名探偵のままでいて の商品レビュー
ミステリー云々の前に、認知症の方々と関わっていた自分としては有り得ない設定すぎて楽しめなかった。レビー小体型認知症ってこんなんじゃない……
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いまだかつてレビー小体型認知症の人が探偵となる小説があっただろうか。いやはやびっくり、しかもとびっきり面白いときたもんだ。 認知症の人が主人公の小説はたくさんあるけれど、その当事者が事件の謎を解く、しかも安楽椅子探偵として、って設定、よく思いついたな、と。 知性を保ったまま現れる幻聴を伴わない幻視。自分には見えているものを「ない」と理解することの困難さと苦しさ。その症状を抱えたまま、少しずつ進行し壊れていく自分を理解したまま、孫娘が持ち込む「謎」を解いていく祖父。そこには孫娘への愛情とともに人としての矜持もあっただろう。謎を解ける自分にきっと「まだ大丈夫」と言い聞かせていたんじゃないか。そんな悲しみも感じる。 祖父の知性を認め、その正常である部分を尊重し「病」には優しいく目をつぶる、その関係にもしかけがあって…という最後まで楽しめる一冊。 読み終わった後、認知症というものに対しての認識が少し変わった気がする。
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