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すべての美しい馬 ハヤカワepi文庫4
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すべての美しい馬 ハヤカワepi文庫4

コーマック・マッカーシー(著者), 黒原敏行(訳者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 早川書房
発売年月日 2001/05/24
JAN 9784151200045

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商品レビュー

3.9

44件のお客様レビュー

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2026/04/05

ブラッドメリディアンに続き、コーマックマッカーシー作品は2作目。ブラッドメリディアンはひたすら荒野が続き、人間がその背後に引っ込んでいるような世界観で読むのに難儀した記憶があったが、本作はジョン・グレイディ・コールという人間が全面に出ていて読みやすかった。 冒頭のろうそくの炎が...

ブラッドメリディアンに続き、コーマックマッカーシー作品は2作目。ブラッドメリディアンはひたすら荒野が続き、人間がその背後に引っ込んでいるような世界観で読むのに難儀した記憶があったが、本作はジョン・グレイディ・コールという人間が全面に出ていて読みやすかった。 冒頭のろうそくの炎が揺れて戻る描写など、物事の詳細を書きまくる文章は、時間をかけて脳内に映像として再生させる事を強いてくる。また、それは主人公が出会う自然やゆきずりの人々を前景化させる。主人公だけを特別視しないというようにも言えるし、主人公に極めて近い位置にいるカメラから見ている超高精細な物語と考えると、ジョン・グレイディ・コールに寄り添った文章とも思う。 ジョン・グレイディ・コールの純粋さが際立つ。馬に対する愛情、ロリンズやプレビィンズに対する友情、アレハンドラへの恋心、誰に何を言われても筋を通そうとする考え方。終盤で判事に打ち明ける逡巡。全てが純粋で、ある意味完璧な人間性とも言えるのに、だからこそ理想郷を求めて彷徨い続け、居場所が見つからずでいる様は、世の中の矛盾を感じさせる。でもそれは、判事や牧師の語った使命感に出会うまでの旅路なのかも知れない。こう書くとベタな話に思えるけど、でも良いんです。 西部劇要素が強く極めて男性的な物語なはずだが、女性がお飾りになっているようには感じなかった。後半の大叔母の独白は圧倒的で、世を動かしている男性の暴力性についての語りであり、ジョン・グレイディ・コールにも備わってしまっているものだ。判事に告白したように。 越境三部作という事なので残り二作も楽しみ。

Posted by ブクログ

2026/02/17

白黒映画のようだ。 荒涼たる砂漠。 理不尽や不公平が覆う世界。 血は赤では生々し過ぎる。 黒がいい。 太陽の光と、ドス黒い血。 強烈なコントラストの中で、馬だけが美しい。 マッカーシーのカギ括弧が無い文体が、心の叫びのように聞こえてくる。 救いがない、理不尽の世界でも、大地は変...

白黒映画のようだ。 荒涼たる砂漠。 理不尽や不公平が覆う世界。 血は赤では生々し過ぎる。 黒がいい。 太陽の光と、ドス黒い血。 強烈なコントラストの中で、馬だけが美しい。 マッカーシーのカギ括弧が無い文体が、心の叫びのように聞こえてくる。 救いがない、理不尽の世界でも、大地は変わらない。 人はここで生きていくしかない。 必要なのは勇気なのか。 いや、そんなことを考えるのは人だけで、大地は今日も日に照らされ、生き物を育み、死をのみ込む。 それでも生きることには意味がある。 と、マッカーシーは言っている、と思いたい。

