幽玄F の商品レビュー
青いブックデザインが印象的ですね。 この著書を手にした時に、何故本書帯裏に『日本の戦後精神の支柱「三島由紀夫」に挑んだ』と書いているのかでした。 読了した今は、一筋縄では括りきれない深さを感じます。決してミリオタ小説ではありません。 雑学的に言うならば、戦後の日本が、米...
青いブックデザインが印象的ですね。 この著書を手にした時に、何故本書帯裏に『日本の戦後精神の支柱「三島由紀夫」に挑んだ』と書いているのかでした。 読了した今は、一筋縄では括りきれない深さを感じます。決してミリオタ小説ではありません。 雑学的に言うならば、戦後の日本が、米国の占領政策で失われた産業に関係があるのかと思いました。戦災で軍需産業はなくなり、復興時に造船の民営で世界一の造船国になり、鉄道輸送は国有で残りました。しかし航空機は自国で製造出来なくなり、旅客機等は米国に発注しています。国産旅客機が空を飛ぶなんて、ニュースになるほどの珍しい報道が現状です。かつて戦闘機の一流設計者は、国鉄に再就職して鉄道の開発者になり、「夢の超特急」を生み出した。著者は、それについて一切触れていないが、僕のニュアンスを汲み取ってください。 主人公易永透は、真言仏教のお寺に生まれた境遇で「ただ私は戦闘機という機械に乗りたかっただけで、その戦闘機の飛ぶ空が〈護国の空〉だったのです」と書いています。巻末の謝辞に、三島も超音速戦闘機の搭乗体験記「F104」もあり、それなら、透は「正直なところ、私には日の丸も国家も背負えません」と書いて、「自由に空を飛んだことなど、俺は一度もない」という記述は佐藤氏が戦後の三島の憂いを代弁しているかのように思いました。しかし透は、あくまで本当の青い空と地上では決して体感することが出来ない世界観「生と死」の狭間で、超音速で飛ぶ快感を知ってしまったから、少年の頃の夢を諦め切れなくて離陸はあっても着陸は考えなかったのだと…。 三島文学思想が美の描写ならば、何とも表現し難い佐藤究流に融合したのではないかと解釈すると、この小説は興味深い。 人間のバーディゴ(空間識失調・失神します)の限界は9Gだと言われています。音速飛行とは、音の速さを超えるということ。当然、超音速のパイロットは、搭乗している戦闘機の爆音は聞こえない。コックピットは静謐に包まれ無線の交信音のみ、視覚では絵具では再現できない青い空。操縦している者のみが体験できる世界観でしょうか。 読書は楽しい。(詳しくは著書を!) ずいぶん端折って書いていて説明不足は否めないので、意味を理解し難い部分は著書をお読みになってください。 小説の解釈は人それぞれで、どなたの書評も参考にしていません。若干の引用はありますが、筋書きは書かなかった。 勿論著書には、最新鋭の音速戦闘機の性能の説明が多く散見されているが、佐藤究氏は、ミリオタ小説を書くほどの愚は侵していない。 . 「本書帯より一部抜粋」 空と血と。 天才パイロットが戦闘機Fと共に辿る、数奇な運命とはーーー。 日本の戦後、そして世界の現在を問う。
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はじめは、空に憧れる純真な少年を思い描き、頭の中にはユーミンの『ひこうき雲』が流れていたが、次第に自由や護国、蛇という言葉が飛び交い、易永は安永だったかと、あらゆるところに三島由紀夫が偲ばされていることに気づく。 『豊饒の海』はよくわからなかったが、こちらは一気読みしてしまう...
