リスペクト の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
アナキズムは国や宗教などの政治的な権力に対し、個人の自由を訴える思想で、既成概念を壊す革命児、異端児という印象があった。 本文には、「人間は自由であるべきなのに、社会や国に縛られることで自分で何かをしなくても与えてもらえる状態に満足して何も考えられなくなる」とあった。 これを読んでハッとさせられる人は多いのではないだろうか。 社会や世界で起きている問題は決して他人事ではなく、明日の自分かもしれないし、もしくはもうすでにその問題の渦中にいるのに気づかないことは多い。 なにかしらの行動を起こす権利は誰にでも平等にある。しかし、個人の問題が集団の問題へと拡大したとき、私的なものが公的になったとき、「きっかけ」を忘れてはいけない。原動力となった核がなくなれば、ただの張りぼてだ。 「旅の途中で私たちが奪われたもの。自分に対する自信。他人を信頼する勇気。ドロシーが西の魔女に片足の靴を奪われたように、私たちは片方しかない靴で歩いていたも同然だ。」 「尊厳のないところで人は生きられない」 この本の中で低所得シングルマザーたちが訴えていることは「人権」だ。 人間には等しく人間らしく生活する権利があるということ。これは日本国憲法でも謳われている。自分の言葉で自分の思いを語る自由が脅かされたら、私たちは社会に、他人に自分の尊厳を主張するべきなのだろう。 自分が自分を「リスペクト」できること。これが大事なのだ。
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2014年。東ロンドン。カーペンターズ居住区の実際の占拠事件が題材。公営の住居を追い出せれるシングルマザーたち。遊休の空き家があるというのに。民間住宅は高過ぎる。家賃の安い見知らぬ土地へ行けという。運動が始まる。思わぬ数の支持者たち。助け合い。占拠はひと月に及ぶ。抵抗は実る。…ア...
2014年。東ロンドン。カーペンターズ居住区の実際の占拠事件が題材。公営の住居を追い出せれるシングルマザーたち。遊休の空き家があるというのに。民間住宅は高過ぎる。家賃の安い見知らぬ土地へ行けという。運動が始まる。思わぬ数の支持者たち。助け合い。占拠はひと月に及ぶ。抵抗は実る。…アナキストと新聞記者。架空の邦人カップルの登場で日本人にも身近な出来事であることを感じさせる。理不尽も「あきらめて受け入れる」。その繰り返しでは国そのものが疲弊する。まもなくGDPが世界4位となる。凋落に甘んじてばかりはいられない。
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ロンドンで実際に起きた公営住宅占拠運動をモデルとした小説。公営住宅に空きがあるのに追い出される、何も出来ないから何でもお上が思うままに出来ると思われる。これは近い将来の我々を問う物語かもしれない。
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2013-14年に実際に起きたロンドンのジェントリフィケーションに端を発する占拠運動をモデルにした小説。近年いくつかの映画・ドラマでも描かれてきた問題なので題材それ自体の真新しさは薄いが、そこに日本の新聞社の支局をサイドストーリー的に絡めることでメディアへの批評性も持ち合わせてい...
2013-14年に実際に起きたロンドンのジェントリフィケーションに端を発する占拠運動をモデルにした小説。近年いくつかの映画・ドラマでも描かれてきた問題なので題材それ自体の真新しさは薄いが、そこに日本の新聞社の支局をサイドストーリー的に絡めることでメディアへの批評性も持ち合わせているのが面白い。私も含めてこういった作品やニュースを見聞きしても「ふむふむ、そんな問題が世界では起きているのか。勉強になるなぁ」で終わってしまう読者にも静かに牙をむく終章、特に史奈子の選択に頬を叩かれる。そういう意味では個人的に幸太のキャラクターと行動力も意外と刺さってしまった。
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もっと現実に沿った内容で、リアリティーのある物語を期待していた分、少しがっかりしてしまいました。 勝手な思い込みでした! とはいえ、社会的な問題を、簡潔な言葉で分かりやすいのに心に残る言葉で語れるフレディみかこさん、さすがです‼️
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ブレイディみかこさんは、私のなかであくまでも"エッセイスト"や"コラムニスト"のイメージが強いので、本作が小説として好きかと言われると(生意気ながら)言葉にすこし詰まってしまう。 だけど、イギリスでの社会運動について学びたいと思う私にとって...
