幽玄F の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
最新鋭戦闘機F-35Bと虚空の空 迷える天才パイロットと仏教 パイロットに憧れて自衛隊の戦闘機パイロットになった主人公 しかし超音速飛行で突如現れた巨大な蛇の幻想に戦闘機乗りの道を絶たれた透は人生の迷宮にはまり込む かつての天才とF-38Bの数奇な運命が迷宮の出口に繋がり蛇の呪いを解く 引き込まれ度MAXの名作です
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非日常、それも少し未来が舞台になっていて久しぶりにドキドキを味わった。 知識が足りず地図や用語を引いたりして時間がかかった。 静かな狂気と破滅。幽玄に飲み込まれて行くラスト。作者の意図するところ伝えたかったことを真に理解出来たかというとなかなか難しい。 死に場所を見つける人生。...
非日常、それも少し未来が舞台になっていて久しぶりにドキドキを味わった。 知識が足りず地図や用語を引いたりして時間がかかった。 静かな狂気と破滅。幽玄に飲み込まれて行くラスト。作者の意図するところ伝えたかったことを真に理解出来たかというとなかなか難しい。 死に場所を見つける人生。三島をもう一度読んでみようかな、繋がったらちょっと怖い気もする。
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「空の青とは、すなわち死の補色だった。」 強烈なこの一文が作品を貫いている。三島由紀夫が生前語った現代人の死に場所の喪失に、歪ながらも透が答えを見出していく過程がとても良かった。 どんなに深く憧れ、どんなに強く求めても、 青を手にすることはできない。 すくえば海は淡く濁った...
「空の青とは、すなわち死の補色だった。」 強烈なこの一文が作品を貫いている。三島由紀夫が生前語った現代人の死に場所の喪失に、歪ながらも透が答えを見出していく過程がとても良かった。 どんなに深く憧れ、どんなに強く求めても、 青を手にすることはできない。 すくえば海は淡く濁った塩水に変り、 近づけば空はどこまでも透き通る。 人魂もまた青く燃え上るのではなかったか。 青は遠い色。 ー 青は遠い色/谷川俊太郎
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幽霊の話?と思ってたら全然違いました。 『金閣寺』そしてなぜか『カモメのジョナサン』が思い出されます。 戦闘機への偏愛と、護国。 水平と、垂直。 そして蛇を食らう鳥、孔雀…。 難しい話は一旦おいといて 一読目はひたすらカッコいい空を飛ぶシーンに浸るのがいいかなと思います。 ―...
幽霊の話?と思ってたら全然違いました。 『金閣寺』そしてなぜか『カモメのジョナサン』が思い出されます。 戦闘機への偏愛と、護国。 水平と、垂直。 そして蛇を食らう鳥、孔雀…。 難しい話は一旦おいといて 一読目はひたすらカッコいい空を飛ぶシーンに浸るのがいいかなと思います。 ―――――――――――――― Fー35Bは亜音速に至り、遷音速に至り、ついには音速の壁をつらぬいた。ソニック・ブームで空気をゆるがしながら、なおも加速した。マッハ1.0、マッハ1.1、マッハ1.2。 ――――――――――(p305) 主人公と一緒に9Gの加速を体感しましょう。 ただし、くれぐれも空間識失調(バーティゴ)にはご注意を。
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『テスカトリポカ』で直木賞受賞後初の長編。三島由紀夫の豊饒の海をリスペクトして、書かれたストーリーらしいけど、読んでてもその点はわからなかった。三島の護国観を表現しているのかも。ストーリーは単純で、F35ライトニング2に乗りたいためだけに自衛隊に入り、優秀なパイロットになった男...
『テスカトリポカ』で直木賞受賞後初の長編。三島由紀夫の豊饒の海をリスペクトして、書かれたストーリーらしいけど、読んでてもその点はわからなかった。三島の護国観を表現しているのかも。ストーリーは単純で、F35ライトニング2に乗りたいためだけに自衛隊に入り、優秀なパイロットになった男の話。純粋に戦闘機に乗りたいだけなのに、この国では護国という目的以外では操縦できない。限界性能まで戦闘機を操りたい。その葛藤から、とんでもないことをしでかす。 こういう生き方、というか死に方。たぶん男にしか理解できない。
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今はまっている佐藤究さん「幽玄F」今現在の最新作。 三島由紀夫に挑んだ作品との事。 自分は三島文学は「金閣寺」「潮騒」「仮面の告白」位しか読んだことはないが、「盾の会」を結成し市ヶ谷駐屯地での最期の壮絶な覚悟の死はあまりにも有名で強烈。 色んな三島由紀夫に関する書物、ドキュメン...