はじめは、空に憧れる純真な少年を思い描き、頭の中にはユーミンの『ひこうき雲』が流れていたが、次第に自由や護国、蛇という言葉が飛び交い、易永は安永だったかと、あらゆるところに三島由紀夫が偲ばされていることに気づく。 『豊饒の海』はよくわからなかったが、こちらは一気読みしてしまう面白さだった。易永透の結末が印象的で、何事にも縛られない意志や自由の追求を感じた。また、ショフィックルは透の生まれ代わりではないけれど、同じように繰り返されていくのかなと思った。
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「テスカトリポカ」が青黒くうねる波の物語だとしたら、こちらは青白く輝く光の物語であった。ひたすらの憧憬は、確実に約束された破滅をも凌駕していた。序盤から少しずつ積み重ねていった主人公の背景描写はひたすらに長く感じるけれど、終盤の急展開のためにはやはりこの丁寧さが必要だったのだなと...
「テスカトリポカ」が青黒くうねる波の物語だとしたら、こちらは青白く輝く光の物語であった。ひたすらの憧憬は、確実に約束された破滅をも凌駕していた。序盤から少しずつ積み重ねていった主人公の背景描写はひたすらに長く感じるけれど、終盤の急展開のためにはやはりこの丁寧さが必要だったのだなと今ならわかる。とびきりのエンタメでありながら、この世界の深淵を感じさせてくれる、激しく心を掴まれる物語であった。
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面白い!すっごい面白い。 文庫版早く出ないかなー。持ち歩いて毎日読みたい。 不勉強だなー私。この作家を知らずにいたの、もったいなかったな。 レビュー見て、三島作品数冊しか読んでないから、私には楽しめないかなー?と危惧したけど、全く問題ない。この作品自体がすごいもん。制覇してあれば...
面白い!すっごい面白い。 文庫版早く出ないかなー。持ち歩いて毎日読みたい。 不勉強だなー私。この作家を知らずにいたの、もったいなかったな。 レビュー見て、三島作品数冊しか読んでないから、私には楽しめないかなー?と危惧したけど、全く問題ない。この作品自体がすごいもん。制覇してあれば、より一層楽しめるだろうけど。
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相変わらずこの作者はものすごく勉強して執筆してる。だから信頼して安心して読める。最後のページの参考文献の量がハンパない。尊敬します。 飛行機の魅力に取り憑かれた少年・透が、後に天才的な戦闘機パイロットとなり、音速の中で大蛇に飲み込まれるように、タイ空軍のミサイルに自ら飛び込む一...
相変わらずこの作者はものすごく勉強して執筆してる。だから信頼して安心して読める。最後のページの参考文献の量がハンパない。尊敬します。 飛行機の魅力に取り憑かれた少年・透が、後に天才的な戦闘機パイロットとなり、音速の中で大蛇に飲み込まれるように、タイ空軍のミサイルに自ら飛び込む一生を書いたお話。 「音速の衝撃波から出る轟音の中での静けさ」がすごくスリリングな描写で、戦闘機の中での孤独がよく伝わってくる。 背景に宗教があるのも、この作者の特徴か?バングラデシュのジャングルとよく相まって、密教の念仏が透の狂気を禍々しく厳かに神々しく浮き立たせてる。 佐藤究さんの小説の最後がとても好き。 主人公に関わった少年の伸びやかな未来を暗示してるような最後がいつもとても好き。
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空に、飛ぶことに憧れ、取り憑かれた、一人の戦闘機パイロットの一生を綴った物語。 時系列順にたんたんと描かれる透の一生なのに、何故か飽きることもなく読む手が止まらない。 透目線で書かれているのに驚くほど透という人間がよくわからない。私の読み込みが甘いのだろうけど。ただただ、彼の中に...
空に、飛ぶことに憧れ、取り憑かれた、一人の戦闘機パイロットの一生を綴った物語。 時系列順にたんたんと描かれる透の一生なのに、何故か飽きることもなく読む手が止まらない。 透目線で書かれているのに驚くほど透という人間がよくわからない。私の読み込みが甘いのだろうけど。ただただ、彼の中にあるのは飛ぶこと、しかも戦闘機で。 地上には彼の居場所はなく、透が最後に選んた選択は正しさは別にして、それしかなかったのかもしれない。
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今までの作品とは全然違った印象です。 テスカトリポカの暴力や悪意や邪悪さと比べると、青春小説を読んでいるようなサラリとした読み心地と爽やかさでした。 前半は戦闘機の描写が多くて、私には少し読み辛い部分がありましたが、好きな方には面白いのだろうなと思います。 後半、オーストラリア人...