ブレイディみかこさんは、私のなかであくまでも"エッセイスト"や"コラムニスト"のイメージが強いので、本作が小説として好きかと言われると(生意気ながら)言葉にすこし詰まってしまう。 だけど、イギリスでの社会運動について学びたいと思う私にとっては、どんぴしゃすぎるし、多くのことを考えさせられた。 多くの日本人が手にとって、自分たちの"RESPECT"のために行動できる人が増えたら良いな。 P.150 「そう言えばさっき、トイレの修繕講座がアナキーだって言ったじゃない。どこがアナキーなの。さっぱりわからないんだけど」 「あれこそアナキズムじゃん」 幸太はそう答えると、しばらく黙ってから史奈子に聞いてきた。 「史奈子は、アナキズムって何だと思ってる?」 「革命を起こして政府とか倒しちゃうんでしょ。そんで無政府状態のカオスな状況を作って、秩序も何もかも崩壊した瓦礫の上にゲラゲラ笑いながら立ってる。そういうイメージ」 史奈子がそう答えると、幸太は心から意外そうな顔で言った。 「史奈子って、ひょっとして、ずっとそう思ってた?」 「うん、いまもそう思ってる。だって、既成概念を打ち壊すんでしょ。暴れてかわす力がだいじ、っていつも言ってたじゃん。だったらトイレであれ何であれ、修繕しちゃったらダメなんじゃない?それは壊すことの反対だから」 幸太は急に真面目な顔になり、史奈子の目を見て言った。 「反対じゃないよ。むしろ繋がっているというか、表裏一体。人間に何かを強制するものは積極的に壊していくべきだよ。人間の生は自分自身のものであり、他の何者にも支配されるべきではないから。だけど、人間って、実は支配されたほうが楽だと思う部分があって、そうすればもう自分で何も考えなくて済むし、安心だからと思って自分の生を誰かに丸投げにしてしまうんだ。たとえば、国家とか会社とかシステムとかにね。自分から進んで奴隷になりたがる。で、そのうち「より優れた奴隷になりたい」って競争を始めたりして」(略) 「そんなことが当たり前になると、そのうちだれかに支配されないと生きていけないと思うようになってしまう。自分たちの問題を自分たちで解決することなんてできないって思うからだよ。だから解決してくれるお偉いさんにロビーイングをする、とか、解決できる政策を求めてデモをする、とかいうふうになってしまう」(略) 「親子で路頭に迷うっていう切羽詰まった状況のときに、そんなに時間がかかって融通が利かないものにお願いしてもしょうがないだろう。アナキズムはお願いしない。そもそもお上にお願いするってことは、われわれを支配してくださいって言ってることと同じだからね。アナキズムはそうじゃない。自分たちで始める。自分たちの問題を自分たちで解決するんだ。まさにトイレの故障みたいなもんだよ。誰かに来てもらって修理してもらわないとどうしようもないと思い込んでいるから、オロオロして高い修理代とか払って誰かが来るのをじっと待つんだろ。自分自身では解決できないと信じているからだよ」 P.262 「…私、ずっと日本のシステムの中で育って、働いて、こっちに来てからも、それは何も変わらなかったから、どこに行こうが世の中は同じと思ってた。」(略) 「理不尽に思うことや不平等を感じることにムカついたり、これは間違っているんじゃないかと思うことがあっても、しょうがないと思って流してきた。闘ったり、抵抗するなんて愚かだし、そんな面倒なことをしたって、何も変わらないと思ってた」 「無駄だって思うことが賢い大人のすることだって信じてた。だけど、賢く生きることで死んでしまう部分が自分の中にあって、おかしいことをおかしいって言いたい衝動とか、そういうことを抑えつけていると、ここに生きているのは自分なんだけど自分じゃないみたいな変なことになって、自分が自分の人生の当事者じゃなくなってくる」 パンと薔薇。 今の日本にもパンだけ食わしておけばいいっていう考えが蔓延してるように思える。
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やるか?やるべきか?ではなくやらなければいけない時があると立ち上がった、勇気あるシングルマザー 大きなものに流されて人間の尊厳さえも奪われそうになった時、おそらく自分は押し潰されるであろう。 相手をリスペクトする事ももちろん大事だし、あるがままの自分を尊重する事も大事だと思えた作...
