百年の子 の商品レビュー
古内さんは、人と人とのドラマを描く作家さんと思っている。ここでもそれは存分に発揮されているのだが、それはフィクションの人物に限って、という印象。実在の人物は既成事実があるので、読んでいる自分が、ついそちらに引っ張られてしまう。 古内さんがこれを書かれたのは、戦争の歴史の中で、出版...
古内さんは、人と人とのドラマを描く作家さんと思っている。ここでもそれは存分に発揮されているのだが、それはフィクションの人物に限って、という印象。実在の人物は既成事実があるので、読んでいる自分が、ついそちらに引っ張られてしまう。 古内さんがこれを書かれたのは、戦争の歴史の中で、出版が、子どもたちが、女性が、どう扱われてきたかという思いからではないか。 タイトルの意味は作中で語られるので、ここでは秘す。 18才のスエは、戦争で男子が少なくなった社会で、運良く文林館に臨時職員として雇われた。しかし、スエの視点からでは会社の歴史を語るには物足りない。そこで現代の市橋明日花が、過去を調べる部署に配属されることで、会社の歴史が紐解かれていく。 (黒歴史の時代の雑誌が、出版社に残されていたことは評価できる) スエは本を読むことが何より好きだったことから、もう一つ、学習誌と児童文学とのつながりも生まれてくる。 歴史を作ってきた時代は当然のように男社会だが、そのなかで女性のスエ、アキさん、松永トメや静子、君島織子の存在が光っている。彼女たちの輝きがなければ、男たちがどんなに懸命になろうが、奔放に生きようが滑稽なだけに見えてしまうのだ。
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戦中からコロナ禍まで、学年誌の出版に関わった各時代の3人を軸にしたストーリー。貧しくて学校に行けなくても学べるように創刊されたこと。こどもたちを戦争に駆り立てる内容で発行した時代のこと。戦争が終わって心に喜びや楽しさで満たす雑誌を作ろうとすること。先が気になって、引き込まれました...
戦中からコロナ禍まで、学年誌の出版に関わった各時代の3人を軸にしたストーリー。貧しくて学校に行けなくても学べるように創刊されたこと。こどもたちを戦争に駆り立てる内容で発行した時代のこと。戦争が終わって心に喜びや楽しさで満たす雑誌を作ろうとすること。先が気になって、引き込まれました。 戦時中、家業の花作りが禁止され、花の苗を処分されたスエの両親が戦後、隠していた花の種を持ち出してきて来年の春に花が咲くことを想うところがとてもよかった。本も畑も楽しさや喜びが失われることが、もう二度とありませんように。
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この作者さんの本、前に読んで好きだなと思ったので読んでみました。 タイトルの意味を感じさせられる深くて良いお話で、個人的に好みでした。 100年とかあっという間に過ぎるけど、市井の人たちの一生懸命な生き方の連続の上に歴史がある。 繋がっていくのもすごい。 今を丁寧に懸命に生...
この作者さんの本、前に読んで好きだなと思ったので読んでみました。 タイトルの意味を感じさせられる深くて良いお話で、個人的に好みでした。 100年とかあっという間に過ぎるけど、市井の人たちの一生懸命な生き方の連続の上に歴史がある。 繋がっていくのもすごい。 今を丁寧に懸命に生きないと…と反省も。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
伏線回収ですっきりした読後感。 リアルな現場への調査が下敷きになっての創作と知り少し納得。 ただ、本の帯の言葉で期待したものとは少し違う物語にも思えた。帯で期待したのは、調査の過程がもっと詳しく描かれて、子どもと女性の人権を深掘りされていることだったが、そこまでではなく、子どもと女性は舞台装置のように思えた。 むしろ、本書の中心は、編集者の奮闘譚であるように思える。それは特に後半の編集者の奮闘部分に多くの記載が割かれているからかもしれない。作者自身の調査が生きている部分と考えられるが、そこで帯の印象とずれたのかもしれない。 とはいえ本書では、スエさんの透明感がとても印象深い。 困ったときに差しのべられた手。何十年後かに別の人に自身が手を差しのべる立場になる姿に感慨を感じた。フィクションだけれど、人生はそういうものかもしれない。
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『人類の歴史は百万年。だが、子どもと女性の人権の歴史は、まだ100年に満たない』 読んで良かった…。静かな余韻に浸りました。 昭和から令和へと繋がる、とてもとても深い作品。 本作は小学館をモデルとした出版社が舞台。 学年誌を軸に令和と昭和、孫と祖母との視点を通してその歴史をた...
