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青春をクビになって の商品レビュー

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60件のお客様レビュー

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2023/12/19

東京貧困女子の男子版、という印象を持った。 男の貧困には劇的なドラマがない。女子のように売るものがないので、選択する葛藤がない。ただただ朽ちていくだけだ。ある意味で貧困男子は貧困女子より不幸なのかもしれない。堕ちる姿はドラマになるが、朽ちる様子は記録にしかならないからだ。 「...

東京貧困女子の男子版、という印象を持った。 男の貧困には劇的なドラマがない。女子のように売るものがないので、選択する葛藤がない。ただただ朽ちていくだけだ。ある意味で貧困男子は貧困女子より不幸なのかもしれない。堕ちる姿はドラマになるが、朽ちる様子は記録にしかならないからだ。 「記録」しかならない男子の貧困を、本書のようにドラマに昇華させた作者の手腕は素晴らしいと思った。加えて、作者が女性であることで「男の内面の淀み」が距離を置いて描かれている点も良かった。これを男性作家が描くと、グロい小説になっていた可能性がある。 <主観的あらすじ> 有期の研究職をしている主人公は、研究所を盗み失踪した先輩に十年後の自分の姿を見る。主人公は生活費を稼ぐため、レンタルフレンドのバイトを始める。そこで出会う人たちとの交流を通じて自分の姿を振り返るようになる。レンタルフレンドという地獄めぐりから生還した主人公はどのような選択をするのか…。

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2023/12/17

真壁仁の詩「峠」のフレーズが浮かんできた。 峠路をのぼりつめたものは のしかかってくる天碧に身をさらし やがてそれを背にする。 風景はそこで綴じあっているが ひとつを失うことなしに 別個の風景にはいってゆけない。 大きな喪失にたえてのみ あたらしい世界がひらける。

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2023/12/10

大学の非常勤講師として働きながら古事記の研究をしている瀬川35歳。「雇い止め」という現実に人生の決断を迫られる。夢を諦め違う人生に舵を切った友人。夢を諦めきれず進む道が閉ざされた先輩。合間合間で瀬川が出会う人たちも夢半ばで人生をもがいている。瀬川も進む方向を変えていく。「青春をク...

大学の非常勤講師として働きながら古事記の研究をしている瀬川35歳。「雇い止め」という現実に人生の決断を迫られる。夢を諦め違う人生に舵を切った友人。夢を諦めきれず進む道が閉ざされた先輩。合間合間で瀬川が出会う人たちも夢半ばで人生をもがいている。瀬川も進む方向を変えていく。「青春をクビになって」この題名がなんとも心にずしんと来る。

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2023/12/09

ポスドク、身につまされるだろうなぁと、発売後、 しばらく読むのを見送っていた作品。 意を決して読んでみたら、いちいちわかってしまったw 「古事記」の研究を続け、雇い止めにあう瀬川。 研究室を訪ねれば、10歳先輩の先輩・小柳がどうやら住み着いているようで・・・ その小柳が貴重な「...

ポスドク、身につまされるだろうなぁと、発売後、 しばらく読むのを見送っていた作品。 意を決して読んでみたら、いちいちわかってしまったw 「古事記」の研究を続け、雇い止めにあう瀬川。 研究室を訪ねれば、10歳先輩の先輩・小柳がどうやら住み着いているようで・・・ その小柳が貴重な「古事記」を持ち出し、行方不明に・・・ 瀬川は、かつての研究仲間・栗山の起こした会社で レンタルフレンドとして働きながら、今後を考える。 研究を続けるのか、否か。 研究を続けることは、小柳の二の舞となることも意味する。 瀬川の下した決断は・・・ 後半がいい。 間章もいい。 額賀さんだから、最後の最後に、思いも掛けぬ展開を用意してくれていて ちゃんと光をくれる。 読んで良かった。

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2023/12/07

ポスドクの果てにある暗い未来がひしひしと伝わってくる.それでも研究に捧げてきた人生を無駄であったと思いたくない気持ちもまた切実に感じた. またレンタルフレンドの需要が増えているのも,便利なような寂しいような複雑な気持ちになった.

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2023/12/09

星3.5 額賀澪は初読みだが、なかなか読ませる人だなあと思った。 ポスドクという言葉は前からよく聞くが、博士を量産して、その後の生活を保証しない文科省には憤りを感じる。 文化を尊重しない国は先進国とは言えないのでは?特に自国の文化を。

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2023/12/01

額賀澪といえば青春小説、というイメージなので、タイトルも衝撃だったが、主人公が三十過ぎのおじさん(失礼)という設定にも驚いた。しかも彼は冒頭で勤め先から文字通り首を切られてしまう。 「ただ、好きなものをとことん追究したかった」p180 そう、青春ってそういうものだ。 何かに夢中...

