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ともぐい の商品レビュー

3.9

143件のお客様レビュー

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2024/06/05

直木賞作品。美しい日本語の読みやすい文章。それだけでも読書する楽しみにあふれている。決して大作ではないけれど、ページ数以上に濃い物語を味わえる。これも著者が推敲を重ねて、凝縮した結果なのでは。

Posted byブクログ

2024/06/05

狩る側と狩られる側の描写が、緊迫感や臨場感を感じられて良かった。 獣を追いながら生きる熊爪の生き様が、ある意味気持ち良かったが、タイトルの「ともぐい」はこういう事なのかとドーンとのしかかる結末だった。

Posted byブクログ

2024/05/31

 日露戦争を目前に控えた北海道の山中で、猟を生業とする男が主人公だ。山中では、そばに犬を従えているだけで獣に近い暮らしぶりだ。時折、山中で狩った獲物や採れた恵みを町の商家に買い取ってもらい銃弾や米を仕入れている。商家の主人は主人公に対して特に厚遇で迎え、良いタニマチぶりが描かれて...

 日露戦争を目前に控えた北海道の山中で、猟を生業とする男が主人公だ。山中では、そばに犬を従えているだけで獣に近い暮らしぶりだ。時折、山中で狩った獲物や採れた恵みを町の商家に買い取ってもらい銃弾や米を仕入れている。商家の主人は主人公に対して特に厚遇で迎え、良いタニマチぶりが描かれている。  山中での主人公の描写、特に狩猟場面の描写は秀逸で、その風景、心象とも、読む者をぐいっと引き込み離さない。鹿を狩るときには猟師の矜持を、羆との対峙の時は能力のすべてを出し切る必死の様が描かれている。  羆との戦いの末、けがを負ってしまった彼の生活は潮目が変わってしまう。奇しくも、厚遇で迎えてくれていた商家の没落と時期を同じくし、商家のお妾さんを山中に連れ帰り、一緒に生活をすることになる。日露戦争を目前にした社会の変容の様と、主人公の生活の変化がシンクロし、万物の流転が意識づけられる。  終盤まで読みすすめて一息つくと、タイトルの『ともぐい』が納得できるストーリーではないことに気づく。これは、とんでもない展開がまっているぞ、と、再び読み進めると、思わぬ展開に深い感慨に包まれる。  主人公の名は熊爪という。彼は孤児として生まれ、猟師の下で山中に猟師として育ち、独り立ちした。羆とのやり取りでけがを負い、猟師として生業を立てることができなくなり、人でも獣でもないモノになり果てる。そうしたモノに相応しい最期を、著者は用意した。  図書館の予約で30余人待ちだったのに3か月ほどで順番が回ってきたのも納得だ。私がそうであったように、みな、読みだしたら止まらなかったんだろう。

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2024/05/29

読み始めるまでに時間が、かかった。 最初は鹿の解体から始まり、ウゲーって言う感じだったが、町の人々の交流部分からなんとなく惹かれていった。 赤毛の熊は殺さなくて良かったのではないか。 現在会社の人間関係が辛すぎるのか、人間の世界よりも山の中で自然の摂理の元で暮らす熊爪が羨ましく...

読み始めるまでに時間が、かかった。 最初は鹿の解体から始まり、ウゲーって言う感じだったが、町の人々の交流部分からなんとなく惹かれていった。 赤毛の熊は殺さなくて良かったのではないか。 現在会社の人間関係が辛すぎるのか、人間の世界よりも山の中で自然の摂理の元で暮らす熊爪が羨ましく感じた。

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2024/05/27

自分の状況はなかなか理解してもらえない。 そして自分で決めたことを必ず遂行する決意学べる小説。 確かに人によって状況が違う。(地位や立場、環境) (空を飛ぶ動物)、(地面を歩く動物)が気持ちが理解できない。哲学的な部分もあって考えさせられる小説だと思います。 内容は、とても緊...

自分の状況はなかなか理解してもらえない。 そして自分で決めたことを必ず遂行する決意学べる小説。 確かに人によって状況が違う。(地位や立場、環境) (空を飛ぶ動物)、(地面を歩く動物)が気持ちが理解できない。哲学的な部分もあって考えさせられる小説だと思います。 内容は、とても緊迫のある臨場感があってかなり世界に入り込めて面白かったです。 猟師の世界を体験できる良い小説です。 また、自分で決断した事を遂行する行動力と責任もテーマの一つかも知れません。 読んで損はない小説です。

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2024/05/26

自分の親さえ知らない主人公は、狩猟を生業とする男に拾われて育った。生まれて此の方生活の大半を山に依存している。街に出ないわけではない。必要最小限のものを買うために遠い街まで出かけるのだ。金がない。狩猟で得た肉や毛皮・山菜等を売り、銃弾、酒米と僅かな物資を買う。主人公の名前は、稚児...