今までの作品とは全然違った印象です。 テスカトリポカの暴力や悪意や邪悪さと比べると、青春小説を読んでいるようなサラリとした読み心地と爽やかさでした。 前半は戦闘機の描写が多くて、私には少し読み辛い部分がありましたが、好きな方には面白いのだろうなと思います。 後半、オーストラリア人のパイロットが出てくるあたりから、急に面白くなったように感じます。 何十年も前に読んだ三島由紀夫をまた読みたくなりました。
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ジェット戦闘機に乗ってみてぇ ってな事で、佐藤究の『幽玄F』 空を行き交う飛行機に取り憑かれた易永透の一途なまでの空への憧れから、音速への魔界に取り憑かれた狂気を圧倒的な世界観で描く読み応えは9Gを超えてバーティゴに陥りそう 空の色って何色か知ってる? 下記の中から答えてね...
ジェット戦闘機に乗ってみてぇ ってな事で、佐藤究の『幽玄F』 空を行き交う飛行機に取り憑かれた易永透の一途なまでの空への憧れから、音速への魔界に取り憑かれた狂気を圧倒的な世界観で描く読み応えは9Gを超えてバーティゴに陥りそう 空の色って何色か知ってる? 下記の中から答えてね ターコイズブルー マリンブルー スプリングブルー ホライゾンブルー ナイトブルー ウルトラマリン プルシアンブルー アクアブルー パステルブルー コバルトブルー スカイブルー 紺青(こんじょう) 瑠璃色 露草色 アンミカならこう言うじゃろな『青はね500色あんねん』 究さんのラストって好きなんよね。 シュールと言うんか物悲しさ感が有るけど、その先の希望って言うんか未来がある感じがええんよね メモ STOVL Short Take Off and Vertical Landing 2024年5冊目
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戦闘機で空を超音速で飛ぶ描写は爽やかでスリリングだった。 戦闘機パイロットなるための執念と取り憑かれたように『戦闘機で空を飛びたい』という想いを随所に感じた。 主人公が国を転々としていきそこで出会う人々のストーリーと戦闘機のメカニカル用語、軍事関連、国の歴史、民族の特色などを織り...
戦闘機で空を超音速で飛ぶ描写は爽やかでスリリングだった。 戦闘機パイロットなるための執念と取り憑かれたように『戦闘機で空を飛びたい』という想いを随所に感じた。 主人公が国を転々としていきそこで出会う人々のストーリーと戦闘機のメカニカル用語、軍事関連、国の歴史、民族の特色などを織り交ぜていて調べるのが楽しかった作品。
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少年の頃から航空機に憧れ、やがて戦闘機パイロットとなった易永透の人生を描いた作品。 もう、早々に心を鷲掴みにされ一気読み! パイロットを目指し、ストイックに黙々と努力し続ける透がすごい。 自衛隊戦闘機パイロットとして生きた透と日本を離れてからのその後、先が気になって夢中で読みま...
少年の頃から航空機に憧れ、やがて戦闘機パイロットとなった易永透の人生を描いた作品。 もう、早々に心を鷲掴みにされ一気読み! パイロットを目指し、ストイックに黙々と努力し続ける透がすごい。 自衛隊戦闘機パイロットとして生きた透と日本を離れてからのその後、先が気になって夢中で読みました。 ひたすらに何かを追い求める人の物語には、人を引き付ける力があると思う。 個人的に「航空機」や「パイロット」についてのストーリーは好きなので、専門的描写はとても興味深かった。 舞台が異国になってからは雰囲気が変わり、ある出会いからは余計に先が気になりページをめくる手が止まりませんでした。 飛行シーンもいい!気分は「トップガン」の世界。 ちょっと予想外な部分もあった。私だけかもしれないけど、ラストは少し物悲しい感じがしました。
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