額賀澪といえば青春小説、というイメージなので、タイトルも衝撃だったが、主人公が三十過ぎのおじさん(失礼)という設定にも驚いた。しかも彼は冒頭で勤め先から文字通り首を切られてしまう。 「ただ、好きなものをとことん追究したかった」p180 そう、青春ってそういうものだ。 何かに夢中になって、没頭することが許される権利。 生活の足しにならないことをしていても許される期間。 いつまで許されるのだろうか?人は、いつまで青春の中にいられるのだろうか? 幸運にも、趣味と実益が叶う人もいるだろうけれど、大抵の人は、どこかで夢を諦めて、あるいは折り合いをつけて、現実と向き合うことを選ぶ。 ある意味当たり前の通過儀礼に、「猛烈な痛み」p181 を覚える人たちもいる。 「「好き」を道標に生きてきた。暗闇を進む灯火だった。この光のせいで生きていけないのだと気づいた。これを大事に抱えている限り、暗闇を歩き続けなければならない。」p211 半身を引き裂かれるような独白。 自分にとって、あれほど輝いていたものが、いつか自身を閉じ込める「暗闇」になる。そのことに気づいたとたん、選ぶ道はどちらか一つ。 現実に殺されるか、理想に殺されるか。 青春小説を書いてきた作者だからこそ、そのケリのつけ方にも向き合ったのだろう。自分の中の理想と現実とが、もし命を賭けた選択になるのだとしたら、決めた道を「振り返らず」p212 前に進むのだ。

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2023/11/27

大学で非常勤講師をしながら、古事記の研究をしている主人公の朝彦。 労働契約が5年を超えて更新されると、無期労働契約へ転換を申し込める決まりがあり、これを通称「5年ルール」と言う。 大学側が常勤講師を増やしたくない理由で、「5年ルール」が適用される前に契約を解除する「雇い止め」。 ...

大学で非常勤講師をしながら、古事記の研究をしている主人公の朝彦。 労働契約が5年を超えて更新されると、無期労働契約へ転換を申し込める決まりがあり、これを通称「5年ルール」と言う。 大学側が常勤講師を増やしたくない理由で、「5年ルール」が適用される前に契約を解除する「雇い止め」。 朝彦はこの雇い止めの対象となり、半年後に職を失うことになってしまう。 そんな中で、10年年上の先輩が貴重な古事記を大学から持ち出して失踪してしまう。 ポストドクター(博士研究員)の行く末とは。 朝彦はどんな選択をするのか。 ポスドクと言う言葉さえ初見でした。 ましてや、彼らの生活の現状や将来の展望など知る由もなく、初めて知ることばかりでした。 好きなことを研究しながら学生に教える事は、想像以上に大変。 研究費のために借金もする、そんな世界なのだとビックリしました。 少し話は違うかもしれませんが、以前雑誌か何かで京都大学の山中教授が、研究費を稼ぐためにマラソンをして募金を募ると言っていました。 ノーベル賞を取った山中教授でさえ研究費を捻出するのに苦労していると知った時は、本当に驚いたし、国からの援助がもっとあれば良いのにと思ったのを思い出しました。 研究したくても出来ない現状、何とかならないのかなと、少し悲しくなる話でした。

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2023/11/22

第一章から第五章に挟み込まれた間章。この間章の存在で、朝彦と小柳の行動を平行させ物語は進む。古事記への情熱、夢、青春そしてポスドクとしての矜持を捨てられなかった小柳の人生に遣り切れない読後感。

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2023/11/11

【青春をクビになって】 またまた額賀澪さんの作品。 主人公の瀬川朝彦は、大学時代だけでなく、そのまま院、そして非常勤講師をしながら古事記を研究し続ける35歳のポスドク。こんな呼び方があることも知りませんでした。 20代の頃、誰もが自分の将来を疑うことなく突き進んだはず。 朝彦も...

【青春をクビになって】 またまた額賀澪さんの作品。 主人公の瀬川朝彦は、大学時代だけでなく、そのまま院、そして非常勤講師をしながら古事記を研究し続ける35歳のポスドク。こんな呼び方があることも知りませんでした。 20代の頃、誰もが自分の将来を疑うことなく突き進んだはず。 朝彦もそんな一人でした。 でも現実は厳しい。 非常勤講師であるがために、収入や生活は安定とは程遠いもの。そしてとうとう雇い止め…。 そして気がついたら35歳。 いや、まだ自分はまだ出来る、でもこのままでいいのか、ひょっとしたら手遅れなのか?と自問自答する朝彦。 そんなところから物語は始まります。 登場人物ですが、大学時代に一緒に研究をした仲間で、今は違う道を選び「レンタルフレンド」を派遣する会社を立ち上げてその経営者としてそこそこ成功している栗山さん。 そして10歳ほど先輩で古事記の研究をし続ける小柳さん。 その小柳さんの面倒を見続ける大学教授の貫地谷先生。 それぞれの立場から物語が描かれていて、最後まで一気に読んでしまえる、そして泣ける、そんな物語です。 色々な生き方があるんだなぁ。 そして、それぞれの場所で喜びや辛さがあるんだなぁ。 就職氷河期に遭遇したら自分自身はどうだったんだろうなぁ。 私は今でも夢を持って日々の仕事をしていますが、それ自体が幸せなことなんだなと思わされました。 など考えさせられる著書でした。

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