶然が重なり、原爆は「浦上」上空に落とされた。日本のカトリックの聖地的な場所「浦上」である。 原爆遺構として残されなかった「浦上天主堂」。 原爆が落とされたのも、廃墟となり取り壊されることになったのも、数奇な運命としか言いようがない。 出撃する前にアメリカ空軍内でミサが行われ、その後…、というのを考えても、人間の罪は深く、愚かであると痛感。
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広島と長崎。世界広しといえども、原子爆弾という人間が作り出した 悪魔の兵器の犠牲になった稀有な都市。 同じ被爆地だけれど、広島と長崎では何かが違うと感じていた。 それが本書のタイトルで腑に落ちた。 そう、広島には原爆の悲惨さを今に伝える原爆ドームがあるが、 長崎には平和祈念像...
広島と長崎。世界広しといえども、原子爆弾という人間が作り出した 悪魔の兵器の犠牲になった稀有な都市。 同じ被爆地だけれど、広島と長崎では何かが違うと感じていた。 それが本書のタイトルで腑に落ちた。 そう、広島には原爆の悲惨さを今に伝える原爆ドームがあるが、 長崎には平和祈念像はあるものの当時の姿のまま保存されて いる建物がない。 否、長崎にもあったのだ。爆心地にほど近い場所にあった浦上 天主堂の廃墟だ。原爆の記憶を留める天主堂の廃墟は、当初は 保存の方向で検討され、長崎市長自らが保存方法について 研究するよう指示を出している。 だが、ある時から市長は廃墟解体へ舵を切る。アメリカから唐突 に持ち込まれた長崎市とアメリカ・セントポールとの姉妹都市提携 の話。そして、それに基づく市長の渡米。 一体、何が市長の心を変えたのか。原爆投下を正当化して来た アメリカの圧力があったのではないか。著者はアメリカに渡り、 公文書館で資料を掘り起こし、天主堂廃墟解体の謎を追う。 廃墟保存から一転、解体派となった長崎市長の発言の変遷や、 姉妹都市提携と市長の訪米の経緯を追った部分はまるで ミステリーを読んでいるようである。 原爆の記憶を消したいアメリカの大きな力が働いたのではないか と、陰謀論紙一重に考えに取りつかれそうだが著者が断定して いないところがいい。 衝撃的な話もいくつかあった。アメリカの聖職者が来日の折り、 原爆投下について謝罪したところ、アメリカへ帰国後に司祭の 地位を剥奪されたそうだ。そこまでするか、アメリカ。 そして、アメリカでの長崎市長のインタビュー記事には目を疑った。 何度も読み返した。「広島は原爆を政治的に利用している」との 批判だ。同じ被爆地の市長が何故?一体、彼に何があったと いうのか。 浦上の聖者と言われた永井隆の主張への疑問、キリシタンの 村としての浦上の歴史、天主堂建立までの苦難等も盛り込まれ、 日本の都市のなかでも特殊な歴史を歩んで来た長崎が背負って 来たものが分かりやすく書かれている。 「もう教会が結論を下したからしょうがない、むこうが建てるという のだからしょうがない、そういう消極的な態度ではなくしてこれを 単に長崎の観光地というけちな考えで残そうというのではなく、 全人類の二十世紀の十字架として、キリストのあの偶像が犠牲 性のシンボルであるならば──二千年前の犠牲のシンボルで あるならば、私はこの廃墟の瓦礫は二十世紀の戦争の愚かさ を表象sる犠牲の瓦礫である、十字架であるとそういう意味に おいて、唯物的な考えから申せば、市長がさきほどももうされ ましたように、そう大して残すほどのことではありませんが。 しかし、精神的に長崎を訪れる各国の人たちが、一瞬襟を 正して原爆の過去を思うその峻厳な気持を尊ぶ原爆の資料 だと信じております」 廃墟解体を主張する市長に対し、保存を強硬に主張する市会 議員の訴えだ。 二十世紀の十字架。原爆で破壊された廃墟は解体され、 浦上天主堂は再建された。広島の原爆ドームのように 天主堂の廃墟が残されていたら、長崎の取り上げられ方は 少々違っていたのかもしれない。
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原爆と聞いてすぐに思い浮かぶ映像は、広島ならば原爆ドーム、長崎ならば筋骨隆々とした平和祈念像でしょう。でも、原爆ドームが被爆した建物そのものであるのに対し、平和祈念像が作られたのは1955年、原爆が落とされて10年後のことです。 実は長崎にも、浦上天主堂という、原爆ドームに匹...
原爆と聞いてすぐに思い浮かぶ映像は、広島ならば原爆ドーム、長崎ならば筋骨隆々とした平和祈念像でしょう。でも、原爆ドームが被爆した建物そのものであるのに対し、平和祈念像が作られたのは1955年、原爆が落とされて10年後のことです。 実は長崎にも、浦上天主堂という、原爆ドームに匹敵する、実際に被爆した遺構が存在しました。無残に破壊された浦上天主堂は、広島の原爆ドーム同様、保存されて、原爆の悲惨さを後世に伝えるはずであり、長崎市もその方向で動いていたのですが、一転、取り壊されることになってしまいました。この本はそのような決定がなされた背景、事情を、当時の文書、議事録、長崎の歴史等から明らかにしていきます。 一見、平和の象徴であるような「永井隆」「姉妹都市」「フルブライト」などについてあらためて考察しながら、事実を拾い上げていく描写は、ミステリーを読んでいるようでした。自分の仮説の決定的証拠が発見できなかったことは著者自身が認めていて、その仮説を単なる憶測ととるか、貴重な調査ととるかは、読者次第でしょうが、戦争、平和、世界を多少なりとも考えるうえで、大変有益な本であることは間違いありません。 本書を読んだあと、英語の異常な隆盛やディズニーランドの異様な人気、こうした現象の背後に何があるのか、あらためて考えてみることをおすすめします。
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