自分の親さえ知らない主人公は、狩猟を生業とする男に拾われて育った。生まれて此の方生活の大半を山に依存している。街に出ないわけではない。必要最小限のものを買うために遠い街まで出かけるのだ。金がない。狩猟で得た肉や毛皮・山菜等を売り、銃弾、酒米と僅かな物資を買う。主人公の名前は、稚児の頃、狩猟で得た熊の爪で玩んでいたところから「熊爪」と呼ばれる。  作品に登場する熊は、主に「穴無し」「赤毛」で壮絶な激闘シーンが目に浮かぶ。  熊爪自身の生活が過酷なものにも拘らず、山に溶け込み描写が瑞々しく息吹を感じます。懇意な付き合いがある街の取引先の店主は、山の生活に興味を持ってくれるが、熊爪には有難迷惑のようだ。一方でそろそろ街で住まないかと勧められるが、時は明治期で店主は炭鉱の事業に多くの資金を投資している。  店主の店全体に、荒廃前の暗さを感じた。 何かと煩わしい街の生活よりも、不便だが不便なりの山での生活が馴染み捨てられない。 今年の四月二十四日の新聞に以下の記事が掲載された。『いつしか人とクマの立場は入れ替わり、近年は市街地に現れる「アーバンベア」が増えた。ツキノワグマが好むドングリの不足など、背景はさまざまらしい。昨年度は人の被害が約200件を数えた。クマが冬眠から目覚めるこの時節も、人里での駆除のニュースが届いている。(中略)  そのクマが先日、指定管理鳥獣に追加された。昨年度はツキノワグマだけで8千頭近くが捕殺された。クマは行動範囲が広く、国内の正確な個体数は把握が難しい。危険だからと殺生を重ねれば、その先に待つのは絶滅だろう(中略)20年ほど前のサラ川から。〈熊が出た熊から見れば人が出た〉』抜粋終わり。 熊爪は、必要だから熊を狩る。必要じゃなければ無意味な殺生はしない。山は誰のものか。 熊の生活を脅かすのは、「人間の惑星」だからか。 読書は楽しい。

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2024/05/25

熊爪さんの生き様 生まれ育った環境に順応できるか、できないようならどう生きるか。 自分は切り開いて行けるか考えさせられる。 久しぶりに読んだという感触の大きい本でした。

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2024/05/24

ともぐい 題名から熊との闘いからのと思って読み進める。しかしおもしろい展開。 北海道の自然、匂い、空気が伝わって来る。おもしろい体験だ。

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2024/05/23

わたしも北海道生まれなので、100年前の北海道が舞台というので、気になり手をとりました。 身体も心体も痛々しく、苦しかった。 野蛮さや過酷さ寡黙さ、静かな迫力、人間性を超えた生命らしさも感じ、変な汗をかきました。 養父から地道に山での暮らしやマタギの教えを受け継いで、たったひ...

わたしも北海道生まれなので、100年前の北海道が舞台というので、気になり手をとりました。 身体も心体も痛々しく、苦しかった。 野蛮さや過酷さ寡黙さ、静かな迫力、人間性を超えた生命らしさも感じ、変な汗をかきました。 養父から地道に山での暮らしやマタギの教えを受け継いで、たったひとりで山で生きた熊爪。 空を見上げ、風を読み、生き物の匂いを感じ、細かい音を聞き分け、山や生き物、自然を熟知している熊爪。 ときどき山を下りて町で狩猟した肉を売って、米や銃の弾を買う。 人が死んだら棺桶ごと燃やして灰になるより、山で死んで鳥や動物の餌になる死体のほうが役に立つと考える熊爪。 ところが熊爪は大怪我をして町の人々や医者にしばらくお世話になる。 そこに安心安定の炭鉱の仕事の誘いがくるが、熊爪はもちろんNoと思いたい。 しかし時代の変化によって、生きる概念全てから考え、悩んでいく熊爪。 怪我が回復した熊爪は久しぶりに山奥の自分の小屋に戻ったシーンで「俺は、まだ、こっち側だ」と自分に言い聞かせているような、心の揺らぎもありました。 基本的にセリフが少ない分、動作や仕草、こころの声などであまり喋らない熊爪の想いが常に優先され描かれていました。 最後の小屋から離れて行く陽子のシーンで、顔の表情があまり描かれていなかったのは、ボヤけているからだと思いますが、スッゴイ気になって後を引きます。 作家の河崎秋子さんが男性主人公で描いた最後の女性像でありことに意味がある気がしました。 熊爪は完全な自給自足ではないので、東出昌大のような生活と思えば、こんな山男は本当に居てもおかしくないですね。

Posted byブクログ

2024/05/22

熊文学。緊迫感のある狩の描写が素晴らしかったです。 ゴールデンカムイという漫画でも熊との戦いがよく描写されるのですが、実際はこういう生きるか死ぬかの二択なのだろうなと思いました。 話の本筋ではないのですが、とにかく主人公の狩の相棒である犬がいい子すぎて…。犬好きには特に刺さること...

熊文学。緊迫感のある狩の描写が素晴らしかったです。 ゴールデンカムイという漫画でも熊との戦いがよく描写されるのですが、実際はこういう生きるか死ぬかの二択なのだろうなと思いました。 話の本筋ではないのですが、とにかく主人公の狩の相棒である犬がいい子すぎて…。犬好きには特に刺さること間違い無しです。犬文学といっても過言では無いです。

Posted byブクログ