伝クセノポン「アテーナイ人の国制」の研究

真下英信(著者)

• 販売会社／発売会社: 慶應義塾大学出版会
• 発売年月日: 2001/02/15
• JAN: 9784766408379

商品レビュー

2021/05/14

長らくクセノポンの作品として伝承されてきた『アテーナイ人の国制』のテキスト・翻訳・訳注からなる第一部と、テキストの作者、制作年代の推定に始まり、このテキストの内容の分析やその前提となっている古代アテナイの政治・社会のあり方にメスを入れる第二部とから構成される。著者は、ペロポネソス戦争勃発から前429年夏の疫病発生までの間に、アテナイの寡頭制支持者の誰かによって『アテーナイ人の国制』が執筆されたという推定を施したうえで、このテキストを、当時のアテーナイ民主政の実態をよく踏まえ、それを寡頭制に転換させることはほとんどできないと認識しつつも、優れた人々による政治を希求するOld Oligarchが冷徹な現実認識と民主政へのそれなりに妥当な皮肉・嘲笑を展開したものと評価している。この研究にしたがえば、トゥキュディデスが伝えるペリクレスの葬送演説と好対照をなす古代アテーナイ政治論の重要なテクストとして、『アテーナイ人の国制』を読むことができるだろう。