Posted by ブクログ

2026/02/15
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

少年たちの旅の中で、美しい馬が旅に寄り添い慰め、より美しく輝いている。 全米図書賞。 全米書評家協会賞受賞作。 コーマック・マッカーシーの世界はグロテスクで残酷だ。が、国境三部作といわれる第一作のこれは、ストーリー性が豊かでエンタメ小説の趣もあり読みやすかった。 故郷のテキサスからメキシコに不法入国するいきさつや、つねに寄り添っている馬、行動を共にする友人も、少年というより未成年、未成熟な年頃の、精いっぱい運命に向かう姿が痛々しくもありどことなく危うい。 16歳の少年の(アメリカだからもう充分大人だけれど)青春、成長譚だ。 コーマックのドライで区切りの少ない独特の筆は、ユニークではあるが読みなれると違和感がなくなり不思議なリズムに乗ることができる。 コーマック・マッカーシーを読むのは、その風景描写が美しい、だがただそんな風景を写し取るだけでなく、風や雨や、砂漠に舞う土埃、枯れた川の荒々しさなど、読んでいる周りにその気配が立ち込めてくるような文章が素晴らしい。言葉はそっけないほど細かな説明がない分、情感は直接的だけれど詩的で快い。 こういった表現が 先に読んだ 「チャイルド・オブ・ゴッド」や 「ザ・ロード」 のような心にのこる作品になっていったのだろうか。悲哀、哀歓、人間の持つ究極の孤独を書くにふさわしい。 この国境シリーズ(と呼ばれている)の残る二冊も楽しみだ。 テキサス生まれの少年の名はジョン、グレイディという。彼は、戦後無気力になった父親と、彼が生まれてから唯一の慰めであった牧場を売って出て行きたいと叫ぶ母、そんな両親の元を去る決心をする。 馬と過ごす牧場の生活を求めて、親友のレーシー・ロリンズと二人、リオ・グランデを渡る。 途中でひ弱で年下に見えるがやはり一人旅のジミー・ブレヴィンズが加わる。彼は過去に雷に打たれ身内が何人も死んだこともあり極度に雷を怖がっていて、広い草原や砂地で雷雲を見ると怯え、手を焼かせる。 そして彼のこの恐怖が、ふたりを苦境に陥らせる。 雷におびえている間にブレヴィンズの鹿毛が逃げてしまう。 彼はそれを探し当て取り返すのに三人の人間を殺してしまう。 メキシコの牧場に雇われた二人は生きがいを感じて充分によく働き重宝される。しかし、グレイディは帰省していた牧場主の娘に恋をして、二人は心のまま突っ走ってしまう。しかし将来はなく、牧場から出て行かなくてはならなくなる。この牧場の実権を握る大叔母の説教は、彼女の生き方の長い歴史であり、若い二人に理解を示しながらもやはり大人の分別を超えることがない。この長い話を聞かせた叔母の心がよく分からないまま二人は牧場を放り出される。 ブレヴィンズの起こした殺人事件で二人は共犯になり刑務所に入れられる。そこで、捕まっていたブレヴィンズに出会うが、彼は警官に連れ出されて射殺される。このあたり暴力が蔓延する刑務所の中、マッカーシーの描写の面目躍如といったところで迫力がある。牧場の大叔母の手引きだろうか、二人は奇跡的に救い出されるが、帰省する前にちょっと警官を探して気合の入った復讐に向かう、ここにきてまさに西部劇の世界。クレイディの若さと血の熱さ、無鉄砲なところ読んでいても力が入っていい。 旅の途中二人の若者がぽつぽつと語彙の少ない会話を交わす、それは深い意味を持つ言葉だったが、答えはいつも、わからないな、知らないな、で納得する。このあたりの会話も生き生きとして、このわからない世界の深みを少しずつ知っていくのだろうと何か愛おしくなるところが微笑ましくてうまい。 題名にある「美しい馬」がいる風景。 命がけで行方のわからなくなった馬を探したいブレヴィンズ、いつも腕を伸ばして首をなでて話しかけ、孤独を癒しているグレイディ。町に入ると横を車が走り抜けていく。そんな時代に野生馬を集め馴らして繁殖させる牧場の生活がグレイディの生き甲斐だった。 日が落ち無数の星が中空に向かってせりあがってくる。百合や野の花が咲く松林の下で焚火を熾し、ノウサギを狩る。突然の豪雨や雨上がりの霧に閉ざされたメキシコの草原、草丈に埋もれそうな盆地、小高い丘から見下ろす風景などが、くっきりと描き出されている。

Posted by ブクログ

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