ともぐい の商品レビュー
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穴持たずのクマを倒そうとした熊爪。 そのクマを倒したのは別の赤毛クマだった。 なんで最後陽子が熊爪を殺そうとしたのか それは我が子を守るためだったのか 熊爪のためだったのか。
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この小説を読んでいると、視覚、嗅覚、聴覚、触覚が研ぎ澄まされるというか、とてもリアルに感じられるような気がした。 藁沓(わらぐつ)で雪を踏みしめる音、獣の匂い、生き物の息づかい、動物の毛皮や内臓の肌ざわり・・・。 ヒグマと対峙するシーンは熊爪の直ぐ側に自分が身を置いているかのよう...
この小説を読んでいると、視覚、嗅覚、聴覚、触覚が研ぎ澄まされるというか、とてもリアルに感じられるような気がした。 藁沓(わらぐつ)で雪を踏みしめる音、獣の匂い、生き物の息づかい、動物の毛皮や内臓の肌ざわり・・・。 ヒグマと対峙するシーンは熊爪の直ぐ側に自分が身を置いているかのような感覚に陥り、とても迫力があったし、食料や弾丸など手に入れるために町へ下りるシーンでは、雑踏の音が聞こえてくるようだった。 店の盲目の陽子(はるこ)を貰い、山で暮らすのは陽子の気味悪く感じるやり取りも妖しさを醸し出していた。 ラストは驚くような展開であったが、すぅっと静か終わったのが見事だった。 山の暮らししか記憶にない男の潔い幕引きだったのだろうか。 怪我や加齢は人の生き死にを考える大きなターニングポイントになるのかもしれない。
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久々に凄い小説に出会ってしまった。 わたしの語彙力では到底この感情を伝えられないのがもどかしい。 でもみなさんにぜひ読んでほしい。 本当に凄いんです、生き様が。圧倒されまくりました。
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すごく面白かった。第170回直木賞受賞作。 一気に読んだ。途中で切ることができなかった。なぜなら、この小説1冊を通して、主人公・熊爪の時間が進んでいるように感じられたからだ。自分が手を止めることで熊爪の人生を止めてはならない、そんな気がした。熊爪という名前は、幼少期に熊の爪で遊んでいたことから。変わった名前だとは思いながらも、話の内容とうまく絡み合う。特に熊。熊とは切り離せないストーリーであった。くまではなく、クマでもなく、熊だ。野生の熊の生温かさ、獰猛さ、冷静さ、それに対する恐怖がすぐ近くに感じられた。読み進めると頭の中で映像になって流れてくる。私は山に入ったことも、野生動物に遭遇したことも、動物を仕留めるところを見たこともないが、全てが自然と想像できた。そのくらいの素晴らしい表現力がある。生きているのに死んでいる、という感覚に気づいた時、やっと生を手放せるとの安堵もあったのかもしれない。その気持ちは感じたこともないし、想像したこともなかった。だけど、理解ができた。それは、熊爪の人生を近くで感じてきたからだ。俗世から離れ、山の中で独りで暮らす。今の私たちの生活とはかけ離れている。スマホも電気もガスもない。私にはできない。でも想像ができる。それが小説の素晴らしいところだと、この小説を読んで改めて思った。直木賞を受賞したことに納得する面白さと文章力だった。
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「ともぐい」(河崎秋子)を読んだ。 うわ!! 帯に『新たな熊文学の誕生!!』ってあるので、第二の「羆嵐」(吉村昭)かと思っていたんだけれどそれどころじゃないぞ。 もっともっと「生」と「死」を突き詰めた濃ゆい物語だわ。 恐ろしいのは《熊》でなく《ひとの業》なんだって。 河...
「ともぐい」(河崎秋子)を読んだ。 うわ!! 帯に『新たな熊文学の誕生!!』ってあるので、第二の「羆嵐」(吉村昭)かと思っていたんだけれどそれどころじゃないぞ。 もっともっと「生」と「死」を突き詰めた濃ゆい物語だわ。 恐ろしいのは《熊》でなく《ひとの業》なんだって。 河崎秋子恐るべし。 あーびっくりした。
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後半からはなんとも言えない不思議な物語で、描かれる視点は間違いなく熊爪なんだろうけど、本格的な猟をやってるときの熊爪のほうが魅力的なキャラのように思える。その変わり様はなにが彼をそうさせたのか。。。じっくり読めば分かるんですけどね。 前半の熊とのバトルと、陽子が子を産み落とすシ...
後半からはなんとも言えない不思議な物語で、描かれる視点は間違いなく熊爪なんだろうけど、本格的な猟をやってるときの熊爪のほうが魅力的なキャラのように思える。その変わり様はなにが彼をそうさせたのか。。。じっくり読めば分かるんですけどね。 前半の熊とのバトルと、陽子が子を産み落とすシーンは読み応えあり。 大自然の北海道をありありと描く河崎作品はやっぱりすごいな。
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久々の読書終わりました。 なかなか人間臭い漁師の話に没頭しました。 でも何故熊爪さんが陽子に殺されたのかわからなかったなあ。 最後は悲しい話になってしまいました。 文学小説読み終わりました。
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良い。 前半、北海道の猟師の世界が面白かった。アルプスの少女ハイジを彷彿とさせる自給自足と麓との交流。 後半、内面的な話になり、分かりにくくなっていく。
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素朴な感想としては、生きることの寂しさ、こうとしか生きられない人間の孤独が、北海道の凍てつく原野の情景と相まって迫ってきて、体内にしこりを残すような作品だった。 生きるためには殺し喰らう。自然の摂理そのものを体現していた熊爪は、それに逆らう生き方がわからなかった。赤毛(熊)が真...
素朴な感想としては、生きることの寂しさ、こうとしか生きられない人間の孤独が、北海道の凍てつく原野の情景と相まって迫ってきて、体内にしこりを残すような作品だった。 生きるためには殺し喰らう。自然の摂理そのものを体現していた熊爪は、それに逆らう生き方がわからなかった。赤毛(熊)が真の勝利者だとわかったと同時に予想もしなかったほど呆気なく死んだことで、熊爪はどう生きていいのかわからなくなった。つまり、自分は真っ当に死ねるのだろうかと考えるようになったのだろう。片目がきくはずなのに盲目のふりをする陽子が、熊爪の真の欲求に気づいてか熊爪を殺してしまったのは、これも自然の摂理に沿ったことだったのかもしれない。名を与えられずとも最期まで寄り添った犬が、腐敗して原型を留めていない主人のもとへ帰ってきて「満たされた目をしていた」ことに、野生における血の通い合いをみた結末だった。
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北海道出身で70歳なので、季節感、山の中、ヒグマなどがより感じられた。 今までに、読んだことがない小説だった。 すごく面白かった。
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