ミシンと金魚 の商品レビュー
ギリギリの所で生きてきて、最後に兄のやさしさにふれて本当によかった。 いろんな事を覚えていられなくなってしまう人の頭の中は、まさにこんな風なのかもしれない。
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あくまで一人の個人として高齢者を描く、その視点とリアリティが凄まじい。解説で酒井順子さんが言われているようにこの本は時代を代表する老人文学となると思う。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
‣ あたしの手は、表も裏もしわしわのただの手で、ああまだ生きている、今日一日、まだ生きてる。と、ありがたいようなありがたくないような実感が、わく ‣ 当然できるとおもってたことが、しらない間にできなくなってくる。軽々とできるとおもっていたことが、できなくなってる。点ポチの横に、水が、たれる。その水は、涙だ。じっさいは鼻水だけれども、きもちで言えば、立派な、涙、だ ‣ 夜が、くる。一日の最後に、夜が、かならず、めぐってくる。夜は、ありがたい。夜は、手放しで、ありがたい ‣ 手柄話しは、わすれたフリしてしまうのが、一番いい。それが一番、恰好がいい ‣ 殴ってくれてれば、あたしは、ラクになれただろうか。殴ってほしくないときには殴られて、殴ってほしいときには、殴られない。というのは、バツとしては、一等、おもい ‣ 親は、いそがしく仕事してる子どもに、さみしいだなんて、さみしいから会いに来いだなんて、死んでも口にしたらいけない。死んだときにだけ、来てくれれば、それで、いい ‣ ああ。字をやっといて、しみじみ、よかった。あんときのがんばりが、ここで、きっちり、実をむすんだ。むかしの自分にたすけられた ‣ しみじみ、おもう。わるいことがおこっても、なんかしらいいことがかならず、ある。おなし分量、かならず、ある ‣ どん底を味わわなくてはならなくなって、うんとううんと悔やんでも、そん時は、道子が生きていた時は、ちょっとの間だったけど、しあわせだった。うんと、ううんとしあわせだった。あたしには、しあわせな時期が、たしかに、あった ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ 認知症を患いながら生きるカケイさんが、自分にとってのしあわせを振り返っていく。 埋もれた記憶を探りながら、壮絶な一生がぽつぽつと語られる。 カケイさんの言葉の一つ一つに胸が詰まる思いがしました。 身体や頭が思うように動かなくなっても、心だけは最後まで動き続ける。 しあわせな時が確かにあったことに気づけるしあわせ。 最後はもうこれだけでいいのかもしれない。 生きることを深く考えさせられる一冊です。出会えて良かった☺️
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カケイさんは認知症。昔のことは鮮明に思い出せる。継母に殴られ、働き先では搾取され…大変なことばかりだった。それでも人生の終盤になって、大切なことに気づく。読んでいて切なかったです。
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⚫︎感想 認知症のカケイさん視点で書かれた一冊。介護される側の視点や洞察は、著者が元ケアマネだからこそリアリティをもって書けたのだろう。読むのが苦しかったが、目を逸らすことはできない現実感と、幸せな人生だったと呼べる人生にするには、自分で幸せだと思えることを意識して日々送ることが...
⚫︎感想 認知症のカケイさん視点で書かれた一冊。介護される側の視点や洞察は、著者が元ケアマネだからこそリアリティをもって書けたのだろう。読むのが苦しかったが、目を逸らすことはできない現実感と、幸せな人生だったと呼べる人生にするには、自分で幸せだと思えることを意識して日々送ることが大切だと改めておもった。 ⚫︎あらすじ(本概要より転載) 認知症を患うカケイは、「みっちゃん」たちから介護を受けて暮らしてきた。ある時、病院の帰りに「今までの人生をふり返って、しあわせでしたか?」と、みっちゃんの一人から尋ねられ、カケイは来し方を語り始める。 父から殴られ続け、カケイを産んですぐに死んだ母。お女郎だった継母からは毎日毎日薪で殴られた。兄の勧めで所帯を持つも、息子の健一郎が生まれてすぐに亭主は蒸発。カケイと健一郎、亭主の連れ子だったみのるは置き去りに。やがて、生活のために必死にミシンを踏み続けるカケイの腹が、だんだん膨らみだす。 そして、ある夜明け。カケイは便所で女の赤ん坊を産み落とす。その子、みっちゃんと過ごす日々は、しあわせそのものだった。それなのに――。 暴力と愛情、幸福と絶望、諦念と悔悟……絡まりあう記憶の中から語られる、凄絶な「女の一生」。
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カケイさんの語りはフッと吹き出してしまうユーモアがあっておもしろいおばあちゃん。と思っていたけど、中盤からカケイさんの人生がどんどん明るみになるに連れて一人の女性の人生を知る読書になった。 最終的に、わたしも人生を終える時には一言「しあわせだった」と言えるように自分なりに一生懸命...