やるか?やるべきか?ではなくやらなければいけない時があると立ち上がった、勇気あるシングルマザー 大きなものに流されて人間の尊厳さえも奪われそうになった時、おそらく自分は押し潰されるであろう。 相手をリスペクトする事ももちろん大事だし、あるがままの自分を尊重する事も大事だと思えた作品でした。
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admiration felt or shown for someone or something that you believe has good ideas or qualities. politeness, honour, and care shown towards ...
admiration felt or shown for someone or something that you believe has good ideas or qualities. politeness, honour, and care shown towards someone or something that is considered important. A feeling that something is right or important and you should not attempt to change it or harm it. the feeling you show when you accept that different customs or cultures are different from your own and behave towards them in a way that would not cause offence. エンパシーからリスペクトへ。 あなたはあなたでぼくはぼくでバランスが取れたら それは、ナイスだと思う。予想より良かった。 何かを守るとき、想うとき、人は強くなる。 移動中で、読み終わり。
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うう、ブレイディみかこ節効いてる。ノンフィクションのようなフィクションだった。本当にあったお話をベースに書かれているようで、リアル。いつも書かれているエッセイもいいけれど、こんな話も良いな。セリフが刺さった。 p.35 人間だからだよ。私ら、見つけたみたいに、お上の都合であっ...
うう、ブレイディみかこ節効いてる。ノンフィクションのようなフィクションだった。本当にあったお話をベースに書かれているようで、リアル。いつも書かれているエッセイもいいけれど、こんな話も良いな。セリフが刺さった。 p.35 人間だからだよ。私ら、見つけたみたいに、お上の都合であっちこっちに行かされて、いつまでも小突き回されるだけで良いわけがない。生活保護を受けていようが、ホームレスだろうが、私らだって人間なんだ」 p.55 だって、誰かが何かを始めないと、誰かが戦わないと、何も変わらないだろう。いつまでたっても同じことの繰り返しで、何も変わらない。それでいいわけないだろ。 p.207 貧しいということは、単にお金がないと言うことだけでは無いからだ。それは、それが理由で他の多くのものまで奪われてしまっている状況だ。今知っていること以上の何かを教わる機会や、こことは違う新しい環境に出会うチャンス。自分に対する自信とか、明日や明後日の生活への安心とか、他人を信頼する勇気。ドロシーが靴を片方奪われたように、私たちは片方しかない。靴で歩いてきたのも同然なのかもしれない。 ジェイドの父親はいつもつま先が破れた靴を履いていた。 父親壊してしまったのは、生活保護で生活していることに対する恥の意識だった。そして、それに追い打ちをかけるように冷たくなっていた。近所の人々の視線。貧しいことや、体を壊して働けなくなった事は、ふんであって、恥だと思うべき罪ではないのに、父親は家族やテレビで喋っている人に毒好きながら、本当は自分自身を罵倒していた。社会の役に立てなくなった。脳無しだと自分で自分を差別し、ゆっくり殺そうとしていた。根腐れして枯れていく大木のように、ずっとテレビの前に座っていた。父の後ろ姿が浮かんだ。尊厳だ、と思った。あの後ろ姿が剥奪されたものは人間の尊厳だったのだ。 少しばかりのリスペクト。それを勝ち取るためにジェイドは明日、裁判所に立つ。リスペクトもないところに尊厳は無いから。尊厳のないところで人は生きられないから。 p.213 「今、いきなり彼女が尊厳とか言うので、…ちょっと考えたんですけど、私たちがロージズっていう名前を名乗ったのも、そういうことだったんだと思います。薔薇は人の尊厳を尊重する花だから。住まいは人の尊厳です。ねぐらのないに人々に住まいを与える事は、人間の尊厳を守ること。人は誰だって安全で温かい場所で、眠り、子を育てる権利があるんだと信じること。区長だろうと誰だろうと、この薔薇を踏みつける事は許されません。戦ってきます」
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自分たちでできることを、できないって思い込めば思い込むほど、支配する者たちの力は強大になる。登場人物のこのセリフを読んだときに、雷に打たれたような衝撃が走った。自分の現状を変えたいのならば、自ら動かなければと強く思った。
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