今はまっている佐藤究さん「幽玄F」今現在の最新作。 三島由紀夫に挑んだ作品との事。 自分は三島文学は「金閣寺」「潮騒」「仮面の告白」位しか読んだことはないが、「盾の会」を結成し市ヶ谷駐屯地での最期の壮絶な覚悟の死はあまりにも有名で強烈。 色んな三島由紀夫に関する書物、ドキュメンタリー等はだいぶ観たり読んだりしてきた。 数年前に東大安田講堂にての三島vs東大全共闘のドキュメンタリー映画を見た時もその堂々たる姿と若い学生のエネルギーを否定しない大人の慣用力が自分を惹き付けた。 その三島由紀夫にチャレンジとは。 三島文学は三島由紀夫本人の生き様が作品に極度に過激に融合しつつ、最期の強烈な「自死」も意識の中で一揃えである文学と自分は認識している。 その時点で弱冠の不安に似た恐怖を感じさせられる。佐藤究さん、この先何処に向かうのだろうか?と思いつつこの作品を読んでいた。 作品は「金閣寺」と似た作品。 金閣寺の持つ「美」に取り憑かれた男が僧になりその「美」に魅了され、最終的に自己欲求に近い形で金閣寺を放火してしまう。 今作品はそれが「空」に取り憑かれた男が主人公。 航空自衛隊に入隊、この辺りも三島由紀夫が絡んでいたのかな? F35に搭乗し「護国とは」「自分とは」という問いに向き合っていた。 「蛇」というキーワードが良く出てきたがここだけがしっかりと理解できなかった。 「死」の象徴という読み方であっているのか?「空の青は「死」の補色」という表現もありナーガという神も出てきて混乱している。 この作品の核の部分だと思うのだが しっかりと見えていない。この感想を書いた後、他の方々のレビューや作者のインタビュー等を読んで考えてみたい。 「Ank」「テスカトリポカ」等の知性と狂気の入り交じった作品とは違うテイストの作品だった。 やはり自分は佐藤究さんの描くその知性と狂気の入り交じるものに取り憑かれている。 次は「爆発物処理班の遭遇したスピン」を読んでみる事に。
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航空宇宙自衛隊の天才パイロット 易永透2000年四谷生まれ 両親が離婚、真言宗の祖父と暮らす 成績優秀、高卒で航空学生、トップで戦闘機パイロットになる。 祖父から護国の意味を問われるが飛ぶとこにしか 興味がないと答える 天才パイロットと呼ばれるが自衛隊向きではない 米軍との演習でも天才ぶりを披露 音速以上で体が蛇がまとわりつく経験 検査の結果、飛行機に異常なし 戦闘機のパイロット資格なくなり辞める タイへ航空パイロットの教官をしにいくが仕事がこない、軍隊経験者優先 バングラデシュの輸送パイロットになる ジャングルにF-35Bを不時着させた亡命パイロットがたまたま居合わせた少年にUFOから降りた宇宙人と思われ射殺 その話を聞いた元パイロットは戦闘機に乗る計画をたてる 売り先候補、ロシアと中国はさけたい 地元革命グループの紹介 着陸場所はセイロン 修理と滑走路工事が開始 完成するとパイロットは飛びたつ セイロンとは逆、メコン川上空でタイ軍のスクランブルに見つかりミサイルで撃ち落とされた
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9Gの世界に魅せられた透は、F35Bの戦闘機パイロットとしてアリゾナでの実践訓練に参加することになる。訓練中透明で巨大な蛇を見た透は強烈な窒息感に襲われる。護国とは何か祖父が伝えた真言宗の教え、三嶋由紀夫の作品。様々な人と交差する。一気に読んだ。
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ハズレの無い作家さん佐藤究さんが描く天才戦闘機パイロットの人生。今作もまんまと没入しました。 前作「テスカトリポカ」が重厚で濃密だったのに比べると、今作は軽快で空虚。 空を見上げる少年透が戦闘機に魅せられていく序章で、いつの間にか物語の世界に静かにどっぷりと没入していきます。 青と白の表紙、文章中に多くもうけられた空白行、淡々と進行していくストーリーが相まって、本の空白が空のようにも思えてきます。 やがて天才パイロットと呼ばれる透は、家庭でも学校でも自衛隊でもタイでもバングラデシュでも、どこにいても何にも属さず、思想的信念も見えず、非常にドライというか空虚な佇まいで、それがこの物語の空気を終止支配しています。 緻密でリアリティのある戦闘機や滑空の描写との対比で、より透の心理状態が空っぽに見えてくる感じで、名は体を現すではないですが、この本を漢字一文字でいうなら、血の「赤」でも空の「青」でも雲の「白」でもなく「透」かなという印象でした。
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ホンタメの青い本特集で見つけた本。 戦闘機の魅力に取り憑かれた少年がパイロットとして活躍する話かと思いきや3分の1ほどでパイロットを辞めてしまう。 無表情に見える主人公の心の動きが繊細で、それでも強く光を放っていく様は形容しがたいはずなのにさらりと描かれている。 読み終えた後にテスカトリポカの作者さんと知った。 どちらの作品も読み進めるごとにいつの間にか引き摺り込まれている。 一気にではなく、ずるずると、絡まる蛇のように。
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