リスペクト の商品レビュー
英国に住んでいる著者ならではの視点で英国の低所得者への緊縮財政の影響を描いた小説。ロンドンのホームレス用の公共施設で生きているシングルマザーが立ち上げた運動を軸に話しが進んでいき、「自分たちを可哀想な人」としてアピールしたいわけじゃないのにと運動が広くし周知される中で悩むシングル...
英国に住んでいる著者ならではの視点で英国の低所得者への緊縮財政の影響を描いた小説。ロンドンのホームレス用の公共施設で生きているシングルマザーが立ち上げた運動を軸に話しが進んでいき、「自分たちを可哀想な人」としてアピールしたいわけじゃないのにと運動が広くし周知される中で悩むシングルマザーのジェイドと女性ながら日本の新聞社のロンドン支局で働き仕事にも食べ物にも困ったことがない史奈子の対比も面白い。
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2013年にロンドン東部で実際にあったホームレスで若いシングルマザー達による公営住宅の空家占拠・開放活動を元にしたフィクション。 長くイギリスで暮らす作者だけに、登場するシングルマザー達の怒り、悔しい思いや、彼女等の活動をサポートする昔の活動家達の応援したくなる思い、そして現地...
2013年にロンドン東部で実際にあったホームレスで若いシングルマザー達による公営住宅の空家占拠・開放活動を元にしたフィクション。 長くイギリスで暮らす作者だけに、登場するシングルマザー達の怒り、悔しい思いや、彼女等の活動をサポートする昔の活動家達の応援したくなる思い、そして現地駐在の日本人若手女性新聞記者が初めは戸惑い乍も次第に理解し影響を受けていく様等が、リアリティ持って伝わってくる。 そんな事(行政に対する反対運動を繰り広げる事)したって世の中何も変わらない、という常識的諦念を突き破って社会の最下層にいる弱者たる若いシングルマザー達が裁判で勝利を掴み、更に活動を続けるという感動的ほぼ実話であるという事だけでなく、現在の行き過ぎた資本主義によって生じている社会の歪みに対して斎藤幸平さんが説く社会的コモンを充実させる事の有用性、正しさについても感じさせるストーリーであったと感じる。 それは、①記者の史奈子が占拠の現場で所有権について悩む一方で人々が修理等のサービスや物を無償でやり取りして回っている事②彼女達が占拠した公営住宅は何年も空家状態だったにも拘らず開放していなかったのだが、これは行政からすればより高く売ってジェントリフィケーションに繋げたいからであり、この発想はもう資本主義の負の面に毒されていると言え、行政が本来目指すべき「全ての住民が屋根のある場所に住める様に、手頃な家賃の住宅を提供すべき」事が出来ていないのが実態だったりする事、等から感じた。
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支配されるのは実は楽。何も考えなくっていいから。 仕事を始めてからの2年間、私はずっと支配されて生きてるなーと。それが楽だし、それで生きていけてしまうから。 それじゃだめだー自分で自分の価値を下げている!!! と思わせてくれる本当だった
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『自然にまっとうに自分たちでできることを、できないって思い込めば思い込むほど、支配する者たちの力は強大になる。おまえらにはトイレ一つ直せないんだから、俺らに任せとけって勝手になんでもかんでも決めるようになる。そうやって権力は、俺らが、つまり人間が本来持っている力を削いでいくんだ』...
『自然にまっとうに自分たちでできることを、できないって思い込めば思い込むほど、支配する者たちの力は強大になる。おまえらにはトイレ一つ直せないんだから、俺らに任せとけって勝手になんでもかんでも決めるようになる。そうやって権力は、俺らが、つまり人間が本来持っている力を削いでいくんだ』 という言葉がすごく心に響きました。 できないって思い込んでいることにすら私は気づいてないのかもしれないとさえ思いました。
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2014年のロンドン。 ジェントリフィケーションと戦うシングルマザーたちの、シスターフッドとアナーキズム。
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【あらすじ】 やれるか、やるべきか、じゃない。やるしかないときがある。2014年にロンドンで実際に起きた占拠運動をモデルとした小説。ホームレス・シェルターに住んでいたシングルマザーたちが、地方自治体の予算削減のために退去を迫られる。人種や世代を超えて女性たちが連帯して立ち上がり、公営住宅を占拠。一方、日本の新聞社ロンドン支局記者の史奈子がふと占拠地を訪れ、元恋人でアナキストの幸太もロンドンに来て現地の人々とどんどん交流し……。「自分たちでやってやれ」という精神(DIY)と、相互扶助(助け合い)と、シスターフッドの物語。 【感想】 こういう出来事があった事は知らず、改めて海外でのこういった運動の影響力と強さを感じた。 日本だと何となく諦めていたり、目を瞑ってしまうような事も多いと感じるが、数人の想いや行動がここまで世間を動かしていくのがすごいと感じた。 個人的には史奈子の視点が日本人の目線感として描かれているのかなと感じ、E15ロージズのメンバーの行動力や幸太のようなフレンドリーさやコミュニケーション力がとても羨ましく感じ、そういう風に生きていきたいなと。 ジェイドの活動が良くも悪くも周りに影響を与え、本人の想いとは違う部分で悪い影響が出てしまったり勘違いされる事に世間の難しさというか人の目に触れるのが増えていくにつれ伝わりづらくなったり、本質が見えなくなってしまうのがもどかしい。 ロブとローズのエピローグも渋かったし、エピローグもとてもよかったです。
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こんな運動があったことを初めて知った。声をあげること、そしてそれを継続していく事は、大きなエネルギーが要る。生きるために抗う、戦う権利について考えさせられた。自己責任という言葉に誤魔化されてはいけない。
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E15ロージズ、格好良い。 日本で、こういう感じないかもだけど、だんだん日本の女子もものが言えるようになっているかも。か、二極化かな。いろいろと。
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この方の本は何冊か読んでてイギリスの現状も知ってるつもりでロックファンとしても共感する部分は多いのですが、シングルマザーとか貧困の連鎖とか身近にないし本質的な問題がどこにあるのか分からず今回はなかなか腹に落ちなくて自己嫌悪。「リスペクト」の本質って難しいです。政府の怠慢を棚に上げ...
この方の本は何冊か読んでてイギリスの現状も知ってるつもりでロックファンとしても共感する部分は多いのですが、シングルマザーとか貧困の連鎖とか身近にないし本質的な問題がどこにあるのか分からず今回はなかなか腹に落ちなくて自己嫌悪。「リスペクト」の本質って難しいです。政府の怠慢を棚に上げて「自己責任」とか「自助」とかが幅を利かせてる日本にもこんな時代が来るんですかね。と言うかもう来てるんですかね。それに人として正しく振る舞えるように、感性を磨いていたいけど。
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「住」を奪われようとしたシングルマザーたちが自らの「尊厳」を取り戻すために闘った実話を元に書かれた作品。閉塞した社会状況で鬱々している私たちに勇気を与えてくれる物語だ。しかしロンドンオリンピックのシンボル「アルセロール・ミッタル・オービット」をネットで確認したけど、確かに不気味な...
「住」を奪われようとしたシングルマザーたちが自らの「尊厳」を取り戻すために闘った実話を元に書かれた作品。閉塞した社会状況で鬱々している私たちに勇気を与えてくれる物語だ。しかしロンドンオリンピックのシンボル「アルセロール・ミッタル・オービット」をネットで確認したけど、確かに不気味な建造物だ。大阪万博のマスコット「ミャクミャク」に通づるものがあるわ。
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