『人類の歴史は百万年。だが、子どもと女性の人権の歴史は、まだ100年に満たない』 読んで良かった…。静かな余韻に浸りました。 昭和から令和へと繋がる、とてもとても深い作品。 本作は小学館をモデルとした出版社が舞台。 学年誌を軸に令和と昭和、孫と祖母との視点を通してその歴史をたどり、戦時の思想や言論統制・子どもや女性の人権について触れながら繰り広げられるストーリー。 まるで大河ドラマを見ているような壮大な作品でした!! コロナ禍の令和と、戦時の昭和を生きる女性二人を交互に描きながらの展開。 まず驚いたのは、「学年別の学習雑誌があるのは日本だけ」ということ。 懐かしいCMのフレーズが思い浮かび嬉しくなった。 『雑誌は時代を映す鏡だ』 時代によって是非が変わる。昨日まで非とされていたものが、今日は是となる。 それに取り込まれる子どもたち。 冷静に想像してみるとこんなことが罷り通っていたのかと愕然とするし、そんな世の中怖い…。 子どものため、厳しい状況にあっても決して諦めない大人たち。 学習誌に、こんな歴史と想いが込められていたなんて胸が熱くなる。 不都合とされる歴史や薄れてしまう戦争の記憶。そこから学び、考え続けることがいかに大事かを突きつけられた気がします。 フィクションだけどそこに描かれている史実に想いを馳せ、孫と祖母をつなぐストーリーに胸を打たれました。 読みながら何度も何度も、どうしようもなく涙があふれた。 出会えて良かった大切な1冊! 読み継いでいきたい作品です。 同じく出版社を舞台に戦時を描いた作品、伊吹有喜さん「彼方の友へ」を思い出しました。
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学年誌、小さい頃毎月とても楽しみにしていたのを思い出しました。児童文学の歴史とともに世代を超えた温もりを感じる事ができる本に出会えてよかったです。
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ズシリと重厚で、それでいて読後感は明るく爽やか。まだ始まったばかりだけど、2024年に読んだ本ベスト3に入るんじゃないか? ある雑誌の歴史を通して繋がる祖母と孫。そこから、伺い知る戦争の現実やまだ歴史の浅い女性や子供の人権。ズシリと感じるのはのは、そういうところからかなと思うけ...
ズシリと重厚で、それでいて読後感は明るく爽やか。まだ始まったばかりだけど、2024年に読んだ本ベスト3に入るんじゃないか? ある雑誌の歴史を通して繋がる祖母と孫。そこから、伺い知る戦争の現実やまだ歴史の浅い女性や子供の人権。ズシリと感じるのはのは、そういうところからかなと思うけど、明るく爽やかなのは? 重苦しい戦争の時代においてもその後の人生に影響を与えるような素敵な出会いがあり、それが孫へと繋がっていくところから感じるのかな。 今は、戦争中と比べたらとんでもないけど、それでも暗いニュースは溢れていて、でも、その中でもきっとあちらこちらで未来に繋がる素敵な出会いがあるのだろうと想像すると少し前向きな気持ちになれる。 作品紹介が長くて、驚いた!
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とても素敵なお話でした。 大手総合出版社、文林館に勤める主人公明日花は、不本意な異動にクサっていた。ところが、かつての社員名簿に祖母の名を見つけて…。 明日花の現代と、祖母・スエが文林館で働いていた戦時中、さらに野山彬が入社したての高度経済成長期のお話が交互に描かれています。 ...
とても素敵なお話でした。 大手総合出版社、文林館に勤める主人公明日花は、不本意な異動にクサっていた。ところが、かつての社員名簿に祖母の名を見つけて…。 明日花の現代と、祖母・スエが文林館で働いていた戦時中、さらに野山彬が入社したての高度経済成長期のお話が交互に描かれています。 野山彬のパートでは、手塚治虫や藤子不二雄のことが微妙に名前や表現を変えて描かれていてニヤリとしました。 お仕事小説でもあり、戦争中のメディアの苦悩と反省を描いたものでもあり、母子3代の物語でもあり、さらに男女差別についても描かれている。盛りだくさんですがそれらがうまく纏まっており心地よい読後感でした。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
始めは読みにくかったが、途中からぐいぐいと話には引き込まれた。素晴らしい小説だった。 優しい明日花のおばあちゃんと思っていた女性が文林館で大きな役目を果たしていたことがわかって大いに驚き、涙がハラハラと出た。 「後悔のないようにするのが一番です」という老婦人の言葉が若き日の祖母のスエさんの心を押し、時代を経て今度はそのスエさんが「なんでもあきらめてしまったら、そこで、おしまいですよ」と野山彬を励ましていく。このあたりは本当に感動した。 また思ったことは、祖母のスエ、娘の待子、孫の明日花とお互いの言葉が足りずに寂しい関係になってしまったのではないかと思った。やはり心でいかに思っても言葉で伝えないと伝わらない、伝える努力を大事にしていこうと改めて思った。 人類の歴史は百万年。だが、子どもと女性の人権の歴史はまだ百年に満たないことに、ハッとした。この百年であまりに大きく変わったが、長い間優位に立っていた男性の意識が変わるのにはまだまだ時間がかかるんだろうな。 平和で豊かな時代に生きられることを感謝して、自分にできることをコツコツやっていこうと思った。また将来再度読んでみたい。 多くの人に読んでほしい素晴らしい本です!
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2024年初めての読了。まあまあなボリュームだったけど、面白かったー。世論や情勢で一気に教示が変わってしまうのは、何も戦時中だけでもないかなと思った。コロナ禍だったり、災害時だったり、ネット社会だったり。戦時中と違うのはそれを間違っているだったり、自分はこう思うとちゃんと言えるこ...
2024年初めての読了。まあまあなボリュームだったけど、面白かったー。世論や情勢で一気に教示が変わってしまうのは、何も戦時中だけでもないかなと思った。コロナ禍だったり、災害時だったり、ネット社会だったり。戦時中と違うのはそれを間違っているだったり、自分はこう思うとちゃんと言えること。せっかく言える時代なんだから、周りに流されるのではなく、自分で考える力をつけなければと思う。
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