嫌いなら呼ぶなよ の商品レビュー

綿矢りさ(著者)

2025/08/19

にこにこ笑顔で闇を煮詰める綿矢りさ、大好き！（にこにこ笑顔で書いてるかどうかは知らない）

私は綿矢りさ作品では『憤死』が一番好きなのだけど、『嫌いなら呼ぶなよ』はその次くらいに好きな作品になった。結局、いきいきと毒を吐いてる綿矢りさが好き。それに彼女の言語感覚にはやっぱり舌を巻いてしまうというか、魔法がかかってるみたいだなと毎回思ってる。そんな表現、私だったら何回前転しようが出てこないだろう。いいな〜。言葉に愛されているとはこういう人なのだなと思う。
『嫌いなら呼ぶなよ』はどの短編も好きだったけど、やっぱり表題作のパンチが効いてる。不倫する側が悪いのはそりゃそうなんだけど、それを断罪する側も側から見てたら同じくらいに醜くて滑稽だった。「焦点が涅槃」私も使いたい。

2025/08/19

「眼帯のミニーマウス」社会人2年目になった今でもマイメロの特大ぬいぐるみにはママが作ったドレスが着せられてて、「ゴールドで艶かしいタイトドレスだから私はマイメロディーバと呼んでいる」が面白かった。「食ったり飲んだりあんな野生的な器官が顔の下半分占領してるなんて無理ありすぎ。いつも口が隠れてる状況だと穏やかに過ごせる。」も笑った。うっかり職場で整形していることを言って整形キャラになってしまい後悔するが、先輩からの嫌がらせからも真っ向勝負してて最高な女の子だった。
「神田タ」YouTuberのファンからアンチになる話。薄い人間関係を続けてバイト先を転々としながら生きる働き方もいいなと思った。「喋り方がゆっくりしているだけでどうして人は安心するのだろう」という文章が印象に残った。
「嫌いなら呼ぶなよ」不倫してるのに堂々としてるナルシストな男が面白い。ある意味純粋に見えてくるのが不思議。
「老は害でも若も輩」作家とライターのメール上でのバトル。ずっと第三者だった編集者のメールが面白すぎた。

2025/08/16

「老は害で若も輩」が面白かった。
他3編も良かったけれど読む人を選ぶかもしれないが、この短編は働いたことがある人ならどこかのポイントで絶対に共感できる。
登場人物として綿谷りさ本人が出てきて驚いたかと思ったら、メールのレスバの勢いがすごくて笑ってしまう。
めんどくせぇなぁと思う若輩の気持ちもわかるし、矜持が曲げれなくて説教くさくなる老害にも少しドキリとさせられた。
そして何よりオチが最高だった。

2025/08/11

日常生活にありふれてた話題を詰め込んだ短編集だと感じた。そう感じたのは登場人物の解像度の高さゆえなのかも。とくに、眼帯のミニーマウス。主人公の友達の電話越しの発言。本編に深く関わってくる人物かといえばそうでもないのに、再現度が高い。あくまで自分を落として周りを褒めているようで、本当は、いやいや貴方はすごいよと言われたい。そんな承認欲求が見え隠れする。サクサク読めてよかった！

2025/08/11

表題作を含む全4篇。作者の毒が全頁から吹き出しているようで嬉しい。エッセイも良かったけどやっぱり、これを待っていた！「眼帯のミニーマウス」の言語感覚と疾走感にいきなりヤられた。至福。