列 の商品レビュー
集中力を使う小説でした。 長いストーリーではないのですが、脳内でビジュアルに落とし込むまでに時間がかかりました。 全部で3章あって、1章はいわゆる「列」アルアルな内容なのですが、2章、3章と読み進めるうちに、この小説で意味するところの「列」の全容が明らかになっていきます。 1...
集中力を使う小説でした。 長いストーリーではないのですが、脳内でビジュアルに落とし込むまでに時間がかかりました。 全部で3章あって、1章はいわゆる「列」アルアルな内容なのですが、2章、3章と読み進めるうちに、この小説で意味するところの「列」の全容が明らかになっていきます。 1章読んだときは、一体何に並んでいるのか? めちゃめちゃ気になったのですが、そんな簡単な内容ではないんだなぁ、これが。 3章を読んでいる途中で、著者の言わんとしている事が何となくわかってきます。 てか、本来このストーリーは絵とか映像とか、時間軸と登場人物(と心理)、空間とを立体的に表現すると分かりやすいものなのだと思うのです。(個人的感想。わかりにくいかも……) それをよく文章で表現したもんだと思いました。 凄すぎる。 驚きしか出てこない。 個人的に気になるフレーズはいくつかあったのですが、こちらをメモっておきます。 ”それに幸福の実現量は限られている。量は同じまま増大させるには、後ろに人がいないと。比較して優越を感じたり、羨ましがってもらわないと”(抜粋) 人間誰しもこの感情はあると思うのです。 でも、気づきたくない。(知っちゃったら自分が嫌なヤツだって認めるしかないからね) ぐさりと刺さるフレーズです。 一般的な「列」というと、最終的には目的にたどり着くために並んでいるものかと思いますが、この小説でいうところの「列」はちょっと異なります。 「列」をテーマにここまで幅を広げてストーリーを作り込むとは、さすがです。 いい読書体験ができました!
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人との競争や比較から逃れられない、人間のドロドロした部分が詰まった話だった。 「つまりあなたは、本当は」 「他人と自分を比べてずっと文句を言い、ずっと苦しんでいたいんだ」 というところが結構刺さっちゃった。
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読み進めるうちに「まるで〇〇が比喩的に表現したら列ということになった小説だ」と何度となく思った。 ゴルフをしたことがある人なら一度は経験するであろうゴルフコースはまるで人生のようだ。 列もそんな感じとして受け取った。 猿もキーワード的に出てくる。 猿を支配している人間。 猿=支配コントロールされている人間 猿は、歴史的に比喩表現として負のメディア表現としてある。 あとがきにある、特別な小説になるかどうかは、もしかしたら後年気づくことになるのかもしれない。
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列に並ぶ妄想?シーンの心理描写は面白い。が、不気味で冷めてしまう。 猿のくだりは楽しく読めました。 トータルとしてユニークであり物語性と虚構的世界観が背中合わせに両立しているように感じます。 一読の価値アリ。
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時間をかけて読んでしまった。失敗だった。 最後急に少し肯定的になったのは違和感がある。 説明が少し多い気もしたが、なければ難解すぎるような気もする。
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薄い本なのに読みづらく途中でやめようかと思ってとりあえずあとがきだけでもと思い読んでみたら、二年半以上ずっとこの小説を書いていたという作者の言葉があったのでもう一度読み直した。「他人と自分を比べてずっと文句を言い、ずっと苦しんでいたいんだ」要するに人間とはなんぞやだろうか。要する...
薄い本なのに読みづらく途中でやめようかと思ってとりあえずあとがきだけでもと思い読んでみたら、二年半以上ずっとこの小説を書いていたという作者の言葉があったのでもう一度読み直した。「他人と自分を比べてずっと文句を言い、ずっと苦しんでいたいんだ」要するに人間とはなんぞやだろうか。要するにという言葉でまとめてはいけない。理不尽なことなど色々あるが「楽しくあれ」か。最後に光がさした。難解だった。
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どの方向を見ても人が並んでいて、向きを変えれば別の比較になって先頭じゃなくなる。 そうだな、私も自分は列に並んでいないと思っていたけど、皆知らぬ間に並んでいるのかも知れない。 無限ループのような終わり方だと感じたが、「楽しくあれ」は列に並ばざるを得ない人間にとって必要な心の持ち方...
どの方向を見ても人が並んでいて、向きを変えれば別の比較になって先頭じゃなくなる。 そうだな、私も自分は列に並んでいないと思っていたけど、皆知らぬ間に並んでいるのかも知れない。 無限ループのような終わり方だと感じたが、「楽しくあれ」は列に並ばざるを得ない人間にとって必要な心の持ち方だと感じた。
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目的のわからない列に並び、 少しも動かない状態での、心理描写がものすごかった。 猿の生態を研究する「私」のドロドロとした心模様や、行動が何とも言えない。 死後の世界か、空想の世界か、現実の世界か、 脳内をぐちゃぐちゃにされた気がする。
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私は知らない本屋に行ったとき好きな作家の棚を確認して「なるほどこの品揃えね」などと思うことが好きなのだけど、そのときにこの本を見つけた。まず「知らん本だけど文芸サイズか~」と思った。 芥川賞受賞作とかは旬ものだし文芸サイズで買うけど、基本的には文芸サイズって高いしデカいから文庫になるまで待つ派の私。 でも4ページの“他人は他人に対し、どこまで要求することができるのだろう”という言葉にグワッときちゃって買っちゃった。今の自分に刺さる言葉だったので。 読み進めていくうちに「なんか不思議な世界の話だな~」と思ってたんだけど、だんだん全てが繋がってきて、主人公の心の変化を知って、結局ラストには泣いてた。パズルみたいな小説だな。 自分の本質に抗うことはできる、かもしれない。自分の行動次第で。それはすごく大変なことだし勇気のいることだけど、「こうありたい」と具体的な理想を抱くことって大事だよな。 最近の中村文則作品は環境に抗って善人であろうとする人を応援している感じがする。知らんけど。前向きだと思う。
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なんとも不思議な世界観。この本はなかなかエグい。著者の人間の醜い内側を炙り出し、突きつけてくる文章は、読んでいてドキリとさせられる。できれば目を逸らしてしまいたい心理描写が淡々と綴られている。 列とは現代人の有り様を描いた縮図なのか、と考えてしまう。盲目的に他者に追従したり、集...
なんとも不思議な世界観。この本はなかなかエグい。著者の人間の醜い内側を炙り出し、突きつけてくる文章は、読んでいてドキリとさせられる。できれば目を逸らしてしまいたい心理描写が淡々と綴られている。 列とは現代人の有り様を描いた縮図なのか、と考えてしまう。盲目的に他者に追従したり、集団に属していないと不安を覚えたり、自分の立ち位置が人と比べて優劣がどうとか気にしたり。 本文に入る前の、『この世界は列が多すぎる』という一文、ホントその通りだな、って思った。 誰しも列なんか並びたくもないはずなのに。苦しんでいる現代人は多いのではないか。 列からの脱却、そしてみんな『楽しくあれ』ばいいのにな、と感じ読了した。 とても純文学感満載な本でした。
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