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戦場の精神史 武士道という幻影 NHKブックス998
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 日本放送出版協会/日本放送出版協会 |
発売年月日 | 2004/05/28 |
JAN | 9784140019986 |
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戦場の精神史
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商品レビュー
4.1
8件のお客様レビュー
武士道という言葉は、どんなイメージで流通してるのか。ためしに「武士道精神の復興」を唱えて大ヒットした『国家の品格』から抜き出してみる。 慈愛、誠実、忍耐、正義、勇気、惻隠、「名誉」と「恥」の意識、名誉は命よりも重い、日本の道徳の中核、戦闘の現場におけるフェアプレイ精神……etc...
武士道という言葉は、どんなイメージで流通してるのか。ためしに「武士道精神の復興」を唱えて大ヒットした『国家の品格』から抜き出してみる。 慈愛、誠実、忍耐、正義、勇気、惻隠、「名誉」と「恥」の意識、名誉は命よりも重い、日本の道徳の中核、戦闘の現場におけるフェアプレイ精神……etc. いやいやたいしたものだ。「日本の道徳の中核」とまでとは。そこまでいかずとも、「卑怯はいけない」「フェアプレイ精神」くらいなら、なんとなく「武士道」いいじゃん、と思わんでもナイ。 しかし、ほんとうに武士は卑怯を嫌い、正々堂々戦ったのだろうか? そういった疑問から始まって、「武士道は、日本人固有の精神的伝統である」という「常識」をひっくり返したのが本書。 じっさい文献にあたってみると、だます、裏切るはあたりまえ。手柄をひとりじめするために味方にウソをつくなんて茶飯ごと。だいたいみんな大好きな源義経だって、楠木正成だって、奇襲戦法の名手だったなぁそういえば。 じゃあ、『国家の品格』に出てくるような「武士道」はどっからきたのか? その源泉は新渡戸稲造の『武士道』にある。のだが、この本に出てくる「武士道」はまさに新渡戸稲造の創作であって、それまでの歴史からは断絶しているものなのだ。あいまいな知識を脳内でふくらませ、ヨーロッパの騎士道精神風味をブレンドしたものというのが正体で、「日本古来の」とかなんとか言えるようなモノではけっしてない。『葉隠』にしても、戦争がなくなったあとの太平の世の産物であり、これまた武士の道徳の伝統からは外れた一種の「倒錯」「異端の書」であるのだそーだ。 武士が名誉を非常に重んじたのは間違いない。「命よりも名を惜しめ」という言葉もあるぐらい。しかし、それは「卑怯はいけない」といううすっぺらい道徳心とは違うものだ。 「名を惜しむ」という価値観の軸が、「敵に討ち取られることこそ恥辱であり、勝つことこそ名誉である」という方向に設定されているのが、大きな違い。「武者は犬ともいへ、畜生ともいへ、勝つことが本にて候」という言葉にも、その倫理観が示されている。正義とかフェアプレイとかしゃらくせーこと言うよりも、さすが斬った張ったやってたころの武士は、実際的で骨太な倫理観を持っていたのだなぁと思う。 べつに『国家の品格』副読本(というよりも解毒本だが)としてだけでなく、単独の読み物として非常におもしろかった。現代的な課題と密接にリンクする歴史研究の例としてすばらしいと思うし、間違った知識の上に砂上の楼閣のような「武士道万歳」をとなえるよりも、実像に近い日本の歴史を知ることのほうがよほど「日本人」として大切だという思いをあらたに出来た。
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資料が豊富であるのに、見事に整理されているので、重箱の隅をつつくような論調でない。「サムライジャパン」などと表現される武士像がいかに虚妄か、実証に満ちた説得力に富む名著である。文体は教養書としても読めるなだらかな文章で、研究書の難解な文体ではない。着実に武士の実像を歴史的に、古代...
資料が豊富であるのに、見事に整理されているので、重箱の隅をつつくような論調でない。「サムライジャパン」などと表現される武士像がいかに虚妄か、実証に満ちた説得力に富む名著である。文体は教養書としても読めるなだらかな文章で、研究書の難解な文体ではない。着実に武士の実像を歴史的に、古代から近代まで浮かびあがらせる筆致は素晴らしい。
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授業課題。これでレポートを書きました。 こういう本読み慣れていないからすごく時間かかった…。 〈フェア・プレイ精神=「武士道」=古来からの日本人の姿勢=理想の姿勢〉 という「幻想」を打ち破るための一冊。 果たして本当に日本人は古来から卑怯を嫌い、フェア・プレイ精神を重んじてい...
授業課題。これでレポートを書きました。 こういう本読み慣れていないからすごく時間かかった…。 〈フェア・プレイ精神=「武士道」=古来からの日本人の姿勢=理想の姿勢〉 という「幻想」を打ち破るための一冊。 果たして本当に日本人は古来から卑怯を嫌い、フェア・プレイ精神を重んじていたのだろうか?という問いから始まっていて、「だまし討ち」を中心に神話の時代から近代まで時代の流れを追って多数の文献作品を取り上げながら、当時の武士の行動や倫理の移り変わりと「武士道」が作り上げられていった過程を論考しています。 自身の知識不足もあってなかなか難しい部分もあったのですが、論自体はなるほどなぁと思いながら読んでいました。 そりゃあ、当時の武士にとって一番大事なのは「勝つこと」ですよね。 殺されるくらいなら自害した方がマシだ、というのは、「美しく死にたい」なんていうのは二の次で、「相手に自分を討ち取った手柄を渡したくない」みたいなところがあるのかもしれないと思いました。 私も「武士道」は古来から日本人の中にDNAのように受け継がれる立派な精神、みたいに当然のように考えていたので、この本はかなり衝撃的でした。 特に、『武士道』を書いた新渡戸稲造の話は。読んだことがないので詳しいことは知らないし偉そうなことは言えないのですが、そんなんでいいのか?と思ってしまいました。 「武士道」という言葉は一貫性がなく、その時代に応じて変容していると思いました。 また、利用されもしていて。軍国主義体制の頃の「武士道=主君(天皇・国)に忠義を尽くし、死に対して潔く」という影響力は本当に恐ろしいものだったと思いました。 『国家の品格』という本が数年前に大ヒットしましたが(私も読みました)、あれは「日本人としての誇りを取り戻そう、世界に胸を張ろう」程度だからまだ良いけれども、あれも行き過ぎれば歪みも出てくるんじゃないかと思ったし、そもそも新渡戸の『武士道』を古来からの日本人の心の在り方として誇るべきと言っている時点で間違っているのかもしれないと思った。 この本では、「武士道」という考え方が悪いと言っているのではなくて、現代における「武士道」という言葉のイメージや捉え方が本来とは少々違っているのでは?ということが言いたかったんだろうなぁと思います。
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