カケイさんの語りはフッと吹き出してしまうユーモアがあっておもしろいおばあちゃん。と思っていたけど、中盤からカケイさんの人生がどんどん明るみになるに連れて一人の女性の人生を知る読書になった。 最終的に、わたしも人生を終える時には一言「しあわせだった」と言えるように自分なりに一生懸命生きたいと思う。 どんな人にも、それなりの背景があってそれは比べるものでなく、唯一無二のものなんだと気づかせてもらった。
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ナツイチの季節。ナツイチフェアの対象文庫で津田健次郎さんの朗読付きのこの本を購入。 よまにゃチャンネルで最初の数ページは津田健次郎さんの朗読で聞くことができる。幸せ、幸せ。 さて小説はというと、「今までの人生を振り返って、幸せでしたか?」と聞かれたカケイさんの記憶の中にあったも...
ナツイチの季節。ナツイチフェアの対象文庫で津田健次郎さんの朗読付きのこの本を購入。 よまにゃチャンネルで最初の数ページは津田健次郎さんの朗読で聞くことができる。幸せ、幸せ。 さて小説はというと、「今までの人生を振り返って、幸せでしたか?」と聞かれたカケイさんの記憶の中にあったものは…。 少し認知症のあるカケイさんとヘルパーのみっちゃん、カケイさんの家族、読み進めていけばいくほど辛い。 認知症だけど、本当はわかってる。 辛いことがたくさんあったカケイさんの人生、悪いことがあっても良いことが必ずある。同じ分量必ずある。そう言いながら、カケイさんが最後に見たものは、幸せだといいなと願う。 辛い本でもあり、希望を願う本だった。
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認知症を患っている独り暮らしのカケイは、介護士のみっちゃんから介護を受けて暮らしている。 このみっちゃんからある時「今までの人生を振り返って幸せでしたか?」 と尋ねられ、カケイの視点で生涯を描いた物語。 主人公のカケイさんの文体が認知症を患っているということもあり、 文体が独...
認知症を患っている独り暮らしのカケイは、介護士のみっちゃんから介護を受けて暮らしている。 このみっちゃんからある時「今までの人生を振り返って幸せでしたか?」 と尋ねられ、カケイの視点で生涯を描いた物語。 主人公のカケイさんの文体が認知症を患っているということもあり、 文体が独特なので慣れるまで少し違和感がありましたが、 途中からはこの文体がより自分の口から話しているようで人間味がよく伝わって味わい深かったです。 このカケイさんが語るものはとても残酷て壮絶な人生 だったことばかりが出てきて、重たい気持ちになりました。 けれどそれにめげることなく必死で生きて、 今も不自由な身体になりならがも一日を大切に 生きている姿に胸を打ちました。 今はあまり聞くことがないですが、 幼い頃に私もカケイさんのようにお天道様は見ているから陰ひなたなく生きていくようにと教えられました。 きっとカケイさんもこの教えを守っていきてきたから こんなに頑張ってこれたのだなとも思いました。 カケイさんの中では幾つものみっちゃんが登場し、 そのたびに初めはどのっみっちゃんなのだろうかと思いましたが、 これが認知症の感覚とはこんな感じなのかなと思うと 胸のつまる思いになりました。 けれど最後まで忘れることのないみっちゃんをを思いながら幸せな時があったと言えるものがあっただけでもと 思うと少し救われた気持ちになりました。 年齢を重ねてくるとこのような事柄は他人事とは思えなくなり、 意識しなくても意識してしまうので、 この作品は読めば読むほど深く感じるものという印象でした。 人生の最後にカケイさんのように思えることが出来るのだろうか、 と思うと同時に小さな幸せを探しながら生きていくことを大事にしたいと思えた作品でした。
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カケイさんの壮絶な人生…認知症を患って最近の記憶はすぐ忘れるのに、昔の思い出したくないような記憶だけははっきり覚えてる…でもその中にも一瞬でも幸せな時間は確かにあった…その記憶さえあれば幸せなのか…本当は兄たちに守られていたカケイさん、もうすぐ死を迎える最後の最後に広瀬のばあさん...
カケイさんの壮絶な人生…認知症を患って最近の記憶はすぐ忘れるのに、昔の思い出したくないような記憶だけははっきり覚えてる…でもその中にも一瞬でも幸せな時間は確かにあった…その記憶さえあれば幸せなのか…本当は兄たちに守られていたカケイさん、もうすぐ死を迎える最後の最後に広瀬のばあさんから真相が知れて、幸せな花を見ながら人生の幕を下ろせて良かったんだと思う。
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ナツイチ2024の対象本ということで 初めて手に取りあらすじを読んでなんだか惹かれるものを感じ読んでみました。 文章も読みやすく、ページ数も多くなかったのであっという間に読了。 始めは壮絶な人生にとても苦しくなりました。 途中から幸せな事も語られ始め、辛い人生の中の救われる時間...
ナツイチ2024の対象本ということで 初めて手に取りあらすじを読んでなんだか惹かれるものを感じ読んでみました。 文章も読みやすく、ページ数も多くなかったのであっという間に読了。 始めは壮絶な人生にとても苦しくなりました。 途中から幸せな事も語られ始め、辛い人生の中の救われる時間もあり、少しだけど良かったと安心しました。 自分が老いてしまったとき、更には認知症で色々な事を忘れてしまったとき、私は自分の人生のどんな幸せなシーンを覚えているのだろうか。忙しくてとても大変な今だけど、思い出すのは今の子供達の笑顔なのかもしれない。 胸がグッと苦しくなる一冊でした。
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